知られることのない話   作:まるイワ

60 / 72


過去最高に更新が送れてしまったので初投稿です。





5-11 秘密兵器

 

 

 

 

「やっぱり、育ってませんか?」

 

「なにが」

 

 

コントローラーの音が鳴る。カチャカチャ、ポチポチ、忙しなく。さっきからそう。

 

今日は休日。私とチビは少し前から、TVゲームに勤しんでた。勿論、なかよし作戦の一環で。

 

 

「カイワレですよ。昨日話した」

 

「あー」

 

 

一旦手を止めて、庭を見る。私達がえっさほいさ掘り返した土があって、そこにちょこんと生えてるものが、チビが言った、カイワレってやつ。

 

言われてみれば、確かにな。植えた時はもっと細くて、すぐ萎そうな感じだった気がする。

 

それが今じゃどうだ。葉っぱの色艶も良くて、白い部分も太くなってきたような。カイワレって、ああいうもんなのかぁ?

 

 

「ちょっと、手ぇ止めないでくださいよ」

 

「ポーズくらい押しとけって」

 

 

話振られたら、そりゃ見るだろって。軽く舌打ちしてやって、捻った首を元の位置に。一旦止まった手を動かして、またカチャカチャっと音が鳴りだす。

 

 

「やっぱ、なんかあるんですかね」

 

「なに、あの草が?」

 

「ええ。あ、そのアイテム取って下さい」

 

 

あ、終わってないのね、その話。チビとの会話を続けながら、指を動かす。

 

 

「気のせいじゃないと思うんですよね。あれを植えて、ちょっと経ってからですよ。なんかスッキリするようになったの」

 

「それも言ってたな、昨日」

 

「マジ子さんと年長さんにも聞いてみたら、そうだねって答えたって、先輩さん言ってましたよっ…と」

 

「つってもなー。じゃ、なんで私だけそうなってないのかっつーことの説明が…。あーもう、まーた敵に当たったよもう…」

 

 

なるほど。その感覚が気のせいじゃないってんなら、やっぱりあの植物的なもんは、ただもんじゃないってか。私だけなんか違うのは、まぁ置いておくとしても。

 

 

「でも、それっておかしいわけですよ」

 

「うん」

 

「元々は、マギウスの翼が持ってたものじゃないですか。この現象も、救済とかいうのに繋がってるとしたら」

 

「裏感じるよなぁ、なんかな」

 

 

チビが頷く。あいつらが新手のセラピストだってんなら、まだ「新しいね」くらいで済んだんだけどな。そんな上等なもんじゃねーわ、絶対。

 

 

「それなら、やっぱり詳細 知りたいですよ。今のとこ、害はないですけど」

 

「毎日毎日、すくすく育ってんの覗いて、様子見ってのも飽きたしな」

 

「いっそ調べに行きますか…って、ちょっと。体力1しかないじゃないですか!」

 

「そりゃお前、こんな攻撃激しかったら…!……あ」

 

 

私が一言愚痴った直後。コミカルな音が鳴ってから、目の前にある液晶画面に、バーンとデカく表示される、悲劇の8文字。

 

GAME OVER

 

どっか悲しい音楽と一緒に、グテーッとノビてるキャラクター。さっきまで、私が動かしてたやつだ。ボタンを押してスティック倒して、そりゃもうしきりに。

 

 

「なにやってんですか。残機0だったのにー」

 

「素人だってんだろお前よぉ」

 

 

それでもここまでやったんだ。しかも、話しながらだぞ。褒めてもらいたいくらいなんだよなぁ。

 

 

「むー……。で、どうします?続けますか?」

 

「んー………」

 

 

私の目の前でノビてるキャラクターを見て、軽く唸る。まだまだ時間に余裕はあるし、やろうと思えば、まぁやれるけど…。

 

 

「〜」

 

「…………」

 

 

隣をチラ見。そこにはシーが座ってて、私の側で、なんか手をわちゃわちゃ動かしてる。なにさそれ。…や、待てよ…。

 

 

「………」

 

「!」

 

「あー、やっぱり…」

 

 

使ってたコントローラーを、シーにそっと渡してみる。そしたらしきりに指を動かして、カチャカチャ、カチャカチャ、弄くりだす。

 

私の予想した通り。どうもこいつ、私と同じことをしてるみたい。なんだろう。興味でも湧いたとか?

