ひたすら雪かきをしたので初投稿です。
「観覧車は!!」
「もう近い!あと少し!」
「そう…っかい!」
女の子の攻撃をまた一つ かろうじて逸らしながら、年長さんからの返答に応じる。くそ、腕痛い…!
先輩達からの電話に出て、救援に来るように頼んだ私達。
その後、必死の思いで攻撃を凌ぎ続けてたんだけど、ようやく目的の場所が間近まで迫ったらしい。
でも、最後まで気は抜けない。この車を下りる前に、こっちがどうにかされちゃあ意味無いんだから。
「このまま突っ込む!」
「いいよ!」
「車、揺れるかも!掴まってて!」
「馬鹿!」
そんな余裕あるわけないだろ。
あの女の子の攻撃は段々激しさを増してきて、今となってはもう、両腕を使わなきゃ対応出来ない。
車が飛ぼうが跳ねようが好きにしろ。下りて戦えるようになることが何より重要なんだから、この際なるようになれだ。
「いくよ!」
年長さんが声掛けした後、エンジンの音が大きくなって、車がスピードを上げる。道路から外れて、広い草原の中に突っ込んだ。
「!」
「どぉ…!」
ガタガタ揺れて、体勢を崩しそうになる。道路みたいに整った場所じゃないんだから、そりゃそうだ。
「…!」
「やべっ…」
そんな中でも、女の子は私を逃がすつもりはないみたい。器用にバランスを取りながら、手刀を横薙ぎに振るってきた。こんな不安定な足場でよくやる…!
どうする。今はバランスを取るので手一杯になっちまって、防御が間に合うかは…。だったら!
「ブレーキ!!」
「!?うん!」
私が叫んだ途端、車がスピードを急激に落として、無理くりに停止した。その影響で体が大きく揺らされるけど、それは女の子も同じはず。
私がそう思った通り、私にチョップをブチ込もうとしてくれやがった目の前のこんちくしょうは、今度こそ体勢を崩した。
攻撃は揺れでキャンセルされて不発。なら!
「チャンス!」
「!?」
女の子の腕を、私の両腕でしっかり掴む。道路を走ってる時にもやったことだ。
その後にやることも同じ。力一杯、車外にブン投げる。女の子は空中に放り出されて、車から離れてく。
「車、止まったんだからさぁ!」
パイルを生成して、女の子に照準を合わせていく。
車が走ってる時は、足場が不安定だわ場所も狭いわで使えなかったけど、今ならいける。
しかも相手は空中に居て、身動きも碌に取れないはず。だったら当たる!
「おらぁっ!!」
パイルに魔力を流して、杭を打ち込む。魔力が衝撃波として撃ち出されて、女の子に見事命中。
そのままブッ飛んでいって、やがて草原に落ちてった。それでもまだ少し勢いが止まらなくて、草やら土煙やら巻き上げてる。
それを眺めながら、私は車から下りた。軽く溜息が出る。ああもう、ようやく抜け出せたよ…。
「あ…えと、大丈夫…?」
「どうだかなぁ…」
年長さんも運転席から下りてきて、私を気遣ってくれた。やー…大丈夫っちゃ大丈夫かなぁ。流石に疲れたけどさ。
「とりま、腕はほんと疲れたかな。痺れて。あー、あと魔力もそれなりに」
「それ…ダメじゃない…?グリーフシード、あるよ?」
そう言って、私に寄越す。曰く、「まだちょっと使えるから」だそうな。あー、これあれか。参京で魔女と戦った時の…。
受け取って、ソウルジェムを浄化する。うーん。グリーフシード、かなり穢れを帯びてる。限界だなぁこれは。
「ありがと。後は調整の対価にでもしときなよ」
「ん…。それで、あの。傷とかは…」
「それはいいよ別に。つーか、大して怪我もしてないし」
「血、出てるのに…?」
バレた。つーか、見りゃ分かっちゃうよね。
攻撃を凌げてたっても、完璧にとはいかなかったからなぁ。特に腕への負担がヤバくて、どうしても対応が追い付かない場面とかざらだったもん。
根性で直撃だけは避けられてたけど、それでも当たるもんは当たった。お陰であちこち傷だらけ。あの女の子の方が何倍も強いっていう、何よりの証だな。
「ばっかお前、違うから。これはアレ。化粧だからね」
