燦が実装されて嬉しいので初投稿です。
「んんー………」
意識が覚醒する。何となく低く唸ってみた。起きたばっかだから、声量は全然無いけど。
私は今、ベッドの中。上質な素材の布団に包まれて、そりゃあもうぬくぬく。でもこれは、自分の部屋のベッドじゃない。それは私が一番分かってる。
「……………」
せっかく自分の部屋を貰ったってのに、これじゃ意味無いよなぁ。まぁ、あの部屋で寝てはいないってだけで、使ってはいる分まだマシなのか。
要するに私は、未だに先輩と一緒に寝てるってこと。前よりは、あの謎の女の子がアレだとかはなくなったんだけど、何か……ね。ビビってるわけじゃない。断じて。
「……………」
半端に目を開く。でも、薄暗くて何が何だか。布団の中に潜っちゃってるのかもしれない。浮上しなきゃと思って、起きたばっかりで上手く力が行き渡らない身体を、モゾモゾ動かす。そしたら、自分が何かに密着してるのが分かった。
(やわっこいなー。特に顔の辺りとか。いい匂いもするし…)
何だろう。清潔感のあるっていうか、甘いような感じの香り。シャンプーっぽい…ってか、女の子って感じ?
(………あー……)
理解した。あーはいはい。それなら確かに柔らかいし、良い匂いもするわな。何より温いもん。体温で。
自分の置かれてる状況が分かったところで、今度こそ布団から顔を出そうとして動く。体を密着させてたものからは、少し離れた上で。
「ん……」
モソモソ動いて、とうとう布団から顔を出した。少し息苦しかったのも解消されて、いい感じ。だった。
そこまでは良かったんだよ。でも次の瞬間には、ちょっとげんなり。何でかって、布団から顔を出したら、目が合ったからだよ。この部屋の主と。
「………………」
「………………」
お互いに見つめ合って、でも何も言わないまま時間が流れていく。向こうもちょうど寝起きだったのか、寝ぼけ眼でボヤーッとした感じ。
私はそんな彼女に、3回くらい瞬きをしてから、軽く溜息を吐いて、顔をちょっとだけ顰めて言ってやった。
「あのさぁー……」
「起きてすぐの一言がそれってどういうことですの貴女」
カーテンが日差しを遮って、少し暗い部屋の中で迎えた朝。先輩のツッコミは、寝起きでも冴え渡っていた。
ベッドから起きて、部屋に戻って着替えて、一階のリビングに下りる。今日は休日だから、わざわざ制服に着替えることもない…と、思ったんだけど…。
「なんで休みなのに制服着てるわけさ、私達は」
朝飯のバターロールをもしゃもしゃ食べながら、先輩に聞く。登校日じゃないのに制服って、なんか窮屈でなぁ。
「何処を調査しても、問題の無いようにしなくてはいけないでしょう。妙な噂のある場所が、例えば会社のあるビルだったり、学校内だったりした日にはどうしますか」
「だから私服じゃダメだって?」
「そう。制服なら、そういった場に入ったとしても、不審者と見なされることはないと思います。多分」
「私服姿の女の子が複数人でゾロゾロ来るよりは、まぁ印象は良いか…」
納得したところで、朝飯に集中する。インスタントのポタージュを啜ると、腹に暖かい感覚が広がって心地良い。
「そういえば」
「ん?」
「なんか、甘えんぼな感じでしたわね」
「何が。つか、誰が?」
「貴女。夜中にちょっと目が覚めたんですけど、そしたら赤さんが既にこう、ひしっと…」
「あー」
ベッドでの話か。寝相かなんかで偶然そうなったんでしょ。私は甘えたなんかじゃないし、寂しいわけでもないし。嘘じゃない。本当だぞ!