 

 

「シー、やるか?続き…」

 

「〜?」

 

「そこは返してくるんだ…」

 

「?」

 

「や、なんでもない…」

 

 

聞いてみるけど、シーのやつは手を止めて、こっちにコントローラーを渡してきた。や、返せとは言ってないんだけど…。

 

それともあれか。単に私の動きを真似しただけか。ゲームがしたいとかじゃなくて。

 

 

「ま、いいや。チビ、とりあえず休憩。体も固まっちまったし」

 

「そうですか。じゃ」

 

 

私の返事を聞いて、チビがゲーム機に近寄る。電源ボタンをOFFにしたみたいで、TVは真っ黒い画面に戻った。

 

そのままTVの電源も落として、一旦ゲームはお終いにする。

 

 

「っあ″〜……疲れたー。どれ、なんか甘いもんでも…」

 

「〜」

 

「お、くれるん?あー」

 

「〜♪」

 

 

体を伸ばして、テーブルに用意しといたお菓子を取ろうとする。そしたらシーが嬉しそうに持ってきてくれて、せっかくだからそのまま口開けて、その中に放り込んでもらった。

 

 

「まーた二人でイチャイチャする…。私も居るんですけどー?」

 

「なに言ってんだお前。口に菓子入れてもらったくらいでさぁ」

 

「恋人っぽいですし、今の」

 

「は?なにが…」

 

 

…ん。や、待て。口開けて、そこに食いもん入れてもらう。

 

それってあれか。俗に言う、「はい、あーん」とかそういう系の…?語尾にハートかなんかついてそうな、あの「あーん」…?

 

 

「…………」

 

「まさか、意図してなかったとか?なら、恐れ入りますよ…」

 

「うるせーわアホ…」

 

 

どこに恐れる要素あんの。別に恋人だけの特権じゃねーから、「あーん」は。いつ何時、誰にでも開かれてるからね、「あーん」の門戸は。

 

 

「………ところで、ですよ」

 

「あ?」

 

「どうでした。その……触れて」

 

 

触れてって、そりゃあお前…。

 

 

「ここ何日かの話か。アニメだ、漫画だって…」

 

「ゲームもね。ええ。マジ子さんからのお願いで、色々見せて、読ませましたけど」

 

「…………」

 

 

ほんとにな。おかげでほんの少しだけ、そっちの世界に詳しくなった気がするわ。

 

 

「仲、深まったんですかね。私達…」

 

「………………」

 

 

こっちを見ないでクッキーを齧るチビに、聞かれる。深まったか、か。まぁ、そうなるのを目指した作戦なわけだし。

 

仲良くかぁ。仲良く…。んー…。それはさぁ、お前…。

 

 

「わかんねーよ、そんなの」

 

 

愛読書を貸してもらって、好きなアニメも見せてもらって。必要経費だからって、先輩が出してくれた金で、ゲーム機とソフトも、一緒に買いに行ったりしたけど。

 

そうして時間と話題を共有したところで、私が出した答えっつったら、まぁそんなもんだった。

 

 

「…そう、ですか……。分からない…」

 

「ん」

 

 

そう。分からない。分からなかった。

 

けどさ。

 

 

「夢中になる人が居るってのは、理解できた気がするわ」

 

「え……」

 

 

仲がどうとかは分からなくても、それだけは言える。実際に触れてきて、素直に感じたことだから。

 

現実じゃあ、まず ありえないことばっかり。何が起こるか分からなくて、「そんなわけねーじゃん!」ってツッコみたくなることもしばしばだけど。

 

