ここから少しの間先輩視点なので初投稿です。
『本日は気温も丁度良く、とても過ごし易い一日となっており…』
何となく流している天気予報を適当に眺めながら、食卓にて食後のお茶を飲む。早く起きたお陰で、朝の時間にこんなにも余裕が出来ている。なんて素晴らしいこと。
「あの子、まだ起きてきませんのね」
小さく呟いてみる。いつもは大体私より少し後くらいに姿を見せますのに、今日はなんだか違うみたい。まぁ、昨日あれだけ馬鹿やってお互い疲れたのですから、致し方ないことかも…
(決して1人だけの朝食が寂しかったとか、何処か味気ないような気がしたとか、そういうことではありませんわ。えぇ、決して!)
大体、彼女とは大して仲が良いというわけでもないのだし。ご飯くらい一人で平気に決まってるでしょう、幼い子供じゃないのですから!
「……はよ」
そうやって私が一人で内心荒ぶっている中、彼女は起きてきた。一人じゃなくなって、私の心が少し嬉しさを感じている気がするのは、まぁ気のせいとして。
まだ眠そうな目をしてるけれど、彼女の姿は今日も変わらない。大東学院に通うことを示す黒い制服に、セミロングというには少し短く、ボブというには少し長い、中途半端な黒い髪。気の強そうな赤い色の瞳は、彼女の粗暴な性格を表していると言えるかもしれない。
顔自体はむしろ可愛らしいのだから、もっと角の取れた、マイルドな人当たりになってほしいなと思うところではありますわね。
「遅くてよ。昨日のことで疲れちゃいましたの?赤さん」
私が決めた、彼女のあだ名を口にする。『あだ名で呼び合えば、ちっとは仲良くなれるかもしんないし』とは、この子の弁。実際仲良くなれたのかは、よく分からない。
「別に…。いただきます」
「そう」
短く答えて、食卓に着いて、朝食を食べ始める赤さん。何だか元気が無いように思える。嫌な夢でも見たとか?だとしたらお気の毒。
「つーかさ、やっぱ赤さんはねえよ。赤ちゃんみたいだろ」
「何よ。だって貴女、変身した時の衣装が真っ赤じゃありませんの。だから赤さん。分かり易いというのは良いことですわよ」
「センスがねーの、センスが」
「じゃあ貴女の『先輩』は!」
「あんたの方が歳上なんだから先輩だろ」
「発想が安直…」
もう何度似たようなやり取りをしたのか。でもこんな言い合いをする割にあだ名が一向に変わらないということは、本当はもうそれでいいやって思ってるってことなんでしょうね。それでも少し納得いかないから、取り敢えず口に出してみてるだけで。
「ごちそうさま」
「お皿は水張っておいてくださいね」
食事を済ませた赤さんは、「帰ってきたら洗いますから」と続けた私に返事を返さず、食器を下げるとそのまま歯を磨きに行った。話は聞いていたようで、食器には水が張られていた。
そろそろ家を出る頃合いになった。赤さんと二人して玄関に向かい、靴を履いて外に出る。しっかりと施錠して、家の敷地を出るまで歩いたら、そこからは別行動。
「じゃ、放課後に調整屋で落ち合いましょ」
「ん。じゃね」
投げやりに手を振って、赤さんは自分の学校へと向かった。私も登校しませんと。そう思い歩き出した。あの子は大東。私は水名。住んでる家は同じでも、向かう場所は正反対だった。
昼休み。外に出て、登校の際に買った昼食をいただく。嗚呼…私も赤さんも、料理が出来ないばかりにこんな…。朝は冷凍食品のおかずと市販のバターロール。昼はコンビニで買ったもの。夜は外食か店屋物。
お金ばかり持っているから、食べ物が買えなくなるということはありませんが、水名女学園に通う、うら若き乙女がこれでは…。
(……三食きちんと食べられるんだから、ありがたいことですわね)
そう思うことにして、思考を切り替える。赤さんは今何をしているのか。そういえば、大東学院ではどのように過ごしているのか、聞いたことはなかった。わざわざ聞くこともないかもだけれど、気にならないと言えば嘘になる。
というかまず、私の家で暮らしていることだって、よく分からない。組んで戦うようになって、魔女退治ついでに赤さんが私の家に出入りすることが増えて、そうしたらある日いきなりあの子が言った。「ここに置いてくれ」って。
確かに私の家は一人暮らしをするには広過ぎて、はっきり言って持て余してはいましたが、流石に理由くらいは知りたかった。結局、話してはくれませんでしたが。
私が「自分のお家があるでしょう」と返すと、渋い顔で黙りこくってしまった辺り、家には帰りたくないということなんでしょうけど…。
(流石に踏み込めないですわよね…)
そう結論付けたところで、昼食を摂り終える。午後からの授業に備える為に、校舎へ戻った。