知られることのない話   作:まるイワ

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年長さんのイメージを活動報告に追加したので初投稿です。





5-5 家出っ子

 

 

 

 

「じゃあ皆さん、戦ってるってことですか?その、マギウスの翼って人達と」

 

「戦っているといいますか…目を付けられてはいるようですわね」

 

「ふうん…」

 

 

ソファに座るお子様に、あれこれ説明する先輩。

 

私はそれを、何をするんでもなく見てる。ジッと。ボケーっと。

 

 

「ウワサってのも、なんか危なそうです」

 

「何度かやり合いましたけど、未だ全容も知れませんからね」

 

「良からぬ人達なんですねー…。病院送りにしたらよかったかなぁ、あの5人」

 

「物騒!」

 

 

先輩が説明役なのは、教えんのが上手いから。だから任せた。

 

マギウス、ウワサ…。今まで経験したこと纏めて、相手に分かりやすいように整理して話す。私にゃあ出来ない。

 

せめて『がんばれー』って、応援でもしときますか。脳内で。

 

 

(しかし、まー…)

 

 

「この間追い回された時も、万引きかなんかに見せかけてやれば…」

 

「そんな陰湿なやり方あります!?」

 

「お店の中に引き込めばやりやすいですかね」

 

「なんてことを…」

 

 

(発言がなんか…)

 

 

穏やかじゃねーわ。そういや言ってたっけ。口が悪くなるって。

 

本人曰く、キレた時顕著になるらしい。けどこれ、絶対普段から片鱗は見せてるタイプだろ。

 

 

(クセのある小学生だこと)

 

 

大人しそうな見た目しといて、口のよくない怒りんぼ。

 

応援だけじゃ足りないか。労いも併せて送ろうか。当然、口には出さないけども。

 

 

「ね、ね。どうすんのアレ…」

 

「どうするったってなぁ、お前…」

 

 

マジ子が話しかけてくる。どうするってのは勿論、チビッ子のこと。

 

年長さんが迎えに行って、そんでここに来たのはいいけど、開口一番「世話になる」だもん。で、二言目には「家出」だろ?

 

 

「ヤバくない?」

 

「そりゃ、小学生が家出はな…」

 

「ね。昔のアタシみたい」

 

「ふーん?」

 

「姉ちゃんとケンカしちゃってさ。夕方になったらおなか空いて帰ったけど」

 

「それっぽい顛末なのがまた…」

 

 

つって、そんなもんだよな。意気込んで行っても、最後はなんのかんの帰るんだよ。子供の家出は。

 

私は…どうだったかな。したことはなかったはずだけど。家出って発想にも至らないっつーか。

 

不満の無い毎日。文句の無い生活。幸せだった、お母さんとの時間…。

 

 

………………。

 

 

 

「あの…。終わったよ、お掃除。二階の」

 

「ん…。あー、うん。どうも」

 

 

リビングに姿を見せた年長さんに、声をかけられた。考えごとなんてお終いにして、お返事。

 

 

「やってもらってアレだけど、いいのに。掃除とかさ」

 

「やりたいから…。私が」

 

「あんたの家でもないのに」

 

「うん。でも、お邪魔してるから。毎回」

 

 

そーですか。分かってたけど、譲らねーな。性分ってやつね。

 

 

「それで、どうなったの?あの子…」

 

「まだ説明中」

 

「終わりましてよ、今」

 

「あ、そう…」

 

 

なんのかんの話してる間に終わったらしい。チビッ子がソファに座ったまま、私達の方を見てくる。

 

 

「お話は大体わかりました。大変そーですね」

 

「大変…。まぁ、それなりに」

 

「私も目、付けられちゃったんでしょーか」

 

「あー」

 

 

特務隊のやつらボコしたもんな。やつらってか、白ローブ。恨まれてても、おかしかないか。

 

 

「なんか、怖いです。あんな人達がいっぱい居るとか」

 

「………」

 

 

怖…?えー……?

