知られることのない話   作:まるイワ

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もうGWも終わりなので初投稿です。





5-12 なかよし(笑)パワー炸裂

 

 

 

 

「来る!」

 

 

私らのガンつけが気に食わなかったのか知らないけど、魔女はついに、こっちを標的にした。白い腕が一斉に、上空から向かってくる。

 

 

「散れ!」

 

「分かってます!」

 

 

チビは左。私は右。お互い、逆方向に思いっきり飛んで、魔女の攻撃から逃れる。その後すぐに、私達の居た場所に、白い腕が殺到した。

 

地面と空気を伝って、余波みたいなのがビリっとくる。当たってりゃあ どうなってたのか。想像もしたくねーやな、あれは。

 

 

「っ!」

 

 

集ってきた腕を迂回するみたいにして、駆け出す。魔女の本体…黒くて大きい腕みたいなのが見えたところで、パイルを構える。

 

今の攻撃で、白いやつは全部こっちに向けてきたのか、やつはガラ空き。チャンスだ!

 

 

「これでもっ…!?」

 

 

一発ブチ込んでやろうと思って、パイルに魔力を通す。

 

けど その直後、魔女の足元…手元?が盛り上がって、あの白い腕が一本、生えてくる。そのまま間髪入れないで、横薙ぎにして振るってきた。

 

標的は勿論、この私だ。

 

 

「づっ…!!」

 

 

降ってきた腕のスピードからして、回避は不可能。咄嗟にパイルを盾代わりにしたけど、魔女の力は強烈で、受け切ることが出来なかった。

 

そのまま呆気なく吹っ飛ばされて、呻きながら低空飛行することに。

 

 

「っ!やっべ…!」

 

 

飛んでく先に待ち構えてる、別の腕。手に握られた杭の先が、真っ直ぐ私に向けられてる。しっかり追撃をかける気でいやがるな!

 

 

「ふざけんじゃない!!」

 

 

私の命だ。あっさりくれてやると思うな!

 

すぐ近くまで迫った杭に向けて、体を少し捻って、パイルを突き出す。金属同士がぶつかったような、高くて耳障りな音が響いた。

 

そのまま杭打ちして、衝撃波をブッ放す。

 

 

「ぬっ!……っだぁ!」

 

 

超至近距離からの、魔力の一撃。置き攻めを企んでた腕は仰け反って、私も、反動で後退しながら地面に落ちる。少し無理な体勢で撃ったお陰で、上手く着地出来なかった。

 

そうやって出来た隙を、魔女は見逃しちゃあくれない。

 

 

「早いってバカ…!」

 

 

上から振り下ろされてくる、三本の腕。三つの杭。このままじゃヤバいから、急いでパイルに魔力を通す。

 

 

「間に合えよ!?」

 

 

半分祈って、杭打ち決行。無意識に『乗算』も発動してたみたいで、普通に撃つよりも強い衝撃波がブチ撒かれた。

 

間近まで迫ってた腕共が、今の一撃で弾かれてく。なんとか間に合ったか…!

 

 

(構えて撃てなかったせいで、肩痛ぇわ…)

 

 

魔力を多く使っちまったのはよくないけど、『乗算』無しで撃ってたんじゃ、対抗出来たかわからんし。

 

なんにせよ、ヤバい場面は切り抜けた。さっさと体勢立て直して、これから…

 

 

「え」

 

 

手を支えにして立とうとしたら、更に上から腕が来る。またかよ、腕にモテモテだな。わぁい!私嬉しいわ!ざけんなクソが!!

 

 

「のぉぉぉぉぉぉぉぉお!!」

 

 

今度こそ間に合わない。そう悟って叫んだのと、反射的に腕が動いたのは、どっちが早かったのか。

 

とにかく、私は地べたに倒れて、だけど白い腕の握る杭を奇跡的に両手で掴んで、押し留めることに成功してた。杭の切っ先が、ドタマに刺さるギリギリのところで止まってる。

 

魔女の野郎、しっかり仕留めに来やがって…!

