知られることのない話   作:まるイワ

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おチビのイメージを活動報告に上げてみたので初投稿です。





5-13 尋問☆タイム

 

 

 

 

つんつん。

 

 

「ん〜…」

 

 

ぺしぺし。

 

 

「んん〜……ん〜?」

 

 

とんとん、ゆさゆさ。

 

 

「まだよ…まだ硬いわこれ…んぬ〜……」

 

 

イラッ。

 

 

「あ、ちょっと!なに変身して…!」

 

 

オラっ、ズドーン!

 

 

「わああああ!!」

 

 

あ、起きた。おはよークソったれ。

 

 

「え、なに!?なになになに!何が起こったの!?ねえ!」

 

「よう。いい夢見れたかコラ」

 

「あ、アンタ達…。え、なに…。何がどうなってるのこれ。ちょっと私、状況が…」

 

 

んだよ、まだ寝ボケてんのかこいつ。こっちはこいつの為に、散々苦労させられたってのに。

 

 

「あ!?ていうか、なによこれ!ふぬっ!動けないじゃない…!ぬっ!」

 

「あの、縛らせてもらいました。逃げちゃわないように」

 

「えぇ、ひどい!」

 

 

今まで寝こけて、ようやく起きた白ローブが騒ぐ。うるせーなぁ。あんな魔女出してきたおめーの方が酷いだろ…。

 

 

クッソ頑張ってヤバい魔女を倒した私達は、結界が無くなった後も気絶しっぱなしな白ローブを発見。確保した。

 

起こして情報吐かせようにも、私達が居たのは、人通りも近い場所。起きたこいつに騒がれて、人集りが出来ても困る。つーわけで。

 

 

「ていうか、何処なのよここ!私達が居たのって、こんな薄暗くて、人気の無いような場所じゃあ…!」

 

「廃ビルだよ。どっかのな」

 

 

わざわざ。こんな場所まで連れてきたってこと。都会ったって、使ってないか、放棄された場所くらいある。探せば幾らか見つかるんだ。

 

 

「赤さんがおぶってきたんですよ」

 

「そう…。……ありがとう?」

 

「マジかよ、お前…」

 

「…?なにかしら?」

 

「いや…」

 

 

普通言わないから。こういう場合に礼なんて。…ま、いいけどね。なんでも…。

 

 

「あれ!ちょっと待ちなさいよ!」

 

「ん」

 

 

なに。なんだ、今度は。

 

 

「そういえば、あの魔女は!?マギウスから貰ったあれは…。え、どこ行ったのよ!」

 

「何処って、お前」

 

「倒しましたよ」

 

「誰が!」

 

「私ら」

 

「なんで!?」

 

 

なんでってなによ。私らが倒せちゃおかしいんか、オイ。

 

 

「秘密兵器よ!?」

 

「うん」

 

「マギウスからもらったのよ!?」

 

「そう…」

 

「チキベジまで奢ったのよ……?」

 

「それは知らないから…」

 

 

うん、まぁ…お気の毒とは思うけどもね…。

 

 

「う〜…!なんなのよ、もー!ていうか、なんでアンタら、そんなケロッとしてんのよ!」

 

「あ?」

 

「秘密兵器だってんでしょ!もっとボロっちくなってなさいよ!」

 

「あー、それは…」

 

 

言われて、後ろをチラッと振り返る。ちょっと横に移動して、私の後ろに居るのを、見えるようにしてやった。

 

 

「あっ…!アイツ…!」

 

「………」

 

「なにやってんのよアレ…」

 

「さぁ…。私らにもさっぱり」

 

「〜?」

 

 

私達からちょっと離れたところに座って、シーがあれこれ弄ってる。この廃ビルに放棄されてたパイプやらボロ布やらなんだけど、あいつにとっちゃあ珍しいみたい。

 

…シーの力が強過ぎて、金属部品は折れたり ひん曲がったりしてるけど。

 

 

「あいつが治してくれたんだわ」

 

「アレが…!?そんなこと…」

 

「助かりましたよね。私の時は、渋られて困りましたけど」

 

 

マジ子が怪我した時にも使った、シーの治癒魔法。私らがぐったりしてるとこにひょっこり出てきて、今回も治してくれた。

 

チビが私を怪我させたって勘違いしたっぽくて、トラブルになりかけたのは、置いとくとして。

 

 

「クッ…!忘れてたわ…。そうよね。アンタにはアレがくっ付いてるんだった…」

 

「ん?」

 

「でも、なんかおかしいわよ。だって上からの説明には、アレが治癒魔法を使えるなんて一言も…!」

 

「ふーん?」

 

 

私を睨みながら、なんか ぶつくさ喋る白ローブ。てか、うん。ちょっと聞き捨てならないよなぁ?

