知られることのない話   作:まるイワ

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アニレコ ファイナルシーズンは本日19:00より放送なので初投稿です。





5-7 買い物へ

 

 

 

 

「土づくりをしよう。あれこれ植えましょうとは言いましたわ。皆さんも、私も。ですがね」

 

「ん…」

 

「いざ手を付けるとなっても、初心者なのだから判断に困るのです。ね?」

 

「まあ…ね?」

 

 

一応、調べはしましたわよ。慣れない私達はどうすればいいのか。何を育てればいいのか。

 

このゴリゴリのネット社会。情報を得るのはさして難しくはなく、結果としては、収穫があったと言えるでしょう。

 

でもねえ。中々どうして…。

 

 

「肥料はどんなものがいいのか。育てたい植物はなにか。どんな土を好んでいるのか。使うべき道具は…」

 

「あー…」

 

「色々と出てきて私、もう何がなにやらで」

 

 

聞いてはいましたけど、まさか土にも質というものがあるだなんて。酸性とかなんとか…。

 

 

「どうしよ…?あるよ。色々…」

 

 

年長さんが、近くの棚から肥料を取って、しげしげ眺めてる。私も、目についたものを手に取ってみた。

 

液体のもの、錠剤のような形のものと、自分がイメージする肥料とは違うのがよくわかる。特に後者はなんですのこれ。これを土に放るだけで、植物には栄養になるっていうんですか?

 

土は土で、売っている培養土を使うのがいいと、ネットには書いてありましたし…。花を育てるのならば、是非にと。

 

 

(まぁ、それなら多めに買っていって、庭の土に混ぜて使いましょうか)

 

 

本当なら、そうする前に適切な土づくりというのも必要でしょう。培養土も、そうやって使うものではない。きっと。

 

けれど、そこまで本格的にやっていくこともないかと思うのも、また事実。あくまで庭の彩りにでもなればなぁと、それくらいなのですし。

 

 

「ね」

 

「はい?」

 

「聞いて、いい…?」

 

「はあ」

 

 

後は何を購入するのか決めるだけですし、まあ、構いませんけれど。

 

 

「どうして、育てるの。植物…作物?」

 

「んー…」

 

 

なるほど。まぁ、そう思うでしょうね。わざわざ庭の土を掘り返さなくたって、プランターかなにかでいいのですし。

 

なんなら、色々植えて育てようだなんてのも、今回の件に置いては必要のないこと。趣味的と断じてもいい。

 

なら、何故か。

 

 

「なんというか、彩りが欲しくて」

 

「彩り」

 

「ええ。あの家、そこそこ長く使ってますけど、庭も殺風景ですからね。この機会にと」

 

 

私だけが住むなら、別にそのままでもよかったけれど、今は赤さんも居て、小さなお客様も預かっている。シーさんは……うん。毎度、何処から侵入しているのやら。

 

それは置いておくとして、チームを発足してからは我が家に集まることも増えたのですから、リビングから見える景観だって、良くして置きたいというものです。

 

 

「でも、その…怒らない?ご両親、とか…」

 

「咎めもしないでしょう。そういう人達ですもの」

 

「そう?」

 

「………ええ」

 

 

嘘。ちょっと、心が重たくなった気がする。本来なら、きっと怒られたことだろうから。

 

そうならないのは、自分がそんな両親にしてしまったから。こうやってまた、そのことを思い知らされますのね…。

 

まったく、魔法少女というのは、良いのか悪いのか…。

 

 

「…さ。こうして話してると、時間が無くなりますわ。買うもの買って帰りましょ」

 

「あ、うん…。どうする?」

 

「とりあえず培養土と、肥料を幾つか」

 

「種類…」

 

「どちらも買っていきましょ。野菜用も、花用も」

 

 

これだと思うものを取って、カートに入れていく。服を汚さないように、軍手やエプロンも一応買っていきますか。

 

 

「あの…やっぱり出すよ?私も…」

 

「お金ですか?」

 

「ん…。皆の買い物だし」

 