でも、馬鹿正直に「怪我しました。痛いです」なんていうのも恥ずかしくて、無意味に誤魔化してみたり。
「…血化粧?」
上手いこと言ったつもりかオイ。
「後で、ちゃんとしてあげる…。えっと…消毒」
「そう…」
そりゃあどうも。いや、それよりもだよ。今はもっと大事なことがある。
「………来ないな」
「あ…女の子?」
吹っ飛ばしてやったっつっても、ただそれだけ。あの子はダメージなんてほぼ受けてないはず。
最初の戦いが三対一だったにも関わらず、結果があれだったんだもん。そう思うのも致し方なしでしょうよ。
「なんだっけ…。お昼、話してたよね。うわさ?とかって…」
「そう。胡散臭い噂話の裏に居たわけ。変な怪物がさ」
「あの子も、そうなの…?」
「私達はそう考えてるんだけど…」
だからこそおかしい。こっちの攻撃が通じないくらい頑丈で、パワーもダンチな存在。
すぐにでも立ち上がって、こっちに襲い掛かって来てもおかしくなさそうなもんなのになぁ。さっきのパイルはあの子と距離を離すことだけ考えて撃ったから、「乗算」も使ってないし…。
(まさかだけど、今度こそ諦めて帰ってくれた なんてことは…)
本当にそうならありがたいんだけどなぁ。けど、それはない。現にまだ、あの女の子の魔力を感じてるわけで。
さっきまであんな至近距離で大立ち回りやらかしてたせいかなぁ。なんかこう、心なしか魔力の反応もすごく近くに感じるっつーか…
「ごっ……!?」
なんて考えてる中、唐突に背中に走った、痛みと衝撃。
肺の中の空気が、ゴハッと吐き出される。何が起こったのかは分からないけど、自分の体が風を切って飛んでいってるのだけは確かだった。
「あっ…!く…っ」
そこに再びの衝撃で、地面に落ちたことが分かった。草原の緑が、視界にこれでもかってくらい映ってる。
勢いを殺し切れずに滑って行こうとする体を、両腕を使って無理矢理に起こす。一瞬逆立ちみたいな体勢になった後、両脚で地面に着地。何とか体勢を整えた。
(くっそ…!何だってんだよ!)
ダメージに顔を顰めながら、自分が今まで立ってたであろう場所に目をやる。
相変わらずブスッとした顔のままの女の子と、大層驚いてるように見える年長さんの姿が見えた。
(おい、嘘だろ。いつの間に後ろに居たんだよ!?)
年長さんと話してはいたけど、あの子が飛んでった場所から目を離してはいなかったのに。なのにどうして…。
「まさか、マジで瞬間移動…?」
走行中の車に追い付いてくるなんて、そういう力でも持ってなきゃ あり得ないだろって思ったし、私も叫んだけどさぁ…。
(今まで隠してたってことかよ…)
これが、俗に言う舐めプってやつか…?って私が考えてる間に、女の子はこっちに向かって駆け出してくる。
それを見た年長さんが慌てて後を追ってるけど、女の子の方が早い。追い付くのは無理か。
(あーもう!慎重に戦おうと思ってたのに、いきなり直撃受けちまって…!)
体力は大きく削られて、背中に負ったダメージもまだ残ってる。マズいって…!
それでも、ただ黙ってやられるつもりもない。せめて足止めにでもなればと思って、パイルを構えた。
「!」
だけど、私がパイルを撃ち込もうとする直前、女の子の後ろから突然何か伸びて来て、彼女の動きを封じた。両腕両脚に巻き付いて、これ以上進ませないようにしてる。
女の子を封じるものは、よく見ると鎖。それがどこから伸びて来てるのかを確かめてみると、鎖を引っ張りながら踏ん張ってる年長さんが見えた。
「年長さんか!?にしてもこれ…」
鎖なんて使えたのかあの人。いやでも、あの人の武器って車だよな。その一部なら個別に切り離して使えるって話だけど、鎖なんて車には…
「あ、チェーン!?」
気付いた。や、まぁ、車に使われるもんではあるけど…。
でもあれ、確か冬道用のもんじゃなかった?まさか、一部ならってそういう意味か。一般的に車に使用される部品やパーツなら可とかそういう…?
