知られることのない話   作:まるイワ

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土曜更新が出来ないことが続いて悔しいので初投稿です。





5-2 お名前は?

 

 

 

 

「で?赤ちん、ずーっと引っ付かれてるわけ?」

 

「見たらわかるだろ…」

 

「〜♪」

 

 

日が昇って、学校に行って、放課後が来て。

 

今日も皆で話そうってことになったから、また先輩の家にチーム全員で集まった。

 

…問題は、なんで謎の子まで同席してるのかってことなんだけど。

 

 

「本当にびっくりしましたわよ。夜に部屋に行ったら普通に居るんですもの」

 

「嘘つけ…」

 

 

サクッと流して部屋に帰ったくせに…。

 

 

「朝 リビングに下りてきた時なんて、腕に女の子をくっ付けたままなんですもの。バカップルじゃないんですから」

 

「好きであんなことさせてたわけじゃないんだよなぁ…」

 

 

寝不足だわ気力も萎みっぱなしだわで、もう抵抗したり諭したりするのも面倒だったんだよ。

 

朝飯の時も離してくれないし、ガン見してくるしで窮屈だから、適当にバターロールだけ食って済ませたし…。

 

 

「その…。大変、だった…ね?」

 

「んー…。まぁ…」

 

「あげる。これ…」

 

「どーも…」

 

 

おやつに用意したクッキーを年長さんがくれて、それを口に放り込む。所々に紛れたチョコチップが、いい味出してる。

 

自分の分を寄越してくれたのは、この人なりの労いか。

 

 

「よくわかんないんだよなー、こいつも…」

 

「?」

 

 

言いながら、さっきからずーっと私の左腕にしがみ付いたままの女の子に目をやる。私と目が合って、不思議そうな顔で首を傾げた。

 

 

「と言いますと?」

 

「いやさ、登校してね?校門前まで来たのはいいんだけどさ」

 

「それ…そのままだとダメ、だよね?」

 

「うん。だから、『ここまで』って言ったんだけど、イヤイヤってして」

 

「マジかー。どうしたのそれ?」

 

「…………」

 

「…あの、赤さん?」

 

 

言い辛い…。多分これ、いい顔されないだろうし…。

 

 

「えーっと…あの。アレ。アレと引き換えで、帰ってもらったっていうか…」

 

「アレって」

 

「だからー、うん…あー、っと……」

 

「ん……?」

 

「…………………………ちゅー」

 

「うわぁ…」

 

 

ほらぁ!!だから言いたくなかったんだって!来ると思ったわ、「うわぁ…」って!うるせーなぁもう!

 

 

「ま、ここを深掘りしてしまうと話が逸れるので、置いておくとして」

 

「あー、うん。そうして…」

 

「前は嫌がってる風だったのに、今じゃ自分からそういう提案をしている辺り、段々とそっちの気に染まっていってそうな赤さんは置いておくとして」

 

「ぶっころすぞ!!」

 

 

失礼だなぁ あんたは!したくてしたわけじゃねえって言ってんだろ!

 

 

「今度は口じゃねー!デコだよデコ!人から見えないとこで!」

 

 

流石に毎回ぶちゅぶちゅされるのも色々と保たないから、なんとかそれで妥協してもらった。色々は色々。別にやらしい意味じゃない。本当だぞ!

 

それでも不満そうだったけど、なんとか聞き入れてもらえたんだから上々だろ。

 

 

「聞いてないけどね!」

 

「あ?」

 

「赤ちんが隠れてデコちゅーしたっての、ベツに誰も聞いてないけどね!」

 

「……………」

 

 

イラッ。

 

 

「イタいたいたいたいたいたい!引っ張らんで!」

 

 

全く、ここぞってばっかりに…。むにーっと引っ張ったマジ子のほっぺから、手を離してやった。

 

 

「うへー、イタい…。んでさー、そっからどうなったん?」

 

「ん。まぁ、いつも通り消えてったんだけどさ。スーッと」

 

「じゃあ、学校はちゃんといつも通りに…?」

 

「いや、なんかその後もなにかと出てきた…」

 

「えぇ……」

 

 

うん。私もえぇってなったわ…。なんかどっかから出てくるんだよね、いきなり…。湧いて出るっつーか。

 

休み時間、飯時、花摘み、掃除の時間、放課後…もー色んなとこで。授業中に出なかっただけマシか…?

