知られることのない話   作:まるイワ

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ミラーズランキングを頑張って消化してるので初投稿です。





4-7 バカ共の昼

 

 

 

車のエンジン音と、時々交わされる会話をBGMにすること数分。やってきました大東は西町。通称、まやかし町。

 

何をまやかすのかは知らんけども、車を下りて町の空気を直に感じてみると、何とも言えない奇妙な感覚に襲われたような気がした。

 

街並みは他の区とさして変わらないはずなのに、どこか不穏っつーか、独特の怪しさがあるっつーか。とにかく、他とは雰囲気が違った。

 

ここなら、今までとは違う情報を手に入れることも出来るかも。なんて期待してみたところで、私は聞き込みを始めた。日も高くなってきて、人もそれなりに見かけるようになってきた。何かいい話が聞けたらいいけど。

 

 

 

 

 

 

「へえ。じゃあ、その『キリサキさん』ってのは、今はもう噂話としては廃れてるってことすか?」

 

「多分ね。俺が友達から聞いたのも、もうだいぶ前の話だから」

 

「そうすか…。あの、最後に聞いてもいいすかね」

 

「うん。なに?」

 

「その、キリサキさんを実際に見てみようと思ったりってのは…」

 

「俺が?ないない。場所は東じゃないみたいだったし、その為にわざわざ他の区に行かないよ」

 

「はぁ…」

 

「第一、会ったら斬られるって話だし。嫌だよ、そんな自殺行為みたいなことすんの」

 

「それは…まぁ、そうすね」

 

 

道行く人を呼び止めて、何か噂を知らないか聞いてみる。それを何回か繰り返して、今は私服の男の人から話を聞いてた。

 

休日だし、何処か遊びにでも行くのかもしれないと思ったから、出来るだけ手短にって心掛けて。

 

 

「でしょ。やー、しかしまぁ変わった噂話だよね。『アラもう聞いた?』とかって、なんか芝居掛かったっていうかさ」

 

「なるほど…。あ、じゃあ あの、これでお終いっす。ありがとうございました。お話」

 

「あ、そう?じゃ、はい。そんじゃ」

 

「お手数お掛けしましたー」

 

 

どっかに向かって去ってく男の人にお礼を言って、軽く頭を下げる。いきなり話しかけられた上に「噂話を知らないか」なんて聞かれて、そりゃもうワケ分かんなかっただろうなぁ。

 

でも、こっちにもそうする事情があるんだ。その辺は、生きてりゃそういうこともあるってことで納得してもらおう。

 

 

「…どう?今の、話」

 

「どうかな。当たりかもしんねえ。まぁ、今はもう古い情報になっちゃってるっぽいけど」

 

「そう」

 

 

年長さんに聞かれて、そう答えた。この人もまた律儀だよな。車で待っててもいいのに、私に付いて来て、ずっと隣に居るんだもん。

 

まぁ、そんなら、手持ち無沙汰にしとくのもなんだと思って、話を聞いてる間にメモをとってもらってたんだけども。お願いしたら快諾だった。

 

 

「てか、メモしてくれんのはありがたいんだけど」

 

「?うん…」

 

「別に、一緒に来なくてもよかったのに」

 

「え…。だって、心配だし」

 

「何が」

 

 

メモするくらいなら、私一人でも出来たぞ。ちょっとだけ大変だったかもしんないっつったら、それはそうだけど。

 

 

「トラブル、起きないかなって…。口、ちょっと悪いから。貴女…」

 

「あ、そういう…」

 

「それに、背、小さいし…。悪い人とか居たら、狙われるかなって…」

 

「そんなあんた、幼稚園児じゃねんだから…」

 

 

ほんとにメモ係をさせてよかったのか気になったから、聞いてみたらこれだよ。元チームメイトの人達も、こんな感じの接し方をされてたんかね。

 

あの人らの気持ち、今なら少しだけ分からんでもないかな。ちょっとだけ鬱陶しい感じ。

 

 

「ん…ごめん。それで、どう…?まだ聞いてみる?」

 

「ん?んー…」

 

 