 

 

「なに。やっぱ知ってんだ?」

 

「え?」

 

「あいつのこと」

 

「は?………あっ!」

 

 

「やっべー」みたいな顔して、目を逸らした。や、遅いし。そのリアクションもよくないだろ。

 

 

「私らさー。今日、外に居るのは理由があって」

 

「…なによ、それは」

 

「探してたわけ。お前らを」

 

「へ……へーえ?そう…」

 

 

そうなんです。そしたら見事に、そっちから出てきてくれたよな。ドえらいもんを引っ張り出してきてくれたのは、アレだったけど。

 

まぁ、ちょうど良かったってやつ。

 

 

「聞きたいことが、あるわけさ」

 

「ふ、ふぅぅぅ〜ん?なぁに、それは。私の趣味?生年月日?あ、それともスリーサイズかしら!あ、申し訳ないんだけど、口座の暗証番号とかは」

 

 

また変身して、パイルを生成。ごちゃごちゃうるせー白ローブのことは無視して、顔の前に突き付けてやった。

 

後ろのシーを顎で指して、話を続ける。

 

 

「あいつのこと、教えてくんない」

 

「っ………」

 

「逃げてもいいよ。鎖だ布だ、ぐるぐる巻きにしてるっても、魔法少女なら外せるだろうし」

 

 

だけど そんときゃあ、ブッ放すのもやむなしかもな。実は脅しで突き付けてるとこもあるから、撃ったとしても当てないけどね。

 

 

「で、どうなん」

 

「ひゃあ!やめて!撃たないで!」

 

「話せよ、じゃあ」

 

「それは…!」

 

 

あーもう、さっさと言えこのやろー。こっちはお前、お前らマギウスの連中には割とイラッと来てるんだぞ。

 

だからアレよ。間違ったらズドンするかもだぞお前。

 

 

「第一、その…アレよ!こんなとこでそんな得物使ったら、崩れるんじゃない!?耐震性とか…!」

 

「そんときゃお前は置いてくからな。安心しろ」

 

「外道よっ!この女ァー!」

 

 

おう、なんとでも言えや。こっちはもうすぐ負債全部精算できるとこまで来てんだよ。すっぱり終わらせて帰るんだよね。

 

それは素晴らしいことだろうが。ん?

 

 

「ふ、ふんだ!なによ!撃つなら撃てばいいじゃないの、えぇ!?」

 

「あー?」

 

「第一ねえ!魔法少女がそんなことされたところで、どうにかなるもんですか!精々、すっげー痛いだけよ!」

 

 

それ、言うほど精々かなぁ。ぬー…。このまま埒が開かないと、本格的にブチ込むことになっちまうかも…

 

 

「あーもー、マジめんどくせぇー!!」

 

「おチビさん!?」

 

 

え、ここでお前がキレんの!?急っ!

 

 

「やり方がヌルいんですよ、赤さん!聞いた話じゃこの人、質問されたら喋っちゃうんでしょ?だったら、それ利用しなきゃ!」

 

「や、それは」

 

「良心に咎められてる場合じゃないですよ。忘れたんですか。今の私達は正義ウーマンなんです。正義ってことは、無敵ってことなんですよ!」

 

 

わけわかんねーこと捲し立てるチビ。あー…。悪いとこ出ちゃったかーこれ…。

 

 

「そこで見ててくださいよ。私がやってやりますから」

 

 

そう言って、変身しながら白ローブに近づく。やる気だな…。ちょっと暴走気味だし、拷問みたいなやり方しないといいけど…。

 

 

「さ、聞かせてもらいますよ。変なことすればスパッといくので、そのつもりで」

 

「うぅ…首筋に当てないで…」

 

「………」

 

 

あのよく斬れる袖を、白いのの首にそっと添える。うぅん…まぁ、大丈夫でしょ…多分。………斬らないよね?

 

 

「じゃあまず…」

 

「ひゃっ…。ちょ、くすぐったいわよ!」

 

「動かないでくださいよぉ。もう忘れたんですか?これ」

 

「っ……う〜…」

 

「うん。いい子です。それじゃあ…」

 

 

ぴったり密着したままで、耳元で質問を始める。うん……なんで耳元に寄るの?なんでちょっと声潜めてんの?

