知られることのない話   作:まるイワ

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新年最初の初投稿です。




※活動報告「オリキャラ達のあれこれ①」に、主人公のイメージ絵の修正版を追加してみました




4-9 変わりたい彼女

 

 

 

昼飯を食い終わって、午後からの調査に乗り出した私達。私は午前中と変わらず、年長さんと一緒に行動してた。

 

あちこち移動して、話を聞いて、怪しそうな場所を調べて…。でも結局、碌に結果も出せないまま日は暮れていって、とうとう夕方。

 

多分次が最後になるかなって考えながら、参京区へ車を走らせて貰った。

 

 

そしたら調査中、魔女の反応を感じたもんだから、私と年長さんは調査を中断。魔女を追いかけて、無事に発見。結界に突入して、魔女との戦闘に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!」

 

 

魔女が繰り出してきた攻撃を、上体を逸らしてどうにか躱す。早いな。中々に威力もありそう。

 

なんせトゲトゲの蔦と、括り付けられたドデカい鋏。当たれば痛くて、タダでは済まない。だったら遠慮させていただきたいってもんだろ。

 

 

「このやろ!」

 

 

魔力を込めて、パイルから衝撃波を何発か撃ち出す。魔力はそう込めてないから、デカいダメージにはならないだろうな。でも、それで充分。

 

 

『〜!!』

 

 

私の攻撃が命中して、怯んだ魔女が鳴き声を上げる。いつ聞いてもこの世のもんじゃないよなぁ…。怪獣かよ。

 

それはどうでもいいとして、今のでヤツの動きは止まった。狙い通りだ。なら、今 仕掛ける!

 

 

「よし…!」

 

 

魔女に向かって駆け出す。奴さんが体勢を立て直す前に、一気に決めるぞ!

 

 

「このまま……なぁ!?」

 

 

そう思ったのに、いきなり足が動かなくなって、勢い余ってつんのめる。そのまま地面に倒れちまって、ズザーッと全身でダイナミックにスライディング。痛えよクソが。

 

なんだよって振り返って足の方を見てみたら、使い魔が二匹、私の足にひしっとしがみ付いてた。

 

この、白い頭部に髭が生えたような使い魔はどっからか湧いたのか、はたまた魔女が身の危険を感じて呼び出したのか、そんなことは知らねー。知らないが。

 

 

「これ、ヤバいか…!?」

 

 

問題は使い魔じゃなくて、何故か後ろからこっちに飛んで来てる鋏。荊棘が伸びてるってことは、魔女が操ってるもの。あれ多分、私が躱したやつだな…。

 

なるほどね…。魔女のやつは、これを狙ってたってわけか。チャンスを前にして注意力が鈍ったところに、不意を突いて動きを封じる。んで、そこをバッサリいく、と。

 

 

(単純な手をさぁ。私はそれに引っかかっちまったわけだけど…!)

 

 

足を動かして、使い魔を引き剥がす。それから急いで立ち上がるけど、魔女様ご自慢のクソデカ鋏は、すぐそこまで迫って来てた。

 

 

「っ…!」

 

 

パイルは間に合わない。構えられても、魔力を込めてる時間が無い。

 

すぐ目の前に、刃を目一杯開いた鋏の姿。今の私にとっちゃ、死神の鎌と同じか。やられるな、このままじゃ。

 

 

 

でもそれは、私が一人だったらの話。

 

 

 

「ふっ!」

 

 

 

掛け声と一緒に年長さんが突っ込んで来て、鋏に強烈な衝撃を与えた。私にしがみ付いてた使い魔達も巻き込んで。

 

魔女のやつは私を真っ二つに出来ると思っただろうが、残念。鋏の進路は大きく逸れて、あらぬ方向にすっ飛んでいった。

 

 

「…………」

 

「…あの……大丈夫…?」

 

 

少し呆ける私に、年長さんが一言。

 

私の不注意の為に、この人に尻拭いなんてさせちまった。情けない話だなぁ、もう。

 

 

「…わり。助かった」

 

「ん…よかった。………え、と」

 

「ん?」

 

「あの…怖かった…?ハサミ…」

 

 

遠慮がちにそう聞かれる。怖いぃ?私が?ねーよ。

 

そりゃ、鋏がどっか行ってちっとは安堵くらいしたかもしんねーけど、別に「やっべえええ、来てくれなきゃ死んでたわ。超怖かった」とか思ってねーし。

 

 

「馬鹿言うんじゃないよ。私に怖いもんなんてないの。魔女の攻撃なんて今更だし」

 

「そう…?」

 

