知られることのない話   作:まるイワ

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1-3 二人の放課後

 

 

 

 

授業も終わり、放課後になった。予定通り調整屋へ向かうことにする。側から見れば、部活動の一つもせずにさっさと帰宅する、青春を捨てているようなやつだと思われているかも。

 

一時は箏曲部なんて、何か優雅でお嬢様っぽいし、良いのでは?なんて考えたこともあった。でも、部長になった同級生が、後輩への指導やら何やらで忙しそうにしているのを見て、ド素人の私が入って迷惑かけるのもなぁと断念した。今ではいい思い出。

 

何故か自害しようとしている変な生徒を尻目に、学校を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「神浜ミレナ座」という文字が目に入る。調整屋の拠点である建物。外観は寂れていて、改めて見ても、人なんて出入りしているようには見えない。扉を開け、中に入った。

 

青く照らされた室内が、私を迎える。部屋の中に鎮座しているソファに、赤さんは座っていた。先に来ていたらしい。水名の方が圧倒的に調整屋には近いはずなのに、なんてお早いこと。まさかサボっただなんてことは…

 

 

「おっすー」

 

「お待たせしましたわ」

 

「ん。あ、そういやさ、渡しちゃったんだけど」

 

「構いませんわよ」

 

 

調整の対価として、グリーフシードを、ということでしょう。問題無い。そもそもここを待ち合わせ場所に指定したのだから、調整はしてもらうつもりでしたし。まぁ、残量に余裕があるわけではないのですが。

 

 

「強くなりまして?」

 

「いやぁ…よく分かんね」

 

「でしょうね」

 

 

調整は何回か受けているけれど、私も赤さんも、自分の魔力が強化されている実感をあまり得られていない。調整屋さんに話したことはないのですけれどね…。

 

 

「今は誰か調整を受けてらっしゃる?」

 

「一人ね。私は知らない人」

 

 

ここで取り引きされている品を間近で眺めながら、赤さんと話す。これらも魔力の強化に使うんだろうか。色取り取りの、大小様々な宝石。中には、鍵や何かの羽、不思議なマークの書いてある、綿のようなものまで。何でしょうねこれ…。

 

 

「はいお終い。それじゃあ、また来てねぇ」

 

 

そんな事を考えていると、聞き慣れて久しい声がした。どうやら、どなたかの調整が終わったらしい。振り返ると調整屋さん、そして部屋の出口に向かう、知らない女の子の姿が見えた。栄総合学園の制服を着ている。画材道具らしきものも見えた。絵を描く人なのでしょうか。

 

 

「あら。新しく、お客様がいらしてたのねぇ。貴女も調整する?」

 

「あ、はい。先約等が特にありませんのでしたら、是非」

 

「はぁい。じゃあ一名様、ごあんな〜い♪」

 

 

調整屋さんが良いと言うので、私もなけなしのグリーフシードを渡し、調整を受けることにする。赤さんにはもう少し待っててもらいましょう。

 

 

 

 

 

 

「はい、これでお終い。楽にして大丈夫よぉ」

 

 

少し経って、調整が終わったことを告げられる。貴重な時間を割いてもらったのだから、お礼を言いませんとね。

 

 

「ありがとうございます、調整屋さん」

 

「いいのよぉ、お仕事なんだから。どう?魔力の方は」

 

「ええまぁ、はい。調子はよろしいかと」

 

「そう!なら良かったわぁ」

 

 

嘘をついた。いいんです。私が感じられないだけで、実際はモリモリと魔力が強まっているのかもしれませんでしょう!

 

 

「そういえば、赤ちゃん、だったかしらぁ?上手くやってる?」

 

「赤ちゃんて…。はぁ…まぁ、それなりに?」

 

「これからも2人で戦うなら、コネクトもどんどん使っていくといいわよぉ」

 

「コネクト、ですか…」

 

 

一度説明は受けた。自分と仲間の魔力を合わせ、様々な力を発揮させる戦い方。性質は個々人で様々、かつ強力らしいけれど、噛み合わないことが多々ある私達では、上手くいく気はしませんわね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

調整屋を出て、我が家へと歩を進める。今日という日も、すっかり夕暮れ時。

 

 

「あ、先輩。そういや昨日、冷凍庫チェックしたらさぁ、冷食なくなりそうだったぞ」

 

「……そのことなんですが、赤さん」

 

 

昼間のことを思い出してしまった…。私の嘆きを訴えた所でどうにかなるとは思えないが、一応切り出してみる。

 

 

「何。まさか、疲れたから買いに行くのメンドいって?朝飯、パンだけになんぞ」

 

「いや、そうではなく」

 

「じゃ、金が勿体ないとか?そりゃ金って大事だけど、冷食買うくらいで、金持ちのお嬢様がそんなみみっちいことさぁ…」

 

「………」

 

 

はいぃ?人の気も知らないで……あーもう、いいですわよ。知るもんですか。毎日食えて、生きられるのなら、日々の食事が出来合いでも何の問題も無いのですわ!上等でしょう!

 

 

「何言ってますの。買って帰ろうと提案するところでしたのよ!」

 

「そうか。あ、じゃあさ、私あれ食べたい。肉団子の中にマヨ入ってるやつ。甘辛いタレがまた良くてさ」

 

「あぁ、あれ。いいですわねぇ!じゃあ私は小さいイカの天ぷらを…」

 

そう言い掛けた時、魔力の反応を感じ取った。赤さんと顔を合わせる。間違いない。魔女が近くにいる。しかも随分と慌ただしく反応が移動している。これは…。

 

「先輩!」

 

「わかってます!」

 

 

魔女は恐らく逃走中。しかも手負いの可能性大。でしたら好都合。グリーフシード、補充させて頂きますわよ!

 

冷食のことは一旦忘れて、魔女の反応を追いかけた。

 

 





マギレコ本編の出来事

・第1章【はじまりのいろは】開始。いろはが神浜に来訪。
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