ドッペルVer.にたまげたので初投稿です。
小さい頃から、人と触れ合うのが好きだった。
近付いて、話して、一緒になって遊んで。そうしたら、その人のことを好きになっていって。
好きな人と居られるのが嬉しくて、笑い合えると楽しくて。
そういう人達には、なんでもしてあげたい。自分の中にいつの間にか、そんな気持ちが芽生えていた。
明確な理由とかそういうのは、多分無い。自分がそうしたいって思った。ただ、それだけ。
「気配り上手だね」「親切だね」って、大人達は褒めてくれた。
友達も家族も「ありがとう」って笑ってくれて、私も、それがとっても嬉しかった。
「えー、では。年長さんのチーム加入を祝いまして」
「かーんぱーい!」
「ん」
「うん…かんぱい…」
マジ子ちゃんの一言で、私達の持つグラスがカチンッと、軽くぶつかる。
私がチームの一員になったから、今日はその歓迎会をしたいってことで、こうして先輩ちゃんの家に、改めてお呼ばれした。
「ね、ね!食べていい?いいんだよね、これ!」
「うん…。いっぱい、召し上がれ…」
「っしゃー!いただきまっす!」
私の返事を聞いたマジ子ちゃんが、テーブルの上に並んだ料理に、ウキウキと箸を伸ばしていく。楽しそうだなぁ。
乾杯する前から、こう、「待ちきれないっ!」って感じでジィ〜っと見てたもんね。なら、たくさん食べてほしいな。
「あまり急いで、あれこれと口に詰め込まないようにしなさいね」
「んも?もももー。んもも、んも」
「既にめいっぱい食べてますし…」
「あ。焦らなくて、いいからね。喉、詰まっちゃったら…危ないし」
「むもー」
「一応流し込めるように、注いでおくね。飲み物…」
「んぬっ!」
食べ物を口いっぱいに頬張って膨らんだ顔のまま、マジ子ちゃん、サムズアップ。なんだろう。美味しいってこと?それとも飲み物注いだの、良かったのかな…?
「つーかさ、よかったん?年長さん、今回の主役みたいなもんだけど」
「お料理、作ってもらっちゃいましたものね…。頼んでしまった私達も私達ですが…」
「うん。それは、全然」
主役が料理しちゃいけないなんてこと、無いはずだし。
それに、手料理を食べてくれるのは嬉しいから。
「そうなんですか?」
「ん。こういうの、やったことない。あんまり。だから、楽しい」
「なるほど…。でも、ありがとうございます。美味しいですわ、どのお料理も」
「なー。この唐揚げとか良いよこれ。千秋屋のやつとはまた違った感じで」
「そっか。好きなだけ食べて。赤ちゃんも、先輩ちゃんも…」
「先輩ちゃん…」
私に名前を呼ばれて、先輩ちゃんが渋い顔になっちゃった。あれ…。何か、いけなかったかな…?そう呼んでって言われたから、そうしてみたんだけど…。
「嫌、だった?名前…」
「あぁ、いえ。違いますわ。単に複雑なんです」
「複雑」
「年長さんは一番の歳上ですし、呼び方を統一するという意味でも丁度良かったんですわ。私はほら、貴女より歳下ですから…」
「あー…」
そっか。呼ばれたくないけど、我慢してるってわけじゃないんだね。それならよかった。
「先輩はいいだろ、それで。私なんて赤ちゃんだぞ」
お皿に取った料理をもぐもぐしながらそう言うのは、赤ちゃん。私が今のところ、チーム内で一番交流のある相手。交流って言うには、随分荒っぽい時間だったけど。
うーん…。それは私も思ってた。赤ちゃんはもう中学3年生みたいだし、この子からすれば、子供以下って言われてるみたいで、不快なのかな…。
「調整屋さんにもそう呼ばれてるし、別にいいんだけどさ。いや、ほんとは良くねーけど」
「マジ子さんみたいに、学友の方に付けてもらうって手もありますけど」
「居ねーだろ。私も、あんたも」
「………」
あ、前からそう呼ばれてはいるんだ。ていうか二人共、学校にお友達居ないの…?聞いちゃってよかったのかな…。
「あ、でも…」
「ん?」
「三人は、お友達…だよね。仲良しだし、あだ名で呼び合ってるし…」
ちなみに、私のあだ名は「年長さん」。赤ちゃんがそう呼んでたのを、そのまま使うことになったみたい。実際私が最年長だから、丁度いいかも。
まぁ、それは置いといて。
この子達、前に北養のお店で喧嘩もしてたけど、それも仲の良い証拠っていうか。やっぱりチームってだけあるよね。
…って思ったんだけど。
「んぐ…。ん!そりゃーもうね!マジでマブだからアタシら!ちょー仲良し!」
「ん〜……?友…いや、どうなんでしょうか…。でも、私としては割と…」
「………。友達じゃねーよ、別に…」
…あれー!?