 

 

「あのカイワレ、ありますよね?私が、貴女達から取ってっちゃったの」

 

「え、えぇ…」

 

「あれって、どういうものなんですか?もしかして……ウワサ、だったりとか」

 

「っ…それは……そうよ」

 

「あっ。やっぱりそうなんだ?」

 

 

………んん〜……。ん〜…?

 

 

「それで、どういうウワサです?」

 

「あれは…その…。人の、ストレスとかを吸い取って育つ、みたいな…」

 

「うん、うん」

 

「戦闘能力は持ってないし、吸収量もそんなに多くはないんだけど、その…」

 

「ん?なに?」

 

「っ…いえ、別に…。えっと、だから、数をバラ撒いて、トータルでたくさん吸い上げよう…みたいな…」

 

「ふぅん。そうなんですね…」

 

 

…………………えーっとぉ…。

 

 

「弱点とかって、あるんですかね」

 

「あっ…それは、あの…。二つに、なることで…」

 

「二つ?ん?どういうこと?」

 

「あのカイワレ、近い場所に二本以上あると、枯れちゃうみたいで…。そういうウワサらしいわね…」

 

「そっかぁ〜…。あ、ところでぇ…」

 

「…な、なによ」

 

 

…あのさー、これ……。

 

 

「どしたんですか?さっきからお顔、赤くないです?耳も…」

 

「!い、いや…それは、別に。なんでも…」

 

「あ、もしかして。照れちゃってる…とか?」

 

「なっ!バカ言わないで!そんなわけっ…」

 

「小学生の女の子に耳元で囁かれて、気持ちよくなっちゃったんですかぁ?」

 

「っ……!〜!!」

 

「歳上なのに、恥ずかしいですね。ざぁこ♡ざぁこ♡よわよわお耳〜♡」

 

「ふえぇ…新感覚…」

 

 

や、なんか いかがわしいなぁ!?

 

 

「いや、なに!なんなのこれ!なにやってんだよお前ら。なぁ!」

 

 

耳元で囁いて、相手はなんか赤くなって、終いにはなんか、変な煽りまで入れてんの!んだよ、これ!

 

情報引き出したのはまぁいいよ。気持ちよくなったってなに!?雑魚とか弱弱ってなによ!?

 

 

「アレですよ。最近流行りのASMR音声の真似的な」

 

「知らねーよ!?」

 

 

どっから覚えてきたんだ、そんなもん…。あれ、これチビの両親正しかった説あるか…?

 

 

「AS…なんとかは置いといてな。カイワレのことは聞いただろ!今度は、私の質問に答えろ!」

 

「えぇ…?まだ何かあるのぉ…?」

 

「ちょっと余韻感じてんなよダメ人間!」

 

 

ぽけーっとした顔しやがって。こいつ仮にも、特務隊とかいうのの隊長なんじゃねーのかよ…。

 

 

「あいつだあいつ!シーのこと!」

 

「あぁ…」

 

「結局、あいつはなんなんだ!ウワサなのか!?ウワサだとして、どういうタチのやつなのか!さっさと答えろ!」

 

 

私にとっちゃ、この質問が本命なんだ。暴いたところでどうすりゃいいかは、分かんないけど。けど、いい加減はっきりさせとこうじゃねえかよ。

 

 

「………」

 

「どうなんだ!」

 

「………えっと……」

 

 

黙って、白ローブからの答えを待つ。なんだか私、少し緊張してるような気がする。今から自分は、シーを知るんだって。そのことに対して。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

お互いに黙って、静かになる。こいつは聞かれりゃ答えるんだし、口を割らないなんてこたぁ…

 

 

 

「……知らないわ」

 

 

「は?」

 

 

 

ついに真実が明かされるのか。そう身構えてた私の耳に飛び込んだのは、そういう拍子抜けな言葉で。

 

 

「おい。んだ、そりゃあ」

 

「だから…知らないって」

 

「なんで!」

 

「知らないからに決まってるでしょ!」

 

「はぁ…!?」

 

 

こいつ、ここまで来てシラを…!