 

ここに来る前、一度遠慮したことですのに。律儀な方。

 

申し出はありがたい。けれど学生の身である以上、彼女も決して懐に余裕があるというわけではないはず。この買い物で出費させるというのも、ね。

 

 

「お気持ちだけ頂きますわ。さ、行きましょ」

 

 

感謝の気持ちを口にして、会計をしにレジへ向かう。年長さんは、それならせめてって、少し重たいカートを持ってくれた。

 

昨日の作業に使ったレンガは、家を探したらたまたまあったものだから助かった。あれも購入するとなったら、今頃はカートがもっと重たかったはずだから。

 

もう一度、お礼をしておいた。

 

 

 

 

会計を終えて、駐車場に戻る。まさか学校から帰って早々に、ホームセンターへ買い物に行く日が来ようとは。人生とは分からないものです。

 

 

「大丈夫、かな。皆」

 

 

車のバックドアを開けて、購入したものを乗せる彼女が言うのは、もしかしなくても彼女らのこと。

 

私達とは別行動を取っている、赤さん達のことでしょう。

 

 

「どうでしょうねー。一応、無茶苦茶しないように言ってはありますけど…」

 

 

あの子達には、植えるものの種や苗の選択と、購入を頼んである。

 

ただ、揃いも揃って初心者なのだから、然るべき場所で話を聞いておくようにと、指示は出しておいた。

 

 

「四人も居るのですし、ちゃんと全員で話し合ってなんとか出来ますわよ」

 

 

シーさんを頭数に入れるのは違う気もしますけど、まあこの際いいでしょう。

 

赤さんとの間に何があったかは知りませんが、以前の戦いが嘘のように穏やかですから。今のところは。

 

 

「ん…。閉めるよ、ドア」

 

「はーい」

 

 

荷物を積み終わって、年長さんがバックドアを閉める。そうなったら、もうこの場所に留まる理由も無い。

 

年長さんは運転席に。私は助手席に。それぞれ乗り込んだ。車が動いて、駐車場から出て行く。

 

 

「皆、なに、買ってくるかな。楽しみだね…」

 

「そうですか?」

 

「ん…」

 

 

前はしなかったから。こういうの。

 

そう言う年長さんの横顔は、嬉しそうにしてる気がして。

 

彼女の言う「前」っていうのは、つまり。

 

 

「どうでしょうねー。赤さん辺りは、『なんでこんなことー』みたいに言ってるかも」

 

「…かも」

 

「ね」

 

 

「前」のことは、傷かもしれない。だから触れずに、話を合わせる。

 

彼女であれば、多分、怒りはしないでしょう。でもそれはそれ。私がそこに立ち入って、果たしていいものであるのか。

 

 

「あ、そういえば…よかったの?あだ名…」

 

「あの、小学生の子の?」

 

「ん…」

 

 

…でも、そうして遠慮がちなのを続けて、それは果たして、真にチームとして纏まってると言えるのかしら。

 

個々の患難辛苦を互いに分かち合うのもまた、チームとしては必要なことなのでは。そんな風に考えてしまう。

 

 

「いいんじゃありませんの?本人がいいと言っていましたもの」

 

「でも、葛藤…してた。すっごい…」

 

「顔も苦々しかったですわね…」

 

 

一緒に居る。集まるし、ご飯も食べるし、戦うし、遊…息を合わせる特訓も、まだ続けてる。

 

でも、それだけだ。

 

つまりは、未だ知らない。お互いのこと。私達は皆そう。なんとなく、何か抱えてるのは知ってる筈なのに。

 

誰も彼も、それを曝け出さない。そして、踏み込みもしないから。

 

 

「…大丈夫、かな。仲良く、してるかな…」

 

「少しでもそうなればと思って、赤さんを一緒に行かせたんですけれど」

 

「やっぱり、納得…してない?赤ちゃん」

 

「ですわね。口にはしませんが」

 

 