 

 

「ぬぐぐぐぐぐぐ…!」

 

 

つーかこの腕、めっちゃ力強ぇ。私も必死で押さえてるけど、杭がジワジワ近付いてきてる。弾かれた腕も、そろそろ復活するかもしんない。

 

どうにか…!どうにかしねえとダメだって!

 

 

「ふぬっ…!離れろ、オラっ…!」

 

 

空いてる足で腕をゲシゲシ蹴りつけるけど、特に堪えた様子もない。それどころか、力が強くなったような気がしてくる。

 

 

(早く…!早く…って!)

 

 

視界の端に、さっき弾いた腕達の姿が映り込む。足掻く私に、無慈悲なタイムアップが告げられたような、そんな気分。

 

押さえる力を緩めれば、脳天ブチ抜かれて御陀仏。このままどうにも出来なけりゃ、他の腕にブチ殺される。

 

あれ、詰んだかこれ。

 

ご名答って言ってるみたいに、腕が三本、更に動く。杭は握ってないみたいだけど、私が食い止めてる腕に向かって、寄ってきてる。

 

 

…おい、待てって。こいつら、まさか!

 

 

(上乗せする気か!?)

 

 

三つの腕を追加で重ねて、都合四本分の腕力で、私をブッ殺すつもりだ。冗談じゃない。今の状態でも力負けしてるのに、そんな滅茶苦茶なことされたら…!

 

 

「やめろってえええええ!!」

 

 

叫んでみても、どうにもならない。今の私は、ただくたばるのを待つだけの、まさに まな板の上の鯉ってやつか。

 

バカ言ってんじゃねーぞコラ。認められるか、そんなもん。

 

内心毒吐いて強がるのを嘲笑うみたいに、白腕四段重ねが、私の目の前で出来上がる。

 

そしてそのまま、上から下に体重をかけるみたいに、思いっきり力を込められて…

 

 

 

「ふんっ!!」

 

 

 

ぶっといやつが自分の頭蓋にズブッと刺さって、無惨な死体の出来上がり。

 

そんな悲惨なビジョンが頭に浮かびかけたけど、そうはならないで済んだ。気合の入った掛け声と一緒に突っ込んできた、チビのお陰で。

 

横から勢いよく飛び蹴りかまして、腕共のバランスを崩してくれた。

 

 

「ん!」

 

「っ!」

 

 

着地したチビが、私に手を差し出してくる。地獄に仏。渡に船。間髪入れずに握り返すと、思いっきり引っ張られた。体が宙に浮いて、地面と腕達から遠ざかる。

 

こういう時、魔法少女は便利だな。力も強いし、ちょっと無理すりゃこうやって、誰かを引っ張りながらでもジャンプが出来る。

 

 

「あ」

 

 

一時的に空を飛んで 距離が開いていく中で、魔女の本体が目に入る。

 

 

「失礼!」

 

「なんです!?」

 

 

攻撃のチャンス。そう考えたから、チビの手を握る右手と、空いた左手を素早く交換。自由になった右腕にパイルを生成して、魔女本体に狙いを付ける。

 

すかさず杭打ち。衝撃波を撃ち出してやったけど、魔女の近くから生えてきた腕に防がれて、ダメージは与えられず終い。

 

何本生えてくんだよ、あの白いのは。苛立ちを舌打ちで吐き出して、地面に着地。

 

 

「…助かった」

 

「いえ」

 

 

まずは、チビに礼を言っておく。あそこであいつが蹴り入れてくれなきゃ、今頃私に命はなかった。マジで命の恩人かも。

 

ま、それはそれとして。

 

 

「もーちっと早く来てくれりゃあさぁ」

 

「こっちはこっちで、白い腕の対応に追われてたんですよ」

 

 

なるほど。よく見るとこいつ、全体的に少し傷がついてる。ダメージの内には入らないだろうけど、割と手こずった証なのかな。

 

 

「…つえーよなぁ、あの魔女」

 

「ええ。なんか、マギウスが育てたとか言ってましたよね?その内の一体だとかって…」

 

「魔法少女が魔女を育てる、ね…」

 

 

