足フェチの真っ黄ウスが実装されたので初投稿です。
大東区。神浜市の東側に位置してる区で、近くには工匠区がある。私の通ってる大東学院も、ここ。まぁ、読んで字の如くだし。
人の集まる神浜市らしく、住宅やらなんやらが所狭しって感じで建ってる。まだこの街に来たばっかりの頃は、学校の場所を確認するついでにブラついたりしたっけなぁ。
ただ、あんまり良い話は聞かない所でもある。それは、神浜って土地に住んでる人なら、誰でも知ってることだと思うけど。
(どっから手ぇ付けっかなー)
人から話を聞くのは当然なんだけど、休みの日の朝ってことで、通行人はそんなに多くない。居てもスーツ姿だったり、制服を着てたりする。休日出勤とか、部活とかなのかなぁ。
(あえて、全く人気の無い場所に行ってみるとか?)
謎の女の子と、神社の怪物。あいつらが出てきた時には、周りには私達以外誰も居なかった。噂話の発信源とやらが存在するとして、そいつはもしかしたら、怪物は人目の付かない場所に置いておきたいのかもしれない。目的は分からないけど。
いやー、でもなぁ。夜の神社はともかく、海浜公園なんて誰でも来る所なんだし、ちょっと苦しいか…?
「頭だけ動かしてもしゃーなしだな」
行きがけにコンビニで買った紙パックのジュースを飲み干したところで、私は足早に歩みを進める。目指すのは、一際 人気の無いところ。
特に具体的な場所を決めてるわけじゃないけど、こう…あわよくば、発信源を見つけるなり、出くわすなり出来るかもしれないし。
まぁ、その……なんだろう。つまりは、ほぼノープランだった。
はい、特に何もありませんでしたー。
「いやぁ、うん…分かってたことだよなぁ…」
路地裏でボソッと独り言。何か言ってくれる人なんて居るわけもなく、私の言葉は、薄暗い空間に溶けていった。
何箇所か人の居ない場所を探ってはみたけど、特に何も無し。たまーに使い魔に遭遇したから、それはサクッと倒させてもらったけど、それくらいだった。
(やっぱ人に話、聞くべきだったよなぁ…)
誰にでも用事ってもんがあるんだから、拒否られたり、苦い顔の一つもされたりはしたかもしれない。でも、少なくともこうして無駄足を踏むよりは、有意義な調査になったと思う。
私って人は、ガラは悪いクセに、どうしてこういう時は妙にチキンなのか。我ながら情けない。
「次、どうすっかなー」
クラスメイトが話してた、観覧車の見える草原まで足を伸ばしてみようか。私は行ったことないし、探検も兼ねて。
それか、まやかし町って呼ばれてる場所に行ってみるのもいいかも。理由も無しにそんな通称…俗称?どっちでもいいけど、そんな名前が付くわけないんだし、調べる価値はありそう。
(でも、こっからはちょっと遠いか…)
まだ朝だっつっても、移動すればその分時間は経つ。限りあるものを大事に使うんなら、あんまり大東区に居座るのもよくないか。
「とりあえず、こっからは出るかぁ」
いつまでも暗い場所に居ると、なんか気分まで落ちてくるような、そうでないような。ま、とりあえず仕切り直しかな。
そうやって、路地裏の出口まで歩いてきた私だったけど、突然、魔女の反応を感じ取って、立ち止まった。
(っ!魔女か!?)
だけど、そう思った次の瞬間には、反応は既に遠ざかってた。どうも、ちょうど私の目の前を通り過ぎていったらしい。
「無視するわけにもな…!」
グリーフシードのこともあるから、ここは追いかけて…と思ったら、今度は足音と話し声が聞こえてきた。しかも、魔力の反応がある。それも複数。ってことは、魔法少女のチームか?
