知られることのない話   作:まるイワ

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アニレコ最終章の放送日時が決まったので初投稿です。





5-4 二人

 

 

 

 

「はぁーあ……」

 

 

暗い自室で溜息吐いて、ベッドに座り込む。年長さんの飯も、いつもの風呂も良かったけど、それだけじゃ今日の疲労なんて取れやしない。

 

特務隊のやつら、無駄に走らせてくれてさ。朝起きて筋肉痛にでもなってたらどうしてくれんだオイ。

 

 

(いっそ寝ちまうかー、もう)

 

 

時計を見れば、日にちを跨ぐのはまだ先。学生だって、まだ起きて色々とやっててもおかしくない時間。でもなぁ、こう…。

 

 

「また、いきなり出てくるかもって考えたらなぁ…」

 

 

誰がって聞かれたら、もちろんシーのことなんだけど。

 

このまま寝て、前みたいに出てこられるとさ。ほら、何されるかわからんし…。

 

 

(聞きたいこともあるけど…)

 

 

けど、どうだろう。あいつのことだもん。こんな二人きりになれる空間じゃ、こっちの話なんて聞かないで飛びかかってくるんじゃ…

 

 

「……やめよ…」

 

 

そもそも、シーのことは未だに何もわからないまんま。知ってそうなやつらにだって、結局は聞けず終いだったろ。考えたってなんにもならないよ。

 

ボスッとベッドに倒れて、片腕で顔を軽く覆う。狭くなった視界に、天井が映った。

 

 

(…ほんとに寝るかな。今日は)

 

 

先延ばしにするみたいでよくないけど、シーのやつが姿を見せない。居ないやつと話をすることは出来ないだろ。

 

 

(目、閉じてれば、そのうち眠く…)

 

 

これ以上起きてる理由も、特にない。学生でも社会人でも、早寝早起きをして、義務を果たさなくちゃあな。

 

 

 

「…♪」

 

 

「…………えー」

 

 

 

なんて 心にもないこと考えてたら、ここ最近ですっかり見慣れた顔が、目に飛び込んでくる。

 

ボヤーッと見てた天井は、そいつに隠された。

 

 

「まーた、いきなり出てきて…」

 

 

噂、もとい、ウワサをすれば影ってか。

 

腕をどけて、閉じかけてた目をちゃんと開く。目を合わせた。私のすぐ隣に座り込んで、嬉しそうに私を見下ろす、シーのやつと。

 

 

「……………」

 

「♪」

 

 

お互いに無言で、ただジッと見つめ合う。まぁこいつの場合は、喋ったとこ見たことないっていうアレなんだけど。

 

 

「……お前さー」

 

「?」

 

「なんで居なくなった?」

 

「………?」

 

「夕方。今日の」

 

 

私から切り出して、シーに聞く。あの時お前が居れば、特務隊のやつらの包囲なんて屁でもなかったのに。強いじゃん、お前。

 

 

「……………」

 

 

最初こそ私の質問に首を傾げてたけど、その内に顔が曇ってきて、気付けばなんか、しょんぼりした雰囲気に。

 

…私、なんか傷付けるようなこと言っちゃったか…?

 

 

「あっ、そうか…」

 

 

気付く。そうだ。こいつがウワサなら、マギウス側は味方みたいなもん。だったら、手出しするわけにもいかないか…。

 

や、まぁ…あくまで私の推測に過ぎないわけだから、全然違う理由かもしれないんだけど。

 

 

「……………」

 

「あー、えっと…」

 

「…………」

 

「あの、ほら、違うから。居なくなったのが悪いとかってんじゃなくて」

 

 

申し訳なさそうに、こっちをチラチラ見てくるシー。そうやって困り顔を見せられると、なんか落ち着かない。

 

別に私は、あの時居なくなったのを怒ったり、責めたりしてるわけじゃない。ただ単に気になったから、こうやって聞いてみただけで。

 

 

「…………?」

 

「うん。大丈夫だから。どうもしないから」

 

「………」

 

 

まだ不安そうにしてたけど、私の言葉を聞いて、少しは安心できたらしい。暗い顔はどっかに行って、いつも浮かべてる笑顔が戻ってきた。

 

 

「…………♪」

 

「わっ。もー…」

 

 

いきなり、シーに抱きつかれる。気を良くしたのか、随分嬉しそう。頬擦りまでしちゃってさ。

 

まぁ、今までみたいに、いきなり襲われてピンクい展開になるよりはずっとマシか…。

 

 

「あーはいはい。嬉しいのかー」

 

 

気まぐれに、頭に手を置いて、ぽんぽんってする。そしたら抱きつく力が強くなって、ちょっとだけ苦しくなった。

 

ぬぐぅ…。迂闊だったか。

 

 