 

 

「何人かに見られたりもしたしなぁ…」

 

「あー、それは…」

 

 

人の集まるところで出てくることがなかったのは、まぁ助かったけども…。

 

 

『む。隣の人物は誰だ。見たことのない制服だな…。他校の生徒であれば、然るべき所からの許可が必要であると思うが』

 

 

東のボスには思いっきり怪しまれてたなぁ…。「サボり癖の酷い友人が勝手に会いにきちゃった」ってことにして、人気の無いとこまで逃げて…。

 

 

『その人、うちの制服じゃないですよね?あ、見学かなにかなのかな?』

 

 

後輩の子はそんなでもなかったか…。あんまり良くないけど、口止め料として登校する途中で買ったミニドーナツ(6個入)をあげた。割と強引に。

 

「妹、弟達のおやつにしますね!ありがとうございます!」なんて言われちまって。家族思いなんだな。

 

 

『あ、あの…大丈夫なの…?その子、怒ってるけど…』

 

 

放課後に、デコを晒してる気の弱そうな子が持ち物を落としたのが見えたから、拾って渡そうとした時のこと。

 

なんか知らんけど、また出てきた女の子が私の身体を引っ張って、デコの子から遠ざけようとしてきた。

 

事情を説明してみたら離してくれたけど、なんだったんだアレ…。

 

 

と、まぁ、こんな感じで色々と。

 

教師に本格的に知れ渡るとマズいと思って、放課後になったら一目散に下校したけど、大丈夫かな。悪い噂とか、立ってないといいんだけど…。

 

 

「噂……うわさかぁ…」

 

「?どったん、いきなり」

 

「いや、こいつのこと」

 

「この子とうわさって…あぁ」

 

「うん。人間じゃないのかなって」

 

 

噂って単語で思い出した。

 

こっちに直接的に害を加えてくることは無くなったけど、私達は確かに、この女の子と戦ってきた。圧倒的な強さと、大きい魔力。魔女ともまた違う、その存在…。

 

 

「この子さー。やっぱり、あれなんかな?」

 

「ウワサ……だっけ」

 

「すさまじい力。最初に会った時に展開した結界。魔法少女とも、魔女とも違う異質な魔力…。間違いなさそうですが…」

 

「で、そのウワサを意図的にバラ撒いて管理してるのが」

 

「…マギウスの翼」

 

 

そう。先日出会って一悶着あった、あのローブを着た五人組。奴らはそう名乗ってた。

 

今日集まったのは、その辺のことを話し合う為だったんだよな。

 

 

「解放するって、言ってた。魔法少女のこと…」

 

「しゅくめーがどうの、みたいな?」

 

「魔女との戦いのことを指しているというわけでは、なさそうでしたわね」

 

「ほんとのとこを聞けりゃあよかったんだけどなぁ」

 

 

黒ローブに邪魔されちまったからなぁ。あの白ローブはなんかアホっぽいのに、手下がそれをフォローするように動くから、面倒くさかった。

 

特務隊とか言ってたっけ。そういや。

 

 

「ですが、彼女らはあくまで手足に過ぎない。マギウスと呼ばれる、トップに君臨する者の」

 

「マギウスねー…」

 

 

「宿命からの解放」なんて御大層なこと言っちゃあいるけど、その為にこの神浜のあちこちに、ウワサなんて危ねーもんポンポン散らしやがって。

 

あのローブ達も、そんな非常識なことやらかす奴等の下に集まって、それでいいんかよ。

 

 

「あいつら、五人だけじゃなかったよな。後から何人か来て…」

 

「去り際の言葉から考えるに、あれが全員ということでもなさそうですわね」

 

「じゃあ、多いってこと?もっと…」

 

「それこそ、私達程度、吹いて飛ばされるような戦力差である可能性が高いでしょうね」

 

「マジで!?やっべー…」

 

 