 

……いや、それはありえないのか。嘘をつけないこいつが知らないっていうんなら、それはつまり…。

 

 

「マジで知らねーってことかよ…」

 

「そうよ…。マギウスからウワサの調査を任されたのはいいけれど、詳しい説明もないんだもの!ウワサの居る場所だけ教えられて、定期的に監視しろって!」

 

「えぇー…」

 

「私達もえーってなったわよ。監視っても、姿なんて見えないし。なんか知らない間に、『魔法少女のグループと行動してるから、そいつらもついでに見張っとけ』って言われるし!」

 

「監視してたのに…?」

 

「他の隊がたまたま見かけたらしいわよ…。アンタ達が海浜公園でボコられてるとこ…」

 

 

『だから私ら、警告も兼ねて、アンタら探してたってわけよ』って、続ける。

 

あー。それ、もしかしてあん時か。年長さんに初めて会ったり、観覧車草原で戦ったりした時の…。

 

 

「まぁ、そんくらいよ。うん。知ってることったら…」

 

「…それ知ってるって言わねーだろバカ!」

 

「だから知らないって言ってんでしょバカ!」

 

「や、どっちなんだよ!?」

 

「や、だからぁ!知ってるけど知らない…あれ、知って…?やっべ、ワケ分かんなくなってきた!」

 

「なにしてるんでしょう、この人達…」

 

 

ほんとだよ。つーかどうでもいいからね、そこは。今、必要なことはだなぁ。

 

 

「知らねえならなぁ!聞いてこいお前!」

 

「はぁ!?」

 

「本拠地でもなんでも行って、上に話聞いてこいっつってんの!」

 

「バカ言わないで!私、忘れっぽいんだから!」

 

「メモでもなんでも取りゃあいいだろ!」

 

「そっかぁ、なるほど!天才よアンタ!」

 

「だろぉ!?」

 

 

お互い騒いで、ヒートアップ。大声出して喚いてる内に、自分が何言ってんのか分かんなくなってきちまった。

 

なんかもう、敵ってよりかは友達とくっちゃべってるみたいになってきた、その時。

 

 

「!赤さん、避けて!」

 

「は?いきなりなに…って、うおっ!?」

 

 

突然の、チビからの警告。その直後、私達と白ローブの間に、何か撃ち込まれてきた。驚いて思わず距離を取ったところで、それが刃状の武器が付いた、鎖だってことが分かる。

 

 

「隊長〜!」

 

「無事ですかぁー?」

 

「…!まさかぁ!」

 

 

白ローブの表情が、見るからにパッと明るくなった。この武器、そして聞こえてきた声は、いつか見たこと、聞いたことのあるそれ。まさか…

 

 

「特務隊ー!信じてたわよー!」

 

「やー、探しちゃいましたよ。待ち合わせ場所に居ないんで…」

 

「ごめーん!」

 

 

やっぱりか。チビに押さえられてるこいつとは違う、黒いローブの四人組。部下のやつらが来ちまった。

 

 

「というかねー、遅いのよアンタ達!リーダーのピンチだってのにー!」

 

「勝手に居なくなった人がなんか言ってるよー」

 

「しかも、なんか捕まってるし」

 

「隊長、バカみたいですー」

 

「ばーか。隊長、ばーか」

 

「アンタら、よって集ってねぇ!いいから、早く助けなさーい!」

 

 

『はーい』って返事した黒ローブ達が、私とチビを交互に見てくる。こいつら、やる気か。身構えながら、用心する。

 

 

「て、ことで。返してくれません?うちの隊長」

 

「…嫌だっつったら?」

 

「言ったらアレですけど、こっちが人質取ってるようなものなんですよ?」

 

「やー。そーなんですよねー」

 

 

チビに言われて、呑気に答える黒ローブ。あははーって笑ってるけど、お前らのリーダーだろ?いいんか、そんなやる気なさげで。

 

 

「でも、いいんですか?貴女達、こんなところでちんたらやってて」

 

「……?」

 

「それは、どういう」

 

 

にこやかな顔のまんま、そう続けてくる。いまいちよく分からないって顔してるであろう私達に、黒ローブ達は言った。

 

 

「や、ね?他の隊手伝ってる時にー、私ら見かけたんすよねー」

 

「見た、だぁ?」

 

「あの、はい…。貴女達の仲間の人が、葉っぱを持って歩いてるのを」

 

「しかも、ただの葉じゃないんですよー。知ってますよね?アレですよ、アレ」

 

「カイワレ的な、アレなんだよねー」

 

 

言われた言葉、全部反芻して考える。葉っぱ。仲間が、持って歩いてた。それって、買い物に出てた先輩達のことか。

 

