知られることのない話   作:まるイワ

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復刻イベ後半が開始されたので初投稿です。





4-5 赤き者への罰

 

 

 

「なるほど。じゃ、アレすか。組んでからは割と短いっていうか…」

 

「ん…。多分、半年もいってない」

 

「あー…それは…」

 

 

隣に座る年長さんが話して、私がそれを聞いて、相槌を打つ。ただ、こういうのって、生まれてから今まで経験したことなんてないからなぁ…。上手いことやれてるかどうか、いまいち自信が…。

 

 

「…でも、楽しかった」

 

「あ、そうなんすね。じゃあ、まぁ、少しはよかったんじゃ」

 

「私だけ、かも。楽しかったの…」

 

「ん、んー……まぁ、うん。それは、ね?んん…」

 

「…………」

 

「あのー………はい」

 

「ん………」

 

 

これだもの…。まさか、ただ話を聞くってのが、こんなに難しいと思わなかった。なんつーか、私の相槌って下手過ぎない?てか、これ相槌になってんの?

 

 

(この人も困ってないかなーこれ…。話聞くっつっといて何だこいつ、みたいな…)

 

 

ちょっと前、もう一回公園に入った私は、ベンチに座る年長さんに話しかけた。幸い、警戒心とか不信感とかを持たれることはなくて、ちょっと不思議そうにされたくらい。

 

「自分も魔法少女なんですけど、偶然揉めてるとこ見かけちゃってー」なんて白々しいことブッこいて、どうにか詳しい話を聞かせてもらおうとする。そしたら年長さんはちょっと考えてたけど、最終的にはOKが貰えた。貰えたんだけど…

 

 

(聞く側の私がこんなんじゃあなぁ…)

 

 

別に他人と話すのが苦手ってわけでもないのに、上手くいかない。おかしいなぁ。ただ話を聞くだけなのが、こんなに難しいもんかな。

 

あれかな。ショッキングな出来事があった直後の人を相手にしてるからってのもあるのか。そんで、私が遠慮がちになっちゃって、上手くいかないとか…?

 

 

(先輩とかマジ子とかも、沈んでる時ってあったけど、そういう時って基本触れないし、本人が話さない内は放っとくからなー…)

 

 

でも、そういうやり方が出来るのはこう…知己っていうか、付き合いのある仲みたいな感じだからであって、初対面の年長さん相手にやることじゃないと思うし…。くそ、難しいな。

 

 

「あの……大丈夫?」

 

「え」

 

「難しそうな顔、してるから…」

 

「あ…。あぁー。や、別にそんな。何も無いっすから。はい…」

 

「そう…?」

 

「はい…」

 

 

顔に出ちゃってたか…。ダメだな。こんなんじゃ、いつまで経っても噂話について聞き出すとこまで行けねえや。私からも話題を出していくくらいでなきゃダメか…!

 

 

「…えーと、あのー。つか、アレっすね?さっきの子達も、ちょっと酷いってか」

 

「…?」

 

「リーダーっぽい子は、『助けてもらってばっかで成長できない』とかなんとか言ってましたけど、にしたってホラ、助けてもらったのも事実なんだから」

 

「……」

 

「だったら、あんなキツくあたることなくないすか?」

 

「…そう、かな」

 

「そっすよ。他のメンバーにしたって、『余計なことしやがって』みたいに言ってさ。なんか、感じ悪いっつーのか…」

 

「………」

 

 

とりあえず、年長さんを追い出して、どっか行っちゃった三人のことを話してみた。話題がそれくらいしか見つからなかったってのもあるけど、私自身、あの人らの態度とか言葉に、思うとこが無かったわけじゃないし。

 

上昇志向があるのは結構。でも、強くなれないのを、年長さん一人の所為にするのはどうなんだ。誰かがヘマしたり、言い合いになることなんてしょっちゅうなチームに居る身で言うのもなんだけど、それは良くないって。

 

 

「えっと……ダメ」

 

「え」

 

「ダメ。そんなこと、言っちゃ…」

 

「あ、はい…」

 

 

ダメって言われた。流石に、初対面のクセに口が過ぎたかな…。側から見てたに過ぎない私からしたらアレでも、年長さんにとっては仲間だった人達だもんなぁ。そりゃ良い気はしないか…。

 

 

「すんません……その、生意気言って」

 

「ん……。でも、ありがとう」

 

「ありがとって…。どうして?」

 

「…慰めて、くれたのかなって。私のこと」

 

「あー…別に、そんなんじゃ…。や、ほんと…」

 