「〜♪」

 

「あっ、ちょっと…」

 

 

少し窮屈に思ってるところに、シーがもそもそ動いて、顔を寄せてくる。

 

あー、これもしかして…って勘付いた時には既に遅くて、私は何度目かになるキスで、口を塞がれた。

 

 

「ん…。んんー…」

 

「…………」

 

「ふぅ…む…」

 

 

激しくぶつかってくる、熱に浮かされたようなのとは違う。今日はゆったりとした、優しいやつ。そう感じる。

 

神社の時といい東の時といい、こいつは情とか欲とか、そういうのをダイレクトに押し付けてくるみたいなキスをするやつだったのに。どうしたんだろう。

 

 

(…いやいやいや、なにクソ真面目に考えてるんだ私…)

 

 

なにをお前、シーとするキスがどうのこうのって。

 

ちげーだろ。流されるんじゃなくて、抗わなきゃだよ。恥ずかしいのは変わんねーんだから!

 

 

「ん…」

 

「…?」

 

 

両肩を掴んで、軽く力を込めて押す。幸い抵抗されることもなく、私とシーの唇を離すことができた。

 

 

「?……?」

 

「…うん、ごめん。でも、ちょっと聞いてほしい」

 

「………」

 

 

お楽しみを中断されて、「どうして?」って言いたそうな顔のシー。私がお願いすると、不満そうにしながらだけど、とりあえず首を縦に振ってくれた。

 

私の言葉なんて無視して続行ってこともあったから、ちょっと意外。

 

 

「その……さ」

 

「…………?」

 

「お前が、あの…。私をどう思ってるかっていうのは、分かんないけど」

 

「…………」

 

「よくないって、思う。こういうの」

 

「!?」

 

 

目の前の可愛い子は、私の話を聞いてショックを受けたらしい。納得いかないのか、私の寝巻きをクイクイ引っ張ってくる。

 

そうなるよな。だけどこれも全部、私が最後にはされるがままになって来たのがいけない。

 

このままじゃダメ。そう思う。だからシーには悪いけど、ここはきっぱり言わせてもらおう。

 

 

「や、その……」

 

「?」

 

「違うんじゃないかって。こうやって、やたら、その………するのは」

 

「………」

 

 

うん。ちょっと詰まっちゃったけど、言いたいことは言えてる。こっからだ。

 

 

「だって、ほら。こういうのは、大事じゃん?えーっと……ムードとか」

 

「………?」

 

「別に、お前とすんのが…えー…アレとかってんじゃなくて。えっと…。困るだろ?慣れとかさ」

 

「?」

 

「そんなお前、会う度にやたらめったらぶちゅーっとしてたんじゃさ、その、…飽きちゃうかもだろ?」

 

「…………!」

 

 

ん、んんー……?まぁ、うん。言いたいこととはちょっと違うことが混じったけど、まぁ少しくらいなら。

 

シーのやつもハッとした顔になってるし、こっからいい感じに落とし所を…

 

 

「だから、するならさ。一番良い時にしようよ。シーだけじゃない。私もさ」

 

「………」

 

「そうしてもいいって、二人が思った、その時にすればいいよ。…今日みたいに、優しく。多分、それでいいと思うから。ね?」

 

「………」

 

「いっぱいしすぎて、何も感じなくなってからするキスって。そんなの嫌だろ?シーだって」

 

「…!」

 

「大事にしようよ。その…二人のことなんだから」

 

「〜!!」

 

 

すっごい目ぇキラキラさせてる。私の話、良いなって思ってくれたのかな。

 

とにかくこれで、私の負担も少しは減るんじゃないかなって思う。学校で出てきちゃうこととか、まだ問題も残ってるけど、その辺りも追々どうにかしていけたらいいな。

 

いやー、なんにせよ良かった。これで何の憂いも無く今日という日を終えられ………

 

 

終えられ………………

 

 

 

 

(いや、良くねーよ!?)

 

 

 

 

なんだ、「一番良い時にしよう」って!「二人のことなんだから」ってなに!?

 

これ以外の発言も大概だったけど、なんでキスはするって方向で纏まったの!?恋人同士の会話じゃねーんだよ!?

 

私はキスばっかりなのが嫌で、それをどうにか止められないかと思って話を切り出したはずなのに…。

 

 

(何処のどいつだよ、こんな妙ちきりんな発言したのは!)

 

 

 

………私だわ。

 

 

あ、あれぇ〜………?おかしいな、こんなはずじゃ…。言葉に詰まっても、途中まで上手くいってたのに…。

 

 

(もしかして私、実は話すの下手くそか…?)

