アニレコ ファイナルシーズンは本日19:00より放送なので初投稿です。
「土づくりをしよう。あれこれ植えましょうとは言いましたわ。皆さんも、私も。ですがね」
「ん…」
「いざ手を付けるとなっても、初心者なのだから判断に困るのです。ね?」
「まあ…ね?」
一応、調べはしましたわよ。慣れない私達はどうすればいいのか。何を育てればいいのか。
このゴリゴリのネット社会。情報を得るのはさして難しくはなく、結果としては、収穫があったと言えるでしょう。
でもねえ。中々どうして…。
「肥料はどんなものがいいのか。育てたい植物はなにか。どんな土を好んでいるのか。使うべき道具は…」
「あー…」
「色々と出てきて私、もう何がなにやらで」
聞いてはいましたけど、まさか土にも質というものがあるだなんて。酸性とかなんとか…。
「どうしよ…?あるよ。色々…」
年長さんが、近くの棚から肥料を取って、しげしげ眺めてる。私も、目についたものを手に取ってみた。
液体のもの、錠剤のような形のものと、自分がイメージする肥料とは違うのがよくわかる。特に後者はなんですのこれ。これを土に放るだけで、植物には栄養になるっていうんですか?
土は土で、売っている培養土を使うのがいいと、ネットには書いてありましたし…。花を育てるのならば、是非にと。
(まぁ、それなら多めに買っていって、庭の土に混ぜて使いましょうか)
本当なら、そうする前に適切な土づくりというのも必要でしょう。培養土も、そうやって使うものではない。きっと。
けれど、そこまで本格的にやっていくこともないかと思うのも、また事実。あくまで庭の彩りにでもなればなぁと、それくらいなのですし。
「ね」
「はい?」
「聞いて、いい…?」
「はあ」
後は何を購入するのか決めるだけですし、まあ、構いませんけれど。
「どうして、育てるの。植物…作物?」
「んー…」
なるほど。まぁ、そう思うでしょうね。わざわざ庭の土を掘り返さなくたって、プランターかなにかでいいのですし。
なんなら、色々植えて育てようだなんてのも、今回の件に置いては必要のないこと。趣味的と断じてもいい。
なら、何故か。
「なんというか、彩りが欲しくて」
「彩り」
「ええ。あの家、そこそこ長く使ってますけど、庭も殺風景ですからね。この機会にと」
私だけが住むなら、別にそのままでもよかったけれど、今は赤さんも居て、小さなお客様も預かっている。シーさんは……うん。毎度、何処から侵入しているのやら。
それは置いておくとして、チームを発足してからは我が家に集まることも増えたのですから、リビングから見える景観だって、良くして置きたいというものです。
「でも、その…怒らない?ご両親、とか…」
「咎めもしないでしょう。そういう人達ですもの」
「そう?」
「………ええ」
嘘。ちょっと、心が重たくなった気がする。本来なら、きっと怒られたことだろうから。
そうならないのは、自分がそんな両親にしてしまったから。こうやってまた、そのことを思い知らされますのね…。
まったく、魔法少女というのは、良いのか悪いのか…。
「…さ。こうして話してると、時間が無くなりますわ。買うもの買って帰りましょ」
「あ、うん…。どうする?」
「とりあえず培養土と、肥料を幾つか」
「種類…」
「どちらも買っていきましょ。野菜用も、花用も」
これだと思うものを取って、カートに入れていく。服を汚さないように、軍手やエプロンも一応買っていきますか。
「あの…やっぱり出すよ?私も…」
「お金ですか?」
「ん…。皆の買い物だし」
ここに来る前、一度遠慮したことですのに。律儀な方。
申し出はありがたい。けれど学生の身である以上、彼女も決して懐に余裕があるというわけではないはず。この買い物で出費させるというのも、ね。
「お気持ちだけ頂きますわ。さ、行きましょ」
感謝の気持ちを口にして、会計をしにレジへ向かう。年長さんは、それならせめてって、少し重たいカートを持ってくれた。
昨日の作業に使ったレンガは、家を探したらたまたまあったものだから助かった。あれも購入するとなったら、今頃はカートがもっと重たかったはずだから。
もう一度、お礼をしておいた。
会計を終えて、駐車場に戻る。まさか学校から帰って早々に、ホームセンターへ買い物に行く日が来ようとは。人生とは分からないものです。
「大丈夫、かな。皆」
車のバックドアを開けて、購入したものを乗せる彼女が言うのは、もしかしなくても彼女らのこと。
私達とは別行動を取っている、赤さん達のことでしょう。
「どうでしょうねー。一応、無茶苦茶しないように言ってはありますけど…」
あの子達には、植えるものの種や苗の選択と、購入を頼んである。
ただ、揃いも揃って初心者なのだから、然るべき場所で話を聞いておくようにと、指示は出しておいた。
「四人も居るのですし、ちゃんと全員で話し合ってなんとか出来ますわよ」
シーさんを頭数に入れるのは違う気もしますけど、まあこの際いいでしょう。
赤さんとの間に何があったかは知りませんが、以前の戦いが嘘のように穏やかですから。今のところは。
「ん…。閉めるよ、ドア」
「はーい」
