知られることのない話   作:まるイワ

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近々キモチ戦がやってくるので初投稿です。





第5章:ひとりぼっちとカイワレ
5-1 心労の始まり


 

 

 

 

「………」

 

 

深夜。草木も眠るなんとやら。先輩もマジ子も年長さんも、今頃はぐっすりおねんねだろうな。

 

でも、私は寝付くことが出来なくて、こうして起きてる。体温で温くなったシーツの上で、時々寝返りをうちながら。

 

 

「……………はぁ」

 

 

なんとなく寝転がってるのをやめて、ベッドの上に座り込んだ。隣接した壁に作られた窓から光が漏れて、シーツを照らしてる。

 

夜風にでも当たろうと思って、窓を開けた。

 

 

「……………」

 

 

膝立ちになりながら、桟に腕を掛ける。空を見上げれば、そこそこ大きいお月様。夜にしては明るいと思ったけど、どうりで。

 

目線を下げて、外の景色を眺める。もう夜遅いのに、遠くの方ではまだ建物に明かりが付いてるや。流石都会。

 

 

「はぁ………」

 

 

溜息を吐く私を、そよ風が撫でる。真冬みたいに冷たくもない。真夏みたいに暑くもない。丁度良くて、心地良い感じ。

 

まぁでも、だからってそんなの、今の私には何の慰めにもならないんだけど。

 

 

「…っとにもー……」

 

 

あーもう。本当なら私も、今はグースカこいてるとこだってのに。

 

私はなにも、寝る前にゲームをやり過ぎたり、動画を見過ぎたりで目が冴えてこうなってるとかじゃない。ちゃんと理由がある。

 

原因は、とある一言。昼間に仲間から言われた言葉が発端だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日中、私達は先輩の家に集まってた。

 

その時年長さんが、「あの時質問できなかったことを改めて聞きたい」って言ってきた。最初はなんのこっちゃと思ったけど、すぐに理解できた。あの時のアレだ。

 

年長さんと会った日の、あの謎の女の子との車上での戦い。あそこら辺の時だ。そういや、何か聞きたがってたもんなぁ。

 

あの時私は、質問したがる年長さんにOKを出した。今更撤回するようなことでもないし、改めて聞いてみることにする。

 

 

『あの…。どうして嘘、吐くの?』

 

 

…なるほど。それが年長さんの、私への質問。

 

 

『………あ?』

 

 

何故嘘を?や、嘘ってなんだ。それがあの時聞きたかったこと?私、そんなことしたっけかな…。

 

 

『え、なになにそれ!赤ちんウソつきなの!?悪い人!』

 

『ちげーわバカ!そんなわけねーだろ』

 

 

マジ子のやつ、言うに事欠いて。失礼な。誰が悪人だと、このバカ。

 

 

『あ!違うの。そうじゃ、なくて…』

 

『えー…。じゃ、なんなんよ』

 

『その、人に、じゃなくて…自分に…っていうか』

 

『自分だぁー?』

 

 

益々分からない。纏めると、私がどうして自分に対して嘘吐きなの?ってことになるんだけど。

 

そういう生き方をしてるってのか。私が?冗談!

 

 

『別に私、そんなんで今までやってきたつもりはさぁ…』

 

『あーでも、なんとなく分かりますわね』

 

『え』

 

『そういうとこありますもの。貴女』

 

 

先輩までそんなこと言い出すし…。堪ったもんじゃない。

 

 

『マジ?赤ちんそうなん?』

 

『だから違うって…』

 

 

悪ふざけでやったりとかはあるけど、常日頃から嘘ばっかりみたいな人間になったつもりはないよ。自分に対しても、他人に対しても。

 

 

『マジ子さん。この子、たまにどもることあるでしょう』

 

『あーあーあー!分かる。マジで分かる。なんかたまにねー!』

 

『えっと。それって、あれとかも…?私と初めて会った日の、お昼の…。北養で…』

 

『あぁ。そうでしたわね、あの時も。なんなら、あの日は朝からも…』

 

『?そだっけ?』

 

『喫茶店に集まったでしょう。あの時にこう、なんか態度が』

 

『あ!もしかしてさー、一人で行くっつって店出てこうとして…』

 

『それです』

 

『ちょ、待って。待てって』

 

 

私を置いてけぼりにして話さないでくんない。自分達だけ分かった風なのやめろって!

