第二部が完結したり かごめちゃんが実装間近だったりするので初投稿です。
生活は順調だった。なんの不安もありゃしない。憂いとか焦燥感とか、そんな心を煩わしくするもんなんて、なにも無かったんじゃないかな。
少なくとも、あの人とお父さんにとっては。
私はだんだん露骨に家族を避けるようになって、話もしない、言葉も聞かない。そんな毎日を送るようになっていった。
やがて、あの二人の間に子供が生まれた。男の子。
血を分けた、私の弟だ。
「あのー!ちょ、今から隊長そっちに投げますんでー!キャッチしてもらっていーすかねー!」
「あ…?」
「じゃ、いきまーす!よっ……!」
遠くでなんか振りかぶった黒ローブが、思いっきり腕を振り抜く。なによ。何投げたんだ。
投げたらしい何某かを探して、空中に目を向けてみる。光の反射でキラッと光ったものを見つけて、私はハッとした。
「ソウルジェム…!」
マズいと思った。
だってお前、命なんだろ!?まだ信じらんねーけど、そう言ってたじゃねーか。どうなるんだ、このまま地面だの壁だのに叩きつけられたりしたら…!
「くっ…!ぬっ!」
「おっ、ナイスキャッチー」
「ナイキャー!」
「なにがっ…!」
落下地点なんてよく分かんないまま、白ローブのソウルジェムを必死こいて目で追って、なんとかキャッチ。
黒ローブのやつら、ナイスキャッチだのなんだの…。おめーらのヘッドのもんだろうが。洒落にならねーもん投げて取らせて、ゲームのつもりかって…!
「おい!大事なもん粗末にブン投げて、お前ら…!」
「取ると思ったんでー」
「だからっつってなぁ!?」
「でも、ちゃんと取ったでしょ?」なんて、二ヘラっとしながら続ける部下共。白いやつって、やっぱナメられてんじゃねえのか…。
「それよかー!そろそろ起きるんで、乱暴しないで下さいねー。穏便!穏便にー!」
「誰が…!」
こっちはさっきから ソウルジェムが本体だの命だの、デカい情報ブッ込まれたままだってのに…!
「ぶっは!ああ…!」
「うわビックリしたぁ!」
「…!」
白いやつの声がして、後ろを振り向く。
あのボケが何もなかったみたいに体を起こしてて、なんなら体を伸ばしたりなんかしてた。昼寝やってたんじゃねえんだぞコラ。白いのを支えてた年長さんも、口開けて驚いてるし…。
「んん〜!いやぁー、慣れないわねーこの感覚。なんてーのかしらね?何もない暗い場所からいきなり浮上しました〜的な?ねえ?」
「知らねーけど!?」
「え、なん…。ちょっと、立て続けに衝撃的なことが起きててアレなんですけど…」
「ちょ、イッタン落ち着かね?イッタン!イッタン!」
「え〜?」
えーじゃねんだよ、おい。元はったらお前らが講義するっつったんだろ。なら説明の義務ってのがあんだろうが、あ!?しろ!説明!重要くせえことを話しといてお前!
「んー。ま、そうねえ。っても、もう分かったんじゃない?今の私を見てたらさ」
「……なにが」
「なぁによ、察しの悪い…ってわけでもなさそう?説明したんでしょ、あの子達が」
「………」
「そうなんでしょ、アンタ達ー!」「そうでーす」なんてやり取りしながら、白ローブは背中を見せて、黒ローブ達のところに歩いてく。心なしか、余裕綽々って感じのする足取りで。
「ま、受け入れ難いのは分かるわよ。ソウルジェムが私達の魂で?体と離れ過ぎればダメ、なんて」
「要するに、体がただのガワになっちゃったってことだもの。ねえ?この血も骨も肉も、生命には必要だってのにね」
「………」
言いながら白いのは歩くのをやめて、こっちに振り返った。
「それでもまだ信じられませんって言うなら、次のステップ。ジェムに触るのがいいわ」
「触る…?」
「宝石にして、ね。あんた達全員が、お互いに」
そう続ける白いのは、「魔力を込めてやんなさい。軽く叩いてやるくらいの攻撃性で」なんて付け加えて、また背中を見せる。
「……どうすんだよ…」
「どう…しよっか…?」
「何の意図があるか分かりませんが、やるだけやってみるしか…」
乗せられるみたいで癪だけどな。けど、やつらの話の真偽が、それではっきりするってんなら…。
……でも、どうするんだ。ソウルジェムの話が真実だって分かったところで、その次は…?