和気藹々とする時はあっても、一つに結び付いてはいない。なぁなぁの、ある種寄り合いのような、私達のチーム。

 

果たしてそんな調子のままで、チームに危機が訪れた時、団結することが出来るのか。

 

今までやってきた戦いとは、また違う。この穴だらけのチームが崩れてしまいかねないような、恐ろしい危機が、いつか…。

 

 

(……なんて、そうそう起きませんわよね。そんな大きな出来事は)

 

 

杞憂であれば、それでよろしい。それでも私は、心の何処かで生まれたそんな不安を、忘れてしまうことが出来ずに。

 

だけれど、それを打ち明けることもないままで。

 

そういうものを抱えたまま、年長さんと話していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーもー…!なんでこんなことしなくちゃなんねーん…だっ!!」

 

 

魔力を込めて、使い魔に拳骨。吹っ飛んでいって、そのまま消滅した。

 

八つ当たりって形になったけど、相手は使い魔。悪い魔女様の手下にゃあ、それくらいで丁度いいだろ!

 

 

「しかたないじゃーん!魔女ほっとけないし…っさー!」

 

「そりゃそうだけどなぁ…」

 

 

言いながら、マジ子もアタッシュケースをブン回す。人の手みたいな形の使い魔達が、それを食らって散っていく。

 

分かってんの。魔法少女の仕事は。私が言ってんのは、そういうことじゃないんだよ。

 

 

「でもさー、今日はパパッと終わりそーじゃん。ほら」

 

 

マジ子が顔を向けた先には、一体、また一体って真っ二つになる使い魔の群れ。

 

そこそこの数が居たはずだけど、少し目を離した間に、だいぶ掃除も進んだみたい。

 

 

「マジ、めっちゃ強いねー。あの子…」

 

「…………」

 

 

言ってる間に、寄って集ってた使い魔の、最後の一体が今 斬り捨てられる。

 

それをやった魔法少女。つまりチビっ子のやつは、ふーって短く一息吐いた。

 

よくもまぁ、何も無かったみたいに涼しい顔してさ…。

 

 

「ちょっと、何してるんですか。奥、行きましょうよ」

 

「あー、はいはいって…」

 

「早く帰ってアニメ雑誌が見たいんですよ…!亀さんですか、貴女達!」

 

「いや、本音よ」

 

 

一言多いんだよ、色んな意味で。

 

そこはお前、外で待たせてる被害者の安否とか、土いじりの時間無くなるとか、もっとこう…あるだろ。

 

 

「なんですか!逸ってるんですよ、気持ちが!歳上なら分かってて下さい!」

 

「求めんな、器用さ。そんな生き物じゃねーから歳上は」

 

「だいじょーぶ。今いくからさー、おチビ」

 

「あー!も、だからその名前は…!いや、ん〜……!ぬぁぁぁぁん…!」

 

 

あっちでキレてこっちで唸って。忙しいやつだな この小学生…。

 

 

「そんなにアレなら嫌って言っときゃよかったじゃん…」

 

「ん!何か言いました!?舐めましたか、小学生!」

 

「気に入ったのか、それ…」

 

「割とですね!」

 

 

そうなんだ…。

 

小学生又はチビっ子改め、おチビなんてあだ名が付いた魔法少女のキレ芸に付き合いながら、魔女がお待ちの最深部まで、結界の中を突き進む。

 

 

(ほんとさ、なんでこんなんやってんだ。私…)

 

 

学校帰りでかったるいとこに、買い物に駆り出されてきてさ。

 

そんで道中、バカとシーと、夜中にトイレに付き合わされた、小学六年生女子の相手もしてみせて。

 

挙句の果てには魔女と結界でデートと来たよ。わあ嬉しい。そんなわけねーじゃん。

 

 

 

とっくに用事は済ませたんだから、ほんと、さっさと魔女倒して帰ろ…。

 

 

 

ダレる心を奮い立たせて、私は走った。

 

 

 

 





マギレコ本編の出来事

・第一部 第5章六話 終了後〜第5章七話 開始前


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