続けるか聞かれる。うん、続けるは続ける。でも、この町ではどうかな。

 

 

「それなりに話は聞いたし、何のかんの昼も近付いて来たんだよな」

 

「じゃあ、やめる?」

 

「この町…っつーか、大東はこんくらいでいいかな。後は集合の連絡来るまで、他の区で調べようかなって」

 

「ん…。わかった」

 

 

話も纏まったところで、二人揃って、車を停めてある場所まで戻る。そのまま乗り込んで、大東区を出る為に発進した。

 

その後は他の区に移って、情報収集を続けた。途中で海浜公園に寄ったりもしてみたけど、やっぱりっていうか、特に変わったことは無し。

 

そうこうしてる内に昼も間近になって、先輩から集合の連絡。案の定 昼飯を兼ねるみたいで、北養区にある洋食屋が指定されてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーと、ウォールナッツ…。ん。ここだな」

 

 

車から下りて、集合場所を確認する。連絡してきた時に聞いた話だと、先輩達の方が近い場所に居たらしい。なら、もう来てるかも。

 

 

「あの……いいの?私も、ほんとに…?」

 

 

一緒に車から下りた年長さんが、申し訳なさそうにしながら私に聞いてくる。そうなるよな。私が年長さんの立場でも、そう聞くよ。

 

 

「調べもん手伝ってもらって、しかも金使わせた上に、運転までしてもらったんだよ?これくらいバチ当たんないって」

 

「…そう、かな」

 

 

そうだよ。集合場所にまで送る義理も無いだろうにさ。

 

これで貸し借り0に出来る…かは分かんないけど、それでもお返しくらいしないとな。

 

 

「ま、一緒に食ってやってよ。その方が私も納得するし。てか、一人連れてくって、チームの人に言っちゃってるからさ」

 

「そっか…。それなら、うん。じゃあ…」

 

「それに、金払うの私じゃないし。誘ったところで痛くも痒くもねーの。やったぜ」

 

「あぁ…悪い子っ…」

 

 

年長さんが何か言ってるけど、そんなこたぁ知らん。あー腹減った腹減った。美味いもん食ってチャージせにゃあ。

 

この空きっ腹に何をブチ込んでやろうかって考えながら、店の中に入った。

 

 

「お客様ですね。いらっしゃいませ!ウォールナッツへようこそ!」

 

「あ、はい。ども…」

 

 

店の奥から誰かやってきて、私達を元気にお出迎え。やたら元気だから、ちっとびっくり。料理人みたいな恰好だし、まさかシェフの人かなにか?

 

いやぁでも、なんか小さいしなぁ…。多分、私とそんなに歳違わないと思うんだけど。

 

 

「?どうかしましたか?まなかに何か?」

 

「あぁ、や、いえ。別に」

 

「そうですか?」

 

 

いや、やめよう。余計な詮索なんて。あれだよ。店の制服着て、店員として家の手伝いをしてるだけなんだ、きっと。まさかこの子が、客に出す料理を作ってるなんてことは…。

 

 

「二名様でよろしいですか?」

 

「あー、えっと、違くて。待ち合わせを」

 

「あ、なるほど」

 

「先輩っぽい人とバカっぽい人なんですけど。来てます?」

 

「先…え、なんです?バ…?」

 

 

やっべ、ストレート過ぎたわ。

 

ここは北養区。いつも行くファミレスやバーガーショップとは違う。

 

あの超セレブ学校、聖リリアンナがある区に建てられた店なんだし、単なる洋食屋ってことはあるまい。だから、ちょっと緊張してんのかも。

 

 

「あーっと……違うんです。そうじゃなくて」

 

「はぁ…」

 

「あのー、アレ。水名の先輩と、栄総合のバカです」

 

「大して変わってないじゃないですか…」

 

 

あれ、おかしいな…。ちゃんと分かりやすく説明するつもりが。しくったかなって、視線で後ろの年長さんに助けを求めるけど、気まずそうにこっちを見下ろしてるだけ。

 

やらかしたか…私…。とりあえず謝っとかないとだな、店員さんに…。

 

 

