知られることのない話   作:まるイワ

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フォークロアの面々の過去がキツ過ぎて辛いので初投稿です。





4-14 休日の終わり

 

 

 

「カイホー…?」

 

「何のこと…?それに、宿命って」

 

 

私も、白ローブに言われたことを反芻する。なんか若干馬鹿にされた気がしないでもないけど、それは今はいい。

 

解放。宿命からの解放。「全ての魔法少女を〜」とか言ってたな。魔法少女の宿命ってなんだ。

 

 

「いまいちピンと来ませんけど…それは例えば、魔女との戦いのことだったりですの?」

 

 

あー、なるほど。

 

確かにこっちは命張ってるわけだし、それに対して疲れとか億劫さとか感じる時もある。私生活の中にそれをねじ込んでる訳だからな。

 

にしたって、宿命なんて御大層な言い方する程なのそれ?

 

 

「まぁ、それもそうと言えばそうかしら?でも違う。NOよ、NO」

 

「あ、そう。じゃ、正解聞かせてもらえる?」

 

 

適当に流して、続きを促す。妙に勿体つけられても面倒だし。

 

まどろっこしいのも、焦れったいのも嫌いなんだよ。違うならさっさと答えを教えて貰おうじゃん。

 

 

「いいわよ。じゃ、教えるけど」

 

 

いいんだ…。

 

 

「隊長!それよりも本題に…」

 

「え?………あ、あぁー!うん!そうね。そう!本題よ本題!」

 

「もー、忘れないで下さいよ!」

 

「ずっと動き止めてるのもキツいんですからねー」

 

「言うって!今言うから!」

 

 

話そうとした白ローブを、黒ローブ達が遮る。

 

いや、先に話すことがあったんなら、まずそれを話しなさいよ。こっちの聞きたい話が流れちゃっただろ…。

 

 

「ホンダイってなに?魚?」

 

「おバカねー、アンタ!どーしても話したいことがあるってことよ!」

 

「へー。じゃー、なに?カシウスの士のヨージって」

 

「マギウス。マギウスの翼ね。OK?じゃ、本題ね」

 

 

マジ子のバカっぷりも軽くあしらって、小さく咳払いをしながら、白ローブは続けた。

 

 

「はっきりと言わせてもらうわね。アンタ達、これ以上うわさに手を出すのはやめてちょうだい」

 

「あん?」

 

「うわさって」

 

「だから!アンタ達、前から何かと嗅ぎ回ってたでしょう!それをやめなさいって!」

 

 

それが本題なのか。それを言い渡す為に、私達の所まで。

 

発言からして、白ローブの言う「うわさ」ってのは勿論、私達が散々情報を探し回ったもののことだろ。でも、どうしてこいつらはそれを知ってるんだ。

 

 

「…そういえば貴女達、中央区でもうわさのことを言ってましたわね。邪魔をするなとも」

 

「?そうね。それが?」

 

「うわさを探るという行為が貴女達にとって不都合なのだとするなら、うわさと近しい関係にある可能性が高い」

 

「ふうん?」

 

「うわさに潜む怪物を利用して何か企んでいるか…。それとも、まさかあれらを生み出したのは、貴女達なのか…」

 

「…………」

 

「図星です?その沈黙」

 

 

先輩の推測を聞いた白ローブの表情が、ちょっと硬くなったように見えた。

 

フードからチラッと見える目が細くなって、奴は深い溜息を吐く。

 

 

「なによ、お利口じゃない!そう。解放の為に必要なのよ。うわさは」

 

「やはり…」

 

「あんなバケモンが出てくる様な噂話がか。冗談キツいって」

 

「よかったわね?冗談なら」

 

「一般人だって巻き込んで」

 

「救われなきゃだもの。人知れず絶望してる女の子達の為に、少しくらい災難を被ってくれたっていいじゃない」

 

 

「どうしても抵抗はあるけどね」なんて続ける。良心は普通にあるんだな。

 

それなのに他人をそんな、生贄みたいに考えて。正気でそんなことやる奴らか…。

 

