知られることのない話   作:まるイワ

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燦が実装されて嬉しいので初投稿です。





4-2 休日の朝っぱらから

 

 

 

「んんー………」

 

 

意識が覚醒する。何となく低く唸ってみた。起きたばっかだから、声量は全然無いけど。

 

私は今、ベッドの中。上質な素材の布団に包まれて、そりゃあもうぬくぬく。でもこれは、自分の部屋のベッドじゃない。それは私が一番分かってる。

 

 

「……………」

 

 

せっかく自分の部屋を貰ったってのに、これじゃ意味無いよなぁ。まぁ、あの部屋で寝てはいないってだけで、使ってはいる分まだマシなのか。

 

要するに私は、未だに先輩と一緒に寝てるってこと。前よりは、あの謎の女の子がアレだとかはなくなったんだけど、何か……ね。ビビってるわけじゃない。断じて。

 

 

「……………」

 

 

半端に目を開く。でも、薄暗くて何が何だか。布団の中に潜っちゃってるのかもしれない。浮上しなきゃと思って、起きたばっかりで上手く力が行き渡らない身体を、モゾモゾ動かす。そしたら、自分が何かに密着してるのが分かった。

 

 

(やわっこいなー。特に顔の辺りとか。いい匂いもするし…)

 

 

何だろう。清潔感のあるっていうか、甘いような感じの香り。シャンプーっぽい…ってか、女の子って感じ?

 

 

(………あー……)

 

 

理解した。あーはいはい。それなら確かに柔らかいし、良い匂いもするわな。何より温いもん。体温で。

 

自分の置かれてる状況が分かったところで、今度こそ布団から顔を出そうとして動く。体を密着させてたものからは、少し離れた上で。

 

 

「ん……」

 

 

モソモソ動いて、とうとう布団から顔を出した。少し息苦しかったのも解消されて、いい感じ。だった。

 

そこまでは良かったんだよ。でも次の瞬間には、ちょっとげんなり。何でかって、布団から顔を出したら、目が合ったからだよ。この部屋の主と。

 

 

「………………」

 

「………………」

 

 

お互いに見つめ合って、でも何も言わないまま時間が流れていく。向こうもちょうど寝起きだったのか、寝ぼけ眼でボヤーッとした感じ。

 

私はそんな彼女に、3回くらい瞬きをしてから、軽く溜息を吐いて、顔をちょっとだけ顰めて言ってやった。

 

 

「あのさぁー……」

 

「起きてすぐの一言がそれってどういうことですの貴女」

 

 

カーテンが日差しを遮って、少し暗い部屋の中で迎えた朝。先輩のツッコミは、寝起きでも冴え渡っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ベッドから起きて、部屋に戻って着替えて、一階のリビングに下りる。今日は休日だから、わざわざ制服に着替えることもない…と、思ったんだけど…。

 

 

「なんで休みなのに制服着てるわけさ、私達は」

 

 

朝飯のバターロールをもしゃもしゃ食べながら、先輩に聞く。登校日じゃないのに制服って、なんか窮屈でなぁ。

 

 

「何処を調査しても、問題の無いようにしなくてはいけないでしょう。妙な噂のある場所が、例えば会社のあるビルだったり、学校内だったりした日にはどうしますか」

 

「だから私服じゃダメだって?」

 

「そう。制服なら、そういった場に入ったとしても、不審者と見なされることはないと思います。多分」

 

「私服姿の女の子が複数人でゾロゾロ来るよりは、まぁ印象は良いか…」

 

 

納得したところで、朝飯に集中する。インスタントのポタージュを啜ると、腹に暖かい感覚が広がって心地良い。

 

 

「そういえば」

 

「ん?」

 

「なんか、甘えんぼな感じでしたわね」

 

「何が。つか、誰が?」

 

「貴女。夜中にちょっと目が覚めたんですけど、そしたら赤さんが既にこう、ひしっと…」

 

「あー」

 

 

ベッドでの話か。寝相かなんかで偶然そうなったんでしょ。私は甘えたなんかじゃないし、寂しいわけでもないし。嘘じゃない。本当だぞ!