 

 

『あの、どういうことなんだよ結局。はっきり言え、はっきり。私にも分かるように!』

 

『や、むしろ貴女が一番分かってることだと思うんですけれど』

 

『だから、何が!』

 

『マジか、赤ちん…』

 

『えぇ…!?』

 

 

焦れったくて、ちょっと語気が強くなる。しゃあないじゃん。分かんないもんは分かんないよ。

 

 

『そうですか…。じゃあ、言いますけど』

 

『おぉ』

 

『その…。素直じゃないですわよね。赤さんって』

 

『…………はい?』

 

 

先輩からの言葉を聞いて、頭に浮かぶ疑問符。

 

あれ、おかしいな。はっきりした答えを聞いたはずなのに、疑問が晴れないんだけど。

 

なんて?素直じゃない?え、なにそれ。私が?

 

 

『え、待って。どういうことよそれ』

 

 

私は自分に対して嘘吐きで、それは素直じゃないからだって?そういうこと?

 

 

『や、ないないないない。正直。正直者だから、私。ていうか嘘吐きと素直じゃないって大して意味変わんないでしょ』

 

『ね、赤ちゃん』

 

『あ?』

 

『えと……ありがと。私に、あの時、話しかけてくれて』

 

『は?なんだ急に…』

 

 

今その話する?もう終わったでしょ。何日か前に。

 

 

『私、嬉しかったよ。気持ちっていうか、気遣い…みたいな…』

 

『だから、あれは違うって。私は目的があるから近付いたの。別に励ますつもりも無けりゃ、あんたに対しての優しさやらもあったわけじゃ』

 

『ほら』

 

『なにが「ほら」なの先輩は!?』

 

 

いや、ほんとに。今のが何の証明になったってんだ。

 

 

『なんか、ね』

 

『赤ちん、なんかマジでアレだよ。えーっと…』

 

『言い訳がましいんですわよね。誤魔化してるっていうか』

 

『そー!それな!』

 

『なぁっ!?』

 

 

ギクッ。や、ギクッてなんだ私。

 

いや、違う。ほんとに違うんだって。私別に、そんなつもりじゃ…

 

 

『以前、神社のうわさを調べようとした時もそうでしたわよ。何か言いかけて、一人で先に行ってしまったり』

 

『や、あれは…!』

 

『あの時は無理に追求することもないかと思ってそっとしておきましたけど、いい機会ですわ』

 

『あ、てかさー。それより前に、ホンネぽろっと漏らしてたよね?マズいゴハン作った時』

 

『えっ…』

 

『あぁ、そういえば…。確か、私達に危険が降り掛かるのではないかと、気にかけるような言葉を』

 

『ねー。ゴマカしちゃったよね、あれも』

 

『…………』

 

 

おい、なんだ。なんだオイそれは。何言ってんの。何言ってんだお前らは!

 

つーかよく覚えてんなぁ!?そんな前のこと!

 

 

『私と会った時のこと、二人に話した時も…否定してた。「自分はなにもしてない」って…』

 

『あったよねー、そんなのも。ケンソンすることないのにさー』

 

『話聞くだけなら誰でもできるだろ。なにかした内に入るか、あんなもん』

 

『前も言いましたわよね、私。そういうとこですわよ、貴女』

 

『ぬぐぅ…………』

 

 

くそ、何故か分からんけど、反論出来なくなってきた…。

 

なんだ。なんなんだろうこの感覚は。好き勝手言われて嫌なのに。どうにか否を突き付けてやりたいのに。

 

さっきからなんだ。この、図星を突かれてるような気分…。

 

 

『ね。口では違うって、自分に嘘、ついてる。私、そう思う…』

 

『そーゆーことかぁ。なんでだろね?』

 

『それはほら。きっとアレですわ』

 

『うん』

 

 

…あれ、なんだろう。嫌な予感がする。このまま行ったら、なんか…

 

 

『赤ちゃん、多分いっつもそうなんだと思う…。自分の気持ち、つい隠しちゃう、みたいな…』

 

『隠せているかは怪しいですけどね。赤さんって案外、声色とか態度とか表情とか、そういう所に出やすいですから』

 

『おー、先輩すげー。マジで1年付き合ってるだけあるよ』

 

 

このままじゃ私の、こう…奥底の何かが揺さぶられちまう何かが起こるような…!

 

 

『ヨーするに、照れ屋さんってこと?赤ちん』

 

『そういう側面もあるから、隠したり誤魔化したりするのではと思います。彼女はこう、本質というか、根っこみたいなところが…』

 

『うん…。うん。私も多分、同じこと考えてる』

 

『ええ。きっと、赤さんって』

 

 

おい、待て!今すぐその口閉じて…!