 

「んー…!なんか分かんないけど、人にメーワクかけてるってこと、それ?」

 

「耳が痛い…。でもまぁ、うん。そういうことになるわよね?」

 

「よくない…と、思う。ないの?他の、やり方…」

 

「言われても困るわよ。そうするのが良いって、マギウスが言うんだもの」

 

「マギウス…?」

 

 

マギウスって。それはお前ら、愉快なローブ5人組のチーム名のことじゃないのか。

 

なのに、なんだ「言う」って。変だぞ。

 

 

「とぉにかく!!これ以上うわさのことでウロチョロされて、万が一消されでもしたら困るの!手を引きなさい!」

 

「いや…」

 

「嫌だと言ったら」

 

 

白ローブがそう言いながら、私達に向かって手をかざすと、何処からか剣みたいな武器が出てきた。それも数本。

 

それをそのまま、こっちに突き付けてくる。

 

 

「ちょーっと、痛い目見るかしら!」

 

「………」

 

 

こいつ…こっちが縛られてるからって。なにドヤってんだよ。イラつく顔だ。

 

 

「言っても、無理だと思うけどね。うわさを消すなんて!」

 

「あ?」

 

「うわさに関わって、でもボッコボコにされて逃げ帰るような、弱っちいアンタ達じゃね!」

 

「なんだとコラ」

 

「最近邪魔になってきた連中には西のベテランが付いてるけど、そっちにはそういうの居ないみたいだしね」

 

「聞けよオイ」

 

 

聞き捨てならねーんだが?そんな如何にも没個性ですって感じの量産タイプみてーな衣装着てる奴らに弱っちいとか言われたくねーんだけど。

 

だったらテメーらも戦ってみりゃいいだろ、あの化物共と。絶対ぇヒーヒー言うから。

 

 

「ま、いいのよそれは」

 

「よくねーんだけど?」

 

「で、どう?お返事の方は。悪いこと言わないから、首は縦に振っとくのがいいわよ!」

 

「だから聞けよ。あーもう、お前…!」

 

「NO」

 

「えっ…。先輩?」

 

 

妙に人の話を聞かない白ローブに軽くキレそうになった時に聞こえてきた、否定を表す言葉。

 

私が口に出した通り、それは先輩が言ったものだった。

 

 

「んんー…?聞こえなかったわね。今、なんて?」

 

「『NO』と言いました。耳が遠くていらっしゃるの?まだお若いのに。可哀想」

 

「ほぉぉぉぉぉん!?」

 

「え…煽っちゃうの、そこで…?」

 

 

年長さんに同意。

 

私やマジ子にはたまに冗談でそういうことする人ではあるんだけど、基本的に他人への態度とか対応には配慮してるイメージあるし…。

 

 

「あのね、状況分かってる?そっちは動けない!こっちはその気になれば、命を奪うことだって出来る!分かったら、言葉には気を付けて…」

 

「それが意気地無しのすることだというのが、お分かりにならない!」

 

「なんてぇ!?」

 

「自信に溢れたその顔と態度が、私達を縛り付けたという安心から出たものではなく、単にそういう気質の女だからというのであれば、ハナから拘束などしなければよかったでしょうね!」

 

「それは保険だって…!」

 

「ほら!対等な状況で話すことを恐れるから、みみっちい考えを持つ!言葉だけで穏便に終わらせてみせる気概が無い。腰抜けですわ、貴女!」

 

「ッッ……!アンタねえッ…!!」

 

 

や、どしたぁ!?そこまで言う人だったか、あんた!?

 

そりゃあ私だってちょっと腹立ってきてたけど、だからってこっちの生き死にを握られてるのも事実だろ。下手に刺激したら…!

 

 

「いぃぃわよぉぉぉ!?そんなに言うならねぇ!血の一滴も流させてあげるわよ!」

 

「そうしますか?」

 

「え、マジで?ちょちょちょ、先輩!ヤバいって…!」

 

「えっと、落ち着こ?どっちも…。ね?」

 

 

ほらぁ、言わんこっちゃない!怒らせ過ぎだって!