「では、皆さん私に寄って、ジェムを」
『………』
先輩に言われて、皆集まる。私は変身を解いてから、宝石に変えたソウルジェムを掌に乗せて軽く差し出した。
「では、私は赤さんのものを…」
「…」
先輩の手が私のジェムに触れてくる。それを皮切りにして、私達も他の誰かのジェムに手を添えた。
私は先輩の。マジ子は年長さんので、年長さんはおチビの。おチビはマジ子のやつ。
「ていうか、アンタ達がこっち来なさいよ!リーダーを歩かせるってどうなの!?」
「諦めましょ。隊長もマギウスって組織の中じゃあただの歯車…。下っ端に過ぎないんすから〜」
「んぬ"ぅ"ー!!」
やいのやいの騒いでるローブ達の声も、今は気にならない。私ら皆、どっか神妙な顔付きになって、お互いがお互いの顔を見てる。
「…じゃあ、いっせーのでお願いしますわ」
「ん…」
「おっけ」
(もし罠やら悪ふざけやらだったら引っ叩いてやる、あいつら…)
「では…!」
腹が決まったところで、先輩が合図を出す。「いっせーの!」って、ちょっと子供っぽいそれと同時に、私は先輩のジェムに、触れた手から魔力を流し込んだ。白いのが言うように、ほんのちょっと攻撃するような塩梅で。
…つって、そんなの感覚的なもんだし、このやり方で合ってるのかは…なんて考えてた、次の瞬間。
「っ!!」
「あっ…!?」
「ぶっふ…!!」
激痛だった。全身にいきなり、あり得ないレベルの痛みが襲ってきて、思わず呻いちまう。他の面子も声に出たり顔を顰めたりで、私と同じようなことになってるのが分かる。
「はっ…!はっ…!」
「っ!バカ、お前…!」
痛みに耐えられなかったか、チビのやつが息を切らして膝をつく。拍子にジェムが手から離れて落下したのを見て、肝が冷えた。
けど、チビの一番近くに居た年長さんが咄嗟にキャッチしたのが幸いってやつ。自分もまだキツいだろうに、よくもまぁ…!
「どしたの?辛そうね、なんか」
「貴女ね…!」
流石に先輩も腹立ったらしい。そういう声と顔で、白ローブを睨んでる。当たり前だわな、そんなの。
やっぱ罠だったのかよ。許せねえなぁ!……って思ったんだけど、痛みがまだ尾を引いてるせいなのか、変身できない。これじゃ あのドアホ共シバけねーじゃねえか、クソ!
「〜!」
「っ!やめろ、構うな!」
苦しそうにしてるのを気にしたのか、シーが私に寄ってきて、治癒魔法をかけようとする。確かにヤバいはヤバいけど、今はこいつに頼る気にならない私は、それを拒否した。
「けほっ!けほっ…アタシらダマしたの…?ヒドくないマジで…!」
「だーから、講義しに来たってんでしょ。バトるなら最初からそうしてるわよ」
白いのが言う。ああ、そうかよ…!コントみてーなお喋りばっか得意なクセして、もっともらしいこと言いやがってさ。ムカつく…!