全く。恐ろしいことやらかしやがって。本来私らが倒すべきもの、しかも一般人にも手ェ出すような怪物を、大事に大事に育ててますってか。何の為にだ。冗談じゃねえぞ。

 

 

「…ま、それは今はいいわ。どうにかあの魔女倒さねーと」

 

「白い腕が厄介ですよね…。数で押される上に、本体への遠距離攻撃は防御される」

 

「お前の袖は?」

 

「切り傷は出来ました。断ち切るまではいけません」

 

 

手塩にかけて育てられた結果かね。攻撃力も、防御力も中々か……っと

 

 

「また来るな…」

 

「散ると危険ですよ。お互いを守り合って戦いましょう!」

 

「はいよ!」

 

 

こっちを上から押し潰すように繰り出されてきた腕共を、二人で前に飛び込んで躱す。その後パイルで一発ブチ込んでやってから、全速力で本体に向かう。

 

作戦考える暇くらい寄越せよな、クソ!

 

 

「これ!」

 

「あ!?」

 

「私の手持ちです!貸しですよ!」

 

「そりゃどーも!」

 

 

投げて渡されたグリーフシードで、一旦ソウルジェムを浄化する。また世話になるのは癪だけど、さっきは乗算も使っちまったし、正直ありがたい。

 

 

「とにかく、本体まで近づく!それしかないですよ!接近して、大きいの叩き込むんです!」

 

「白い腕はどーすんだ!」

 

「邪魔するんなら、排除しますよ!」

 

「どうやって!」

 

 

お前今さっき、袖じゃ無理だったっつったじゃん。私のパイルも燃費悪いし、排除ったって…。

 

 

「っ!やべぇ!また腕!」

 

 

腕が二本、左側から迫ってくる。おい、ヤベーぞこれ…。ラリアットみてーにしてきてる上に、それを二段重ねにして壁を作ってるから、しゃがんだり跳ねたりで避けることも…!

 

 

「片方の袖じゃダメっていうなら…」

 

「!?なにを…」

 

「両方の袖は、どうですかね!」

 

 

そう言って立ち止まったチビは、両側の袖を一つに合わせる。直後、袖同士がグネグネ絡み合っていって、やがて一つの、長い袖が出来上がる。

 

 

「はっ!」

 

 

その長袖を振り上げて、近付いてくる腕の壁に、思いっきり振り下ろす。袖の刃の一撃を受けた壁は、二本丸ごと叩っ斬られて、動きを止めた。

 

 

「マジかよ…」

 

「上手くいきましたね。でも、結構力を入れないとダメそうです」

 

「え」

 

「しかも、両手を一つに合わせてるような状態なので、取り回し悪いんですよこれ。だからっ…!」

 

 

言いながら、体を捻るチビ。え、なにそれ。なにする気?なんでバット振る前みたいな体勢なの。まさかお前、そのまま振り抜いてくる気じゃ

 

 

「っ………!!」

 

 

予感的中。あのドえらい切れ味の袖を、迷わず私に振ってきやがった。咄嗟にしゃがんで避けられたのは、ほとんど本能のおかげ。

 

 

「だから、守ってくださいね。そしたら、白いのは全部斬ります」

 

「………本体は」

 

「貴女がやってくれるんでしょ?」

 

「…わかったよ」

 

 

溜息吐いて後ろを見ると、白い腕がまた一本、叩っ斬られて転がってた。助けたつもりか。てか、後ろに居るならそう言ってよね…。

 

……まぁ、私もしゃがんだ時、チビの後ろから来てたのを撃っておいたから、お相子っちゃ お相子かな。

 

 

チビが白い腕を始末して、私はカバーに入りつつ、魔女本体に全力で攻撃。そういうふうに決まったから、改めて走りだす。

 

役割分担を決めた効果はあって、戦力で劣る私達でも、なんとか対応することができた。

 

けど…

 

 

「ぐっ…!足に引っ掛けた…!」

 

「しっかりして下さい!まだ近づかないと…!」

 

「分かってるっつの!」

 

 

「なんとか」は、あくまで「なんとか」。完璧にやれてるわけじゃない。上手にできない私らは、穴や隙を突かれっぱなしで。

 