 

 

 

 

『本当は良い人なんだと思います。口では悪ぶってますが、心根は情に厚くて、他人に対して思いやりを持つことの出来る、そういう人』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

 

あの時の、先輩のあの一言を聞かされた時に感じた、衝撃。身体へのものじゃない。

 

言葉が出せなかった。頭が空っぽになった。酷く揺さぶられた。自分の奥深く。そこに沈んでるはずの、何かが。

 

最初は頭が働かなかったけど、先輩に言われたことを何度も反芻してる内に、思考も精神も落ち着いてきて。

 

 

『あ、じゃあさ。赤ちんがよく「友達じゃねー」みたいに言うのも』

 

『本心とは違う…ってこと、かな』

 

『そうなると あだ名の件といい、赤さんってもしかして、私達のことかなり好…』

 

『うにゃあーーーーーーーーー!!!』

 

 

そこにこんな会話ブチ込まれたもんだから、私はとうとう我慢出来ずに奇声を上げて、爆速で自室に直行。三人の声も一切無視して、引きこもってた。

 

熱くなった顔、胸の内側を支配する羞恥心、違う違うって呻く口と、ベッドの上でジタバタ激しく動く身体。

 

その内に疲れて寝ちゃったみたいで、気付いた時には外は暗くなってた。

 

 

「はぁ………」

 

 

その後はいつも通り風呂に入って、風呂上がりのアイスを食べて、歯を磨いて…。

 

でも、先輩と顔を合わせるのが気まずいから、時間はかなりズラした。

 

居間も廊下も真っ暗な中に下りていって風呂に向かうのは、ちょっとだけ怖じゃねえや緊張感があったな。

 

 

 

「……………なにが…」

 

 

 

『本当は良い人なんだと思います』

 

先輩のその一言をまた思い出しながら、外の景色を見つめる。自然と、眉間に皺が寄っていった。

 

 

「なにが良い人だ…。なにが…!」

 

 

窓の桟に乗せた腕を片方、軽く叩きつける。両手に力が入って、キツく握り締められてく。

 

 

(私に優しさなんてない…!思いやりも、情も、そんなもの、なんにもっ……!!)

 

 

顔が俯いていって、神浜の街並みも、月が眩しい夜空も見えなくなる。

 

 

(私達はただのチーム!単なる協力関係!それだけだろ…。それだけなんだよ…!)

 

 

とうとう目蓋まで閉じて、真っ暗。なにも見えなくなる。感じるのはもう、吹いてくる風の感触だけ。

 

 

(もう捨てただろ…。もうやめただろ…!誓ったんだ、自分に!)

 

 

とうとうその風すら嫌になったから、窓を閉じて、カーテンも閉める。荒っぽい手つきになっちまったのは、仕方ないことなのか。

 

 

「もう、人を好きになんてならないって…!!」

 

 

口に出したのは、再確認。自分が自分に定めたことを、今また思い出す為に。

 

 

(……本当に出来るのかな、そんなこと)

 

 

それなのに、言った側から脳裏に湧いた、弱気な言葉。情けないこと抜かすな、私。

 

ベッドにボスッと倒れ込む。枕元に置いたスマホをなんとなく手に取って、スリープを解除した。

 

 

「…………………」

 

 

ホーム画面に表示される、メッセージの着信を報せるマーク。

 

何時間か前に来たものだけど、その時から開いてすらいない。送り主の名前を見ただけで、嫌な気持ちになったから。

 

またこうやって送ってくるんだろうな、あの人は。懲りずに 今日も、明日も、明後日も。

 

 

(会いたいな……)

 

 

勿論、あの人にって意味じゃない。

 

夜っていう、深くて静かな世界が、私の心を脆くさせたからなのか。

 

それとも、昼間のことが尾を引いて、私が弱ってしまってるからなのか。

 

 

 

「お母さん………」

 

 

 

口にすると、酷く切なくなってきちまった。

 

もういい。不貞寝しちゃおう。

 

スマホをスリープさせて、元の位置に。そのまま寝返りをうって、窓側に背を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「♪」

 

「は?」

 

 

そしたら、なんか居た。目に飛び込んできた。美少女が。

 

 

「…………♪」

 

 

ニコニコ楽しそうな顔で、私をジーッと見つめてる。自分と同じような体勢で、ベッドに寝っ転がりながら。

 

可愛らしい顔立ち。カーテンから漏れる月光のお陰で分かる、空色の綺麗な瞳と、同じ色彩をした髪の毛。

 

そしていつも変わらない、どこの学校のものかも分からない、制服みたいな衣装。

 

 

 

要するに、まぁ、なんだろう。あの、謎の女の子だった。

 

 

 

「………う」

 

「?」

 

「うおおおおおおおおおお!?」

 

 

 

夜中で近所迷惑になるかも。そんなことも考えられずに、私は絶叫。すぐに体を起こして、後ずさった。すぐ壁にぶつかったけど。

 

 

「え、お前、なん…!?なんで居んのお前!?」

 

「……?」

 

「そりゃ、何時でも会いに来いって言ったけどさぁ!」

 

 

結局連絡先、渡さなかったよなぁ!?私!どうやって突き止めたんだよ、ここを!