 

「私もさ。見てて、おもしれーってなったりしたから。楽しかったり、じーんときたり。まぁ、色々?」

 

「………」

 

「そういう面白いもんがあるんじゃ、そりゃあ生まれるわけだよなって、思ったわけ。熱狂的なやつらがさ」

 

 

作り物ではあるけども、それは単なる物じゃなくて。なんてーのかな。

 

そこには別の世界、別の誰かの物語が確かにあって。種類も多くて、現実離れしたそれは、見た人の何かを動かしてくれることもある。凄いもんなんだと思うんだ。

 

要するに、素敵だなってこと。

 

 

「だから、その…。怒るよなって」

 

「………」

 

「お前だって、腹立ったよな。そんくらい好きになっちまったもの、やめろとかって言われたらさ」

 

「それは…」

 

「いくら親だからってそんな。なぁ?」

 

 

漫画やアニメ。そういうものは見ちゃいけないって。すぐにやめた方がいいって。そう娘に言っちまったって話を、チビの両親は聞かせてくれた。

 

事情を聞きに行った時の、私と先輩に。

 

 

「………けどさ、チビ。私、思うんだわ」

 

「………」

 

「お前の両親、やっぱなんかあるんじゃないかって」

 

 

だってあの時、あいつの両親は辛そうで、悲しそうだったんだ。自分は正しいことしたぞって思ってる人は、多分、あんな顔しない。

 

 

「理由がさ、あるんだって多分。だから、お互い腰据えてさ。話せば、絶対…!」

 

「赤い人」

 

「っ……」

 

 

出しゃばりだって、分かってる。それでも、あともう一回だけ説得しよう。

 

そう思って切り出してみたけど、チビにデカくてハッキリした声で名前を呼ばれて、制されちまう。

 

少し怒ってるみたいな声色。やっぱり、地雷だったかな…。

 

 

「……ふぅ…。大丈夫。分かってますから。そういうの。私」

 

「あぁ…そうなの?」

 

「はい」

 

 

気まずくなる私に、チビが言う。そうなんだ…。前は、反発して食ってかかってきたのに。ちょっと変わったか、こいつ。

 

 

「ずっと、考えてましたから。これから、どうしたらいいかって」

 

「そっか…。じゃあ お前、もしかして」

 

「その前に、です」

 

 

また遮る。なに。前になによ。

 

 

「ねぇ、赤い人」

 

「……おう」

 

「取り返したいって、思いません?」

 

 

…えーっと…?そう言われても。いまいち要領得ないのはだなぁ、お前…。

 

 

「っていうのは…?」

 

「あぁ、そうだ。そういえば、今日の晩はたこ焼きパーティーでしたよね?」

 

「え、あぁ…?え?…や、まぁ、ね。うん…」

 

 

え、待って。なになに。なによ。何でいきなり話飛んだの。混乱するからやめてくんない。

 

そりゃまぁ、確かにマジ子のリクエストで、今日はタコパをやるんだけども。

 

 

「土産話。酒の肴ってやつが、必要なんじゃあないですか。お酒は言葉のあやだとして」

 

「………えーっとぉー…」

 

「もー。ウワサを調べましょってことです。ゲームしてる時、言ったでしょ」

 

「えぇ〜…」

 

 

や、言ってた。言ってたけども。「いっそ調べに行きますか?」ってさ。それの何が、「取り返す」ってのに繋がるんだか…

 

 

「……あー」

 

「分かりました?」

 

「あぁ、うん。まぁ」

 

 

汚名を雪ぐ…とかってんじゃないけど。ミスを帳消しにしましょってワケね。今の私達、どっか沈んでるから。

 

主に、マジ子に怪我させた件で。

 

 

「罪滅ぼしなんだ?」

 

「マジ子さんは、そういうの 望まないでしょうけど」

 

「それは、まぁ」

 

「でも、私が納得しませんから。仮に、私の抱える問題が解決したって、このままじゃ。しこりが残っちゃいます」

 