「あの…すいません、ほんとに。ちょっと混乱して…」

 

「それは、はい。まぁ、大丈夫です。それで、お客様のことですけど」

 

「はい…」

 

「来店されてますよ、多分。水名女学園と、栄総合学園の方なんですよね?」

 

「そっす」

 

「先程、来たんですよ。ほら、あちらのお席に」

 

 

店員さんが、そう言って手で指し示した方を見る。そしたら居た。制服を着た、二人組の女子が。

 

先輩とマジ子だ。間違いない。ないんだけど…

 

 

「あちらのお客様で間違いありませんか?」

 

「あぁ、はい。まぁ…そっすね…」

 

「それは何よりです。では、同じお席に」

 

「あの、店員さん」

 

「はい?」

 

「なんか、一心不乱に飯かっ喰らってるように見えるんすけど…」

 

 

私らが来るのを待ってたんなら、こっちが来店した時に気付いてもよさそうなのに。少なくとも、マジ子は声の一つも出すかと思ったんだけどなぁ。

 

それを忘れるくらい、あいつらが飯に没頭するってのは珍しい気が。

 

 

「何やら、フラフラーっとした様子で来店されてましたよ。よっぽどお腹が空いていたんでしょうか」

 

「はぁ…」

 

「まぁでも、あんなに夢中になってしまうのも致し方ないことです!何せ、ウォールナッツ自慢のオムライスですから!」

 

「オムライス」

 

「はい!おかわりまでしていただいて!」

 

 

へえ。そんなレベルで美味いのか、ここのやつ。それ聞いたら、ちょっと興味出てきた。

 

 

「えっと…。頼んで、みる?私達も…」

 

「あー、あんたもそう思った?じゃ、食べてみよっか」

 

「ん…」

 

「おや。オムライスをご注文ですか?分かりました!では、お席に座ってお待ち下さい!」

 

 

店員さんは、そう言ってお店の奥に引っ込んでいった。多分、厨房があるんだろ。にしても私達の会話、ちゃっかり聞いてたんだな。耳ざとい子。

 

 

「……行こっか?席」

 

「ん。私から紹介するよ。あんたのこと」

 

「うん。お願い…」

 

 

情報の共有もしなきゃだけど、とりあえず今は飯だ。なんか騒がしくなりそうだけど、まぁ、たまには悪くないだろ。

 

二人して先輩達の座る席に向かいながら、私はそう思った。

 

 

 

 

 

 

「わり。遅くなったかな」

 

 

先輩達に近付いて、声をかけた。でも二人とも、私の声には耳を貸さないで、ひたすら飯を口に運んでばっかり。

 

モリモリ。ガツガツ。ムシャムシャ。

 

なんか、そんな音が聞こえてきそうなレベル。こんな積極的に食うやつらだったっけ…?

 

 

「おーい、聞けって。来たぞ、私は」

 

 

ちょっと声量上げて、もう一回呼び掛けた。飯に夢中になるのはいいけど、せめて返事くらいはしてもらわんと。

 

そしたら次の瞬間、先輩とマジ子が、手元にあるグラスを掴んだ。中にある水を、二人同時に勢いよく呷っていく。

 

そうして空になったグラスをテーブルに置いたと思ったら、ヌルッとした動きで私の方を向いてくる。正直キモかった。

 

 

「……………」

 

「……………」

 

 

何か見てる。私を。チームメイト二人が、ジーッと。

 

 

「………なんだよ」

 

 

見るのはまぁいいよ、別に。ただ、なに。そのジトッとした目線は。あれか。もしかして結構待ったとか?