「………そっか」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

注意されたかと思ったら、今度は感謝されちまった。私には目的があって、その為にあんたに近付いただけで…。なのに、礼なんて言われちゃあ、なんていうか……罪悪感。

 

 

「私が、悪いんだと思うから」

 

「うぇ?」

 

 

やべ、変な声出た。いきなり沈黙破ってくるんだもん、この人。

 

 

「あの子達、言ってたよね…。過保護って」

 

「それは……はい」

 

「昔っから、そう。何でもしてあげたくなって…。仲、良い人には」

 

「あー…」

 

 

そういうことか。年長者だからって、義務感やら使命感やらに駆られてたんじゃない。単に年長さんが、そういう性分の人ってことなんだ。

 

 

「…それ、組んだ時からずっと?」

 

「ん…。今まで、ずっと」

 

 

私の質問に、年長さんが短く答える。

 

 

「やめようって、思った。でも…」

 

「どうしても心配だった?」

 

「ん…。苦戦、してたし。初めて会った時も」

 

「ああ、なるほど。それが縁で組んだんすね」

 

「そう。そこから仲良くなって、大事になってって…」

 

 

だから、余計に世話を焼くようになっちまったと。で、それが何日、何週、何ヶ月って続くもんだから、リーダーさん達は、とうとう嫌気が差したって感じか。

 

 

「だからって、言い方ってのがあると思うんすけど…。あんなハッキリ言います?邪魔だから抜けろとかって…」

 

「リーダー、すごく真面目だから…。多分、直球勝負しなきゃって、思ってた」

 

「真面目」

 

「ん…。しかも、頑張り屋さん。今日、張り切ってた。朝からパトロールして、経験積むって」

 

 

そりゃまた、ご苦労な。魔女にしろ使い魔にしろ、活発になるのは主に日が傾いてからなのに、わざわざ朝からってのは相当だな。まぁ、さっき遭遇したんだし、居ないわけじゃないんだろうけど。

 

 

「でも、いいんすか。これで」

 

「何回言われてもやめなかったの、私だから…」

 

「…そっすか」

 

「立派に…なれると思う。私が、居なくても」

 

「………」

 

「でも…寂しいかな。もう、してあげられないから。何にも…」

 

 

そう言って、年長さんは顔を俯かせた。表情はさっきから変わらないけど、やっぱ、内心じゃ凹んでんのかな…。

 

 

「楽しかった。あと、嬉しかった。チーム組むの、初めてだったから」

 

「うん……」

 

「皆で、遊んだりした…。ご飯食べたり、たまにお泊まり会とか、したり……」

 

「………」

 

「……何で、こうなっちゃったのかな。…ダメだな、私……」

 

「………………」

 

 

私の推測は当たったらしい。でも、それくらい好きだったんだよな。チームのことも、チームメイトのことも。だから、すっげえ辛くなって…。

 

 

(これ…やめた方がいいよな。もう…)

 

 

私が甘かったんだ。色々ブチ撒けて楽になってもらって、そのまま調査に協力してもらおうなんてさ。

 

思い入れが深い程、失くした時のショックも大きい。そんなデカい気持ち、その場で吐き出し切れるわけないのに。一人で傷に向き合う時間も、整理する時間も必要なのに。

 

自分は母親を失って、それを嫌ってくらい思い知ってる身なのに、それを忘れちまって…。悪い奴だ、私…。

 

 

「………ん」

 

「………?」

 

 

私はベンチから立ち上がって、年長さんにグリーフシードを渡す。私はもう、この作戦を続行する気にはなれない。なら、すぐにここから立ち去った方がいいんだ。

 

でもその前に、謝罪の意味も込めて、何かしてやりたかった。その為のグリーフシードだ。

 

 

「それ、いつか使って下さい」

 

「え、でも…」

 

「辛いこと話させちゃって、すんませんでした」

 

 

年長さんに頭を下げてから、背中を向ける。そのまま、公園の出口に向かって歩き出した。

 

 

「あ……。あの、待って…」

 

「………」

 

「えっと……ありがとう。話、聞いてくれて……」

 

「………」

 

「あと、グリーフシードも…」

 

 

またお礼を言われちまって、思わず足が止まった。やめてよ、そんなの。私は別に、純粋な気持ちで近付いたわけじゃないんだから。

 

感謝されてるはずなのに、なんか、すごい悪いことしてる気分になる。いや、むしろこの気持ちが、私への罰なのか…。

 

 

「あんたさ、良い人だよ」

 

「…?」

 

「だけど、あいつらとは合わなかった。そんだけだって。あんたは悪くない」

 