なんちゃらが消されたとか、他にも邪魔してくる集団が居るみたいな話もしてたけど、それが私達に有利に働くかは分からない。

 

私達はこれから、奴らに対してどうするべきなのか。

 

 

「あいつらのお達し通り、邪魔しないで知らんぷりでもする?」

 

「赤ちゃん、それは…」

 

「メーワクかけてんでしょ?よくないってゼッタイ!」

 

「だからって、真正面からぶつかって勝てる相手じゃなさそうだろ。ウワサにだって負け続きなんだぞ、私ら」

 

「そりゃーそーだけどー…」

 

 

「むぅ〜」って口をとんがらせて、マジ子は納得してなさそうな顔をする。言っといてなんだけど、その気持ちは、まぁ分かる。

 

でも、勝算があるか分からないのも事実だしなぁ…。だったら、無理して戦いに行く必要もないかもって思うけど、うーん…。

 

 

「皆さんの仰ること、全てに一理ありますわ。特にウワサは、放置しておくには危険。ですが、あれらは強力。『深入りしてもいい事はない』とも言っていましたわね」

 

「んー……」

 

「でも 関わってしまった以上、ここでお終いというのも、座りが悪い。私はそう思っています」

 

「じゃ、どーすんの?やっぱり戦う?」

 

「大丈夫、かな…私達…」

 

 

年長さんが、不安そうにする。そりゃそうか。

 

考えてみれば、私達が今までやってきたのは、魔女っていう怪物達との戦い。仮にマギウスの翼とこれからバチバチやりあうってんなら、当然 対人戦をやることになるわけで…。

 

この前の戦い、不意を打たれたっつっても、私達が特務隊の奴らに一旦は押さえられたのは事実。

 

息の合った動きだったし、ローブのやつらも、かなりの頭数を揃えてそうだ。加えてウワサっていう強力な戦力もあるし、アドは明らかに向こうが握ってる。

 

 

「あぁ、いえ。そうは言ってませんわ。私、まずは知りたいと思ってますの。詳しく」

 

「あ、そう…なの?」

 

「詳しくってなにー?」

 

「お話は聞いたと言っても、やはり肝心なところは不明瞭なように感じましたので。まずはウワサのことから始めて、そこからこう、徐々に」

 

「つっても、どうすんのさ。また調査でもするか?」

 

「何言ってますの。居ますわよ。私達の身近に」

 

 

それは、ウワサがってこと?そんなの……

 

 

『あ』

 

「そうです」

 

「?」

 

 

三人一緒に気付いて、私に引っ付く女の子に目を向ける。

 

また首傾げてるよ。てか、そういや今の今までずっと私の隣に居たんだよな…。話にも入れないのに、よく飽きなかったね。

 

 

「今まで何度か話してきた通り、その子はウワサである可能性が非常に高い。でしたら、彼女の素性を探るのがよろしいのではないかと」

 

「先輩さ、こいつがウワサだっつっても、だったら、くっ付いてる噂話があるはずだろ?なら結局、それを見つけなきゃいけないんじゃ」

 

「多分、その為の…だと思う。マギウスの、翼」

 

「へ?なに、マジどゆこと?」

 

 

…あぁ、成る程ね。ウワサの元締めは、マギウス。そしてマギウスの翼。

 

ウワサとローブの総数は知らないけど、やつらはウワサの管理の為に色々とやってて、その為にローブ共っていう人員を動かしてて…。

 

 

「だったら、こいつを管理なり監視なりしてるローブも居るかも知れない…ってことか」

 

「ええ。それならば、この子の周囲にマギウスの翼が姿を見せることもあるでしょうから」

 

「そこで、聞いてみる…直接」

 

「ですわ」

 

 

そういうこと。今までみたいにチマチマ調べるより、その方が早い。餅は餅屋ってな。

 

 

「あの子達、そんなカンタンに教えてくれっかなー?この間の子達もワーワーさわいじゃって、ウマく行かなかったよ?」

 

「その時はまぁ…最悪、戦いになるかもですけれど」

 

「つまり?」

 

「力尽くです。決まってるでしょう」

 

「あ、そう…」

 

 

「私達には止められないと言い切るくらいには大人数なのでしょうから、下部組織の構成員を数名ノした程度で、全面戦争に発展する事もないでしょう」って、先輩が言う。

 

うん、なんだろう。前の特務隊との戦いといい、妙に過激な瞬間あるな?