 

白ローブはこっちの静止の声なんて聞こえてないのか、今にも私達を攻撃しようとしてる。なんとなく沸点低そうだなぁこいつって思ってたらこれだよ!

 

 

「満足なんでしょっ!これでっ!!」

 

 

怒り心頭の奴さんはついに、その構えてた腕を勢い良く振り下ろす。そしたら次の瞬間、私達の目の前で静止してた剣状の武器が動き出して、突っ込んで来た。

 

 

「おぁぁー!?」

 

「マジ子さん!魔法を!」

 

「え!?あ、はいー!!」

 

 

果たして、私達を傷付けるはずだった剣数本は、身体に刺さりながらもダメージを与えることは出来ずに、辺りに水滴を撒き散らしながら通り過ぎてった。

 

私達四人の全身が水に変わって、そのままザバッと地面に落ちる。

 

マジ子の固有魔法が発動したってことを、私はそうなってからようやく理解した。纏めて縛られて全員が密着した状態だったから、四人とも水になったんだ。

 

 

「えっ!?隊長!奴らが消えて…!」

 

「拘束、解けちゃいましたよー!?」

 

「落ち着きなさい!これは固有魔法でしょ!消えたんじゃないんだから落ち着いて…!」

 

「隙有りですわよ!」

 

 

動揺する、マギウスのやつら。そこを突いて、先輩は次の一手を手早く仕掛けに入る。

 

固有魔法が解除されて、私達の体が、元の姿に戻った。

 

 

「差し上げますわ!」

 

「なにを…!うあっ…!」

 

 

先輩が、その場でジャンプしながら回転。両手には幾つかのカンテラ。

 

それをあちこちにバラ撒いたことで、私達の周囲で爆発が起きて、煙が立ち込める。器用なことするなこの人…。

 

 

「今です!大学生さん!」

 

「ん!え、なに…?」

 

「車が武器なんですわよね!乗せてください、全員!」

 

「えっ…!?う、うん。わかった」

 

 

言われるままに年長さんが車を生成して、私達はそれに乗れって急かされる。

 

さっきから何か先輩の押しが強くて困惑するけど、この人は私達のチームの司令塔だ。取り敢えず指示には従って、車に乗り込んだ。

 

 

「このまま突っ込んで下さい!白ローブが居た方向に!」

 

「え、それ、その…轢き殺…!?」

 

「実力があるなら避けるでしょう!そうでないなら、アレはへなちょこ!!」

 

「や、言い方さ!?」

 

 

え、ほんとなにさっきから!?キレてる?キレてるんですか?ねえ!

 

 

「さ、行ってくださいまし!」

 

「お、おっけえ…!」

 

 

車にエンジンがかかって、前進。そのままスピードを上げていって、未だに残る爆煙に向かって突き進んでいく。

 

 

「最大戦速!!」

 

「艦船じゃねーんだよ!?」

 

 

なんかもう、ただ単にボケかましてるようにしか見えねーんだけど。この人、勢いで喋ってるんじゃないの…?

 

 

「隊長ー!辺りが見えないです!どうしますー!?」

 

「とにかく、煙の範囲から逃れるのよ!視界を確保して、それから一旦集合を…」

 

 

煙の中に突入したところで、仲間に指示を出してる白ローブの声が聞こえてきた。爆発で怯んだままで、その場からは動いてないらしい。

 

これヤバくない?最悪、車の真正面にあいつが位置してるってこと?それだとマジで轢かれるんだけどあの白いの。

 

 

「見つけましたわ!お退きっ、白いの!」

 

「え!ちょっと、なによ!?」

 

 

そんなこと考えてる内に、先輩がとうとう白ローブを視界に捉えたみたい。うわぁ、本当に車の真ん前に出てきたし…。

 

 

「ぬおぉぉぉぉぉぉぉうっ!?」

 

「わぁ…。すごい反り…」

 

 