「まぁ、人間色々ですものね。人肌恋しくなる時だってありますわよ」
「ちげーよ、バーカ」
「あら、悪いお口」
軽口を叩き合いながら、朝食を済ませていく。いつもなら、休みの日は各々好きに過ごすから、こうやって揃って朝飯を食べることなんてない。だから、ちょっと変な感じ。
飯を食べ終わって、身支度を整えた私達は、外へ出た。予定じゃ、今日は一日中うわさの調査ってことになってる。今回はまず、最初に集まる場所を決めておいたから、そこへ向かう。
「くぁ…」
「欠伸。まだおねむです?」
「普段はさ、こんな早く起きないし。休日は」
「もう少し遅いですものね、お互いに」
歩きながら話す。昨日はそこまで夜更かししたつもりはないんだけどなぁ。日付が変わる頃くらいには寝たし。まぁ、慣れないことしたからってことなのかな。
「ですが、こうでもしなければ、一日の間に長く調査することは出来ませんわ。我慢なさって」
「ま、しゃーねーな」
こうすることは、既に決まってたこと。今更それに対して、声を荒げて文句言うような困ったちゃんになったつもりはない。
目指すのは中央区。ちゃっちゃと行こうってことで、少し歩く速度を早めて、駅に向かった。
電車にちょっとの間揺られて、中央区に到着。そこから更に歩いて、待ち合わせ場所の喫茶店へ。事前に店の場所は調べておいたし、迷わないように地図も確認しておいたから、問題なく辿り着いた。
「あー!せんぱーい、赤ちーん!おっすー!」
「デケーの、声が」
「お元気でよろしいかと」
マジ子のやつ、どうやら先に来てたらしい。私達を呼ぶデカい声の元を探ると、オープンテラスの席に陣取ってるのを見つけた。すぐに入店して、私達もその席に座る。
「おはよ!や、アタシ、待ちきれなくてさー。めっちゃ早く来ちゃってたんだー。」
「それはまた…。じゃあ、お待たせしてしまいましたかね」
「んーん、だいじょぶ。ドーガ見たりしてたから。あ、二人も見る?さゆさゆのやつ」
「や、いいから」
マジ子がスマホを取り出して、私達に何かを見せようとしたのを止める。つか、さゆさゆって何よ?
「えー、マジで可愛いのに。刀剣愛ドルのさゆさゆ」
「なんて?」
「確か、神浜でアイドルをやっている方ですわよ。私、学校で何度か見かけたことがあります」
「マジで!話したりした?」
「流石にそこまでは。ファンというわけでもないので」
「そっかぁー。あ、じゃあさ。今度みんなで、さゆさゆの曲聴いてみる?国宝ハイエンドとか、結構アガるしさー」
アイドルの話をする二人を、頬杖ついて眺める。私はそこんとこに疎いから、話に入れないんだよなー。服とかもそうだけど。
「もうその辺にしとけ。時間なくなるって」
「あ、そっか。調べんだよね」
「ええ。じゃあ、その話をしましょうか」
目的を忘れたんじゃ、こうやって朝っぱらから集まった意味が無い。適当なところで声をかけて、本題に入った。
「今日は予定していた通り、うわさ及び、その発信源の調査を行います。出来ることなら、神浜全域を調べるのが望ましいですわね」
「ってことは」
「今回は、バラバラになって動いてみようと思います。そして最後には集まって、成果を報告し合う。そう考えてますわ」
全員が固まって調べるよりも、散ってそれぞれが情報を仕入れてこようってことか。いいんじゃないかな。
「ハイ!たいちょー!」
「ん。どうぞ、マジ子さん」
マジ子が勢い良く挙手。隊長ってのは、先輩のことか。まぁ、間違っちゃいないかも。
「オヤツは何円までですか!」
遠足じゃねーんだよ、このバカ。
「………まぁ、お小遣いの許す限りは」
「マジか!やったー」
律儀に答えなくてもいいと思うよ、先輩…。
なんか不安だなぁ。こいつ、まともに調査なんてしてくるのか…?水名に行った時みたいに、最後には遊んでばっかになるんじゃ…。
「先輩、マジ子に付いてやったら?」
「え、赤さん?」
「なんかやらかしそうでアレだし。じゃあ、誰かが見てやった方がいいだろ」
「それは…なんとなく分かりますけど」
「ん?どゆこと?」
