「つーかさ」
「はい」
「さっき使い魔にぶつけられたんすけど」
「あらそうなの」
「引き付けるっつったなぁ!あんたなぁ!?」
「道中のものならともかく、魔女の近くに居るやつをどうこう出来るわけがないでしょう」
正論だ。何か言い返そうとしたけど、この場所に来る前、先輩に「なーに、すぐ倒してやるって!待っとけ!」とか自信たっぷりに言っといてこのザマなもんだから、何も言えない。滅茶苦茶に恥ずかしくなって、唸るだけで終わった。顔が熱い。
先輩はそんな私を見て色々と察したのか、それ以上特に何も言ってこない。でも、口元のニヨニヨとした笑みを隠しきれてない。この女…。
「ま、でも…」
「うん?」
「…助かった。ちょっと心配もしてた。……ありがと」
目を逸らしながら感謝する。癪だけど助けてもらったんだし、礼は言わないと。多分顔すっげ赤いよなぁ…小声気味にもなっちゃったし、大丈夫かな。そう思っていると、先輩が軽く噴き出した。
「なに」
「あなた結構ちゃんとしてますわよね、そういうとこ」
「あー?」
苦笑いを浮かべながら言う先輩。いいだろ、ちゃんとしてたって。大事だろ。何故さっきからこうも顔から火が出そうな目に遭わなきゃならないんだ。
「とにかく!合流出来たんだから、さっさと魔女倒すんだよ」
「ん。ですわね」
いい加減に話を打ち切って、魔女の方を見る。さっきの不意打ちで使い魔は倒され、魔女の体勢は崩れた。今しかない!
「先輩!」
「よろしくてよ!」
それぞれが自分の武器を構えて、一気に魔女へ向けて駆け出す。追い詰められた時、魔力を使わせてもらえなかったのが逆に良かった。これで終いにする!
気合いも充分に私は自分の得物、パイルに魔力を込める。後は先輩の攻撃と一緒に、魔女の身体にこれをぶち当てるだけ。行ったれぇ!!
私のパンチに少し遅れて、パイルに込められた魔力が、衝撃と共に撃ち込まれた。
………いきなり私の目の前に飛び込んできた、先輩の尻に。
「あーもー!つっかれましたわねぇ!」
「そっすねー」
すっかり夕暮れに染まった景色の中、変身を解いて、制服姿で帰路に着く私達。先輩の言葉に適当に答えつつ、少し後ろに下がって彼女のケツを盗み見ると、腫れているような気がしないでもなかった。私のこの胸に抱いた罪悪感が、そう感じさせるのかもしれない。
「魔女も取り逃してしまいましたし!」
「ピンッピンしてたな…」
結局あの後、尻をパイルでぶっ叩かれた先輩は、痛え痛えと叫びながら吹っ飛んで、魔女に激突。一応は魔女に一撃食らわせることが出来たけど、直後にヤツは元気良く逃げていった。次こそ同時攻撃を受けたらタダじゃ済まないと判断したのかも。
「貴女にも責任あるんですのよ」
「それ言ったら、いきなり目の前に降ってきたあんたも悪いだろ…」
ジトっとした目でこっちを見る先輩。でも私が言ったように、この人が変なことしなきゃ上手くいったんじゃないの…?
「そもそもなんであんなことしたんだよ。私と被らない位置なんて幾らでもあったろ」
「貴女が地なら、私は宙からと思って飛んだのですけど、その…直前で砂に足を取られて、上手く跳べずに…」
「えー……」
なんだそりゃ…確かにあの結界は地面まで砂だらけだったけど、魔法少女の脚力に影響する程じゃないだろ。何だその情けない話は。……や、待て。
先輩が来るまで、あの魔女はやたらめったら砂を撒き散らしていた。竜巻だって繰り出してきたんだから、風の影響を受けた砂があちこちで積もって、塊になってるってこともあるかも。そしてそうさせたのは、私が魔女を倒せなかったからで…
待て。待て待て。私と先輩で5:5だと思っていた責任の比率が、まさかの6:4…いや、最悪7:3くらいかもしれないなんてことは…!
「ま…、結局お互い悪いのですし、責任だって半々ですわね」
「えっ……あ、はい!そうっすねぇ!半々!半々…」
「なんですのこの人…」
先輩が半々だって言うんだから、それに便乗させてもらう。痛み分け万歳。平等万歳。半分こにして分かち合う。なんて素晴らしいことなんだ。
「なぁんか腹減ったなー」
「じゃ、何か食べてから帰りましょっか」
「その前に浄化しなきゃだな」
「手持ちのグリーフシードも心許ないですわねー…」
これ以上この話題は続けまいと、さっきから感じてた空腹感を口にしてみる。先輩も同じだったのか話に乗ってきて、この後の予定について話し合う。魔女を逃した悔しさも、いまいち連携が取れない残念さも、今は忘れよう。
学校に行って、二人で魔女と戦って、言い合いになって、一緒にご飯食べて…でも未だに一つになりきれなくて。
成り行きで組んだ私達だけど、私にとっても、先輩にとっても、そんな毎日が当たり前になっていた。
後に人伝で知ったことだけど、私達が今回逃した魔女は紆余曲折の末、宝崎から来た魔法少女が、神浜の魔法少女と一緒に倒したらしい。これが実力の差か…