知られることのない話   作:まるイワ

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神浜聖女が2人に増えたので初投稿です。





4-6 お人好し

 

 

 

「噂ねー。私は知らないかなぁ、そういうの」

 

「あ、そうなの」

 

「まぁ、神浜全体に流れてるって意味なら、大東の悪評もそうだろうけどさぁ…」

 

「へー」

 

 

同級生の話に、相槌をうつ。まぁ、それも噂話だよな。でも、そういうのじゃなくて。

 

 

「へーじゃなくてさ。大東にある学校に通ってんだから、そういう話は聞いたことあるでしょ?」

 

「東のこと、悪く言われてるって?そりゃね」

 

 

東のことっつーか、東に住んでる人も込みでって感じだよな。あること無いこと、好き勝手言われてるっていうか。

 

私も、放課後に別の区で遊んでたら変な目で見られたり、「東の人だ」なんて、嫌そうな顔で言われたりした経験あるし。

 

 

「じゃ、私もう行くわ。悪かったよ、時間取らせて」

 

「ん、別に。てかさー、あんた西の人なんだよね?先生が言ってたよ」

 

「転校の自己紹介の時な。しかも勝手にゲロった。まぁいいや。それが?」

 

「東で噂話なんて聞いてどうすんの?まさか、向こうで言いふらす気?」

 

「ねーよ。そんなんする程ヒマじゃねーの」

 

「えー。ほんとかぁ?」

 

「西と東で色々あんのは知ってるけど、私には関係ねーの。実家が新西にあるったって、元々市外から来てんだからさ」

 

「そうだったっけ…」

 

「そうだよ」

 

 

諸用でたまたま来ていた同級生に背中を向けて、私は歩き出す。目指すのは、エントランス。

 

私は今、学校に来ていた。一年前から母校になった、大東学院に。

 

 

 

 

 

 

(結局、大した話は聞けなかったなぁ。空振りかぁ)

 

 

靴を履き替えて、校舎の外に出てから、内心で愚痴る。何かあるかと思って来てみたけど、収穫は無し。

 

先生方やら、部活で来てた生徒やらに話を聞いてみても、返ってくるのはお目当てのものとは特に関係無さそうな話。さっきの同級生みたいに、そもそも噂話なんて知らないって人も居た。

 

終いには、「適当にブラついてる暇があるなら、勉強の一つでもしろ」なんてお小言も貰っちまって。

 

 

(時間の使い方、間違ったかなー)

 

 

学校に来たのをちょっと後悔したところで、校門から出た。これで学校からはおさらば。次はどうしようかって、背伸びしながら思案。

 

そんな私の耳に、どっかからか、車の走る音が聞こえて来る。音のする方に顔を向けると、こっちに一台向かって来てるのが見えた。

 

その車は徐々にスピードを落として、私の目の前に止まった。黒い車だ。しかもオープンカー。イカしてるよな。

 

 

「なんか居ねーと思ったらさ」

 

 

私から、車の運転手に一言。別に車自体には驚かないし、私の前に停まった事も、不思議には思わない。だって、これに乗って学校まで来たんだし。

 

 

「…ゴメン、待った?」

 

 

そう宣うのは、運転手。さっき私を公園から駐車場までグイグイ引っ張ってきて、この車に放り込んだ張本人。要するに、年長さん。

 

 

「乗って」

 

「…あいよ」

 

 

促されて、助手席に乗り込む。ドアが閉まって、直後に車は発進した。次の行き先はまだ決めてないし、さっきの駐車場にでも戻るのかな。

 

流れてく景色をボーッと眺めながら、何でこんなことになったのかを、簡単に思い出す。

 

 

 

 

 

 

『ん…。着いた』

 

『ほんとに駐車場まで連れてくるし…。何だよもう…』

 

『鍵は…。うん、ある』

 

『…これ、あんたの車?屋根無いけど』

 

『親が、持ってるやつ。借りた。その…神浜に住むの、決まった時に』

 

『あんたも市外から来たんかよ。今はなに、一人暮らしか?』

 

『まぁ、うん。じゃあ、行こ。乗って』

 

『は?』

 

『乗って』

 

『…………』

 

『乗って』

 

 