「大体さ、世話焼きなのと一緒に戦ってるって分かってんだから、助けにくるだろうなって想像付くし」

 

「でも…なんか、ちょっと悪いし…顔色」

 

「………うるさいよ」

 

 

バレてるじゃねーかオイ。

 

あぁ、そうだよ。ぶっちゃけめっちゃピンチだったし、なんなら真っ二つになった自分のビジョンが見えちまったんだよ。これ、死んだかなってさ。

 

 

でも、それを口に出したりはしないし、するべきじゃないと思う。

 

だって、恥ずかしいことだろ。自分の感じた不安だの恐怖だの、そんなことを人に打ち明けるって。自分から弱さを晒してるみたいじゃん。

 

ていうか、どうでもいいんだよ別に。今、そんなことはさ。大事なのは…

 

 

「それよか魔女だよ魔女!これでこっちは二人なんだから、今度こそ仕留めんの!」

 

「ん。じゃあ…貴女、突っ込んで。サポートする」

 

「頼むわ。じゃ、行くぞ!」

 

「うん」

 

 

二人同時に走り出す。目指すのは勿論魔女。あの野郎、私をビビらせた代償を払わせてやる…!

 

 

「…!」

 

 

そう思って走る私に向かって、荊棘の蔦や使い魔達が襲いかかってくる。ここで一気に来るのか。向こうも本格的にこっちを潰すつもりらしい。

 

 

「めんどくせえ!」

 

 

道をこじ開ける為にパイルを構えようとしたけど、その前に年長さんが前に出て、使い魔や蔦を得物で弾き飛ばしていった。

 

 

「私、やるから。走って!」

 

「わかってる!」

 

 

年長さんを先頭にして突き進む。邪魔なものはこの人が全て捌いてくれるから、私は魔女だけに集中できた。

 

サポートするって言っただけあって、流石の仕事っぷり。曲がりなりにもチーム戦をやってた人だから、こういうのも得意なのか?

 

 

「…やっ!」

 

 

気合いの入った声と同時に、一閃。魔力の乗った年長さんの一撃が敵を散らして、ついに道が開いた。

 

魔女は疲れたか、観念したか。いずれにしろ、攻撃も、使い魔の群れも止んだ。走り続けたおかげで、標的はもう目の前。だったら…!

 

 

「今だよ!」

 

「言われなくても!」

 

 

前に出て、年長を追い抜いて、魔女のところへ急ぐ。すれ違う時に見た年長さんの体は、細かい傷でいっぱいで。

 

それを見て、心が痛んだ気がした。私を補助する為っつっても、相手の攻撃を何度も受け止めてるんだ。傷だって出来ちまうよな…。

 

 

「なぁー!」

 

「なにー?」

 

 

だったら、私はそれに報いる義務がある。その義務はもちろん、あの魔女をブッ倒すこと。

 

 

「あんたの武器さー!」

 

「武器がー?」

 

 

パイルに魔力を流し込んで、起動させる。「乗算」も発動させた。後はこれを、魔女にブチ込むだけ。

 

だがそこで、魔女が動きを見せる。あのデカい鋏が二本、私に迫ってくる。動きが早い。多分、事前に仕込んでたんだろうな。

 

攻撃が止んだと思わせて、確実に殺せる距離まで引き付ける気だったか。やるじゃん。

 

 

 

でも、ダメ。

 

 

 

私をぶった斬ろうとした二本の鋏は、私の後ろから飛んできた、同じく二本の物体に、大きく弾かれる。

 

鋏を弾いたそれらは落ちてきて、内一本を私が掴んだ。それ自体に「乗算」の魔法をかけて、上に投げた。

 

 

「なんでワイパーなのー!」

 

「知らなーい!」

 

 

投げたワイパーを、ジャンプした年長さんが掴む。「乗算」で長さが増したそれを、落下しつつ袈裟懸けに、魔女へ振り下ろしたのが見えた。

 

 

「そう、です、かあーっとぉ!!」

 

 

それと同時に、私も魔女へ肉薄。身体をブン殴って、そのまま杭打ち。溜めた魔力を直接叩きつけてやった。

 

年長さんの袈裟斬りと、私のパイル。その二つをモロに食らって、魔女は消滅していった。やたらグロテスクな中身を、盛大に撒き散らしながら。

 

 

 

 

 

 

 

結界が消滅して、元の景色が戻ってくる。変身を解いて、グリーフシードを回収。手持ちのものを使って、ソウルジェムを浄化することも忘れない。

 

 

「はい。まだ使えるから」

 

「ん……。ありがとう」

 

 

浄化する年長さんを眺めつつ、グッと体を伸ばす。多めに魔力使ったのもあって、ちっと疲れたな…。

 