 

「うぅ…」

 

「バカ!なんで庇った!…あぁもう!肩、ザックリいかれちまって…!」

 

「腕を倒すチャンスだったでしょ…!というか ああしなきゃ、貴女だってやられてましたよ!」

 

 

腕を倒せば倒すほど、魔女に近付けば近付くほど、私達は傷付いて。

 

最初に決めた役割なんてとっくに忘れて、とにかくお互い守り合いながら、ただ前を向いて、必死に走った。

 

 

「はぁ…はぁ…!おい、生きてるか!」

 

「一緒に走ってるんですよ。見れば分かるでしょ…!ゴホッ…」

 

「にしちゃあ、具合悪そうだけど?」

 

「貴女こそ。涙目になってないですか?さっき助けたときみたいに!」

 

「あぁ!?」

 

「冗談ですよ!」

 

 

衣装は裂けて、あちこちに血が滲んでる。目に悪そうな色の地面が、血の斑模様で彩られてく。

 

だけど引けない。ここまで来たら、あと一歩。あの白い腕も、片手で足りるくらいの数に減ったんだ。なんとしてでも、叩き込む!

 

 

「これでぇっ!」

 

 

そして今、チビがまた一本、白い腕を斬り捨てた。真っ二つにされて、動かなくなる。これで腕は、あと二本…!

 

 

「ここまで減らせば、もういけます!赤い人、走って!」

 

「でもお前!」

 

「腕は私が押さえます!今行けば勝てる!今やれば、終わるんです!!」

 

「けど!」

 

「早く行け、このバカ!!」

 

「っ…!!」

 

 

このまま行って、果たしていいのか。チビを一人にしていいのか。

 

そういう、後ろ髪を引かれるような気持ちを無理くり振り切って、今自分が出せる全速力で、駆けていく。

 

チビが腕と戦う音が遠ざかって、魔女の本体に近付く。とうとう捉えた。防御に使える白い腕も、今はあいつが押さえてる。

 

 

「って、ことはよぉぉ!!」

 

 

貰ったってことだよ!このクソッタレ魔女!!

 

 

「っ!!」

 

 

魔力を流して、パイルを起動。魔力をたっぷりこめてやって、勿論『乗算』も発動。迷わず、杭を打ち込んだ。

 

 

『〜〜〜!!〜〜!!』

 

 

渾身の一発をモロに食らって、魔女が仰反る。

 

けど、それだけじゃ終わらずに、地面からブチブチ引き剥がされて、倒れ込む。随分タッパがあるやつだから、倒れる音も大きかった。

 

 

「あいつ…!チビは!」

 

 

魔女を倒せたかは知らないけど、一先ずやることやったんだ。あいつの安否を確認する暇くらいは…。肩で息をしながら、急いで背後を振り返る。

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

 

見れば、そこにはチビが居て、荒い息を吐いて突っ立ってた。周りには、バラバラになった、白いなにかを散らかして。

 

 

「…………取り越し苦労ってやつっスか」

 

「…?なにが」

 

「なんでもねーの」

 

 

なんとなく頭をガシガシ掻いて、チビのとこまで歩いていく。向こうもこっちに歩いて来たから、すぐに合流した。

 

 

「倒したんだな」

 

「疲れましたけどね。やったりました」

 

「バラバラだもんなー。お疲れさん」

 

 

魔女のやつにブチ込んでやれたのは、間違いなくチビのお陰。労ってやるのがいいと思った。

 

 

「で?そっちは。倒せました?」

 

「確認はしてねーけどさ」

 

「だったら今から二人で行って、確実にとどめ刺しましょうよ」

 

「そりゃそうだろ、お前。なぁ?」

 

 

詰め甘いなー、もー。なんて言われちまって、ちょっと和やかな雰囲気になる。

 

魔女を倒したわけじゃない。けど、相手は手負いなんだし、後は二人でかかれば、きっと…

 

 

 

『〜〜〜〜〜!!!』

 

 

 

私の、そんな甘えた考えを潰すみたいに、鳴り響いてくる奇妙な音。

 