 

 

「ですから、赤さん」

 

「え、あ、はい?」

 

「その子のこと、お願いしますね」

 

「は?」

 

 

なんて?

 

 

「その子を訪ねて翼の方々が現れた時、私達も近くに居られれば動きやすい。ですから」

 

「……繋ぎ止めとけって?」

 

「貴女を好いてますもの」

 

「すっ……」

 

「胸キュンですわ」

 

「うるせーよ!」

 

 

おい、冗談じゃねーぞ。それってつまり、なるべく一緒に居ろとかそういうことじゃん!ただでさえ神出鬼没で困ってんのにさぁ!

 

普段は引っ込んでてもらうことも出来そうっちゃ出来そうだけど、それは…!

 

 

「あの、私、学校でこいつにかなりしたんだけど。その……ちゅーを?」

 

「はぁ」

 

「それも毎回だよ…。見つからないように隠れててとか、何か頼む度に。対価で…」

 

「えぇ…?」

 

 

だって、そうしないと言うこと聞いてくんなかったんだもん…。学校でデコの子に落とし物渡す時とかもさ…。

 

 

「まぁ、例によって口にではねーけど…」

 

「あ、じゃあさ、あだ名付けない?あだ名!なんかモニュモニュ言ってる赤ちんはほっといて」

 

 

一言余計だわ、このバカ。つか、なによ。あだ名?

 

 

「よく分かんないけど、これから赤ちんと一緒に居るんでしょ?同じ家に住むんなら、あった方がよくない?」

 

「ん…。何時迄も『あの子』とか、『謎の子』とかじゃ…」

 

「まぁ、確かにそうですわね。些か不便だと思いますし」

 

 

んー……。それはそうかぁ。つーか、一緒に住むのは確定なんだ…。はぁ…。

 

 

「あだ名ねー…。名前が聞けりゃあそっから考えてもいいけど、こいつ喋らないしな…」

 

「外見等の印象から付けてもいいでしょう。私も赤さんも、そんな感じですし」

 

「…………」

 

 

歳上だから先輩。赤い衣装だから赤。口癖がマジだからマジ子。最年長だから年長さん…。

 

まぁ、分かりやすいに越したことないか。先輩の案、採用。

 

うーん、印象。こいつの印象か…。

 

 

「じゃあ、ラブちゃんとか!」

 

「あ?」

 

「赤ちんにゾッコンで、胸キュンなわけじゃん?アイだよアイ!だから、ラブ!」

 

「却下」

 

 

由来が恥ずかし過ぎる…。そんな直球じゃなくていいだろ。

 

 

「ウワサさん、というのは」

 

「うわさとウワサで被ってるし、これ以上ややこしくなっても…」

 

 

そのシンプルさは悪くないんだけどね。もうちょっと、こう…。

 

 

「ソラ…とかは。ほら、髪とか、眼とか…」

 

「んー…。んん〜…?」

 

 

あぁ、なるほど。いい感じかも。でもこう、なんだろう。私としちゃあ、もう一捻りあっても。

 

 

「意外と難しいな…」

 

「赤さんはなにかあります?」

 

「私か…。んー…」

 

 

ううん…いざ聞かれると困るな…。

 

どっかにヒントが転がってないかと思って、スマホで検索。とりあえず、一番いい線行ってた『ソラ』を元に何か…

 

 

「あ」

 

「お?なんか良いの来た?」

 

 

幸いなことに、検索をかけて出た結果の一つから、私は答えを得ることが出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩さ、なんであの観覧車の時あんな乱暴だったの?ぶっちゃけ私、怖かったんだけど」

 

「それなー!アタシ、マジで先輩がおかしくなったんかなって!」

 

「あぁ…。あれは単なる挑発です。ストレスの発散も兼ねての」

 

「えと、溜まってた…の?」

 