 

や、キレてたろ。全然怖がってなかったじゃん。怖がってる蹴りじゃなかった。あれは。

 

 

「うん、まぁ…。いいわ、それは」

 

「はあ」

 

「なんで家出ー?てか、なんでここ来たん」

 

 

あ、台詞取られた。…それこそいいか。別に。

 

 

「そりゃー、皆さんの連絡先しか知りませんし」

 

「でも、小学生…だし」

 

「いけません?」

 

「うーん…」

 

「それとも『お前は都会の寒空の下に放り出されて、惨めに震えていればいい』って言うんですか。子供に?そんなことあります?」

 

「……………」

 

 

年長さんが、黙って私を見てくる。チビッ子に言われ放題で、思うところがあったのか。

 

心なしかしょんぼりしてるよ。雰囲気が。

 

まぁ、うん……。ね。棘あるもんな。

 

 

「まぁ、その件は後で話すとして」

 

「そうなんですか」

 

「出来ませんわよ、素通りなんて。…それで、年長さん」

 

「ん…。なに?」

 

「少し、運転をお願いしたくて」

 

 

あれ。先輩、どっか出掛けんの?食材は昨日の買い出しのやつまだ残ってるし、必要ないよ?

 

それか、もしかしてパトロール?確かにこの頃、グリーフシードよく使うし、補充するのも大事だね。

 

 

「これから、この子のお宅に行ってきます。私と赤さんで」

 

「は?」

 

 

全然違った。待てって。どういうこってすかそれは。

 

 

「先輩は、まぁ分かるよ。なんで私もさ」

 

 

仮にチビッ子がこの家に居座るっても、責任者ってか、代表みたいなのは先輩だろ。私、要る?

 

 

「彼女の滞在に同意するのなら、私と貴女、家に住む二人の納得が必要でしょ。だから二人でお話を聞くのです」

 

「ふうん…」

 

 

律儀だこと…。別にいいんだけどなぁ、私に聞かなくて。

 

いや、でもなぁ…。親御さんからしたら、娘と一緒に居る人間の素性が知れないってのは…。

 

んー……。顔合わせて、聞いとくべきか。家出の原因くらい。

 

 

「…わかった。行くよ」

 

「よろしい。年長さん、お願いします」

 

「あ、うん…」

 

 

話は纏まった。少し面倒だけど、仕方ない。お宅訪問と行きますか。

 

 

「じゃあ…マジ子ちゃん。ちょっと、行ってくる」

 

「はーい。アタシ、どうする?」

 

「その子とお留守番を。帰りは歩きますので、年長さんが戻ったら、引き続き三人で留守番。よろしい?」

 

「あ、いいの…?迎え、行かなくて…」

 

「ええ。あぁ、そう。台所にお茶菓子を仕舞ってます。お出しして」

 

「お、マジか。はいはーい」

 

 

先輩が指示を出したところで、立ち上がって玄関に向かう。

 

 

「マジ子さぁ」

 

「んー?」

 

「私らの分、残しとけ」

 

 

リビングを出る時にそれだけ言って、私達は家を出た。

 

チビッ子のやつの、どっか他人事な「いってらっしゃーい」を耳に挟みながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん〜……」

 

「……………」

 

「ん〜…んん?んんんん〜…!」

 

「……………」

 

「んぬぅ〜…!」

 

 

うんうん唸るマジ子ちゃん。小さい子は、それとは逆。とっても静かにしたままで、手をスラスラと動かしてる。

 

赤ちゃんと先輩ちゃん。二人を送って戻った私は、二人と一緒に留守番中。

 

最初はおやつ食べてくつろいでたけど、宿題があるからって、小さい子はプリントを取り出した。

 

 

『あっ!アタシもシュクダイ出されてんだったぁ。マジやっべー…』

 

 

マジ子ちゃんはそう言って私をチラッと見てきたけど、首を横に振ることしか出来なかった。

 

手伝ってあげたかったけど…。でもゴメン。先輩ちゃんに、必要以上の手出しは無用って言われてるから…。

 

やらなきゃダメだよって注意してから、嫌そうにプリントに向かうマジ子ちゃんを見守った。

 

お菓子を全部食べちゃわないように、赤ちゃん達の分を、別のお皿に分けながら。

 

 

「ぬあーん…!もーダメ!ゼンゼンわからーん!」

 

「あー…」

 

 

そうして二人が宿題始めて、少し経った頃。マジ子ちゃんがギブアップ。

 