流石に、隊長って呼ばれてるだけあるらしい。白ローブは車の登場で不意を突かれたであろうにも関わらず、突撃を見事に避けた。

 

めっちゃ背中反って躱してたな…。すっげえ頑張ったんだろうなあれ…。

 

 

「くぅっ…!待ちなさい!」

 

 

こっちが見つけたってことは、向こうに見つかったってこと。私達を逃す気は、やっぱり無いか。

 

体勢を素早く立て直して、こっちを追ってきた。

 

 

「このまま逃すと…!?」

 

「よいしょ…と」

 

 

けど、今現在ノリにノった我らが先輩は、そんな事を許すわけがなかった。

 

デカいカンテラを生成して、持ち上げて構える。後ろに向いてシートにドスッと片脚を沈めたら、準備完了。

 

 

「大サービス」

 

「冗談じゃないわよ!?」

 

 

脚に急ブレーキをかけて、慌てて踵を返そうとする白ローブが見える。

 

無慈悲なことに、先輩はそこに躊躇無くえいやっと、カンテラをブン投げた。

 

 

「え、待って!待っ…!わあああああああああああ!!」

 

 

巻き起こる大爆発と響き渡る悲鳴をバックに、私達を乗せた車は煙を完全に振り切り、マギウスの翼から逃れて、距離を取る事に成功してた。

 

 

「隊長!?え、どうしたんですか隊長ー!?」

 

「ちょ、集合!隊長の魔力探って!とりあえず全員集合ー!」

 

 

部下の黒ローブ達らしき声が聞こえてくる。自分達のヘッドの絶叫聞こえてきたんだもんね。そりゃ心配もするか…。

 

 

「さ、締めましょうか。皆さん、下りて」

 

「おぉう…」

 

 

まだ何かする気なんだ…。まぁ下りるけど…。

 

 

「で、こうします」

 

「わっ」

 

 

さっき白ローブに投げたのよりも大きいカンテラを作って、ドカッと車に乗せる。デカ過ぎてハミ出してるんだけど…。

 

 

「マジ子さん、これを水に」

 

「うん…よくわかんないけど」

 

「で、赤さんは車とこの水に『乗算』を」

 

「はいはい…」

 

 

カンテラが大量の水に変わって、車内がちょっとしたプールになる。私は指示通り、それと車の両方に「乗算」をかけた。

 

 

「あの…これ、どうする、の…?」

 

「それは、これから見ていただければ。最後に、赤さん」

 

「…なに」

 

「『乗算』付きパイルで吹っ飛ばして下さい。この車」

 

「………」

 

 

唖然。それはなにか。この魔力でギッチギチになった車に更に魔力でブーストかけて、ドデカい爆弾として使おうってことかよ。

 

 

「や、幾らなんでもやり過ぎじゃあ」

 

「ん?」

 

「やります…」

 

 

司令塔の言うことは絶対。先輩の謎の圧力に屈した私は、「乗算」付きパイルで衝撃波を発射。それで魔力塗れの車を、吹っ飛ばして送り出した。

 

やがて少し遠くでバカみたいな規模と威力の爆発が起きて、その爆風が、私達の髪や衣装を殴り付けて、はためかせる。

 

チラッと先輩の方を見てみると、すっげえやり切ったような、満足したような笑みを顔に浮かべてた。

 

割と引くわ。聞こえてくる五人分の叫びを聞きながら、そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、少し質問に答えていただきたいのですが。」

 

「くぅぅぅ…!」

 

 

あの後私達は、車爆弾を食らって地面に伸びてたローブ達を包囲。各々武器を構えながら、質疑応答のお時間となった。

 

あのー、先輩?これもあんたの言う、意気地無しの行いに入るんじゃあ…?