 

「っ!?…なに!?」

 

「声ですか!?魔女の!」

 

 

ついさっき聞いたような気がするそれは、チビの言う通り。地べたに這いつくばってるはずの、魔女のやつが発してるもの。

 

やっぱり、まだ生きてやがった。緩みかけた気を引き締めて、魔女の居る方に向き直る。

 

 

そこで、私達が見たものは

 

 

「あいつ、また起き上がって」

 

 

不気味な鳴き声を上げながら、ゆらゆら起き上がる魔女の姿と

 

 

「あ、白い、腕……」

 

 

さっきよりも大量になって生えてきた、あの白い腕と

 

 

「っ!!ヤバい、避け…!」

 

 

そしてそれが私達に、一斉に向かってくる光景だった。

 

 

 

 

 

 

 

そこから先は、一瞬だったように感じる。

 

 

呆気に取られた私達は、魔女の動きに対応するのが遅れちまって。

 

襲い掛かって来た腕達に、好き放題にブン殴られて。

 

最後に全身でデコピン食らって、盛大に地面を跳ねて、転がった。

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

ボーッとしながら、思考を巡らす。自分は今、どうなってんだ?確か魔女にボコられて、そんで めっちゃブッ飛ばされて、それから…?

 

 

(そうだ…。それから地べたに寝っ転がされて、そんで少し、ボーッとしてて…)

 

 

落ち着いて整理していくと、段々意識もはっきりしてきた。目を見開いて、四肢に力を入れて、起き上がる。

 

 

「ぐぶっ…!?がっは…!」

 

 

その瞬間に、走る激痛。全身が馬鹿みたいに痛むせいで、立ち上がれないで膝をつく。しかも、口から血まで吐いちまった。

 

ボタボタ、ボタボタ。地面に赤い水が広がって、鏡みたいに自分の面が映り込む。酷い顔だった。

 

 

「ヴッ……げっほ…!うげ…」

 

 

私の近くから、咳き込んだような声がする。なんとか首を動かしてみると、案の定。チビがそこに倒れてた。

 

 

「チ、ビ…」

 

「あか、人…。無事、で…ぶっえぇ…」

 

 

会話も覚束ないままで、チビもゆっくり起き上がる。私と同じように、血を吐いた。

 

 

「わり…油断、しちまっ…」

 

「済んだ、こと、ですよ…。それ、より…けほっ…!」

 

 

チビの言いたいことは、なんとなく分かる。今の私ら、マジでヤバい。今度こそは、ホントのホントに。

 

私もチビも、叩きのめされてこのザマだ。全身痛くてまともに動けず、しかも血だるまですときてる。

 

そんでなんだよ。魔女のやつはまだ生きてて、しかも、さっきより腕も増えてて。なんの冗談なんだよ全く…。

 

 

(魔力だけは、まだあるけど…)

 

 

だからどうしたってんだ。仮にパイルを撃ったところで、あんなに白い腕が生えてちゃ、すぐ防がれて終わるだけ…。

 

 

「…………」

 

「………赤い、人…」

 

 

やれることが、思いつかない。

 

虫の息の、小さな獲物。私達に引導渡してやるために、魔女が大量の腕を振り上げる。私に出来ることったら、せめて、それを睨み付けてやることだけ。

 

 

「赤い…人!赤い人!」

 

 

白い腕達が振りかぶって、そして次々に放り出す。手に握ってた、尖った杭を。

 

「あぁ、そうだよな。持ってるもんなら、投げられたっておかしかないか」

 

そう、頭のどっかで考えながら、凶器の群れが飛んでくるのを、眺めて待って。

 

 

「あー、も…!赤い人ってばー!!」

 

 

やがて私達のところに、雨みたいに降り注ぐ。

 

 

直前、私に飛びついてきたチビのことなんて、特に気にしちゃいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

侵略者が、やってきた。

 

それが、この魔女が、二人に抱いた印象だった。

 

 

この魔女は、それなりに充実した毎日を過ごしていた。

 

魔女自身はもう覚えていないが、ある日マギウスによって捕らえられ、そして目的の為にと飼育されて、現在まで至っている。

 