見事にバラバラなんだけど…。え、友達なの?違うの?どっち…?
「あだ名で呼び合ってるのに…!?」
「アタシ、その辺よくわかんないんだけど…」
「赤さんが言ったんですわよ。その方がいいって」
「なんで…?」
「さぁ…」
先輩ちゃん、マジ子ちゃんと一緒になって、赤ちゃんの方を見る。三人分の視線を受けて、気まずそう。
ちょっと眉間に皺を寄せて目を逸らしてるのは多分、私達の言わんとしてることが分かってるから。
「…それは、お前……アレよ」
「アレ」
「コードネーム…みたいな…」
「当時、私が聞いた言葉と違うような気がするのですが…」
「幻聴でも聞いたんでしょ」
「や、目の前で話してたでしょう…」
何でかはわからないけど、はぐらかされちゃった。言いたくないことなのかな…?
気にはなるけど、話してもらえない以上は会話が進むわけもなく。
結局、その話はすぐに流れて、次の話題に移っていった。
取り留めのない話をしながら、料理でお腹を満たしていく。揚げ物、卵焼き、汁物、サラダ…。私が張り切って沢山作っちゃった、それらで。
うーん…。こうやって見てると、どう見ても友達同士にしか見えないんだけどなぁ…。
「ぷふー、食べたぁ〜…」
「やー、どれも美味かったよなぁ」
「ふふふ…。よかった。お口に合って」
リビングで寛ぐ赤ちゃん達からの嬉しい感想を聞きながら、お皿を洗う。
本当にいっぱいあったはずなのに、残さず食べてくれた。作った身としては、本当に嬉しく思う。
「あの…。なにも、洗い物までなさらなくても。お客様なんですのよ?」
「ありがとう。でも、したいの。私が…」
「そうですの?いやでも、うぅ〜ん…」
申し訳なさそうにしながら、先輩ちゃんが洗い物を拭いて、仕舞ってくれる。それもやるよって言ったんだけど、流石にそこまではって。
「終わったら、デザート食べよっか。冷やしてあるから」
「え。もしかして、ここに来た時、冷蔵庫貸してって仰っていたのは」
「うん。作った。家で」
「デザートあんの?マジかー!やったね」
「そこまでするかぁ?客ってさ…」
そこはほら、手土産とかって思ってくれたら…。にしてはやり過ぎかな?
皿洗いを終えて、用意したデザートをつつきながら、四人でまた色々とお喋りした。
「ふぅー…」
お風呂に入って、歯を磨いて、それからベッドに入る。何度も使ってきた掛け布団に、今日もまた包まれながら、目を閉じる。
(楽しかったなぁ。今日…)
歓迎会も終わって自宅に帰ってきた私は、眠っちゃう前に、昼間のことを思い返す。
この前、皆で一緒に戦った日。あの日の晩、私は三人に手料理を振る舞った。晩御飯を何にするか、難儀してたみたいだったから。
そしたらなんかこう…気に入られちゃって。カレーを食べ終わる頃には、チームに入ってくれって、必死にお願いされちゃった。
(採用ー!なんて大声出すんだもん。びっくりしたなぁ…。ふふ)
それでチーム入りを快諾しちゃう、私も私なんだろうけど。
(デザート食べてる時、色々聞かれたなぁ)
マジ子ちゃんが、「質問ターイム!」って。
北養で一緒にお昼食べた時もそれなりに話はしたけど、あの時は初対面だったし、改めて私のことが知りたいってことで。
年齢とか趣味嗜好とかから始まって、出身地とか、家族構成とか、まぁ色々。
昔は喜怒哀楽がすぐ顔に出る子供で、しかも泣き虫だったって話したら、意外そうな顔をされた。まぁ、そうだよね…。
(家族かー…)
私が生まれ育ったのは、宝崎市っていう場所。神浜からちょっと離れた、別の街。
そこで両親、お兄ちゃん、お姉ちゃんと一緒に暮らしてた。で、高校生になる頃にこっち来て寮に入って、免許取ったら、お父さんがお古の車を譲ってくれて…。
(最近、あんまり連絡取れてないや)
顔を見せに行くことも、そんなには。
便りが無いのは寧ろ良いことらしいけど、無さ過ぎるのも、きっと問題。近々、電話入れなきゃね。
上二人はもう何年か前に仕事に就いたし、実家からも出てるから、会える機会も少ないんだけど。
(二人がちゃんと一人暮らし出来るか心配で、様子見に行こうとしたっけ…)
でも、「構い過ぎ」って煙たがられちゃって、しかも「絶対来るな」って念押しまでされた。二人共そうだった。
それで、何日かの間 凹んじゃったんだよね。