 

 

「ではまず、うわさとはなんです?ただの噂話でないのは明白。何の為に存在しているんですの」

 

「…言ったでしょ。魔法少女の解放の為。私達の目的を達成する為のものよ」

 

「あの怪物は?」

 

「あれも、うわさの一部よ…。うわさを確固たるものにするのと同時に、噂話そのものを守る為に存在する。私達はウワサって呼んでるものよ…」

 

「ウワサ…。うーん…」

 

「マジかぁ…ヤバいじゃん、それ…」

 

 

マジ子がやけに神妙な顔するもんだから、どうしたって聞いてみたら、「どっちも同じ名前じゃん…マジややこし…」だって。

 

いや、分かるけども。分かるけどお前…。

 

 

「うわさが解放に繋がると言いますけど、具体的にどういうことなんですの?」

 

「知らないわよ…。私達はうわさを監視、護衛しろって指示に従ってるだけであって、詳細な情報を知らされてるわけじゃ…」

 

「嘘吐いてます?それ」

 

「違うわよ!私、願いのせいで嘘は吐けないのよ!?聞かれたことには正直に答えちゃうけど、知らないことは知らないとしか言えないんだからね!」

 

「あ、ちょっと隊長!?」

 

「え?あっ!!」

 

「あ、なるほど。そうなんですのね。ふうん…」

 

 

一転して追い詰められて余裕が無くなって来たのか、白ローブがそんな事を言う。

 

え、マジかそれ。じゃあ、こいつに質問するだけで、簡単に情報が…?プライベートな事情を知っちまった罪悪感もあるけど、ここはチャンスか…!

 

 

「じゃあ、さっき言ってたマギウスって?マギウスの翼とは違うのか?」

 

「私達の上司よ、上司…。トップ。マギウスの為に働くのが、私達マギウスの翼。うわさを作ったのだって、マギウスらしいわね。」

 

「マジか!それって、えっと……ソーゾーシュってやつ?」

 

「あの。翼って…五人だけじゃ、ないの…?」

 

「もちろん。いっぱい居るのよ。救われたいって子はね…」

 

 

なるほど…。マギウスの翼ってのは、チームの名前なんかじゃない。もっとデカいもの。組織を指す言葉だったってわけか…。

 

 

「では、そのマギウスの正体はどなたなんです?勿論、ちゃんと本名があるんでしょう?」

 

「それは…ええ、そうよ。まず、ア…」

 

「あの!隊長、ダメです!これ以上、部外者に私達のことを話すのは!」

 

「それはそうよ!そうだけど、でも、私…」

 

「私達が、声張り上げます!隊長の声、消してやりますから!」

 

「そもそも組織の名前とか目的とか、そういうのも基本話しちゃダメってルールなんですからね!」

 

 

あ!くそ、余計な横槍が…!

 

 

「なら、最後に聞かせろ!お前らの本拠地の場所は…!」

 

「それは」

 

「わ、わあああああああああ!!」

 

「うわー!!うわー!!」

 

「ダメー!!ダメでーす!!聞ーかーなーいーでー!!」

 

「わ、うるっせ…!」

 

「……にあるの。…これでいい?」

 

「はー…はー…。う〜…なんとかなった…」

 

 

あぁもう…!遅かった…!もう何聞いても無駄か、これ…?

 

 

「ナイス!ナイスよアンタ達!持つべきものは有能な部下ね!」

 

「でも隊長〜…この状況どうにかしないと、私達の喉が先に…」

 

「そう来たかぁー!」

 

 

…あれ。案外そうでもない?

 

だったら、適当に質問攻めにでもしていけば、後は時間の問題で…

 

 

「いけない!皆さん、避けて!」

 

「へ!?先輩、何言って…!」

 

「赤ちん、上、上!」

 

「上…ッ!?」

 

 

突然の、先輩の警告。マジ子に言われて、空を見る。

 

そしたら、私達目がけて降ってくるものがあることに気付く。そしてそれらは、魔力を帯びたものだった。

 

 

「ッ…!」

 

 

急いで飛び退いたところに、空から来たものが次々刺さっていく。

 

しかも これまた器用に、私達の居た場所にだけ。マギウスの連中は避けてる。どう見てもそう。

 

地面に幾つも突き立ったものを見ると、鎖の付いた刃物や、そこそこの大きさの剣みたいなものだってのが分かった。

 