頑張って問題と格闘してたけど、ちょっとダメだったみたい。

 

 

「…大丈夫?答え、ダメだけど、ヒントくらいなら…」

 

「マジぃ…?」

 

「ん、ん…」

 

 

わぁ…。すっごく疲れた顔…。聞いてはいたけど、ほんとに勉強苦手なんだね…。

 

宿題のプリントを見させてもらったけど、進捗は芳しくない。所々書き込んではあるけど、どれも途中で止まって、答えを出すとこまで行ってない。

 

 

「うん。私、分かるから。解けるように、ちょっと教える」

 

「マジかぁ〜…!ありがど〜、ねんちょーさーん!」

 

 

感謝までされちゃった…。直接答えを教えるとか、私が代わりに解くとかじゃないし、これくらいならいいよね…?

 

 

「でもさー、ちょっちきゅーけー!頭ボーンってなる!」

 

「え、でも…」

 

「いーの!ちょっとしたらちゃんとやるから!」

 

「うーん…」

 

「この子もさー、長いことシューチューして疲れてるって、多分!ね?」

 

 

マジ子ちゃんが、小さい子の方を見る。話しかけられた彼女も、顔を上げてマジ子ちゃんを見た。

 

 

「…私ですか」

 

「うん!ヘロヘロでしょ?」

 

「もう終わってますけど…」

 

「マジでぇ!?」

 

「はい、とっくに。貴女がうんうんうるさくしてる時にはもう」

 

「ちょっとだけヒドい!」

 

 

どうも、小さい子はとっくに宿題を終わらせて、スマホでなにかしているらしかった。

 

本人に断ってプリントを見せてもらったけど、ミスは見当たらなかった。成績は良好なのかもしれない。

 

 

「天才かよー。えーっと、リモコン、リモコン…」

 

 

「テレビ見るわテレビー」って、マジ子ちゃんがTVリモコンの電源ボタンを押す。このまま宿題のこと、忘れちゃわないといいけど。

 

 

「んーっと。なにやってっかなー」

 

 

ボタンを押して、番組を切り替えていく。音声が少しだけ聞こえては、違うものに次々変わる。

 

今やってるのはどれもイマイチなのか、マジ子ちゃんの反応は良くない。

 

 

「んー、あんまオモシロそーなのは…。あっ」

 

「ん…?」

 

 

その言葉と一緒に、マジ子ちゃんのリモコン操作が止まる。何だろうって、私もテレビ画面を見てみる。

 

 

「……これ」

 

「うわ、なつかしー。まだやってんだねー、これ」

 

 

懐かしい。私も、まずそう思った。

 

テレビに映っていたのは、アニメーション。オープニング曲と一緒に、番組タイトルが大きく表示されているところ。

 

 

「私が、子供の頃からやってる。これ…」

 

「あ、そーなん!?やー、見てたんだよねー。幼稚園の頃とかさー」

 

「うん…。うん」

 

 

マジ子ちゃんの言うことが、よく分かる。共感できるってこと。

 

小さい頃、見ていた。今、目の前で放送されてるアニメ番組は、まさにそう。まだ続いてたんだなぁって思ったのは、私も同じだった。

 

 

「なんかこれとかさ、キンヨーの夜のとか、見んのがアタりまえー!ってなってなかった?」

 

「うん…。土曜の夕方、日曜の朝と夜とかも…」

 

「ゲツヨーの夜とかもね!わかるぅ〜!」

 

 

そうそう。それで、大きくなる内に、そういうのも見なくなっていって…。

 

 

「やー…なんかフシギだねー。なんつーんだっけこれ。デストルドー?」

 

「ノスタルジー…!ノスタルジーね…?」

 

「それー!」

 

 

びっくりした。難しい言葉知ってるんだね…。いや、意味は分かってないのかな…?