しかもそれは、その辺に生えてるようなもんじゃない。カイワレみたいなやつってことは。それって、まさか。

 

 

「持ってたんですか?アレを。もう一本?」

 

「うん。作戦優先ってことで、そのまま見送ったけどねー」

 

「マジ子辺りがやったのか?でもなぁ…」

 

 

確かに、ウワサを追加で家に持ち込むようなことしたのはアレだけど、白ローブから聞いた話じゃ、増えたら枯れるらしいしなぁ。別に危険があるようには…

 

 

「なーんか、ピンと来てないって顔っすね」

 

「………」

 

「よくないっすよー、そういうの。絡んでるのはウワサなんすよ?何やらかすか、分かったもんじゃないんすから」

 

「…なにが言いてえんだ。お前ら」

 

 

焦らされるのは好きじゃない。言うなら言え。さっさと。それでいて、はっきりな。

 

 

「あのウワサ、二本以上揃えば枯れちゃうんですよ」

 

「知ってる。この白いのから聞いたからな」

 

「あ、そうなんですね…。でも、ですよ?」

 

「私達が聞かされたのは、最後には枯れるってことだけ。枯れるまでに何が起こるか。どうなった末に枯れるのかってのは、知らないんだよねー」

 

「お仲間さん達、今頃どうなってるんすかねー?」

 

 

聞いて、ハッとさせられた。精神的な衝撃を受けて、眉間に段々、力が入ってく。

 

 

「んだよ、それ…!そんじゃあ、あいつら!」

 

「落ち着いて、赤さん!ただの言葉なんですよ?こちらを騙そうとしてる可能性も…!」

 

「嘘を言ってるって証拠も無いけどねー」

 

「………」

 

 

チビの言うことは分かる。こいつらは、私達を上手く引き剥がす為に嘘を吐いてる。そういうことも、あるかもしれない。

 

けど、黒ローブの言うように、嘘って証拠が無いのも事実で…。

 

 

「そんで、どうする?ま、隊長を拉致ったことに関しちゃあ…」

 

「っ!?いって…!」

 

 

黒ローブの一人が、喋りながら小さい魔力塊を飛ばす。肩に当たって、痛みが走った。

 

 

「それで手打ちにしてやっからさ。ここらで終わりにしとこ?な?」

 

「……………」

 

「赤さん……」

 

 

にこにこ笑う黒ローブを、ジトッと睨み付けてやる。自分達が優位なのを分かってるのか、余裕な態度を崩さない。

 

 

「………帰るぞ、チビ」

 

「赤さん!?でも…!」

 

「いいから!」

 

 

変身を解いて、白ローブから遠ざかる。異を唱えるようなチビを制して、人質状態の白ローブを解放させた。

 

制服姿に戻ったチビが、渋々こっちに合流してくる。白ローブはフリーになって、そこに黒ローブ達が集まった。

 

 

「うー…。なんか、納得いきません…」

 

「つったってお前。数で劣るんだし、このままドンパチやらかしたって…」

 

 

まぁ、今はシーが居るんだし、勝てるといえば勝てるだろうけど。けど、今日は既にヤバい魔女と戦った後。これ以上、魔力を消耗するのは避けたい。

 

………なんて、考えちゃあいるけど。

 

今、私の頭を満たしてるのは、危険な目に遭ってるかもしれない、先輩達のことで…。

 

 

「行くぞ!」

 

「あっ!ちょっと、赤さん!んもー!」

 

 

廃ビルを出る為に、走り出す。せめて最後に、もう一回特務隊の奴らを睨んでやったら、「またねー」とか言いながら手を振ってた。

 

くっそ。ムカつくな、ほんと。私を揺さぶってくれた借りは、いつか返してやらなきゃならねえ。

 

 

「早く来い、シー!置いてくぞ!」

 

「〜!?」

 

 

今の今まで遊んでたシーが、私の声に反応する。

 

弄っていたパイプや廃材、金属部品を放り出したか、背後から喧しい音が聞こえてくる。走る私達に、シーはすぐに追い付いてきた。

 

 

「〜!〜!!」

 

「わかった!わかったって!置いてかないから!走りづらい!」

 

 

引っ付いてくるシーを落ち着かせながら、三人で家まで突っ走る。

 

 

「赤さん!先輩さん達、電話に出ません!」

 

「チィッ…!」

 

 

それを聞いて、舌打ちしながら足を早める。

 