…オイ、どっかで見たな。これ。

 

 

「全く。何か知らないが、馬鹿みたいに叫んで…。何してる、こんな所で…!」

 

 

武器の次は、数人の人影。どこからか降ってきて、何人かは私達を牽制するみたいに、武器を構えながら様子を伺ってきてる。

 

色は黒ばっかりだけど、身に着けてる衣装は間違いなく、今し方私達に囲まれてた五人組と同じもの。つまりは…

 

 

「こいつらも、マギウスの翼…!」

 

 

チームじゃなく、組織。嘘は吐けないっていう白ローブの言葉は、確かに本当だったんだな。

 

 

「あ、アンタ達…!まさか援軍!?ありが…」

 

「馬鹿を言うな!退くぞ。撤退だ…!」

 

「え!逃げるの?」

 

「ミザリーウォーターが消されたと連絡が入った。それを含め、今後の対応を話し合わなくてはならない」

 

「うっそ!消したのって、例の…?」

 

「そうだ。それに、そろそろ日も暮れる。今日はこれまでだ…!」

 

「……わかったわよ」

 

「…よし。行くぞ」

 

 

何かが消されたとか話し合うとか聞こえてくるけど、よく分からない。退くっつってるってことは、こいつら、逃げる気なのか?

 

 

「おい、待てって。まだ話は…!」

 

「おやめなさい、赤さん」

 

「先輩…。いいの?」

 

「こちらは魔力を大量に使い、数でも劣っている。このまま戦うと、無事では済まないかも」

 

「………」

 

「ある程度の情報を得ることは出来ました。充分です。だから…」

 

「……わかった」

 

 

真剣な顔だ。さっきまで謎の勢いを発揮していた輩と同じ人とは思えない。

 

でも、言うことには従う。それは、先輩が指揮官役だからってのもあるけど、それだけじゃない。

 

これ以上やってもこっちが痛い目見るかもってのが、本当は、私にもなんとなく分かるから。だから、ここまで。

 

 

「無駄に争う必要はない…そちらも同じか。賢明な判断だ」

 

「それはどうも」

 

 

こっちが戦闘の意思を無くしたのを理解したのか、後から来た黒ローブの一人が言う。

 

 

「我々は退かせてもらうが、その前に警告だ。うわさに深入りしても良いことは無いし、マギウスの翼に歯向かうことも、やめた方がいい」

 

「その言葉に、強制力などあって?」

 

「こちらの言葉を聞かなくても、結果は同じこと。片手で数えられる程度の魔法少女が集まったところで、止められない。私達も。マギウスも」

 

「………」

 

「邪魔をしなければ、貴女達だって解放される。魔法少女の、その宿命から…」

 

「さっきも聞いたんだよな、その宿命っての。なんなん。それ」

 

 

溜息を吐いた黒ローブは、私の質問に答えることはないまま、背中を向けて足早に去っていく。おい、無視かこの野郎。

 

 

「ふんだ。命拾いしたわね!でも、覚えておきなさい!目を付けられたのよ、アンタ達は!」

 

「あん?」

 

「マギウスの翼の黒羽根、白羽根…その中でも優れた者だけが選ばれ結成された、五人のスペシャルチーム…。そう!私達、『特務隊』にね!」

 

 

黒ローブの次は白ローブ。帰るなら帰るで、さっさとすりゃあいいのに。お前の部下達見てみろ。すっげー帰りたそうにしてんぞ。

 

つーかなによ、特務隊って。選ばれたとか言ってるけど、要するにエリートってこと?こいつらが?