 

なるほど。そりゃ、よくねーかもな。納得は優先されるべきだよ。納得いかないんなら、いくようにしなきゃ。そういうもんだ。

 

 

「どう調べるん?」

 

「とっ捕まえて聞きますよ。あの不審者ども」

 

「話すかね」

 

「ぶちのめして吐かせましょ」

 

 

うわー、乱暴。いいの?魔法少女が、そんな野蛮なやり方で。

 

 

「貴女も、溜まってるんじゃないですか。鬱憤とか。さっぱりさせるには丁度いいです」

 

 

………………まぁ、ね?

 

 

「八つ当たりって言わねー?それ」

 

「怪しい組織の一員懲らしめて、その企みを暴こうっていうんですよ?正義はこちらにありますよ」

 

「なにそれ」

 

 

思わず、ちょっと吹き出した。なんか逆に悪役っぽいよ、その台詞。

 

…まぁ、お似合いかもね。今の私達にはさ。なぁ?

 

 

「はぁーあ……。おっけ。乗ったわ」

 

「じゃ、行きますか?」

 

「おう」

 

 

そうと決まりゃあ、善は急げ。休憩時間を切り上げて、三人みんなで玄関へ。お出かけタイムといきますか。

 

 

「シーさん、当てになりますか?」

 

「また居なくなると思うけどなぁ」

 

「間ぁ悪いですよね。ワケ分かんない人ですよ。人じゃないけど」

 

「多分それ本人も気にしてるから。やめてやって」

 

「〜」

 

「あーよしよし…ショボくれんなって…」

 

 

チビと話して、シーをあやして、靴を履く。ドアを開けて、外に出た。

 

 

「案外、シーさんがなんか関わってたりして」

 

「あー?」

 

「赤い人だけスッキリしないの」

 

「まさかー」

 

「ベッタリですもん」

 

「理由になってねーんだよ」

 

 

家の鍵を閉めるのも忘れて、そのまま小走りで敷地を抜け出す。そんで家から離れるにつれ、走る速度は上がっていった。

 

そうして街に繰り出してく私達は、多分、悪い顔をしてたと思う。

 

案の定、気付けばシーは消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー!……って。あれー?二人とも居なくない?」

 

「入れ違いに、なっちゃった…?」

 

「出掛けたということですか。もー。置き手紙の一つもなければ、鍵も閉めないで!」

 

「まー、なんかあればレンラクくるっしょ!それよりもー…」

 

「?それ、なに…?」

 

「トチューでひろったのー!なんか、似てるなーって!」

 

「似てるって…」

 

「ニワにうえてるやつ!カイワレ?だっけ。それに!」

 

「またいつの間にそんな…。まぁ、確かに似ていますけれど…」

 

「でっしょー!ニワにポツンってしてるからさ。きっと、これでサミしくないよ!」

 

「えっと、植えるの?それ…」

 

「ん!そんでさー。二人が帰ってきたトキに、サプラーイズ!って感じにすんだー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マギウスの翼との接触を目的に、外に出てきた私達。差し当たっては、前にチビと会った場所の辺りに行ってみることにしたんだけど。

 

 

 

「ようやく…!よーーーッッッやく会えたわねぇー!このアンポンタンどもー!!」

 

 

 

まさかの、いきなり大当たり。しかもご丁寧に、特務隊の白いやつじゃん。このやかましい話し方は。

 

 

「って、んん!?よく見たらなによ!二人しか居ないじゃない!他のはどーしたのよ!」

 

「買い物」

 

「そう!休日だものね!不思議じゃないわ!」

 

 

その休日に、お前はそんな怪しいカッコして何してるわけ。もっと有意義な時間の使い方とかなかったんか。

 

 

「そういうオメーはどうしたよ。そっちも取り巻き居ねーじゃん」

 

「今日は返せって言わないんですか?あの植物、もう庭に植えちゃってるんですけど」

 

「ちょ、いっぺんに喋らないで!そこまで器用に出来てないから!」

 

 

そりゃあ悪うござんした。で?どーなの。そこんとこ。

 

 

「今日は訳あって一人よ!人手が足りないからって、うちのメンバー持ってくなんて…まったく、特務隊をなんだと思ってるのかしら!」

 

「ふーん」

 

「あ、でも終わり次第、こっちに合流することになってるからね。そこは安心なのよ!」

 

 

へー。つーことはなにか。こっちがモタついてたら、その内数で負けちまう、と。てかそれ、話してよかったの?

