神浜聖女が2人に増えたので初投稿です。
「噂ねー。私は知らないかなぁ、そういうの」
「あ、そうなの」
「まぁ、神浜全体に流れてるって意味なら、大東の悪評もそうだろうけどさぁ…」
「へー」
同級生の話に、相槌をうつ。まぁ、それも噂話だよな。でも、そういうのじゃなくて。
「へーじゃなくてさ。大東にある学校に通ってんだから、そういう話は聞いたことあるでしょ?」
「東のこと、悪く言われてるって?そりゃね」
東のことっつーか、東に住んでる人も込みでって感じだよな。あること無いこと、好き勝手言われてるっていうか。
私も、放課後に別の区で遊んでたら変な目で見られたり、「東の人だ」なんて、嫌そうな顔で言われたりした経験あるし。
「じゃ、私もう行くわ。悪かったよ、時間取らせて」
「ん、別に。てかさー、あんた西の人なんだよね?先生が言ってたよ」
「転校の自己紹介の時な。しかも勝手にゲロった。まぁいいや。それが?」
「東で噂話なんて聞いてどうすんの?まさか、向こうで言いふらす気?」
「ねーよ。そんなんする程ヒマじゃねーの」
「えー。ほんとかぁ?」
「西と東で色々あんのは知ってるけど、私には関係ねーの。実家が新西にあるったって、元々市外から来てんだからさ」
「そうだったっけ…」
「そうだよ」
諸用でたまたま来ていた同級生に背中を向けて、私は歩き出す。目指すのは、エントランス。
私は今、学校に来ていた。一年前から母校になった、大東学院に。
(結局、大した話は聞けなかったなぁ。空振りかぁ)
靴を履き替えて、校舎の外に出てから、内心で愚痴る。何かあるかと思って来てみたけど、収穫は無し。
先生方やら、部活で来てた生徒やらに話を聞いてみても、返ってくるのはお目当てのものとは特に関係無さそうな話。さっきの同級生みたいに、そもそも噂話なんて知らないって人も居た。
終いには、「適当にブラついてる暇があるなら、勉強の一つでもしろ」なんてお小言も貰っちまって。
(時間の使い方、間違ったかなー)
学校に来たのをちょっと後悔したところで、校門から出た。これで学校からはおさらば。次はどうしようかって、背伸びしながら思案。
そんな私の耳に、どっかからか、車の走る音が聞こえて来る。音のする方に顔を向けると、こっちに一台向かって来てるのが見えた。
その車は徐々にスピードを落として、私の目の前に止まった。黒い車だ。しかもオープンカー。イカしてるよな。
「なんか居ねーと思ったらさ」
私から、車の運転手に一言。別に車自体には驚かないし、私の前に停まった事も、不思議には思わない。だって、これに乗って学校まで来たんだし。
「…ゴメン、待った?」
そう宣うのは、運転手。さっき私を公園から駐車場までグイグイ引っ張ってきて、この車に放り込んだ張本人。要するに、年長さん。
「乗って」
「…あいよ」
促されて、助手席に乗り込む。ドアが閉まって、直後に車は発進した。次の行き先はまだ決めてないし、さっきの駐車場にでも戻るのかな。
流れてく景色をボーッと眺めながら、何でこんなことになったのかを、簡単に思い出す。
『ん…。着いた』
『ほんとに駐車場まで連れてくるし…。何だよもう…』
『鍵は…。うん、ある』
『…これ、あんたの車?屋根無いけど』
『親が、持ってるやつ。借りた。その…神浜に住むの、決まった時に』
『あんたも市外から来たんかよ。今はなに、一人暮らしか?』
『まぁ、うん。じゃあ、行こ。乗って』
『は?』
『乗って』
『…………』
『乗って』
運転席に座って、なんか知らんけど、グラサン掛けだした年長さんがそう言った。
駐車場までズルズル引き摺られて、そしたらお次は黒塗りのオープンカーに乗れと来た。
聞けば、大東学院まで連れて行ってくれるって言うから、私は渋々乗車した。早い足が手に入るのは、まぁ悪い話じゃなかったってのもあるし。
『…んで。何であんた、こんなことするわけ。いい加減、聞かせてもらえる?』
『ん……。お礼』
『あ?』
『私の話、聞いてくれた。元気付けようとしてくれたから…。だからお礼、したい…』
『礼ぃ?あんなんで?つーか違うから。私には目的があっただけで、別にあんたが可哀想だから慰めようとかってんじゃ…』
『知ってる』
『はい?』
『普通、放っとく…。あんな場面見たら。面倒だし。だから…』
『だから、ただの義理人情で近付いてきたんじゃないんだろうなって?』
『ん…』
学校に向かう最中に、こんな風に話もした。
私が「なら、何でお礼なんてしたがるんだ」って聞いたら、「それでも、嬉しかったから」なんて言ってた。
私の目論見をあっさり看破しといて、そんなこと言うんだもん。なんつーか、お人好しって、この人みたいな人間のことを言うのかなって。
「…考えごと?」
「ん」
あぁ、こんなだったなって思い出してるところに、年長さんから声が掛かった。
向こうからしたら、駐車場に戻って来てからも黙ったまんまだから、気になったんかな。
「別に。あんた、お人好しだなーって」
「……そう、かな?」
「そうでしょ」
じゃなきゃ、今こうやって、私の手伝いなんてしてないって。普通、さっきの公園でハイ、さよならってなるんじゃないのか。
「でも…貴女も、そうだと思う」
「何が」
「お人好し」
「はあ?私が?無いって」
「私のこと、拒まないでくれてる。さっきの子……リーダー達みたいに、突き放すこと、出来たのに」
「や、それはさ…」
追放されたばっかで凹んでたんだから、そこに私が追い打ちかけるようなことは、なんかなぁ。
幾ら知り合ったばっかりの人が相手だからって、そこまでするのは流石に酷いって。
「ん…。それより、どうだったの。学校」
「え」
「噂話、調べるとかって…」
「あ、あー、うん。それね」
私が言い淀んでるのを気にしたのか、年長さんから話題を変えてくれた。もしかして、気ぃ遣われた…?