 

 

 

 

「んー。やっぱさー、こう、子供向けって感じだよねー」

 

「ん…?」

 

 

なんとなく、そのままアニメを見続ける。そしたら、マジ子ちゃんがそう言った。

 

 

「お話わかりやすくてさー、キャラも楽しそーにしてて」

 

「うん」

 

「でもこう、私らみたいなトシの子にはちっと物足りない…みたいな?」

 

「あー…」

 

 

成る程。うん、確かに。それはそうかもしれない。好きで見続けてる人も、何処かに居るかもしれないけど。

 

でも、それもある意味自然なことかもしれない。人間、変わるものだから。

 

心も体も大きくなって、そうする内に変わるんだね、色んなこと。ちっちゃな子達に向けたものから、抜け出して。

 

 

 

「そうでもないですよ」

 

 

 

異を唱える声がして、それを喋った人を見る。そこには私達と同じで、TVに目をやる女子小学生が。

 

てっきりまだ、スマホを眺めてるんだと思ってたけど。

 

 

「えー、なに。違うん?」

 

「内容こそ、子供向けなんですけどね。それでもキャラクターの生い立ちとか、重たい要素も意外とあったり」

 

「そーなんだ」

 

「劇場版だと戦…えっと、戦争してるシーンとかありますし。家燃えたりとか」

 

「え、マジ?それ、人 死んじゃうってこと…?」

 

「そこまではないですけど、ガチめなバトルシーンとかやりますよ。劇場作品なんで、作画もいいんです」

 

「へ〜…」

 

 

そうだったんだ。自分が小さい頃見てたアニメに、そんな実態が。見なくなって離れちゃうと、その分知らないことばっかりになるんだなぁ。

 

 

「すごいねー!もしかしてさ、詳しい?」

 

「…………別に」

 

「ほんとー?」

 

「ちょっと知ってるだけですから」

 

 

フイッと顔を逸らす、小さい子。表情こそムスッとした感じだけど、顔がちょっと赤いのを見逃さなかった。

 

あぁ、多分、詳しいんだなって。その反応は、詳しいやつだと思う。多分。

 

ちょっと意外だなって、思った。見た目も雰囲気も大人しそうで、勉強もできて。そういう趣味があるようには見えないから。偏見だね…。

 

 

「ね、ね!もっとイロイロ話して!聞きたい!」

 

「グイグイ来ますね…」

 

「ダメだった?」

 

「いや、そういうわけじゃ…。……じゃあ、まぁ、知ってる範囲で」

 

「うんうん!」

 

 

マジ子ちゃんの熱望に応えて、話し始める小さい子。

 

作品の内容、メインキャラクター、物語の舞台。そういうのを話す内に、ある種の熱が篭ってく、彼女の言葉。

 

放送話数、グッズ展開、原作漫画との差異…。

 

話がコアなものになる頃にはそれなりに打ち解けて、柔らかい顔を少しだけ見せてくれるようになってた。

 

 

 

「じゃあ、あの…。見ますか?劇場版…」

 

「見れんの?」

 

「つい最近、ラインナップに追加されて…」

 

「マジかー。えー、じゃ 皆で見よ!まだ時間あるし!」

 

 

そして気付けば、配信サービスで映画を見ることに。

 

……忘れてないよね?宿題のこと…。

 

 

それを言い出せないまま、立ち上がる。気付けば、お茶菓子と一緒に出した飲み物も空っぽ。

 

映画を見るって話なら、お供になるのが必要だもの。三つのグラスをトレイに乗せて、中身を注ぎにキッチンへ。

 

 

戻った頃にはアニメも終わって、TVは別の番組を映してた。

 

誰も見てない画面を消して、リモコンはテーブルに。急かすマジ子ちゃんの声に応えて、私もソファに腰掛ける。

 

 

小さい子を中心に寄り添って、午後の映画観賞と洒落込む私達だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なにやってんだお前ら…」

 

「あー、お帰りー」

 

 

まだ映画の途中。「三人団子になって…」って呆れる赤ちゃんの、帰宅後 開口一番の一言を、私達は聞いた。

 

 

マジ子ちゃんはやっぱりっていうか、宿題のことは頭からすっぽ抜けていて。

 

 

先輩ちゃんから お小言ちくちくされながら、ひーこら言って問題解くのを、皆で見守ることになっちゃった。

 

 

なんか、ごめんね…?

 

 

 





マギレコ本編の出来事

・いろはの柊家探しの結果は芳しくなく、地図にはバツ印ばかり。そこに鶴乃から電話が来るが、要領を得ない彼女の発言に戸惑う。詳しく聞くと、とにかく中央の電波塔に来てと告げられた。

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