 

 

「まぁ、人間色々ですものね。人肌恋しくなる時だってありますわよ」

 

「ちげーよ、バーカ」

 

「あら、悪いお口」

 

 

軽口を叩き合いながら、朝食を済ませていく。いつもなら、休みの日は各々好きに過ごすから、こうやって揃って朝飯を食べることなんてない。だから、ちょっと変な感じ。

 

飯を食べ終わって、身支度を整えた私達は、外へ出た。予定じゃ、今日は一日中うわさの調査ってことになってる。今回はまず、最初に集まる場所を決めておいたから、そこへ向かう。

 

 

「くぁ…」

 

「欠伸。まだおねむです?」

 

「普段はさ、こんな早く起きないし。休日は」

 

「もう少し遅いですものね、お互いに」

 

 

歩きながら話す。昨日はそこまで夜更かししたつもりはないんだけどなぁ。日付が変わる頃くらいには寝たし。まぁ、慣れないことしたからってことなのかな。

 

 

「ですが、こうでもしなければ、一日の間に長く調査することは出来ませんわ。我慢なさって」

 

「ま、しゃーねーな」

 

 

こうすることは、既に決まってたこと。今更それに対して、声を荒げて文句言うような困ったちゃんになったつもりはない。

 

目指すのは中央区。ちゃっちゃと行こうってことで、少し歩く速度を早めて、駅に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

電車にちょっとの間揺られて、中央区に到着。そこから更に歩いて、待ち合わせ場所の喫茶店へ。事前に店の場所は調べておいたし、迷わないように地図も確認しておいたから、問題なく辿り着いた。

 

 

「あー!せんぱーい、赤ちーん!おっすー!」

 

「デケーの、声が」

 

「お元気でよろしいかと」

 

 

マジ子のやつ、どうやら先に来てたらしい。私達を呼ぶデカい声の元を探ると、オープンテラスの席に陣取ってるのを見つけた。すぐに入店して、私達もその席に座る。

 

 

「おはよ!や、アタシ、待ちきれなくてさー。めっちゃ早く来ちゃってたんだー。」

 

「それはまた…。じゃあ、お待たせしてしまいましたかね」

 

「んーん、だいじょぶ。ドーガ見たりしてたから。あ、二人も見る?さゆさゆのやつ」

 

「や、いいから」

 

 

マジ子がスマホを取り出して、私達に何かを見せようとしたのを止める。つか、さゆさゆって何よ?

 

 

「えー、マジで可愛いのに。刀剣愛ドルのさゆさゆ」

 

「なんて?」

 

「確か、神浜でアイドルをやっている方ですわよ。私、学校で何度か見かけたことがあります」

 

「マジで!話したりした?」

 

「流石にそこまでは。ファンというわけでもないので」

 

「そっかぁー。あ、じゃあさ。今度みんなで、さゆさゆの曲聴いてみる?国宝ハイエンドとか、結構アガるしさー」

 

 

アイドルの話をする二人を、頬杖ついて眺める。私はそこんとこに疎いから、話に入れないんだよなー。服とかもそうだけど。

 

 

「もうその辺にしとけ。時間なくなるって」

 

「あ、そっか。調べんだよね」

 

「ええ。じゃあ、その話をしましょうか」

 

 

目的を忘れたんじゃ、こうやって朝っぱらから集まった意味が無い。適当なところで声をかけて、本題に入った。

 

 

「今日は予定していた通り、うわさ及び、その発信源の調査を行います。出来ることなら、神浜全域を調べるのが望ましいですわね」

 

「ってことは」

 

「今回は、バラバラになって動いてみようと思います。そして最後には集まって、成果を報告し合う。そう考えてますわ」

 

 

全員が固まって調べるよりも、散ってそれぞれが情報を仕入れてこようってことか。いいんじゃないかな。

 

 

「ハイ!たいちょー!」

 

「ん。どうぞ、マジ子さん」

 

 

マジ子が勢い良く挙手。隊長ってのは、先輩のことか。まぁ、間違っちゃいないかも。

 

 

「オヤツは何円までですか!」

 

 

遠足じゃねーんだよ、このバカ。

 

 

「………まぁ、お小遣いの許す限りは」

 

「マジか!やったー」

 

 

律儀に答えなくてもいいと思うよ、先輩…。

 

なんか不安だなぁ。こいつ、まともに調査なんてしてくるのか…?水名に行った時みたいに、最後には遊んでばっかになるんじゃ…。

 

 

「先輩、マジ子に付いてやったら?」

 

「え、赤さん?」

 

「なんかやらかしそうでアレだし。じゃあ、誰かが見てやった方がいいだろ」

 

「それは…なんとなく分かりますけど」

 

「ん?どゆこと?」

 

 

私に言われて、先輩がマジ子をチラッと見る。いまいち話を理解できてないのか、マジ子のやつは頭に?を浮かべてるけど。

 