運転席に座って、なんか知らんけど、グラサン掛けだした年長さんがそう言った。

 

駐車場までズルズル引き摺られて、そしたらお次は黒塗りのオープンカーに乗れと来た。

 

聞けば、大東学院まで連れて行ってくれるって言うから、私は渋々乗車した。早い足が手に入るのは、まぁ悪い話じゃなかったってのもあるし。

 

 

 

 

 

 

『…んで。何であんた、こんなことするわけ。いい加減、聞かせてもらえる?』

 

『ん……。お礼』

 

『あ?』

 

『私の話、聞いてくれた。元気付けようとしてくれたから…。だからお礼、したい…』

 

『礼ぃ?あんなんで?つーか違うから。私には目的があっただけで、別にあんたが可哀想だから慰めようとかってんじゃ…』

 

『知ってる』

 

『はい?』

 

『普通、放っとく…。あんな場面見たら。面倒だし。だから…』

 

『だから、ただの義理人情で近付いてきたんじゃないんだろうなって?』

 

『ん…』

 

 

学校に向かう最中に、こんな風に話もした。

 

私が「なら、何でお礼なんてしたがるんだ」って聞いたら、「それでも、嬉しかったから」なんて言ってた。

 

私の目論見をあっさり看破しといて、そんなこと言うんだもん。なんつーか、お人好しって、この人みたいな人間のことを言うのかなって。

 

 

 

 

 

 

 

「…考えごと?」

 

「ん」

 

 

あぁ、こんなだったなって思い出してるところに、年長さんから声が掛かった。

 

向こうからしたら、駐車場に戻って来てからも黙ったまんまだから、気になったんかな。

 

 

「別に。あんた、お人好しだなーって」

 

「……そう、かな?」

 

「そうでしょ」

 

 

じゃなきゃ、今こうやって、私の手伝いなんてしてないって。普通、さっきの公園でハイ、さよならってなるんじゃないのか。

 

 

「でも…貴女も、そうだと思う」

 

「何が」

 

「お人好し」

 

「はあ?私が?無いって」

 

「私のこと、拒まないでくれてる。さっきの子……リーダー達みたいに、突き放すこと、出来たのに」

 

「や、それはさ…」

 

 

追放されたばっかで凹んでたんだから、そこに私が追い打ちかけるようなことは、なんかなぁ。

 

幾ら知り合ったばっかりの人が相手だからって、そこまでするのは流石に酷いって。

 

 

「ん…。それより、どうだったの。学校」

 

「え」

 

「噂話、調べるとかって…」

 

「あ、あー、うん。それね」

 

 

私が言い淀んでるのを気にしたのか、年長さんから話題を変えてくれた。もしかして、気ぃ遣われた…?

 

 

「まぁ、空振りかなって。だから、次どうしようかなって考えてる」

 

「そっか」

 

「ん」

 

 

時計を見る限り、それなりに時間も経った。なら、もっと人が多くなる場所で聞き込みでもしてみるか。なんなら、大東区での調査は切り上げるのも有りかな。

 

 

「あ」

 

「…どしたの?」

 

 

思い出した。ちょっと調べてみたい場所、あったんだよな。年長さんに会うまでは徒歩だったけど、今は車って、便利なものがある。なら、行くのに時間はかからないかも。

 

 

「ねえ」

 

「ん」

 

「本当にいいんだよね。手伝ってもらって」

 

 

年長さんに確認する。向こうの方が乗り気なんだから、難色を示すことはないと思うけど、一応聞いておく。

 

 

「あ、うん…。お礼、したいから…」

 

「そう。じゃあ、遠慮なく」

 

 

OKが出た。決まりだな。じゃあ、次に行く場所は…。

 

 

「うん。どこ、行く…?」

 

「西町。まやかし町っつった方が分かりやすいかな」

 

「ん…。わかった」

 

 

私から行き先を聞いて、年長さんが車を動かした。もう一回駐車場から出て、目的地まで車を走らせてくれる。

 

 

「あ…そう。これ…」

 

 

運転しながら、私にビニール袋を差し出してくる。受け取って中を見てみると、飲み物、お菓子、肉まん、サンドイッチ…色々入ってた。

 

 

「あ、さっき学校行ってた時、居なかったのって」

 

「うん。買いに行ってた。それ…」

 

「ええ…」

 

 

や、あの。初対面よ?