私は咄嗟に後ずさって、屈んで身を隠した。一般人ならともかく、魔法少女相手なら、こう…色々と面倒な部分もあるかもだし。
『魔女の位置は!』
『真っ直ぐ逃げてる!』
『じゃあ、二手に分かれよう。そうやって追い込む!…いいですか?』
『うん。いいと思う』
話してる魔法少女達の様子を、路地裏の少し奥から伺う。話に集中してるからか、私に気付いてはいないみたい。体を低くしてるのと、路地裏の暗さにも助けられたかな。
(四人組…。見たことないやつらだけど、大東の魔法少女なんかな)
この地区で活動してるってことは、そうなのか。もしくはパトロールとか?にしたって、こんな朝からかよ。
『じゃあ、散開!連絡は細かく取り合って!』
『そっちも気ぃ付けて!ホラ、行くよ!』
『わかった…』
その内に魔法少女達は二手に分かれて、何処かに行っちまった。誰も居なくなったところで、今度こそ路地裏から出る。太陽の光が眩しい。
「……………」
魔女が逃げてった方を見つめて、考える。自分はあくまで調査中。でも、相手は魔女。魔法少女が倒すべき相手。
でも、その魔女を追う魔法少女達が居るのが分かったんだから、任せても別に問題は無いと思う。万が一の事を考えて、あの子達に協力するって選択肢もあるけど、グリーフシードの所有権で揉めるかもってのもあるし。
(…噂話を知らないか、聞かせてもらうってことも出来るかな)
それはそれで、私が変な目で見られる可能性もあるけど。でもまぁ、その時は必要経費だとでも思って、我慢するしかないか…。あれだ。聞くは一時の恥って言うじゃない。
(ぜってー意味違うよ…)
こんなんじゃ、マジ子のことを言えない。自分にちょっと呆れながら、魔女と魔法少女達を追いかけることにした。
「ここか…」
反応を追いかけて少しの間走った結果、公園に辿り着いた。見知らぬ四人組は、魔女を上手いこと ここに追い込んだらしい。私が移動してる最中にはもう、魔女の反応が動くことはなくなってた。
(反応はあるのに、特に何も見当たらない。…ってことは)
もう少しだけ注意深く反応を探って、公園内をうろうろ。そしたら思った通り、結界を見つけた。魔法少女の魔力もはっきり感じる。さっきの子達が戦ってるんだ。
(んー…特に苦戦してる感じはしないかな…)
魔女の反応がどんどん弱ってきてる。こりゃ、結界が消滅するのも時間の問題かな。一応私も助太刀にと思ったけど、必要無さそう。
(ま、いいわな)
それならそれで、話を聞かせてもらう方向でいくだけだから。反応を追ってきた風に装って、出来る限り友好的な態度で接する。多少怪しまれても、そこは何とかゴリ押すしかない。
一先ずプランは決定したけど、そうすると、私がここに居るのはまずい。魔女が倒されない内に、急いで公園から離れる。
幸い、近くには建物だらけで、外壁で身を隠しながら様子を伺うには打ってつけだった。
(…………)
公園から一番近い建物まで移動して、壁を背にしながら公園を覗く。結界のある場所を注視して、四人組の魔法少女が出てくるのを待つ。
(お?)
そうしてる内に、魔女の反応はどんどん弱くなっていって、終いには結界が消滅した。それと同時に人影が四つ現れたのを見て、私は、魔女が倒されたんだってのを理解した。
『ふぅ…。終わったぁ』
『つっかれたぁー…。でも、なんかあんまり強くなかったよね?』
『ねー。私、ちょっと拍子抜けかも。あ、グリーフシードはっと…』
『…』
一仕事終えて、変身を解いた魔法少女達が喋ってる。話を聞く限り、魔女はそんなでもなかったみたい。四人がかりなのもあって、楽勝だったんだろうな。
『あったあった。ねー、リーダー。このグリーフシード、どうしよっか』
『あ、うん。使ってもいいけど…。誰か、ソウルジェム危ない人居る?』
『私は別にだいじょぶだよー』
『あたしもー。リーダーは?』
『私も、使う程じゃないかな…』
『そっちはどう?ちょっと見してみ?』
『…』
サクッと倒せてすぐに終わったから、グリーフシードはそんなに濁ってないってことなのかな。結構なことじゃない。
とりあえず、あの子達のお陰で魔女は倒されて、戦闘は終わったんだ。なら、今こそ作戦を決行する時ってことだな。
(おし、行くぞー…。せーの、ね。せーので行くぞ、せーので…)
多人数の中に突っ込んでいくってことで、ちょっと緊張する。二回ほど深呼吸。
(大丈夫、簡単だって。ちょーっと、急いで走ってきたフリしながら割り込んでくだけだから…)
駆け出す準備はOK。後は思い切って建物から離れて、再び公園へGOするのみ。
(じゃ、やるぞー…。せー……の!)