私に言われて、先輩がマジ子をチラッと見る。いまいち話を理解できてないのか、マジ子のやつは頭に?を浮かべてるけど。
「でも、いいんですの?貴女だけ一人ですわよ?」
「いいよ。たまには、そんな時間も欲しいから」
「ええ…?いや、赤さんがそれでいいならいいんですけど…」
「ね、ね!なに?ねー、二人ともなんの話してんの?」
「お前が頼りになるから、先輩を助けてやってくれってこと」
「え、マジで!?アタシ頼りになる!?役に立つ!?」
「あーなるなる。すっごいなる。なりすぎて死にそう」
「え〜…?マジかぁ…」
明らかに適当に答えたのが丸分かりなのに、言われた本人は嬉しそうにニヤニヤしてる。お前、いいんか それで…。
「じゃあ、これで決まりですかね。早速始めましょうか」
「ん。なら、こっからは別行動ってことでオッケー?」
「え、あ、はい。そうなりますかね?」
「そっか。じゃ、私行くわ。とりあえず、大東辺りから調べてみる」
調査開始ってことになったから、席を立つ。調べる区が被っても困るし、行き先は言っておく。
「え、なんか食べてかないの?」
「朝飯は食ったし、スイーツだコーヒーだって気分でもないから」
「気を付けて下さいね?東に行くんですから、特に」
「その東にある学校に通ってんだよ。大丈夫だって」
「それと、連絡は入れて下さいね。お昼には、一旦集まろうと思ってますから」
「はいよ」
「後は、魔女。一人になるんですから、決して無茶しないように。誰かと協力して倒して下さいね」
「へーへー」
「それから、えーと…あ、ハンカチとティッシュ。それと、怪しい人に付いていっては」
「あーもう、分かりましたよって!」
いや、親かよ。それも小さい子供の。もう中三なの、私は。そんなこと一々言ってもらわなくたって分かってんだって、もー…。
煩わしくなって、さっさと席を離れる。そのまま二人に背中を向けて、店の出口を目指そうとしたところで、私は足を止めた。
「………………」
これから、私は一人になる。不安なわけじゃない。仮に何かあっても、先輩に言われた通り 無茶をするつもりはないし、本当にいざとなったら、潔く二人に合流しようって考えてもいる。
問題は、先輩とマジ子だ。幾ら二人だっつっても、うわさを調べる以上は、何があるか分かんないわけだし。それこそ、また怪物が現れでもしたら、今度こそ終わりかもしれないわけで…。
そう考えたら、こう…一言、声を掛けておくべきかなって思った。注意喚起っていうか。
「っ………」
そうしようと思って振り返ったけど、そこで私は迷っちまった。二人は高校生。私より歳上なんだ。だったら、危険な状況になれば分かるだろうし、何より先輩が付いてるからなぁ。だから、なんか…。
「んー………」
「赤さん、どうしました?」
「なんか忘れもの?」
考えてばっかで、何も言えないでいる私を不思議がったのか、先輩とマジ子が話しかけてきた。ジーッと見てくるもんだから、益々言いづらい。そりゃ見るだろうけども。
「あー…えー、あの…」
「はい」
「………いや、やっぱいい」
散々言い淀んで、結局折れた。気軽に「そっちも気を付けろ」とかなんとか言うだけで終わりだろ。なのに、何でそれが出来ないんだ私は。
もういいやって諦めて、今度こそ店を出ようと、踵を返した。
「赤さん!」
「……………」
そしたら、ちょっと大きい声で、先輩に呼ばれた。顔だけを後ろに向ける。
「そういうとこですわよ、貴女」
ちょっと怒ったような顔の先輩に、そんなことを言われた。そういうとこってなんだ。何がしたいのか、はっきりしない態度だったのは確かだけどさ。
先輩の言葉の意味を理解できないまま、私は店を出た。目指すは大東区。とにかく調査は始まったんだから、今はそっちに集中することにした。
マギレコ本編の出来事
・朝起きると、枕元に紙がいっぱいで驚いたいろは。急いでみかづき荘を訪れ、やちよに助けを求める。やちよ は いろはから話を聞き、参京区を二手に分かれて調べることに。また紙が降ってきて、そこには10と書かれていた。