荷物を積み終わって、年長さんがバックドアを閉める。そうなったら、もうこの場所に留まる理由も無い。
年長さんは運転席に。私は助手席に。それぞれ乗り込んだ。車が動いて、駐車場から出て行く。
「皆、なに、買ってくるかな。楽しみだね…」
「そうですか?」
「ん…」
前はしなかったから。こういうの。
そう言う年長さんの横顔は、嬉しそうにしてる気がして。
彼女の言う「前」っていうのは、つまり。
「どうでしょうねー。赤さん辺りは、『なんでこんなことー』みたいに言ってるかも」
「…かも」
「ね」
「前」のことは、傷かもしれない。だから触れずに、話を合わせる。
彼女であれば、多分、怒りはしないでしょう。でもそれはそれ。私がそこに立ち入って、果たしていいものであるのか。
「あ、そういえば…よかったの?あだ名…」
「あの、小学生の子の?」
「ん…」
…でも、そうして遠慮がちなのを続けて、それは果たして、真にチームとして纏まってると言えるのかしら。
個々の患難辛苦を互いに分かち合うのもまた、チームとしては必要なことなのでは。そんな風に考えてしまう。
「いいんじゃありませんの?本人がいいと言っていましたもの」
「でも、葛藤…してた。すっごい…」
「顔も苦々しかったですわね…」
一緒に居る。集まるし、ご飯も食べるし、戦うし、遊…息を合わせる特訓も、まだ続けてる。
でも、それだけだ。
つまりは、未だ知らない。お互いのこと。私達は皆そう。なんとなく、何か抱えてるのは知ってる筈なのに。
誰も彼も、それを曝け出さない。そして、踏み込みもしないから。
「…大丈夫、かな。仲良く、してるかな…」
「少しでもそうなればと思って、赤さんを一緒に行かせたんですけれど」
「やっぱり、納得…してない?赤ちゃん」
「ですわね。口にはしませんが」
和気藹々とする時はあっても、一つに結び付いてはいない。なぁなぁの、ある種寄り合いのような、私達のチーム。
果たしてそんな調子のままで、チームに危機が訪れた時、団結することが出来るのか。
今までやってきた戦いとは、また違う。この穴だらけのチームが崩れてしまいかねないような、恐ろしい危機が、いつか…。
(……なんて、そうそう起きませんわよね。そんな大きな出来事は)
杞憂であれば、それでよろしい。それでも私は、心の何処かで生まれたそんな不安を、忘れてしまうことが出来ずに。
だけれど、それを打ち明けることもないままで。
そういうものを抱えたまま、年長さんと話していた。
「あーもー…!なんでこんなことしなくちゃなんねーん…だっ!!」
魔力を込めて、使い魔に拳骨。吹っ飛んでいって、そのまま消滅した。
八つ当たりって形になったけど、相手は使い魔。悪い魔女様の手下にゃあ、それくらいで丁度いいだろ!
「しかたないじゃーん!魔女ほっとけないし…っさー!」
「そりゃそうだけどなぁ…」
言いながら、マジ子もアタッシュケースをブン回す。人の手みたいな形の使い魔達が、それを食らって散っていく。
分かってんの。魔法少女の仕事は。私が言ってんのは、そういうことじゃないんだよ。
「でもさー、今日はパパッと終わりそーじゃん。ほら」
マジ子が顔を向けた先には、一体、また一体って真っ二つになる使い魔の群れ。
そこそこの数が居たはずだけど、少し目を離した間に、だいぶ掃除も進んだみたい。
「マジ、めっちゃ強いねー。あの子…」
「…………」
言ってる間に、寄って集ってた使い魔の、最後の一体が今 斬り捨てられる。
それをやった魔法少女。つまりチビっ子のやつは、ふーって短く一息吐いた。
よくもまぁ、何も無かったみたいに涼しい顔してさ…。
「ちょっと、何してるんですか。奥、行きましょうよ」
「あー、はいはいって…」
「早く帰ってアニメ雑誌が見たいんですよ…!亀さんですか、貴女達!」
「いや、本音よ」
一言多いんだよ、色んな意味で。
そこはお前、外で待たせてる被害者の安否とか、土いじりの時間無くなるとか、もっとこう…あるだろ。
「なんですか!逸ってるんですよ、気持ちが!歳上なら分かってて下さい!」
「求めんな、器用さ。そんな生き物じゃねーから歳上は」
「だいじょーぶ。今いくからさー、おチビ」
「あー!も、だからその名前は…!いや、ん〜……!ぬぁぁぁぁん…!」
あっちでキレてこっちで唸って。忙しいやつだな この小学生…。
「そんなにアレなら嫌って言っときゃよかったじゃん…」
「ん!何か言いました!?舐めましたか、小学生!」
「気に入ったのか、それ…」
「割とですね!」
そうなんだ…。
小学生又はチビっ子改め、おチビなんてあだ名が付いた魔法少女のキレ芸に付き合いながら、魔女がお待ちの最深部まで、結界の中を突き進む。
(ほんとさ、なんでこんなんやってんだ。私…)
学校帰りでかったるいとこに、買い物に駆り出されてきてさ。
そんで道中、バカとシーと、夜中にトイレに付き合わされた、小学六年生女子の相手もしてみせて。
挙句の果てには魔女と結界でデートと来たよ。わあ嬉しい。そんなわけねーじゃん。
とっくに用事は済ませたんだから、ほんと、さっさと魔女倒して帰ろ…。
ダレる心を奮い立たせて、私は走った。
マギレコ本編の出来事
・第一部 第5章六話 終了後〜第5章七話 開始前