作戦スタート。私は勢い良く駆け出した。
『あれ!?なんか、この人のだけやたら濁ってるじゃん!』
『え、うっそ、見して見して!』
『マジだって、ホラ!』
(!?)
その直後に突然大声が聞こえて、ズザッと音を立てながら、足を止めた。あの、作戦始まったばっかりなんですけど…。何事かと思って、再度、四人組の会話に耳を傾ける。
『あー、マジじゃん。すっげー濁ってる』
『…』
『ね、リーダー。もしかしてあたしらさー、またお節介焼かれた?』
『あー、そういやこの人、さっきもやたら魔女引き付けたりしてたかも。つか、ボコってたのもほぼこの人じゃなかった?』
『あー…言われてみれば、なんか…』
『使い魔も魔女も弱っちいなーって思ったけど、それってこの人がめっちゃ戦って、弱らせてたからなんじゃ…』
『それだよ絶対!魔女にトドメ差したのもこの人だもん!』
『…はぁぁぁぁぁ……また、このパターンかぁ……』
『…………』
んん…?何か、空気悪くなってきたような…。リーダーって呼ばれてる子に至っては、今にでもキレそうな雰囲気だし…。
『あの。私、言いましたよね?』
『うん…』
『貴女が率先して戦ってばかりだと、私達が経験を積めないからやめてって、言いましたよね!?』
『………うん』
『や、うん じゃなくてさ』
『まーたこの流れ〜?もう何回目よ?』
案の定、リーダーの子が怒り出した。しかも、他のメンバー二人も一緒になって、残りの一人を責め始めてる。揉め事になっちまったかぁ…。これじゃ、話なんて聞けないかも…。
『分かってたんなら、なんで言う通りにしてくれなかったんですか!』
『……心配だった』
『は?』
『私がやれば、三人が危ない目に遭うことないって、思ったから…』
『だから、それがお節介だってんじゃん』
『………』
『最年長だからってさー、なんか過保護っぽいんだよね。いっつもさ』
『…………』
三人から責められてる魔法少女はどうも、チームの中で一番の年長らしい。そう言われれば、雰囲気も大人っぽいし、背も一番高いな…。
『貴女が私達を心配して、色々と気を遣ってくれてるのは分かりますし、感謝もしてます。敵を攻撃することに集中し過ぎて、貴女が積極的に前に出ていることに気付かなかった私達にも、非はあるかもしれません。でも…』
『………』
『でも、毎回毎回こんなんじゃ、私達、いつまで経っても強くなれないじゃないですか!普通の人達を、魔女や使い魔から守るのが、魔法少女の使命なのに!』
『………』
『その為に私達、強くならなきゃいけないのに…』
『………』
『なのに貴女が、そうやっていっつもいっつも、一人でやっつけて…!』
『たった一人におんぶに抱っこじゃ、チームの意味、無いじゃないですか!』
『………』
あぁ…。リーダーさん、爆発しちゃったよ…。年長さんも言われっぱなしで、黙っちゃってるし…。
要するにあの四人組は、年長さんによるワンマンチームになっちゃってて、リーダーさんとしては、それがすっげえ嫌だったって話なのかね。
『ぶっちゃけさー、あたしらもそれ、気になってたっつーか』
『わかる。優しいんだけどさぁ、こっちを気にかけすぎって感じで、なんか…』
『………』
『…二人もこう言ってます。お節介をし過ぎるんですよ、貴女は』
『………そっか』
『……今まではずっと、この人はこういう人だからって、私達もなんとか我慢してきました。でも…』
『…?』
『でも、もう限界かもしれません』
ん。あれ、なんか不味くないかこれ。