「あの日は本当に疲れましたもの。珍しく救援要請が来たかと思えば、待っていたのは美少女とイチャつくお馬鹿さん。そんな間抜けな光景を見せられれば、苛立ちも溜まるというものでしょう」

 

「馬っ…!や、私 悪くないよなぁ!?」

 

「ローブの方々の態度や、こちらを馬鹿にしたような物言いに腹が立ったというのもありましたけどね」

 

 

 

「あの白い衣装の方も、ああいうのに乗ってきやすいタチな気がしましたし」って、先輩は続けた。

 

 

陽が傾いて、そろそろ夕焼け模様になりそうな景色の中を、私達は歩く。適当にあれやこれや喋りながら。

 

 

チームでの話し合いも、ひと段落した時だった。年長さんが、晩飯の買い出しに行きたいって言い出したのは。

 

折角チームで集まったんだから、また自分の手料理を一緒に食べてほしい。そう希望して。

 

 

そしたらマジ子のやつが、「なら皆で一緒にいこー!」とか言い出して。荷物持ち一人居ればいいだろって言っても、駄々こねて聞かねーの。子供か。

 

正直面倒だったけど、まぁ、時刻が時刻。パトロールも兼ねてってことにすればいいかってことで、自分を納得させた。

 

 

「そんでねー、その時赤ちんさー」

 

「だぁ!やめろお前、あん時のアレはー!」

 

「ふふ…」

 

 

で、目的地に向かって中央区を移動する私達は、こうして絶賛駄弁り中。

 

話題を振るのは、大体マジ子の仕事。よくもまぁ、次から次に出てくるよ。

 

 

「っ!っ!」

 

「ん?なにさ?」

 

「〜!」

 

 

皆と話してる私の腕が、グイッと引っ張られる。今この場に、そんなことする奴は一人だけ。

 

そいつに向かって話しかけてみるけど、相変わらず喋らないから、目的が分かりづらい。

 

 

「また呼んでほしいんじゃありませんの?」

 

「え、また?何回目よこれで…」

 

「そんだけウレしかったんだって!」

 

「ん…。呼んで、あげよ?」

 

「………そうなん?」

 

 

三人がそんなふうに言うから、腕にしがみ付いて歩く本人に確認。満面の笑顔になりながら、首を縦にブンブン振った。そうですか…。

 

 

「わかった。わかったから。もー…」

 

「〜♪」

 

 

嬉しそうにしちゃってさ。そんな大層なもんかな、お前に付けたのは。

 

 

 

 

「とりあえず、腕抱き寄せるのやめて。手ェ握るくらいなら、まぁ、いいから。ね。『シー』」

 

「〜!!」

 

「聞いてないし…」

 

 

 

 

私が付けたあだ名で呼ばれて、そりゃあもう幸せそうにはしゃぐ彼女を見ながら、思う。

 

 

 

「シー」。私が名付けた、この子を示す言葉。

 

 

 

ソラ。空。空の色。水色って呼ばれることもある、明るい青色。英語ならシアンとか、まぁその辺。

 

 

シアンの頭文字はC。その青を表す単語のCを、そのまま片仮名にして、シー。

 

 

あの子の髪の毛も、瞳も、青いから。だから、Cyanのシー。海の方のSeaと被るけど、どっちも青いもんだ。丁度いい。

 

 

 

自分でも思った。適当だって。先輩からも呆れられた。「誰かに付ける名前がそれなの?」って。

 

 

 

だけど、それでいいと思った。私に名前を呼ばれた シーが、馬鹿みたいに喜んでたから。

 

 

 

 

その名前が嬉しいって、好きだってなってくれたんなら、別に良いかなって。私には、素直にそう思えたから。

 

 

 

 

 





マギレコ本編の出来事

・みかづき荘に越してきて日が経ち、ようやく部屋の片付けが終わったいろは。今までに得た情報が脳裏をよぎり、ういがマギウスの翼に関わっているかもしれないと、不安になってしまう。
その直後、部屋にやちよが訪れ、夕飯の買い物に出ると話す。自分もちょっとした用があるからと、付いて行くことにした いろはだった。
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