 

 

「なーんか、ね」

 

「うん。マジで、なんか…」

 

「ちょっと。なによその態度は!そもそもねー!既にある意味、私達の計画に手ぇ貸してるようなもんでしょうよ!そこの赤いアンタは!」

 

「え」

 

「だったらもうちょっと協力して、解放の日まで精々 大人しくしてなさい!」

 

 

ズビシッて、白ローブに指をさされる。え、何それ。名指しかよ。

 

つーか協力?私が、お前らにか。

 

 

「身に覚えがねーんだけど」

 

「でしょうね!でもいいのよ、それで。知らないならそのまま、なんか釈然としない感じでずっと過ごしてりゃいいわ!」

 

「あ、質問いいすか」

 

「それやめて!」

 

 

イラッと来たから、白ローブが勝手にゲロった弱点を突っついてやる。

 

本当に質問してもよかったけど、多分また部下の妨害があるんだろうし、これでいいよもう。

 

 

「おい。何時まで話してる!退くと言ったぞ!」

 

「あー、はいはい!分かってるってば!行くわよ、アンタ達!じゃあね!」

 

「あ、はーい!それじゃっ」

 

「さよならー、皆さん」

 

「あの…そういうことで…」

 

「もう変なことしないでねー」

 

 

焦れたらしい黒ローブの言葉に返事を返して、白ローブと部下の4人は、こうして私達の前から去っていった。

 

全員が一声掛けていくっていう、無駄に律儀な一面を見せながら。

 

 

 

 

 

大人数が来て、そして帰っていった、観覧車の草原。今はもう、私達四人だけ。さっきまでドンパチやってたのが嘘みたいに、急に静かになった。

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……。あーもー…」

 

「………ふぅー」

 

 

ここまで溜めに溜めた鬱憤を、深ーい溜息に乗せて、一気に吐き出してやる。先輩もそうしなきゃやってられないらしい。当たり前だわな。

 

 

「なんか今日はこう…あれだな」

 

「ええ…。あり過ぎましたわ。色んなこと」

 

「でもさー、よかったじゃん。アタシはちょっとよくわかんなかったんだけど、とりあえず、探してたジョーホーは手に入ったんだよね?」

 

「探してたというか、それよりももっと重要なものといいますか…。でもまぁ、その通りですわね」

 

「また新しい謎が生まれちまったけどなー…」

 

「それも含めての前進です。良しと致しましょ」 

 

 

そんなもんかなぁ。まぁ、いいや。そういうこともあるってことにしとこ。

 

我ながら適当過ぎるとは思うけど、今日は夕方になってからずーっと体力と魔力を使うことになったせいで、とにかく疲れてる。もー、ヘットヘト。これ以上考え事なんて出来るかって話。

 

 

「今度こそ帰るベー、もー。腹減ったわマジで…」

 

「さんせー。てかさー!スマホ見たっけ、もう夜になりそうなの。マジあり得んくない?」

 

「暗くなってますものねー。じゃ、歩きながらでも、これを」

 

 

そう言って、先輩は懐からグリーフシードを取り出して、ソウルジェムに当てる。自分のを浄化し終わってから、マジ子に渡した。

 

 

「ん。アタシもジョーカかんりょー!じゃ、次赤ちんね」

 

「あー…。今確認したけど、私の結構濁ってんだよな。その使い差しだけじゃ…」

 

「じゃあ、はい」

 

 

困ってると、年長さんもグリーフシードを出してきて、すぐに私のソウルジェムに当てがった。

 

穢れみるみる吸われていって、後少しで元通りってとこまで綺麗になる。

 

 

「後は、ほら。そっちのグリーフシードで」

 

「ありがと。…でも、それ」

 

「ん…。公園で会った時、貴女がくれたの」

 

 

やっぱり。いつか使ってくれってことで、私がお詫びとして渡したやつだ。

 

 

「いいの?使っちゃって。もっとこう、なんか…」

 

「いいの。今使うべきだって、思ったから。だから…」

 

「……そっか」

 

「うん」

 

 

そう言われちゃあ、私からは何も言えない。年長さんにあげた時点で、どうするか、何時使うのかっていうのは、彼女の自由。

 

この人がこの使い方で納得してるって言うなら、それでいいんだよな。きっと。

 

少しだけ残った容量で自分のジェムを浄化した年長さんは、なんだか満足してるように見えた。

 

 

「さ。では、帰りましょうか」

 