本人にそのつもりはなかったとはいえ、年長さんは言うなれば、チームの和を乱してたってことで、それはリーダーさんだけじゃなくて、他のメンバーも不満に思ってたことで…。
で、その不満が限界を突破して盛大に爆発した今、次にやることったら…
『貴女には、チームから抜けてもらいます』
(あぁ……)
…当然、和を乱す原因の排除。要するに、クビにするってことだ。
(そりゃあ、そうなるか…)
なんてこったよ。私はただ、噂話を調べる為に、あの子達に話を聞こうと思っただけ。なのにまさか、一人の魔法少女が今まさに、チームから追放されるところを目撃することになるなんて…。
『……………』
チームのリーダーから直々にクビを宣告された年長さんは、何も言わない。こうなるって薄々分かってたのか、それとも、ショックが大き過ぎて、何も言えないのか…。
『…ごめんなさい。でも、私は…』
『大丈夫……。私も、ごめんなさい』
『…………』
『…………』
リーダーさんと年長さんが、お互いに謝った。その後は一言も無しで、お互い、気まずそうにしてばっかり。
でも、私には何となく分かった。今のごめんなさいで、年長さんは三人と別れて、チームから完全に切り離されてしまったんだってことを。
『じゃあ…私達、その…行きます』
『ん…』
『なってみせますから。私達。神浜の平和を守れる、立派な魔法少女に…』
『………頑張って』
『今まで、ありがとうございました。……行こう、二人とも』
『え、あ、うん…』
『えっとー、あの……じゃあね』
『……………』
リーダーさんと他のメンバー達は、年長さんに最後の別れの言葉を告げて、公園から去っていった。残されたのは、独りになっちまった魔法少女と、それを見つめる私だけ。
『……………………』
しばらく三人を見送ってた様子の年長さんは、その内ゆっくりと動き出して、公園に設置されたベンチに、静かに座った。
『……………………………はぁ』
少し項垂れて、短い溜息。あれは、ショックを受けてるってことでいいのか…?
「はぁぁぁ……」
私も溜息を吐く。どうにも気まずい現場を見ちまったけど、一応、作戦を再開できる状況にはなったわけだ。話しかけに行くか…?
(でもなぁ…傷心してるかもしれないよな、あの人…)
悲しいこと、辛いことがあって、だからこそ放っておいてほしい時ってのは、誰にでもある。あの年長さんは今、丁度そんな気分なんじゃ…?
(……でも、こういう時って、誰かに話してみるだけでも、結構楽になるっていうよな…)
そう考えてから、私は今度こそ、公園に向かって歩き出す。
うわさに関する情報を集める。その目的を忘れたわけじゃない。あくまでも、ついで。調査のついでとして、あの人の話を聞いてみようって、そう思っただけ。
同じ魔法少女の私がただ話を聞いて、それであの人が勝手に楽になってくれたら、他の話もしやすくなるかもって、そう考えてるだけ。
私には、優しさとかそういうの、似合わないんだから。
公園の中に入る。放心してるのか、ベンチに座って微動だにしない魔法少女に向かって、私は話しかけた。
マギレコ本編の出来事
・給水屋が居た場所にて、フェリシアと再会したいろは。話をしていると、9と書いた紙が落ちてくる。紙のこと、うわさのことを一緒に調べないかと提案するも、フェリシアは興味が無いとバッサリ斬り捨て、去っていこうとする。引き止めるいろはに対し、フェリシアは何らかの形での報酬を要求。
いろはがフェリシアにご飯を作ってあげることを報酬として、二人の契約が成立した。