自分のものでないのは癪だが、それでもこの結界は魔女にとって好都合で、今やすっかり居心地の良い、第二の城と化している。

 

天敵達はやってこず、自分がなにもしなくても、何処からか食事が流れ込む。それを遠慮なく頂くことで、自身はより強くなる。

 

そんな夢のような環境。不満など、何処にあろうものか。

 

 

だが、今日という日に現れたのだ。自分の領土を土足で荒らす、ずうずうしい輩共。魔力を持った、小さき者。間違いない。天敵だ。敵なら、倒さなければならない。

 

だから戦った。戦って、叩きのめしてやった。少しは抵抗したようだが、今の自分の敵ではない。

 

その証に、見ろ。二匹の敵は、無様にも這いつくばっている。なんとも、他愛のないことだ。

 

 

さて、ここまでだ。後はさっくり殺してやれば、自分の世界に平和が戻る。またいつも通りになるのだ。それは、なんて素晴らしいこと。

 

日を追う毎に、出せる量の増えていった、己の白く、美しい腕。それを一斉に振るってやり、奴らに雨を降らせてやった。

 

 

 

鋭く尖った雨も止んで、敵の居た場所を見てやれば、そこには見事な、杭の畑ができている。

 

あの小さな天敵達は、見当たらない。死んで、我が地のシミになったか。魔女は歓喜して震えた。

 

 

だが、同時に不思議でもあった。

 

敵が姿を消したのに、奴ら天敵から感じる力の反応。それが未だ、消えないから。

 

これはおかしい。どういうことか。奴らが死んでくれたのなら、持った力も、また、消えなければ。

 

魔女にはなにも、わからなかった。

 

 

消えたと思った侵略者が、今、再び姿を現したことも。彼女達の手が重なり、そこから眩い閃光が、発せられていることも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私とチビが、手を合わせる。二つの魔力が一つになって、目が眩むくらい、輝いてる。

 

死んだと思った。ダメだと思った。だけど生きてる。生きてなんとか、立ち上がってる。

 

 

(縮小…か)

 

 

今さっきに話してもらった、チビの使う固有魔法。

 

名前の通り、小さくする。自分も、相手も、他のものも。魔女には効かない、維持にも魔力を使う等、制約も多いみたいだけど。

 

とにかく、チビは自分と私にそれを使って、魔女の攻撃を、なんとか凌いでくれたってこと。

 

 

(……情けねー。私…)

 

 

今日だけで、何回助けられた。自分よりも歳下の、しかも小学生の子供に。

 

なにより一番情けないのは、あの時、諦め入ったことだ。

 

魔女が腕を大量に生やして、杭を一斉にブン投げてきた、あの時に。

 

 

(頭、叩かれちまったじゃねーか)

 

 

バカ。チビにそう怒られて、思いっきりシバかれた。

 

最後の最後まで諦めるなとか、アニメや漫画のキャラクター達も、こういう場面で頑張ってたろとか、ここで負けたらムカつくだろとか、色々言ってくれちゃって。

 

なんだそりゃって、呆れちまった。アニメじゃねーし、漫画じゃねーし。最後のやつとか、単に意地になってるだけじゃねーか。

 

 

(でも、それでいい)

 

 

結局、私もそうだから。相手の方が強いだの、こんなの育てたマギウスはヤバいだの、そんなの、今はどうでもいい。

 

やつを倒す。私とチビが抱えたもの、ここで全部清算する。その為なら、なんとしてでも。

 

そういう意地が体を支えて、こうして、どうにか立ってるんだから。

 

 

「チビ」

 

「…はい」

 

「悪かった」

 

「………ん」

 

 

手詰まりになったからって、ボーッと死ぬのを待ってるなんて。勝ってやろうって人間が、そんな態度じゃいかんでしょ。

 

小学生に怒られて、そのことに気付かされるとはね。

 

 

「なぁ」

 

「………」

 

「勝つぞ」

 

「…当然!」

 

 

一つに混ざり合った魔力を、チビの方に流してやる。手詰まりなんて言ったけど、本当はまだあったんだよな。最後の最後。奥の手が。

 