 

お礼の一環なのか知らんけど、何もここまでしなくてもさ…。買ってきたってことは、金使ったってことだろ…?

 

 

「あ、気にしなくていい。その…お金は」

 

「いやいやいや、流石にさ」

 

「私が、したくてそうしたから。だから、大丈夫…」

 

「………」

 

 

いいのかなぁ…。いや、公園で話を聞いた時から、年長さんがこういうことをしたがる人なんだってのは、もう分かってるんだけどさ。

 

なら、特に気にしないで、ありがたく頂いておくのが一番良いのか。でもなぁ。私が納得しないし…。それなら…

 

 

「ん」

 

「……?」

 

 

包み紙から肉まんを取り出して、年長さんに渡す。半分に割ったやつを、だけど。

 

 

「あの…」

 

「飲み物は2本あるからいい。でも、食い物は半分にする」

 

「えっと、いいんだよ?全部、食べても…」

 

「あんたが自分の金で買ったんだよ。なら、あんたが食ったっていいだろ」

 

「………」

 

 

私が全部貰うのは納得いかないから、年長さんと半々ってことにさせてもらう。

 

正直これでも釈然としないけど、年長さんの気持ちを無碍にするのも悪いし、落とし所としてはこんなもんだろ。

 

 

「わかった。じゃあ…いただきます」

 

「ん。いただきます」

 

 

納得してもらえたところで、2人して肉まんを頬張る。コンビニらしいジャンクな味が広がるけど、これが時々恋しくなるんだから不思議だよな。

 

 

「ふふ…」

 

「あん?なに、どしたの」

 

「うん。やっぱり、優しいんだなって。貴女」

 

「だからー、違うってんじゃん。こうやって半分したのは、奢ってもらってばっかなのが性に合わないからで…」

「うん」

 

「第一さ、私、昼に一旦集まる約束してるから。多分その時に飯も食うだろうし、その時のことも考えてだなー」

 

「うん、うん…。そうなんだよね?」

 

「絶対分かってないよ、この人…」

 

 

くそー、こっちのことを見透かしたような態度しやがって。表情あんま変わってないように見えるけど、なんか嬉しそうなのバレバレなんだからな!

 

 

「もー……ん?」

 

 

ぶつくさ言ってたら、懐にしまってあったスマホが震えた。着信があったらしい。

 

 

「はいはいー?なんですかぁーっと」

 

 

見ると、メッセージが一通。差出人はマジ子だった。しかも画像付き。

 

 

(何だぁ?まさか、重要な手掛かりでも見つけたとか…)

 

 

少しだけ期待しながら、メッセージを開く。画像が貼り付けられてるだけで、文章は皆無。あいつにしては大人しいメッセだ。

 

 

「…………や、なんだこれ?」

 

 

なら画像の方によっぽどインパクトがあるのかと思ったけど、写ってるのは笑顔のマジ子と、やたらドギツいピンク色の何かが乗った皿。

 

自撮りか、これ。てか、このピンクいのは何よ。フォークが刺さってる辺り、食いもんなのかこれ?

 

 

「…?わっからんなぁー」

 

「なんか、あったの?」

 

「いや?何かチームメイトから写メ送られて来たんだけど…。よく分かんない」

 

「そっか」

 

「ん」

 

 

なんか写真のマジ子がやたら青い顔してた気がするけど、まぁ気のせいだろ。

 

笑顔がやけに引き攣ってた気がしなくもないけど、写真うつりが悪かったとか、そんなんだろうし。そんなことよりも調査だ調査。

 

 

 

変な写メのことはすぐに頭の隅に追いやってから、年長さんの運転に身を任せて、目的のまやかし町に向かった。道中、年長さんが買ってきたものを、2人で分けて食べながら。

 

 

 






マギレコ本編の出来事

・魔女に逃げられて怒るフェリシアを、「ご飯、作らないよ!?」と一喝してクールダウンさせたいろは。謝るフェリシアに先程の豹変ぶりについて問うも、誤魔化すように仲間との合流を急かされた。

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