「ぐっ…く…。で!?」
「ん?」
「これが、なんだって…!?ソウルジェムにちょっとでも刺激があればクソ痛えって、それが!?」
「…呆れた。まーだ認めないの?そんなことある?」
「ちげーわアホが!こんな痛えんだから、この石っころが私らの本体なのを分かれってこったろ!」
「なんだ。じゃ、なに」
そう。何を意味してるのかなんてのは理解してんだよ。その上で私が言いてえことってのはなぁ。
「…この痛みが、ソウルジェムが本体だという証明には必ずしもならない。ということはありませんこと?」
「う〜痛い…。そうですよ…魔法少女なんて強い力 貰ってるんですから、代償として付けられた弱点って考え方も…」
「その…もしかし、たら…さっき倒れたのも、演技かもだし…。えと、魔法使って、仮死状態…みたいな…?」
やっと痛みが引いてきたらしい皆が、私の代わりに言った。やっぱそう思うか。
向こうにとっちゃあ、こっちは敵。さっきの「喧嘩するつもりなら〜」っていうのだって、そりゃ口ではなんとでも喋れる。
さっきこいつが死んだみたいにぶっ倒れた時は流石に信じかけたけど、向こうに作戦があって、その為にこっちに嘘ついてる可能性は、まだ否定できねえんだよ。
「………………」
「どう、なの…?」
「はああああああぁ〜………」
「え、なに…。マジのやつじゃん、タメ息」
私らの推測を聞いて、長い溜息を吐く白いの。なんだお前その、心底めんどそうな態度は。真面目に聞いてやってんだぞ私ら。
「オッケー、分かった。分かったわよ。じゃ、もっと証拠見せればいいのね?石みたいなカチカチ頭ちゃん達に」
「カチ…」
いちいち煽らんきゃダメかお前。…いや、いいわもう。今はそこに構ってる時じゃねえんだ。
「じゃ、補足。ソウルジェムが本体なのは話した通りだけど…アンタ達!」
「はーい?」
「なんです」
白いのの合図で、部下達が寄ってくる。しかもあの剣みたいな武器を取り出すから、私達は警戒した。なに。こんどはなにやらかそうって…。
「ん」
「え、なんすか人に刃物向けて…怖っ」
「非常識ですよ非常識〜」
「ちっげーわよ!貸すから持ってて!一旦!」
「はーい」
部下の一人に、武器を渡した。柄がない剣をどうすんのかと思ったけど、魔力で動かしてる。そういう仕組みらしい。
「さーて、待たせたわね!これから見せてあげる!私達の言うことが、紛れもない真実だってこと!はい、準備!」
「へーい」
「…?」
なんだ。今度はなにする気だ。なんで黒いのは剣構えてんだオイ。私らを斬るってんならまだ分かるけど、なんか白いのに向けられてるように見え…
「やっちゃって!思いっきりね!」
「りょー。よいしょー!」
そういう、ちょっとした疑問が生まれた途端のことだった。
「ゔっ…!!」
白ローブの体から、いきなり何か生えてきた。私にはそれがなんなのか、理解できなくて。
「……はぇ?」
唖然としたような年長さんの呟きが聞こえてきて、目の前で白ローブの衣装が赤黒くなってくのを見て、ハッとした。
剣だ。白いのが、部下に渡した剣。あれがやつの身体を、後ろから貫いてる。赤黒いのは、当然 血。剣から滴って、もしくは体から流れて、廃墟の床に広がってく。
「こふっ」って咳き込んで血を吐く白いのの顔は、刺される前となにも変わってないように見えた。
「あ…え…」
「…!?な、ちょ、あの!…えぇ!?」
「え、なに!?え、なになになに!?なに!?なにやってんの!?」
チームの皆が戸惑ってる。当たり前だろ、そんなの。向こうのリーダーが、部下に自分をブチ抜かせたんだぞ。驚かないやつの方がおかしいまであるだろ。
「っ!!」
「ん!?おい!」
飛び出したマジ子が、私の声掛けを無視して白ローブに駆け寄る。背中しか見えないけど、慌ててるのはよく分かった。
「ねえ、ちょ…!マジだいじょぶ!?や、んなわけないか…!あの、電話!キューキュー車で、ビョーインで、とにかくあのー!」
「なに、パニクり過ぎでしょアンタ」
「やあああああああああああ!?」
「ちょ、うるさいうるさい!」
白いのにいきなり声かけられて、マジ子がすごい勢いで後退り。そりゃそうだろ。なんなら私だってビクッたわ!
なんでそんな平気そうなんだよ。おかしいだろ!?血ぃ出てんだぞ、血ぃ!
「ちょ、ごめん!ごめんて!大丈夫よこれも魔法だから!」
魔法だあ…?
「便利なのよ〜魔法少女って!こーんな、普通の人間なら明らかに死んじゃうような傷だって。全然平気。魔力で痛覚を遮断してるからよ!」
「ソウルジェムが本体だってのも、ここで活きてくるんすよねー」
「そう。そうなんです…!あの、死なないんですよ。ジェムさえ無事なら、魔法少女は」
ドン引きする私らを置いて、話を続けるローブ達。いや、くっちゃべってくれてるとこ悪ぃけど、入って来ねーんだよ話が!口からなにから血ィ流しといたまま続けねーでくんね!?