「……」

 

「もし、またチーム組みたいとかだったらさ。探しなよ。あんたに合う人」

 

「……できるかな、私…」

 

「できるよ。私みたいなのでも組めてるんだから、あんたなら…」

 

「………………」

 

 

背中は年長さんに向けたまま、私はそう話した。無責任かもしれないけど、何か言ってやれたらって、思ったから。

 

 

「………………………あの」

 

「なに」

 

「貴女は、どうするの。これから…」

 

「それは、どうして?」

 

「えっと……知りたい、から…」

 

「そう…」

 

 

ちょっとの沈黙の後に、質問。それに答えるのは、全然構わない。年長さんに色々話させちゃったことに比べりゃあ、だいぶ安いし。

 

 

「どうする、かぁ。どうすっかなぁー…。とりあえず、学校とか行ってみようかな…」

 

「学校」

 

「そう。大東学院。まぁ今日は休日だけど、誰かしら居るんじゃない。部活とかで」

 

「そっか…」

 

 

答えながら、次の目的地を決める。今回の作戦は失敗したけど、それで調査が終わったわけじゃない。なら、とっとと次の行動を起こさなくちゃダメだよな。

 

 

「まぁ…そういうわけだからさ。私、もう行くよ。いきなり来て、勝手なこといっぱい言って、ごめ…」

 

 

そう言いながら、後ろを振り向く。これで、私と年長さんの話は終わり。最後に、ちゃんと顔を見ながら謝ろうって振り向いたら、案の定年長さんの姿が見えた。

 

 

うん……。見えたんだけど……

 

 

 

「…………」

 

「……………あのー……?」

 

 

 

や、近いな!?

 

なんか、いつの間にかメッチャ近いとこに居るんだけど…。相変わらずの無表情で、こっちを見下ろしてる。

 

てか、さっきはお互い座ってたから分からなかったけど、この人こんな背ぇ高いんかよ。いや、私が小さ過ぎるのか…?

 

 

「えっと……なに…いや。なん、すか…?」

 

「……………」

 

 

まだ何か用事があるのかと思って、聞いてみる。心なしか圧力を感じて、おっかなびっくりになっちまった。

 

そしたら私の手を年長さんが握ってきたもんだから、ちょっとビクッとした。や、今度は何だよ…!?

 

 

「駐車場、行こ」

 

「は?」

 

 

はい?駐車場?うん、待って。どゆこと、さっきから。ねぇ、とりあえず説明とか、こう…ね?しよ?して?して下さい。

 

 

「行こ」

 

「お"っ」

 

 

うわ、また変な声出た。でも、しょうがないんだって。だって、年長さんが有無を言わさず引っ張ってくんだもん。私を!

 

 

「あ、ちょ、ね、ねぇ!ちょ、待って!待って下さい!あの、一旦!一旦!一旦落ち着きましょうよ、一旦!ね!?」

 

 

私の懇願も空しく、ズンズン、ズンズンと道を進みまくる。いや、つーか強っ!力強っ、この人!

 

 

「あ、そうだ」

 

「はい!?」

 

「話し方、無理して、丁寧語っぽくしなくても…。貴女の、普段通りでいいから」

 

「丁寧語ぉ!?」

 

「途中から口調、変わってた。そっち、素なのかなって」

 

 

あ、そういやぁそうだったような…。別に、無理してたって訳でもないんだけどな。歳上相手なんだしさ…。いや、そんなことはどうでもいいんだってば!

 

 

「だからね?何で駐車場とか、何で近かったのとか、その辺の説明をさ!」

 

「それに、その方が私、嬉しいから…」

 

「あ、そうですかぁー!じゃ遠慮なくタメ口でっつーかそうじゃなくて、だからぁー!」

 

 

言葉が聞き届けられることはなく、私は只々、歳上の女性に引っ張られていった。

 

 

 

 

 

 

あぁ…そっかぁ…。今、分かったぞ。

 

私は理解した。これだ。これなんだと。

 

この、側から見れば如何にも珍妙で滑稽な絵面。これに叩き込まれたことこそが、私という者へ下された、本当の罰なんだと…。

 

 

 






マギレコ本編の出来事

・フェリシアにうわさのことを説明するも、信じてもらえない いろは。「もぅー…」と可愛くむくれる。やちよと合流しようと考えた矢先、魔女の反応を感知したフェリシアは、走り出して行ってしまった。

いろはも後を追い、フェリシアと共に魔女の結界へ。豹変した様子で使い魔を蹴散らすフェリシアに困惑しながらも、結界の奥へ進んだ。

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