 

 

「それで?えーと、なんだったかしらね…」

 

「あの植物の」

 

「そうそう!それよ!あれから大変だったのよ!?私!」

 

「はぁ…」

 

 

曰く、他の隊の奴らにチクられて、上から怒られた。曰く、反省も兼ねて数日間、炊事をやらされた。曰く、教官から折檻された。曰く。曰く。かくかくしかじか…。

 

 

「でもね!いいのよ!もうそんなことは!あの苗も、取り返そうとは思わないっ!」

 

「あれ。いいんですね」

 

「ええ!思い付いたから。それよりも、もっと野蛮で、もっといいこと!手っ取り早いやり方をね!」

 

 

そう言って、懐からなんか取り出す白ローブ。なんだアレ…?四角くて、緑色で…。

 

 

「見なさい!これはねー!秘密兵器なの!私がエゲツない程頭を下げて、マギウスからお借りしてきたものなのよ!」

 

「組織のトップが直々に…?」

 

「あぁ。だとしたら…」

 

 

ウワサか、それと同じくらい厄介なもんの可能性が高いか…!

 

 

「貸してくれって頼む時、マギウスはなんて言ったと思う?代わりにカレー奢れって、そう言ったのよ!」

 

「その情報いる?」

 

「なによ!私も付き合って同じの食べたのよ!?チキベジよ、チキベジ!美味しかったわ!」

 

「あ、はい。よかったですね…」

 

 

どうでもいいだろ、カレーの話は。なんでいきなり上司とココイチ行った話始めたの?

 

 

「ま、それはいいとしてね。これがなんの為にあるかと言ったら…」

 

「あ?」

 

「こうする為よっ!アンタ達をねー!!」

 

「!?なにっ…」

 

 

白ローブが、持ってた緑の何かを放る。不意打ち気味に投げられたそれは、眩しく光ったかと思ったら、私らを取り込むみたいに広がっていって…

 

 

「んだ、これ…」

 

「結界、ですか…?でも、こんなの」

 

 

ああ。見たことないやつだ。魔女のもんでも、ウワサのもんでもない。この魔力の感じ、むしろ魔法少女の…。

 

 

「!」

 

「赤い人!」

 

「分かってる。居るな」

 

 

ちっと困惑してるところに、慣れ親しんだ、いつもの反応。魔女のもんでもない結界に、どうして居るかは知らねーけど。

 

 

「けど、こりゃあ…」

 

「すごい魔力と、穢れですね…。うー…」

 

 

怖気を感じて、体が軽く震えてくる。

 

こんな感覚、今まで片手で数える程度にしか経験したことがない。嫌な汗が、伝った気がした。

 

反応がある方を見れば、地面から盛り上がってくるみたいにして、魔女が姿を現した。黒くてデカい、手みたいなやつ。白い手も、周りに何本か。

 

 

「さぁ、どうよ!驚いてもらえたのかしらね!」

 

 

結界内でもよく通る声を響かせて、白ローブが現れる。魔女に背中を見せてるってのに、特に焦った様子もない。

 

 

「これが、秘密兵器ってわけ?」

 

「えぇ、そうよ!邪魔してくれるアンタ達のこと、ベシッとブチのめしてやる為のね!」

 

「ふうん…」

 

 

なるほど、確かに。すごい力を感じる魔女だ。言うだけのことはあるかもな。

 

 