「はいよー。早いとこメシだメシー」

 

「あ、じゃあさ。また3人でなんか作る?」

 

『却下』

 

 

先輩とハモった。ふざけんじゃないよ全く。

 

今日という日の空きっ腹に料理下手三人衆のクソ不味いものをブチ込まれでもしたら、流石に私も泣き喚く自信がある。

 

 

「じゃーどうすんのー?また冷食ー?」

 

「んー…お腹はそれでも満たされるでしょうけど、もっとこう、美味しいものが食べたいですわよねー」

 

「外食でもするかぁ?つか、お前も一緒に食うの?」

 

「え、なにそれー。いーじゃん、赤ちんのケチぃ」

 

「ダメっつってるわけじゃねーの。つか、だったらさー」

 

 

あーでもない、こーでもない。いつもは適当にパッと決めることも多いのに、こんな時に限って、晩飯をどうするかが定まらなかった。

 

 

「……あの」

 

 

そこに投げかけられた、一つの言葉。そして、一つの提案。

 

「良ければ、私が手料理を振る舞いたい」

 

あれこれと話してる内に、最早食欲を満たして、腹がいっぱいになれば何でもいいという身も蓋もない考えに至りかけていた私達は、満場一致で、年長さんのその一言に乗った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うめえええええええ……!超うめえええええ………ッ!!」

 

「染み渡る…。ティーンエイジャーの空きっ腹に極上の味わいが染み渡り、全身が歓喜に震えているのが分かりますわ…!」

 

「や、マジでウマいってこれぇ…。やべ、ウマ過ぎて泣けてきた…」

 

「そう、なの?でも、よかった…。お口に、合って…」

 

「もうね、ヤバいこれ。これに比べりゃ、アタシ達の作ったモンなんてゴミクズだよ!その辺の石ころ以下だよ!」

 

「え。あの…そこまで…?」

 

 

 

 

現在、先輩の家。私達は、年長さんの作った至高とも言うべき美味しさの手料理を、存分に味わっている最中だった。

 

 

年長さんは、私達が晩飯のメニューに困っていたのを気にしてくれて、おまけに駐車場に車を取りに行くついでにと、晩飯に使う食材まで買ってきてくれた。

 

 

しかも先輩の家までは、武器の車を生成して乗せていってくれたっていう、それはもう本当にありがたい話だってある。

 

 

だが、肝心なのはそこじゃない。先輩の家にやって来た年長さんが、買ってきた材料を使って作ってくれた、その手料理。それなんだ。

 

 

 

 

美味い。めっちゃ美味い。涙ちょちょ切れる程美味い。

 

 

 

 

今まで食べてた冷食だのコンビニ弁当だのの味が一気に霞んで、遥か彼方にブッ飛んでもう帰ってこない。それくらいに美味いんだ。

 

 

 

一心不乱に晩飯を胃袋にかき込みながら、思う。

 

 

・一緒に戦った。

・戦力として申し分ない。寧ろ頼りになる。

・少し構い過ぎるが、人間性には問題無し。

・うわさの事も知っているし、私達の目的、事情も理解している。

・現在フリー

・料理上手

 

 

 

 

 

 

『採用ォォォォォォォォォオ!!!』

 

 

 

「え、えぇ……?」

 

 

 

 

 

 

三人の馬鹿、もとい私達が、上がりまくったそのテンションのまま、勧誘(のつもり)の一言を声高に叫ぶのと、空になった皿を差し出して年長さんにおかわりをねだったのは、ピッタリ同じタイミングだった。

 

 

 

 

 

今日のメニューはトマトカレー。水は要らない。酸味と辛味が絶妙にマッチした、味わい深いその一品。

 

 

私達が以前、同じものを作って盛大に失敗したということなんて、とっくに忘れてしまっていた。

 

 

 

 

 





マギレコ本編の出来事

・ミザリーウォーターを撃破した、その帰り道。心配するいろはの説得の末に、フェリシアがチームに加入。みかづき荘に住み、万々歳を手伝うということになった。
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