 

おかわりもしてるくらいだから、そうなのかも。それで拗ねてるのかな。いや、ガキかよあんたら…。

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ………」

 

 

先輩の深い溜息。今度はなんだ。

 

 

 

「ご覧なさい、マジ子さん。来ましたわよ、それはそれは薄情な裏切り者が…」

 

「来ちゃったねー…。マジでギルティなやつ」

 

 

 

はい?裏切りって何が。それ私のこと?身に覚えが無いんですけど。つか、いきなり何だこいつら。

 

 

「すっとぼけた顔をして…。無駄ですわよ、今更取り繕っても」

 

「いや…あの、ほんと分かんないんだけど…」

 

「うっそマジ!?赤ちん、それヒドくない!?」

 

「えぇ〜……?」

 

「…よく、分かんないけど…。なんかしたんなら、謝らなきゃ…」

 

 

二人からは責められるわ、後ろに控えた年長さんには諭されるわ…。どうしろってんだか…。

 

 

「んなこと言われたってさぁ…。心当たりなんてなんも…」

 

「んまぁ!ではまさか、あのSOSは見ていないと!?」

 

「SOSだぁ?」

 

「未曾有のバイオ兵器の餌食となり、息も絶え絶えの中、マジ子さんが必死の思いで送ったメッセージですのに!」

 

「も、マジでヤバヤバのヤバだったんだからー!マヂ死んだってアレ!」

 

「や、生きてんじゃん…」

 

「いーの!ヒユヒョーゲン?ってやつなの!ほんと赤ちんは もー!」

 

 

や、めっちゃ怒るじゃんこいつら…。つーか何よ?バイオ兵器だのメッセージだの…。調査サボって映画でも見てきたんかよ、お前ら。

 

……ん?いや、ちょっと待って。メッセージ?メッセージったら…

 

 

「あの…メッセージ…もしかしたら」

 

 

年長さんも気付いたみたい。そうだ。まさか、まやかし町に行く時に送られてきた、あの写メ…?

 

 

「………あぁー……」

 

「『あぁ』?今『あぁ』って言いましたわね!?聞きましたわよ!やっぱり見ていたんじゃありませんの!」

 

「いや、違うんだって。あのさ?マジ子がなんか食ってるなーくらいにしか思わんくて」

 

「言い訳は結構!普段からどこか中途半端に冷めたような子だとは思ってましたけど、とうとう本性を現しましたわね!このクソガキがぁーっ!」

 

「赤ちんサイテー!バカ!柄パン女ー!」

 

 

おいちょっと待て何で私が履いてる下着知ってんだっつーかンだとコラ言わせておけばよぉ!

 

 

「人聞きがわりぃんだよテメーら!つーか大体なー!」

 

「あの…やめよ。ここ、お店……」

 

 

 

ギャーギャー。あーだこーだ。やいのやいの。

 

 

 

見事にヒートアップした私達の罵り合いは、料理を持ってきた店員さんに叱られるまで続いた。

 

歳下らしき彼女の一喝で我に帰った私達は、一気に消沈。只管に平謝りすることで、どうにか許しを得ることに成功。

 

店員さんの寛大な御心と、一緒に謝ってくれた年長さんには感謝しかない。いや、ほんとに…。

 

 

 

 

 

 

 

「なんか…すみませんでした…。本当に口汚くなってしまって…」

 

「いや、うん…。私も言い過ぎたから…」

 

「アタシも…。ゴメン赤ちん…」

 

「うん…。もうやめてね、人のパンツ見るの…」

 

「うん…。でも赤ちん、この前リビングに脱ぎっぱで」

 

「やめてね……」

 

「うん……」

 

 

 

 

申し訳なさと羞恥心と、その他諸々でない混ぜになった心のまま、洋食店・ウォールナッツ。その特製オムライスを一口。

 

 

 

 

 

めっちゃ美味かった……。

 

 

 

 

 





マギレコ本編の出来事

・万々歳に集合したいろは達。いろはが、やちよからフェリシアの悪評を聞く。鶴乃曰く、「やちよはババアじゃないよ!ギリ未成年だよ!」

・やちよの決定で、二組に分かれて調査を再開。聞き込みを面倒臭がるばかりか、うわさに対し楽観的なフェリシア。いろは は ジュースを交換条件にして、調査の手伝いを頼んだ。

昨日取り逃したらしい魔女の魔力を察知したフェリシアは、何処かへ走り出す。ジュース買わないよという呼びかけも、「魔女がいんだから、そんなのどうでもいいんだよ!」と一蹴された。いろは 怒りの「もーーーーーー!!」炸裂。

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