 

「はぁぁぁぁ………。……あのさ、ありがと」

 

「?なに…?」

 

「さっき。助けられまくった」

 

「あぁ…。うん、いいの。私が、そうしなきゃって…したことだから…」

 

 

鋏のこととか、攻撃を捌いてくれたのとかもそうだけど、この人、終始私に合わせて動いてた感じするし。

 

私をほっといて、年長さんが一人で倒しちゃうことだって出来たはずなのに。

 

 

「てかさー。前のチームじゃ、あんたがちゃちゃっと倒してばっかだったんでしょ?何で私に合わせてくれたのさ?」

 

「えっと…。尊重…してあげた方が、いいのかなって。戦うって気持ち…」

 

「尊重」

 

「私、ほら…言われたから。過保護過ぎて、成長…出来ないって…」

 

「あぁ…」

 

 

公園で怒鳴られてたあれか…。やべ。辛いこと思い出させたか…?

 

 

「だから、せめて一緒に戦って…助けようって、思った…。本当は心配だけど……私、頑張って、変わろうって…」

 

「………そっか」

 

「ん……」

 

「あのー……なんか、ごめん。なさい」

 

「あ、いいの。それは。全然……。うん…」

 

 

うわぁ、微妙な雰囲気になっちゃったよ…。てか、無理してたんだな。私に合わせてたのは…。

 

でも、そっか。年長さん、今からでもやり方を変えようとしてるんだ。なんつーか、良いことじゃないかな。それは。

 

 

「まぁ、その…。大丈夫だよ。あんた、合わせるの上手かったもん。すぐ慣れるから」

 

「……ほんと?」

 

「ほんと。初めてであれは凄いんじゃねえかな。なんならホラ、私ばっか合わせてもらって、だらしねえっつーか」

 

「………」

 

「私も、そういうの直さなきゃならないんだろうし…。だから、頑張ろうよ。お互いさ」

 

「うん……」

 

 

年長さんが今度、どういうチームに入るのか。もしくは入らずに、その場その場で誰かと協力していく形になるのか、それは分からない。

 

でも、報われてほしいと思った。大好きな人達に尽くして、突き放されて、傷付いて。それでも、前に進む為に変わろうとする、この人の気持ちが。

 

 

「あーあ。なんか疲れたなぁ。結局大した成果も無いしさぁ…。も、帰るか。夕方だし」

 

「ん…。そう、しよっか?」

 

「おー。あ、そうだ。なんか喉乾かん?奢るわ」

 

「え、いいよ…。お金、出すよ…?」

 

「いーんだってそんなん。午前中に色々飲み食いさせてもらったんだから。今度は私の番」

 

「えー……」

 

 

えーじゃない。借りっぱなしは嫌なんだよ。年長さんとしては納得行かないだろうけど、ここはきっちり返させてもらう。

 

 

飲み物が買える場所を探して歩きながら、ああだこうだって話す。夕陽の眩しさを感じながら、二人で参京区の中を歩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んー?」

 

「ん。どしたの…?」

 

「や、なんか変わったのあるなーって」

 

「変わったの」

 

「ほら、あれ」

 

 

飲み物を探して年長さんと のそのそ歩く私の視界に、それは飛び込んできた。声を掛けてきた年長さんにも、指を差して示してやる。

 

 

私も今じゃすっかり神浜に馴染んだつもりだったけど、参京区であんなのは見たことがなかった。もしかして、最近になって出てきたのか?

 

 

 

 

 

 

キリッと冷えた幸せの水

 

フクロウ印の吸水屋さん

 

疲れた人のために無料で提供中

 

 

 

 

 

 

あんなことまで書いちゃって。水ったってタダじゃないだろうに。

 

変なの。伊達や酔狂、もしくは詐欺でやってるとしてもね。

 

 

 

でも、丁度いい。こっちは飲み物を探してたんだし、水でも全然あり。

 

あの吸水屋さんとやらが悪どいものなのかどうかは、直に接してから考えりゃいいだろ。

 

 

 

警戒心を内に秘めつつ、年長さんと二人、吸水屋へと近付いていった。

 

 

 






今回の話、及び本編の出来事は前話より前の時間軸ということになってしまい申し訳ないので失踪します。



マギレコ本編の出来事

・マギウスの翼に味方したフェリシアが、いろはの説得で再び仲間に。彼女の案内で参京院教育学園へやってきた一行は、ウワサを倒す為、学園から行けるという地下水路へ進む。
いろは や フェリシアが飲んだ水がもたらす不幸へのタイムリミットは、残り1時間と少しに迫っていた。

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