 

 

「ていうか、なんでこんな夜中!?や、その前にどっから入ったのさ…」

 

「………」

 

 

玄関は先輩が鍵をかけただろうし、窓は私が居たから、来たら分かる。

 

あの馬鹿力で無理矢理ブチ破ろうもんなら、私達にバレるだろうし。マジで何処からどうやって…。

 

……いや、この際それはいい。それよりも…

 

 

「………♪」

 

「あの…なんか既視感が…」

 

 

身を起こした女の子が、四つん這いになる。

 

そのままベッドを軋ませながら、こっちに にじり寄って来た。

 

どっからこの子が来たかよりも、それが問題だった。少なくとも、今の私にとっては。

 

 

「あのー、やめよ?もう夜遅いから。私も寝たいから。ね?学校あるからさ。寝坊したら困るから…」

 

「………♪」

 

「ほっぺ赤くしないで?目もさ、ほら、そんなうるうるさせないで?ね?日中。日中ならいいから。だから、また日を改めて…!」

 

「〜!!」

 

 

私の懇願染みた静止も虚しく、女の子がガバッと飛び掛かってくる。体重を乗せて押し倒そうとしてくるのを、なんとか押し留めることに成功した。

 

 

「〜!〜!!」

 

「ちょ、やめ!やめろって!ダメだから!今はほんとダメだからマジで!!」

 

 

ギシギシ、ガタガタ、ドッタンバッタン。あの手この手で私を好きにしようとする女の子と押し合い圧し合いしたせいで、大きい音が鳴る。

 

 

「〜!!」

 

「あー!やめ…!首筋はマジでさ!あっ…」

 

 

……まぁ、実際はとっくにパワー負けしてる私の、無駄な抵抗みたいな感じになってるんだけどもさ。

 

 

「こんの…!こいつ、マジで離…」

 

「もぅー…なんですの赤さん、こんな時間に…。騒がしいにも限度が……」

 

 

そうしてたらいきなり部屋のドアが開いて、ふにゃふにゃした声の先輩が注意してくる。あーやっべ。流石にうるさくし過ぎたか…

 

って、そうじゃねーって!

 

 

「ちょうど良かった!先輩、この子引き剥がして…!」

 

「……………」

 

「えーっと……先輩?」

 

 

ジトーッとした視線。あの、ちょっと?私、困ってるんだけど…。

 

叩き起こしちゃったのは悪いと思うけど、言うなれば不法侵入されてるわけなんだから、ここは同じ屋根の下に住んでいる者同士、協力して…!

 

 

「………ほどほどになさって下さいまし」

 

「せんぱぁい!?」

 

 

おい、ドア閉めて自室に戻りやがったぞ!

 

観覧車草原の時といい、ふざけやがってあの女ァ!!

 

 

「〜♪」

 

「あっ…!?バカ!寝巻き脱がすのはマズいって!やめろ!ほんとにやめろそれ!そこまでは流石に…!」

 

 

 

その直後、情けない悲鳴が、自室に響き渡っていった。勿論、この私のやつ。

 

 

 

この後は結局、寝ることも休むことも出来ずに、女の子に抱き枕にされたままで、夜は更けていった。

 

 

 

誤解の無いように言っておくと、小さな良い子達にはお見せ出来ないような何かが繰り広げられたとか、そういうわけじゃない。

 

 

 

朝までの添い寝を条件に私を襲うのをやめるように言ったら、なんとか上手くいった。それだけ。

 

ていうか、襲うのは無しって前に言った気がするんだけどなぁ…。

 

 

 

 

抱き枕に関しては許可した覚えはないけど、なんかもう心身共に疲れて色々面倒になってきたから、好きにさせることに。

 

 

 

女の子の身体の柔らかさと、漂ってくる甘い香り。その二つを嫌という程堪能したまま、朝を迎えることになっちまった。

 

 

 

 

 





マギレコ本編の出来事

・第一部 第5章 開始前
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