(いや、有りなのかそれ…?しかも車のチェーンにしては長いし…)
いや、それは今はいい。また年長さんに助けられて、私はピンチを免れた。それに比べりゃあ些細なこと。
「っ……!」
「うぐっ……力…!強いっ…!」
そんなチェーンを使った妨害も、あの女の子が相手じゃ長く保たないみたい。
四肢に巻き付いてるはずのチェーンを、それを握る年長さんごと強引に引きずって、女の子はまた前進し始めてた。馬鹿力め…!
「…」
女の子はそのまま、チェーンに縛られた腕をぎこちなく動かして、私に手のひらを向けてくる。
「今度は何だ…?」
身構えながらおっかなびっくり見てると、その手に魔力が集まって、球みたいな塊が出来あがって。
女の子はそれを、私に向かって撃って来た。
「!?うあっ…!」
魔力球が、私のすぐ近くに着弾。地面が抉れて、草やら土やら舞い上がる。
動きを阻害されながらの発射だったから、狙いが上手く定まらなかったのか。直撃しなかっただけマシったって、この威力は…!
(また新しい技かよ!あの野郎、どんだけ…)
「あっ!」
年長さんの、驚いた声。急いで目を向けて見えたのは、女の子が年長さんを投げているところだった。御自慢の怪力で、チェーンごと年長さんを引っ張ったに違いない。
「わあああ……!っと…!」
こっちに向かって、年長さんが投げられてくる。よろけながらでも なんとか着地に成功して、私に駆け寄ってきた。
「はぁ…っ。ごめん。貴女が攻撃されたの見て 力、緩んじゃった…」
「謝んなって」
この人がチェーン巻いてくれなきゃ、今頃私はもっとボロクソになってたかもしれないんだからさ。
それに、結果的にはこうやって合流も出来たんだもん。これで正解ってことにしとこうよ。
「あの子…強い、ね」
「なー…」
「それに、なんか…不機嫌みたい」
「んー…」
「貴女、なんか…しちゃった?」
「こっちが聞きてーんだよなぁ…」
四肢に巻き付いたチェーンを豪快に引きちぎるのを見ながら、軽く話す。こっちガン見しながらやってんのが最高にCOOLだよ馬鹿野郎。
年長さんも言ってるけど、なんで参京で会った時からあんな不機嫌なんだ…。
「つか、ここまで助けてもらっといてなんだけどさ」
「?うん」
「マジでさ、これ以上付き合う必要無いよ?駐車場のとこでも言ったけど、あんた無関係だし」
「………」
この場所に送ってきて貰っただけでも充分だものな。
道中で武器も貸してもらったりしたけど、年長さんはあくまで善意の協力者。戦力に数えるべきじゃないんだ。
……つってもなぁ。
「言っても無駄かもなー…。あんたには」
「ん。分かってきたね。その…私の、こと」
「はぁぁぁー…」
返ってきた回答に溜息。知ってた。この人、控えめな態度に見えて結構頑固っつーか。何言っても退かないんだろうな、こういう時の年長さんって。
「………」
なぁんか嬉しそうにしてるし。なんだよ、ニヤついて。表情変わんねーけど。
「まぁ、うん…。いいやもう…。そんじゃ、その。まぁ……なんだ」
言いながら、パイルに魔力を込めて、女の子に向ける。あの子もチェーンを排除し終わったみたいだし、丁度いい。
「最後まで付き合ってもらおうか…なっ!!」
杭打ちを作動させて、衝撃波を飛ばす。それを見た女の子は、最小限の動きで躱そうとしてた。
馬鹿め。誰があんたに当てるなんて言ったんだ。
「!」
女の子の、ちょっと驚いたような顔。その直後に、地面が捲れて、土が盛大に舞い上がる。
私が狙ったのは、女の子の近くの地面。さっきの魔力球のお返しだ。勿論、それだけが目的じゃないけど。
舞い上がった土は、ちょっとした目眩しになってくれるはず。この隙に!