 

「でも、いいんですの?貴女だけ一人ですわよ?」

 

「いいよ。たまには、そんな時間も欲しいから」

 

「ええ…?いや、赤さんがそれでいいならいいんですけど…」

 

「ね、ね!なに?ねー、二人ともなんの話してんの?」

 

「お前が頼りになるから、先輩を助けてやってくれってこと」

 

「え、マジで!?アタシ頼りになる!?役に立つ!?」

 

「あーなるなる。すっごいなる。なりすぎて死にそう」

 

「え〜…?マジかぁ…」

 

 

明らかに適当に答えたのが丸分かりなのに、言われた本人は嬉しそうにニヤニヤしてる。お前、いいんか それで…。

 

 

「じゃあ、これで決まりですかね。早速始めましょうか」

 

「ん。なら、こっからは別行動ってことでオッケー?」

 

「え、あ、はい。そうなりますかね?」

 

「そっか。じゃ、私行くわ。とりあえず、大東辺りから調べてみる」

 

 

調査開始ってことになったから、席を立つ。調べる区が被っても困るし、行き先は言っておく。

 

 

「え、なんか食べてかないの?」

 

「朝飯は食ったし、スイーツだコーヒーだって気分でもないから」

 

「気を付けて下さいね?東に行くんですから、特に」

 

「その東にある学校に通ってんだよ。大丈夫だって」

 

「それと、連絡は入れて下さいね。お昼には、一旦集まろうと思ってますから」

 

「はいよ」

 

「後は、魔女。一人になるんですから、決して無茶しないように。誰かと協力して倒して下さいね」

 

「へーへー」

 

「それから、えーと…あ、ハンカチとティッシュ。それと、怪しい人に付いていっては」

 

「あーもう、分かりましたよって!」

 

 

いや、親かよ。それも小さい子供の。もう中三なの、私は。そんなこと一々言ってもらわなくたって分かってんだって、もー…。

 

煩わしくなって、さっさと席を離れる。そのまま二人に背中を向けて、店の出口を目指そうとしたところで、私は足を止めた。

 

 

「………………」

 

 

これから、私は一人になる。不安なわけじゃない。仮に何かあっても、先輩に言われた通り 無茶をするつもりはないし、本当にいざとなったら、潔く二人に合流しようって考えてもいる。

 

問題は、先輩とマジ子だ。幾ら二人だっつっても、うわさを調べる以上は、何があるか分かんないわけだし。それこそ、また怪物が現れでもしたら、今度こそ終わりかもしれないわけで…。

 

そう考えたら、こう…一言、声を掛けておくべきかなって思った。注意喚起っていうか。

 

 

「っ………」

 

 

そうしようと思って振り返ったけど、そこで私は迷っちまった。二人は高校生。私より歳上なんだ。だったら、危険な状況になれば分かるだろうし、何より先輩が付いてるからなぁ。だから、なんか…。

 

 

「んー………」

 

「赤さん、どうしました?」

 

「なんか忘れもの?」

 

 

考えてばっかで、何も言えないでいる私を不思議がったのか、先輩とマジ子が話しかけてきた。ジーッと見てくるもんだから、益々言いづらい。そりゃ見るだろうけども。

 

 

「あー…えー、あの…」

 

「はい」

 

「………いや、やっぱいい」

 

 

散々言い淀んで、結局折れた。気軽に「そっちも気を付けろ」とかなんとか言うだけで終わりだろ。なのに、何でそれが出来ないんだ私は。

 

もういいやって諦めて、今度こそ店を出ようと、踵を返した。

 

 

「赤さん!」

 

「……………」

 

 

そしたら、ちょっと大きい声で、先輩に呼ばれた。顔だけを後ろに向ける。

 

 

「そういうとこですわよ、貴女」

 

 

ちょっと怒ったような顔の先輩に、そんなことを言われた。そういうとこってなんだ。何がしたいのか、はっきりしない態度だったのは確かだけどさ。

 

 

 

先輩の言葉の意味を理解できないまま、私は店を出た。目指すは大東区。とにかく調査は始まったんだから、今はそっちに集中することにした。

 

 





マギレコ本編の出来事

・朝起きると、枕元に紙がいっぱいで驚いたいろは。急いでみかづき荘を訪れ、やちよに助けを求める。やちよ は いろはから話を聞き、参京区を二手に分かれて調べることに。また紙が降ってきて、そこには10と書かれていた。
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