「まぁ、私もここまで思っきし心臓ブッ刺されると思わなかったわよ。酷いわねーもう」
「あ、心臓いってるんですね、それ…」
「ねー。ほんと、魔法様々っていうか。あ、もういいわよ。抜いてサクッと傷塞いで…」
「すんません隊長。もいっちょ いきまーす」
「は?アンタ何言っ」
ちょっと顔青くした先輩の一言も、サクッと流した白いの。とりあえずひっでえデモストはこれで終わりなのか…
「でぇっ」
なんて、不覚にも気を抜いた私の目の前で、飛んだ。すっ飛んだ。
なにがって、首。白ローブの首が。そりゃもうスポーンって、景気良く。
『え』
そりゃ、私ら五人ハモりもする。そんなこと、目の前で起きりゃあ。
『……………』
この場に居る、全員の沈黙。首の無い白ローブ。剣を振り抜いた姿勢の黒ローブ。噴水みたいに噴き出す血…
「………あ」
降ってきたそれを被ったマジ子が、真っ赤になってこっちに振り返る。息を思いっきり吸い込む挙動をするのを、私は見た。
「あぁーーーー!!!あーー!!あー!!!あーーーーー!!!!」
「わああああああああああああ!!!」
クッソうるせえ絶叫が耳に届いてから、私もつられて叫んじまう。や、無理!これは無理!流石に!!
「え、なん…あれ、首、飛ん」
「っダメ!見ちゃ…!!」
「いや、もう見…うぶっ…!」
年長さんは咄嗟に、R18Gまっしぐらな光景を見せないようにおチビの目を塞いだみたいだけど、もう遅かったらしい。チビが吐いちまってる。
「っ…………」
実はっつったら、私もだいぶこう、込み上げてきてた。どうにか戻さずには済んだけど、口ん中がだいぶこう、酸味、みたいな…。
「うおああああああああああああ!!!」
「あぁ!?」
先輩がキャラじゃねえ叫び方したと思ったら、なんか蹴っ飛ばした。思いっきり。どうも、足元になんかあったらしい。いや、びっくりした…。そんなドスきいた大声出せたんだ、この人…
らしくないアクティブさを見せた先輩の動きにつられて、飛んでったものの方に顔を向ける。
「ゔお"え"え"ええええええ!!」
見て後悔した。後悔したし、吐いた。耐えられんてお前…。首はやめろ、首は…!
まぁ、うん。首だった。頭部。白ローブのやつ。部下に叩っ斬られた首は、先輩の足元に転がってきてたみたい。そりゃあ蹴っ飛ばすよね…。
てか、どうすんのこれ。この床にブチ撒けられたゲロりんは。ゲロりんてなによ。
「はぁー…!はぁー…!…うぇっ」
「おっ…!とぉ。ちょっとー!ぞんざいに扱わないで下さいよ、首〜」
「斬り飛ばしといて言えねーだろそれ!」
蹴っ飛ばされた首をキャッチして、黒ローブが言う。ふざけんじゃねーぞマジで…。講義ってこんな猟奇的なもんじゃねえだろ、なぁ…!
「よっ…とぉ。じゃ、くっ付けるかぁ」
「は…?」
「や、流石に喋れないじゃんね、こんなんじゃ。だから、ねえ?」
「いえ、あの…でも その方、もう死……うっ」
先輩はえずいてはっきり言えなかったけど、その通りだろ…。見れば見る程、嫌な感じがヤバい。死んでるってことだろ?これ…。
こいつらもこいつら。なにを血迷ってお前、自分らんとこのリーダー 殺っちまってよ…!