「まぁ、空振りかなって。だから、次どうしようかなって考えてる」
「そっか」
「ん」
時計を見る限り、それなりに時間も経った。なら、もっと人が多くなる場所で聞き込みでもしてみるか。なんなら、大東区での調査は切り上げるのも有りかな。
「あ」
「…どしたの?」
思い出した。ちょっと調べてみたい場所、あったんだよな。年長さんに会うまでは徒歩だったけど、今は車って、便利なものがある。なら、行くのに時間はかからないかも。
「ねえ」
「ん」
「本当にいいんだよね。手伝ってもらって」
年長さんに確認する。向こうの方が乗り気なんだから、難色を示すことはないと思うけど、一応聞いておく。
「あ、うん…。お礼、したいから…」
「そう。じゃあ、遠慮なく」
OKが出た。決まりだな。じゃあ、次に行く場所は…。
「うん。どこ、行く…?」
「西町。まやかし町っつった方が分かりやすいかな」
「ん…。わかった」
私から行き先を聞いて、年長さんが車を動かした。もう一回駐車場から出て、目的地まで車を走らせてくれる。
「あ…そう。これ…」
運転しながら、私にビニール袋を差し出してくる。受け取って中を見てみると、飲み物、お菓子、肉まん、サンドイッチ…色々入ってた。
「あ、さっき学校行ってた時、居なかったのって」
「うん。買いに行ってた。それ…」
「ええ…」
や、あの。初対面よ?
お礼の一環なのか知らんけど、何もここまでしなくてもさ…。買ってきたってことは、金使ったってことだろ…?
「あ、気にしなくていい。その…お金は」
「いやいやいや、流石にさ」
「私が、したくてそうしたから。だから、大丈夫…」
「………」
いいのかなぁ…。いや、公園で話を聞いた時から、年長さんがこういうことをしたがる人なんだってのは、もう分かってるんだけどさ。
なら、特に気にしないで、ありがたく頂いておくのが一番良いのか。でもなぁ。私が納得しないし…。それなら…
「ん」
「……?」
包み紙から肉まんを取り出して、年長さんに渡す。半分に割ったやつを、だけど。
「あの…」
「飲み物は2本あるからいい。でも、食い物は半分にする」
「えっと、いいんだよ?全部、食べても…」
「あんたが自分の金で買ったんだよ。なら、あんたが食ったっていいだろ」
「………」
私が全部貰うのは納得いかないから、年長さんと半々ってことにさせてもらう。
正直これでも釈然としないけど、年長さんの気持ちを無碍にするのも悪いし、落とし所としてはこんなもんだろ。
「わかった。じゃあ…いただきます」
「ん。いただきます」
納得してもらえたところで、2人して肉まんを頬張る。コンビニらしいジャンクな味が広がるけど、これが時々恋しくなるんだから不思議だよな。
「ふふ…」
「あん?なに、どしたの」
「うん。やっぱり、優しいんだなって。貴女」
「だからー、違うってんじゃん。こうやって半分したのは、奢ってもらってばっかなのが性に合わないからで…」
「うん」
「第一さ、私、昼に一旦集まる約束してるから。多分その時に飯も食うだろうし、その時のことも考えてだなー」
「うん、うん…。そうなんだよね?」
「絶対分かってないよ、この人…」
くそー、こっちのことを見透かしたような態度しやがって。表情あんま変わってないように見えるけど、なんか嬉しそうなのバレバレなんだからな!
「もー……ん?」
ぶつくさ言ってたら、懐にしまってあったスマホが震えた。着信があったらしい。
「はいはいー?なんですかぁーっと」
見ると、メッセージが一通。差出人はマジ子だった。しかも画像付き。
(何だぁ?まさか、重要な手掛かりでも見つけたとか…)
少しだけ期待しながら、メッセージを開く。画像が貼り付けられてるだけで、文章は皆無。あいつにしては大人しいメッセだ。
「…………や、なんだこれ?」
なら画像の方によっぽどインパクトがあるのかと思ったけど、写ってるのは笑顔のマジ子と、やたらドギツいピンク色の何かが乗った皿。
自撮りか、これ。てか、このピンクいのは何よ。フォークが刺さってる辺り、食いもんなのかこれ?
「…?わっからんなぁー」
「なんか、あったの?」
「いや?何かチームメイトから写メ送られて来たんだけど…。よく分かんない」
「そっか」
「ん」
なんか写真のマジ子がやたら青い顔してた気がするけど、まぁ気のせいだろ。
笑顔がやけに引き攣ってた気がしなくもないけど、写真うつりが悪かったとか、そんなんだろうし。そんなことよりも調査だ調査。
変な写メのことはすぐに頭の隅に追いやってから、年長さんの運転に身を任せて、目的のまやかし町に向かった。道中、年長さんが買ってきたものを、2人で分けて食べながら。
マギレコ本編の出来事
・魔女に逃げられて怒るフェリシアを、「ご飯、作らないよ!?」と一喝してクールダウンさせたいろは。謝るフェリシアに先程の豹変ぶりについて問うも、誤魔化すように仲間との合流を急かされた。