お兄ちゃんもお姉ちゃんも、悪気は無かったのは分かってる。どっちも、一人の時間を大切にする人だったし。だけど、ショックでつい…。
(心揺れ動き過ぎだよ。魔法少女になる前の私…)
いつからそんなだったのかな。多分、結構昔から。小さい子供の頃からだった気がする。
(そういう心の弱さが嫌で、魔法少女になったんだよね)
幼稚園や、小学校低学年の頃は、まだよかった。大人も、友達も、家族も、「親切だ」とか「優しい」とか言ってくれて、最後には「ありがとう」って、笑顔になってくれて。
それを嬉しいって感じた私は、幾つになっても、そういう生き方を止めなかった。
好きな人達の助けになれる。そうすることで、私だけじゃない。相手だって、きっと嬉しい気持ちになってくれるはず。
それは、良いことなんだって、そう、思ってた。
(…………)
でも、違う。違ったんだ。現実っていうのは。
人間、年月が経てば、背丈だけが大きくなるってものじゃない。
学校に通い始めて、その生活の中で芽生えて育っていく、人格。自意識。段々と複雑になっていく、精神の構造。
その中には、自分のことは自分でやりたい。自身の手綱は、己が握っていたい。そういう、自立心のはしりのようなものを抱く人だって、居ると思う。
つまり、私の周りには、そういうしっかり者が多かった。ただ、それだけのこと。
(そうだよ。それだけ。それだけだから…)
時が流れて、進級する度に増えていく。私がその人の為に何かしてあげたいって思っても、やんわりと。時にはキッパリと断られる事が。
親切が過ぎる。あまりに構い過ぎ。そう判断されたのか、嫌そうな顔をされることもあった。苛立った声で、静止をかけられることも。
それは学友だけじゃない。兄や姉だって段々とそうなっていったし、時には両親にも言われちゃった。「気持ちは嬉しいけど、ちょっとお節介だよ」って。
最初はお互い笑顔になれたはずの「親切」は、いつの間にか、「余計なお世話」に変わってしまっていた。
それを恨んでるわけじゃない。ただ、理解できてしまったから。私の生き方は下手をすれば、人をダメにしてしまうかもしれないんだって。
好きな人達から突き付けられた、ハッキリとした拒絶の意思。
昔から傷付きやすくて、精神的に脆い私には、耐え難いことだった。
幼い頃からの生き方を否定されたような感覚に陥ってしまったから、尚更。
(そういうの全部、嫌になっちゃったんだよ)
だから契約した。ある日、悩んで悩んで泣きそうになってる私のところに現れた、キュゥべえと。
『傷付いたら、顔に出ちゃう…。そういう弱い私のこと、嫌なの…。だから、それを無くして…!』
拒まれて、傷付いて、でも生き方を変えられないままの私は、願った。
『どんなことを言われても…。どんなことがあっても…。簡単に動じたりしない、強い自分をちょうだい!』
そうして、手に入れた。何を言われても、感じても、容易には揺れたりしない精神を。
そうして、失った。今まで豊かに変化させてきた顔の、その表情を。
何も思わないわけじゃない。感じないわけじゃない。
でも、確かに私の心はあまり動かなくなって、顔に至っては、感情を表す為に表情筋を使う機会なんて、ほぼ無くなってしまった。
「平面化」の固有魔法は、波立つことも、起伏に富むこともない私の心を、端的に表したものなのかもしれない。
(これで…ちょっとは変わるって、思った…)
そんなわけない。生き方を変えない為に願ったんだから、何も変わらない。今の、私の顔と同じ。
結局私は、今現在も要らない世話を焼く厄介者で、それが誰かを苛立たせていく。
『たった一人におんぶに抱っこじゃ、チームの意味、無いじゃないですか!』
だから、チームを組んでたあの子達にもウザがられたし、追放なんてところまで行ったんだ。
(結局、悪かったのかな…。私が、全部…)
人を好きになっても、「なんでもしてあげたい」なんて思わなきゃよかった。
生き方なんて、無理矢理変えちゃえばよかった。
私なんて、居なければよかった。
「………!」
飛び出してきた、自己否定。酷く悲しくなってきて、閉じた瞼から涙が滲み出てくるのを感じる。
いけない。夜になると、悪いことばかり考えちゃう。
(違うもん。この生き方で良かったことだって、あったんだもん…!)