 

先輩達のこと。危険が迫ってるかもしれないって聞いた時、どうして私は、あんなに動揺しちまったのか。

 

なんで私、今もあの人達のことで、頭の中がいっぱいなのか。

 

 

胸の内の、その隅っこでそういう疑問が湧いて来たけど、いつも通りの『わからない』。答えなんて、出てくれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふんっ…!あーもう。やっと解放されたわ…」

 

「だいぶぐるぐるに巻かれてましたねー、隊長」

 

「隊長巻きだー」

 

「うっさい。…ま、なによ。助かったわ。ありがとね!」

 

「まぁ、一応チームですから?私達」

 

 

 

「にしても、だいぶ育ってましたねー」

 

「ん?」

 

「アレですよ。あのウワサ」

 

「育ってるってなによ。分かるわけ?」

 

「なんとなく、ですけど。そう感じるっていうか」

 

「へー…。まぁ、確かに 底知れない感じはしたけれど…」

 

「名前、付けてたっぽいですね。そういえば」

 

「あー、そういやなんか呼んでたよね。名前っぽいの…」

 

「ウワサに名前、ねー」

 

 

 

「あ、そうだ!帰りにメモ帳買ってってもいい?可愛いやつ!」

 

「は?や、いきなりですね…」

 

「いいですけど、なんでまた」

 

「アイツらに言われてさー。あのウワサの、詳しいこと聞いてこいって!」

 

「えぇ…マジすか、この人…」

 

「?なによ。おかしい?」

 

「おかしいですよう!だって、その…!あの人達は、その…敵なわけですし…」

 

「けど、知らなきゃモヤモヤするじゃない?アイツらは腹立つけど、未知を理解しようとする姿勢を持つ人は嫌いじゃないわ!」

 

「私らはそんなあんたが理解できねーっつーかさぁ…」

 

 

 

 

「ま。それはそれとしても、よ」

 

「?」

 

「これからもこんな調子で邪魔されちゃあ、いい加減に困るわよね」

 

「それは、まぁ」

 

「今回もポカやらかしたし、叱られちゃいますよねー。マギウスの魔女倒された隊長は、特に」

 

「あっ…!?忘れてたわ…。どうしよう。今度は教官に何されるか…。もしかしたら、マギウスから直々の折檻も…!?」

 

「かもですねー」

 

「ねーじゃないわよ!アンタ達、チーム組んでるクセにリーダーに対する尊敬ってもんが…って!いいの!そんなことは!」

 

「はぁ」

 

「私、今回で理解ったの!このままバチバチ争って、お互いが血を見続けるようなやり方したって、不毛なんじゃないかってことよ!」

 

「じゃ、どうするんですか?」

 

「ここらで一旦、やり方変えましょ!衝突を繰り返すんじゃなくて、こっちを理解してもらうことで、邪魔をやめてもらうって試み!」

 

「具体的には」

 

「マギウスの翼の、行動理念。救済を目指す、その理由!それを知ってもらえれば、あの子達にだってわかるわよ。私達の素晴らしさが!」

 

 

 

「でも、それってつまり、真実を知るってことですよね…?」

 

「ちょっと性急じゃないですか?下手すれば、解放の証を見せちゃうことにも…」

 

「それならそれでいいじゃない。もしかしたら、同志になってくれるかもでしょ?」

 

「うーん…。そう…かなぁ?」

 

 

 

「そうする為には、あいつらの根城を掴まなくちゃね…。ちょっと!」

 

「え、私!?…ですか?」

 

「アンタさっき、あの赤いのに魔力パナしたわよね?」

 

「それは…はい。しましたけど」

 

「それの魔力を追って、あいつらの居場所、突き止めなさい」

 

「えぇ!いや、無茶ですよ…!私、魔力探知はそんなに…。っていうか、普通に考えたら魔力なんて、とっくに散ってて探しようが…」

 

「なに言ってんの!成せばなる!皆でやれば、なんとかなるわよ!」

 

「実質ノープランじゃないですかぁ!」

 

「てか、いつの間にか私達もやることになってるんですけどぉ!?」

 

「そうと決まれば、準備開始よー!」

 

「話聞けって、このアホリーダー!」

 

 

 

 

 

「マギウスの翼、特務隊!私達なりの、『講義』をするわよ!」

 

 

 

 

 





マギレコ本編の出来事

・第一部 第5章六話 終了後〜第5章七話 開始前

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