「あ。ちなみにこれ、大丈夫ですんでね」
「はぁ?なにが…」
「生きてるんだなぁこれ。まだね」
「ウッソでしょマジで…」
「マジなんよねーこれが。あ、皆手伝ってー」
黒ローブ共が集まって、首を元の位置に固定しだす。なぁ、ニチャとかグチャとか粘性のある音が鳴って不快過ぎるんだけど…。白ローブの表情が、首飛ぶ前と何も変わってないのが不気味だし…。
マジ子もドン引くわそんなん。
や、それよりも。
「嘘つくなよこんな時にまで…。生きてらんねーだろ、それ…」
「だからー、ジェムは無事なんだって…じゃ、やりまーす」
「苦手なんだけどなぁー治癒魔法」
「だから皆で力合わせるんすよ。ほら、せーの!」
「………」
黒ローブ達が魔法を使って、光が照らしてく。ちょっとずつではあるけど、白ローブの体のデカい刺し傷は塞がって、離れた首と胴体も繋がっていった。
なんだろう。心なしか、顔色も良くなってるような。
「……ふー。こんなもん?」
「だね。おっつー」
「はぁー疲れたぁ…。ほら隊長ー、起きてくださーい」
黒いのが白いのをつつく。ん、なんだ。今ピクッとしたような…?や、まさか…。
「………」
「あ、起きた起きた!隊長おは」
「てめ、ゴミクソがぁー!!」
「ぶっへぇ!!」
……マジかよ、オイ…。生き返りやがった。
…………黒いのが殴られてんのはまぁ、当たり前なんじゃないの。知らん…。
「いった!!グー!グーで殴った!今ぁ!!」
「たりめーでしょうが!!なにをよくも、人の首落としてくれてぇ!アンタはぁ!!」
「でもこれで信憑性がねぇ!?なりましたよアレに!増したって!」
「あっそ、良かったねバーカ!!」
そうやって子供みてえにギャーギャー喚いてから、吐捨てるみたいな溜め息吐いた白ローブがこっちを向く。まだ眉間に皺が寄ってた。
「っとにもー…!……んで?いい加減分かった?」
「あ…?」
「ソウルジェムが本体って話よ。ここまでやれば、もう分かったでしょ」
「それは」
「あ、ちなみにジェムが壊された時はマジで死ぬからね」
「え、待って」
え、ま、ちょ……え?あの、オイ!
お前何つった今、なぁ!?死…!?
「……赤ちん…」
「マジ…うわ赤っ、お前」
「ねー、どーゆーことなん…?アタシ、もうワケわかんないよ…!」
「…………」
マジ子が、フラフラした足取りで寄ってくる。私のリアクションに返す余裕もないくらい戸惑って、憔悴してる。
ワケわかんないってお前…。そんなの、私だって……。
「ま、つまりね?纏めると」
「魔法少女は魔法が使えて、身体能力も上がったりして、その…凄いんです」
「しかも、どんだけ体が損傷しても無問題。心臓やられても、首吹っ飛んでもだいじょーブイ!っす」
「だけど、ジェムはダメなんだよねー」
「ソウルジェムは本体だから。外に出されて、可視化された魂だから。壊れたら死んじゃう。」
「これが、魔法少女の真実。の、一つ。OK?」
ローブ共五人全員で、今までの話を要約してくる。ご丁寧に白いので始めて、白いので締めやがって…。
あぁ、もういいよそれで…。オッケー。オッケーでいい。いいけどさ…。
「じゃあ、人間じゃ…ない、の?私達…もう…」
「ん?」
「そうですよ…。だって…だって、死んだのに死なないなんて、そんなの…!」
「肉体と魂が一つになったものが人間だって言うなら、まぁ そうなるんじゃない?」
「っ……!!」
魔法少女は、私達はもう人じゃない。そんな体じゃ…命じゃない。
無慈悲に、簡単にそう告げられて、拳を強く握り込んじまう。歯だって、噛み締める。
それはきっと、私だけじゃない。先輩だって、マジ子だって…年長さんだっておチビだってそう。そうに決まってる。
じゃなきゃあ、おかしいだろ…!自分がまともじゃないなんて知らされて、平気で居られるなんてこと…!!
ムカつくよ…。否定したいのに、そんなわけねえじゃんって、鼻で笑ってやりたいのに。今まで見せられたもの、聞かされたものが、それをさせてくれない。
分っちまったんだ。この脳みそと、心で。本当に本当のことだって…!
「でもね!気にすることないわよ!」
「魂の所在がどこだろうが、大事なのは心!ハートよハート!」
「今までと変わらないこの心がある限り、魔法少女は人なのよ!私はそう思うわね!」
白ローブの気休めみたいな励ましに、意味なんて無かった。
声も言葉も、単なる雑音にしか聞こえなくて、私には…私達には響かない。
一気に詰め込まれた真実と、まざまざ見せつけられた、証拠という名のスプラッタ。
そんなもので萎縮して冷え切った、私達の心と、頭には…。
マギレコ本編の出来事
・灯花と再会するいろは。だが当の灯花はいろはやういのことを覚えておらず、自分にはマギウスとして接してほしいと述べる。
やちよが自分達を助けに行くべきか揺れていることなど知る由もない いろは達は、灯花の講義を受ける中で、ソウルジェムは魔法少女の命そのものであり、自分達は普通の人間ではなくなってしまったのだということを知らされる。