嫌がられるようになっていったのも、追放されたのも事実。だけど、家族や友達と一緒に笑っていられた時のことだって、確かにあった過去なんだから。
仲間に捨てられた私を、新しい仲間として受け入れてくれた人達が、今まさに、この神浜の中に居るんだもん!
『前も言ったけど、あの人達とはたまたま合わなかっただけ。昔周りに居た人達だってそう。それだけなんだよ』
公園で沈んでる私に話しかけてくれて、そこから関係が始まった、赤ちゃん。私の恩人。
『私達と年長さんの相性はどうなのか。それは、これから確かめ合っていきましょう。時間は沢山ありますわ』
あの日のお昼時にレストランで出会った、チームの纏め役、先輩ちゃん。私の話を、とっても親身になって聞いてくれた。
『だーいじょぶだって!こーやって、一緒に仲良く ごはんもデザートも食べたんだよ?アタシ的には、ネンチョーさんはとっくに親友だから!』
マジ子ちゃんはその…。ちょっぴりおバカさんだけど、新入りの私にも好意的に接してくれて、親友って、言ってくれて…。
『これから一緒に過ごす中で、きっと私、もっと好きになる。皆のこと、もっと。だから…』
だから、今よりも、一々構うようになる。
そうしたら三人とも、私のことがウザったくなるかも。追い出したくなるかも。
魔法少女になった経緯を話す中でそう漏らしても、あの子達の主張は変わらなかった。
『つーか、抜けられたらすっげえ困るって。また不味い飯食うことになっちゃうんだって…!』
なんて、切実なことも言われちゃって。
「ありがと。皆…」
色んなことを思い出してる内に、眠くなってきた。うとうととして寝ちゃいそうになる中で、小さく呟く。
この先どうなるかなんて、今は分からない。最悪、明日にでも気が変わって、あの子達はまた、三人のチームに戻るのかもしれない。
それでも、私は今、嬉しいって思っているから。
チームに入れてくれたこと。私のご飯を食べてくれたこと。「年長さん」ってあだ名をくれたこと。年齢も過去も気にしないで、気軽に接してくれること。
そして何より、好きにならせてくれることが、とっても嬉しい。
あの日 貴女達と出会って、私は確かに、救われたから。
「あーもう!悔しいわねー!」
「隊長」
「あいつら、今度会ったら目にもの見せてやるんだから!」
「隊長ー?」
「大体、なぁにが意気地無しよ!腰抜けよ!せっかく皆が動いてくれたのをそんな風に言われちゃ、まるで私だけじゃなくて、あの子達までヘボいみたいじゃない!」
「隊長ってば!」
「なによ!」
マギウス、そしてマギウスの翼の、その拠点。ホテルフェントホープ。
日が沈み、内部も暗くなった建物の、その片隅にて憤る白羽根が一人と、そんな彼女に話しかける、黒羽根が四人。
白羽根は今、先日してやられた魔法少女四人組に対し、怒りを吐き捨てている最中だった。
「まーだ怒ってるんですかぁ?」
「まだってなによ!腹立たないのアンタら!」
「そりゃ、それなりに思うところはありますよ」
「でも、それ以上に隊長が一人で怒ってるじゃないですかぁ」
「大人になりましょ。大人に」
「えぇー!?」
この五人は、いつもこんな調子。熱くなりやすい白羽根を、部下の黒羽根達が適度に諌める。
メンバーの仲は良好だが、隊長の威厳はそれほどでも無い。そんなチームだった。
「隊長も言ってましたけど、あの赤い服の子、アレが憑いてるんでしょ?ならこっちにとっては得じゃないですか」
「相手に詳細さえ教えなければ、問題ないっすよ。監視の任務もそこそこサボれるかもですし」
「アンタらねー…」
「それよりも隊長。次の指令、来てるんですよね?早く教えてくださいよー」
「あーはいはい。わかった!わかりました!んもー…」