「年長さん、行って!」
「わかった!」
女の子の所へ突撃するように、年長さんに頼む。本人が一緒に戦う気満々なんだから、ここからは頭数に入れさせて貰おう。
年長さんに追従して、私も女の子に向けて突っ込んだ。
「はっ!」
「!」
ワイパーを生成した年長さんが、女の子へ一閃。それをすかさず手刀で受け止めて、二人は鍔迫り合いの形になる。
「…!」
「…っ」
女の子はその状況を嫌ったのか、空いた片手で年長さんのボディを狙う。年長さんは身を引いて、その一撃を回避した。
「そこ!」
「これもだ!」
年長さんはそこから更に退いて、両手にハンドルを生成。フリスビーみたいに投げ付けた。私も、使い過ぎない程度に魔力を込めて、パイルから衝撃波を撃つ。
「っ!」
女の子はハンドルを平手で一気に叩き落として、衝撃波は蹴りで相殺。多分、脚に魔力を込めたんだ。
その後、両手に魔力を集中。さっき私に撃った魔力球を、今度は複数個作り出して発射してきた。
「私の後ろに!」
「あいよ!」
年長さんに言われて、彼女の背後に隠れる。直後、年長さんは車のタイヤを二つ生成。それを盾に魔力球を弾きながら、女の子に再度接近した。
『ぬんっ!』
「っ!」
二つのタイヤを女の子に押し付けて、私と年長さんで思いっきり蹴り飛ばす。タイヤごと吹っ飛んだあの子に向けて、パイルを構えた。
「もってけぇ!」
杭を打ち込んで、もう一丁の衝撃波。流石に最大出力とはいかないけど、それでもタイヤをブチ抜いて、女の子に直撃。あの子は地面を転がっていった。
ここまでやれば流石に…とも思う。でも、相手が相手だ。ここから更に畳み掛ける!
「年長さん!」
「うん!」
女の子を追撃する為に、走る。あの子も起き上がってきて、魔力球をブッ放しながら、私達の方に駆けてきた。
「づっ!痛ってえこれ…!」
「っ…!我慢!止まらないで!」
「分かってる!」
年長さんがまたタイヤを作って盾にしてくれるけど、数が多くて防ぎきれてない。魔力球があちこちに当たってすっげえ痛いけど、ここで足を止めるわけにはいかなかった。
「!!」
そのままお互いに近付いて、とうとう近接攻撃の間合いに入る。女の子は手刀を構えて、鋭い突きを繰り出してきた。
「今度は、これ!」
年長さんが、車のドアを生成。それで突きを防ぐけど、威力が強過ぎたらしい。ドアは真ん中からへし折れて、突き破られて出来た隙間から、女の子の指が見えてた。
「今!」
だけど年長さんはすぐ横に回り込んで、チェーンで女の子を拘束。そのまま、真上に放り投げた。
「決めて!!」
「オッケェ!!」
落ちてくる女の子の真下に陣取って、パイルに魔力を込める。今度は全力。正真正銘、最大出力だ。勿論「乗算」も付けてある。
チェーンの拘束で、女の子はグルグル巻き。さっきみたいに引き千切ってる時間だって、もう無いはず。だったら、貰うぞ!
「これでっ…!どぉだあああああああ!!」
構えたパイルの先端に女の子が落ちてきて、ドスッとした重みが伝わってきたのと同時。私は杭打ちを作動させて、パイルに溜めた魔力を一気に解放した。
固有魔法で強力になった衝撃波が自分の周囲にも伝わって、空気がビリビリって震えてるのが分かる。
余波を浴びてしなる草達と、巻き上がる土埃。そして衝撃波で砕け散ったチェーンの欠片だけが、私の視界を支配していた。
マギレコ本編の出来事
・天音姉妹が発動させたドッペルに追い詰められた いろやち。この力は解放の証であると説く姉妹の話を遮り、尚もウワサの撃破に向かおうとするやちよに対し、天音姉妹は控えていた黒羽根達と共に道を塞ぐ。タイムリミットは、残り30分まで迫っていた。