「自分でやっても勝てないから、魔女に頼ろうってんだな。腰抜けなのかよ、翼ってのは」

 

「なんとでも言ったらいいじゃない。そんな苦い顔して言っても、説得力なんてないのよねー」

 

「チッ……」

 

 

舌打ち。しっかりバレちまってやんの。だってお前、思わないじゃん。あんなヤバそうなのが来るなんて。

 

 

「……さーて?おしゃべりも、このくらいにしましょうか」

 

 

何か合図するみたいに、白ローブが片手を挙げる。

 

 

「っ!魔女が!」

 

 

そしたらそれに反応したのか、魔女のやつが動き出す。杭みたいなのを持った白い手を、こっちに向かって振りかぶる。

 

 

「魔法少女。そして魔女…。交わらないはずの二つの力が、アンタ達を、今!蹂躙するのよ!精々覚悟することねー!!」

 

 

魔女に続いて、白ローブも戦闘態勢。いつか見せた剣を出して、こっちに向けて構えてきた。

 

 

「マギウスが丹精込めて育て上げた、とびっきり強い魔女の、その一体!存分に恐れ、慄きなさい!やっちゃって!!」

 

 

その言葉と、白ローブが手を振り下ろしたのを合図にして、魔女が攻撃を繰り出してくる。私達は変身して、対応出来るように身構えた。

 

…うん。身構えたんだけど。

 

 

 

「ぐええええええええええ!?」

 

 

 

肝心の魔女の攻撃が、私達まで届かなかった。

 

ていうか、私らじゃなくて、思っくそ白ローブを狙った攻撃だったっていう。

 

無防備なところに強烈な一撃を叩き込まれて、その衝撃で、奴さんは吹っ飛んでいく。

 

地面に叩きつけられて、それっきり動き出すことはなかった。気絶でもしたんだろ。多分。

 

 

「えぇぇぇ…」

 

「まぁ、そうなるかなって、ちょっと思いはしましたけど…」

 

 

自身満々な態度をしてるもんだから、てっきり魔女を制御化にでも置いていて、使役でもしてるのかと思ってたけど、そんなこたぁなかったみたい。

 

え、じゃあなんであの白いの、命令下してますみたいなポーズしてたの…?めっちゃドヤってたのが、クッソ哀れに思えてきたんだけど…。

 

 

「まぁ、いいんじゃないですか…。二対一になりました。よかったですね。有利ですよ」

 

「言うほど有利なのかなぁ、これは…」

 

 

体感的には不利って感じなんだけど…。あの魔女、魔法少女4〜5人分くらい強いんじゃねーの?

 

 

「つっても、逃げ場もねえしなぁ」

 

「そうですよ。出口の場所も分かりませんし」

 

 

しょうがないから、覚悟を決める。

 

まったく、あの白女。自分はさっさとノされちまって、厄介なもんは私達に押し付けやがって。

 

 

 

「…ま、いいやな」

 

「ちょうどいいです。ここらでひとつ、成果を確かめるとしましょう」

 

「それと、鬱憤晴らしもね」

 

 

 

相手は強い。無事じゃあいられないかもしれない。この前以上に、怪我もするかも。

 

でも、チャンスなんだ。

 

 

 

なかよし作戦の成果を示す。

 

私とチビの負い目を無くす。

 

マギウスの翼を捕まえて、ウワサの情報を吐かせる。

 

そして、チビが納得する為に。

 

 

 

それら全部、解決する。ここで、あの魔女を倒せれば。

 

 

そうして、抱えた憂いが全部なくなれば、今夜のたこ焼きパーティーだって、きっと悪くはなくなるから。

 

 

だったら、負けない。ここがいわゆる、正念場だ。

 

 

 

チビと二人。武器を構えて、魔女を見る。

 

広い視界の、その真正面に、捉えていた。

 

 

 

 

 





マギレコ本編の出来事

・第一部 第5章六話 終了後〜第5章七話 開始前
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。