 

「?」

 

「…いや、なんでもないから。うん…。や、なくねーけど…」

 

「……?」

 

 

だからって、「さっきまでの話は無し。やっぱりキスは禁止。やめよう」なんて言おうもんなら、シーが何やらかすか分からないし…。

 

 

「あーあー……。今日はいいやもう!」

 

 

もう知らん。なるようになれだ。寝るんだ、私は。全部ブン投げちゃる。そんな日だってあるだろ?あるんだよ!

 

 

「〜♪」

 

「あー?なに、お前も一緒に寝んの?」

 

「……♪」

 

 

不貞腐れながら寝返りをうつ私に合わせて、シーも体勢を整えてくる。どうも、部屋から出て行くつもりはないみたい。

 

 

「……わかった。いいよ」

 

「!」

 

「でも、さっきも言った通り、キスは無し。今はしたくないから」

 

「………」

 

 

残念そう。お前はしたかったんかい。それでも頷いてくれた辺り、私の提案を受け入れてくれたんだなって。

 

 

「んじゃあ、まぁ…。寝ますか」

 

「………」

 

「うわ、ちょ、なに…」

 

 

眠ろうとした私に、シーが両腕を伸ばしてくる。

 

そのまま私は抱き寄せられて、頭部はシーの胸に埋まる形になった。

 

 

「………♪」

 

「…なんなんだよ」

 

 

そういや、前の深夜も抱き枕みたいにされたよな…。そんなことを思い出しつつ、今度こそ寝に入ることにする。

 

段々とやってくる眠気や肉体的な疲労も手伝って、シーのことを振り払う気にはなれなかった。

 

 

(なにやってんだろ……。私……)

 

 

シーから漂ってくる、爽やかなような、甘いようないい香りに包まれながら、思う。

 

 

(シーって、別に仲間でもなんでもないのになー…)

 

 

そう。悪く言えば、シーは餌。マギウスの翼を誘き寄せて、こっちが情報を得る為の。

 

仲良くする必要なんてない。こうやって一緒に過ごしたり、さっきみたいに、二人での過ごし方を話し合ったりする必要もない。

 

ましてや、こいつに付けた名前だって、本当なら要らなくて…。

 

 

(っ………)

 

 

なんでだろう。そこまで考えたら、胸が痛くなった気がした。

 

 

(気のせい………だよね)

 

 

そうだって思いたい。さっきシーに話したことだって、ただ単に、私が考える方向に話を持っていけなかっただけ。

 

シーに情が移っちまったとか、不安そうな顔、悲しそうな顔を見ちゃったから、どうにかしてあげたかったとか、そういうわけじゃない

 

…と、思う。そうであってほしい。

 

 

 

それともまさか、私がシーとするのを望んでるとか…?

 

 

 

(いや、ないない。ないって…!ねーよ、それだけは…!)

 

 

今まであいつと過ごした時間が私を変えちまって、あいつとの時間を気に入っちまって。

 

そんで私は心の底ではそれを望んでるから、だからあんなこと言っちまったのか…?

 

 

(ありえないだろ、そんなの…)

 

 

思考と心がズレて、それが発言に影響する。そんなことあるのかな。

 

理性と知性を持ってるのが人なんだから、だったら、口から出る言葉だって、自分の思うようにコントロール出来るはずじゃないのかよ…。

 

 

(違う…!私は変態じゃない。同じ女の子、それも人間とは違う何かに心惹かれるような変態じゃ…!)

 

 

ノーマルだ。私は普通なんだ。普通。ノーマル。ノーマル。ノーマル。ノーマル…。

 

 

(分からないよ…。掴めない。自分のこと…)

 

 

ただでさえ自分の感情とか心とか、そういうのに振り回されることが増えたのに、今度はこんな…。

 

こんなんじゃあ私、いつか、自分自身のことまで見失う日が来ちまうんじゃないのか。

 

 

(そうなったら、どうしたらいいのかな…)

 

 

いよいよ本格的に眠くなってきたせいか、上手く思考することが出来ない。そんな頭で何か考えたって、まともに答えなんて出るわけなかった。

 

 

(教えてよ。お母さん……)

 

 

返ってくるはずのない答えを、帰ってくるはずのない人に求める。それを最後に、睡魔に身を任せた。

 

 

 

 

上半身を包むシーの体温に、不思議と安心感を覚えながら、深い眠りに落ちていく。

 

 

 

 

 

 

チビっ子がやってきて、家出だと声高に主張する日の、その前日の夜の出来事だった。

 

 

 

 

 





マギレコ本編の出来事

・マギウスの翼との接触を考えるやちよ。みふゆを見つける為にも、危険度の高いうわさを調べなくてはと意気込む鶴乃に対し、うわさファイルにある「電波少女」といううわさのことを話す。あまりアテにはしていないと言うものの、鶴乃の提案を飲み、翌日からもう一度、電波少女を調べてみることに。

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