「あいつらは端っことはいえ、ウワサの情報を掴んだっていうのに…」呑気な部下達に対してそう呆れながらも、上から通達された次の任を報せる。
「えーと、次はね。これよ!」
「ん。なんです、これ」
「苗…ですかー?なんかの」
「カイワレだっけ。あれみたいで可愛い…」
白羽根が渡され、預かってきたものを黒羽根達が眺め、感想を口にする。
「これを設置して来いって!」
「これだけですか?」
「まだ同じのが幾つかあるの。他のチームと手分けして、指定の場所に埋めてくるらしいわね」
「へー…」
「ま、特務隊だからって、特別な任務ばっかりをやるわけじゃない。こうやって、他チームと協力することも大切ってことよ!」
むふーっと息を吐き、得意げに語る白羽根。それを見た黒羽根達は互いに見合って、気付かれないよう内緒話を始める。
(まーた言ってるよ。特務隊…)
(好きっすねー、隊長も。実際は特務隊どころか、落第生の集まりだってのに)
(でも、仕方ないですよね…。私達、あんまりマギウスって組織に順応できなかったんですもん)
(実力も無いしねー。他のチームからも舐められてるしさ)
(特務隊って名前自体、私達の扱いに困ったみふゆさんが咄嗟に付けたやつだし…。)
(監視を任されたウワサも、適当に作った余り物って聞いたっすよ)
(はぁぁぁ……)
黒羽根の一人が、溜息を吐く。自分達があまりにへっぽこであると、改めて思い知らされたからだ。
今でも思い出せる。自分達、羽根の面倒を見てくれている人物、梓みふゆが苦し紛れに、我らが隊長へ放った言葉を。
『えーと…そ、そうです!特務隊!貴女達のチームは、数多くの羽根達の中から集められた精鋭!スペシャルなんですよ!』
『だからこそ、他の羽根でも出来るようなことを任せられることはない。特別なんです、貴女達のこなす任務は!わ、わぁ〜。すごいですねぇ〜!』
『だから、決して!決して、仕事が任せられないほど問題があるというわけでは、ないんですよ…?』
誰がどう見ても、嘘を言っている。こちらを傷付けない為の せめてもの優しさ。
だがなんと、彼女らの隊長はそれを馬鹿正直に受け取り、特務隊という名前に彼女なりの誇りを持つに至ったのだ。
(未だに信じてんだよなぁー、あの人…)
(でも、悪い人じゃないんですよね)
(そう。憎めないっていうかー)
(馬鹿っすけどね。私達に負けず劣らず)
そもそも白羽根としての衣装だって 数が足りずに、黒羽根の衣装を白く塗っただけのもの。そういうところも、他の白羽根と比べて遥かに残念である所以。
だが、自分達よりも実力があり、色々と難儀でクセはあるが、害のある人ではない。羽根である時も、プライベートでも、自分達との付き合いを大事にしてくれる。
黒羽根四人組としては、マギウスの翼のルール的にはアレだが好感の持てる人物であると判断し、現在まで至っていた。
「さ!次の仕事も決まったし、今日はもう帰りましょ!ほーら、何やってんのアンタ達!行くわよ!」
「え、あ、はい!」
「あーちょっと。待ってくださいよー」
白羽根に声をかけられたことで内緒話は打ち切られ、四人はそれぞれ、歩を進める隊長の背中を追いかけた。
「帰りにご飯食べていきましょっか」
「お!いいですねー」
「あの…私この間、いいお店を見つけて…」
「じゃあ、その店で隊長の奢りとか!」
「あぁっ…!ごめんなさい、私今、手持ちそんなに無かったわ…」
「ちょ、隊長ー!」
「ファミレス!ファミレス行きましょ!割り勘よ割り勘!」
「はいはい…」
組織に定められた決まりもへったくれもない、それでいてイマイチ締まらない話で盛り上がりつつ、拠点の出口を目指す少女達。
落ちこぼれで、ぽんこつで、だけど元気だけはあって。
救われたいと願い、羽根となった先で出会った彼女達の、次の戦いが始まろうとしていた。
マギレコ本編の出来事
・第一部 第4章 終了後