 

「行くぞ!コネクト!」

 

 

神浜の魔法少女に与えられた、この戦術。なかよし作戦の成果を示すには、この上ないやり方じゃねーか。

 

先日マジ子とやったのに、なんで今の今まで思いつかなかったんだか…。

 

 

(や、それはあれだから。チビとやって成功するか分からんかったし、コネクト頼りになっちゃうのも、なんかアレかなってなってただけだし…)

 

 

きっとそうに違いない。魔女に対抗するのに必死で、素で忘れてたとかじゃないはず。バカじゃない。私はバカじゃない…!

 

 

「私も貴女も、もう限界です!ここで決めますよ!」

 

「え、あ、えぇ!?あ、うんお、おおともさぁ!」

 

「?」

 

 

あ、やっべ。変なこと考えてたせいで、変な返事になっちゃった。チビも、変な目で見てくるし…。

 

あぁもう!どうでもいいんだって、それは!

 

 

「これが最後だ!やっちまえぇ!」

 

「叩っ斬ります!この袖でぇー!」

 

 

コネクトが発動したことで、武器の形が変わっていく。袖の周りに刃が生えて、高速で振動し始める。それを一つに束ねたら、まるでデッカいチェーンソー。

 

強そうだけど、これだけじゃちょっと不安かも。だから…。

 

 

「『乗算』!」

 

 

魔力がごっそり無くなる代わりに、チビの武器が強化される。もっと大きく。もっと長く。

 

いける。これがあれば、多分倒せる。

 

けど折角だ。大盤振る舞いと行こうじゃねーか!

 

 

「これで、駄目押し!!」

 

 

減った魔力を更に使って、もう一度『乗算』をかける。無理したせいで少なくない血を吐いたけど、知ったこっちゃねー、そんなもん!

 

 

 

「ぶちかませえええええええええ!!」

 

 

 

「どぅおりゃあああああああああああああ!!!」

 

 

 

気合一閃。チビが一回転して勢い付けて、袖を横に真っ直ぐ振るう。魔力の使い過ぎで倒れたお陰で、私は巻き込まれずに済んだ。

 

 

 

二度の『乗算』をかけられて、長く、大きくなり過ぎた袖。

 

 

遠心力と速度を得たそれが、魔女と腕を、全部纏めてぶった斬る。

 

 

真っ二つになった体から、なんか色々撒き散らして、魔女は消滅していった。

 

 

ざまーみろ。見たか、二人のなかよし(笑)パワー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔女の居なくなった結界に、二人の息遣いだけが響く。

 

終わってみれば、なんだかあっという間だったけど、体の痛みと流れる血の赤が、戦いの苛烈さを物語ってる。

 

でも、まぁ、なんだ。なんにせよ。

 

 

「やってやったか…」

 

「ええ…。勝ったんです。私達…あっ」

 

 

戦い終わって気が抜けたのか、ガクッと膝を折ったチビ。相変わらず、肩で息をしっぱなし。

 

 

「だいじょぶかー…」

 

「…………」

 

 

一応声をかけてやるけど、特に返事は返ってこない。けど、構わない。そのくらい疲れてるだろうから。

 

 

「……………」

 

「……………」

 

 

 

倒れたままで、黙って空を見つめてると、結界が静かに崩れ始めた。

 

魔女が消えたからなのか、流石に暴れ過ぎたからなのか、それは知らない。

 

 

 

「………赤さん」

 

 

「んー……?」

 

 

「私、家に帰ります」

 

 

 

結界がどんどん消えてって、外の景色が見え始める。綺麗な青空を見つめながら、チビがそう言ったのを聞いた。

 

 

 

「………そっか」

 

 

 

 

この後、もう一仕事あるんだよねー。あーめんどくせ。

 

 

 

私の頭は、そういう気持ちでいっぱいだった。

 

 

「赤さん」ってチビが呼んだことには、全く気付かないままで。

 

 

 

 





マギレコ本編の出来事

・第一部 第5章六話 終了後〜第5章七話 開始前
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