知られることのない話   作:まるイワ

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マギアレコードがついにグランドフィナーレを迎えてしまうので初投稿です。




6-8 講義再開

 

 

 

変わらない時間。変わらない生活。変わらない家族……変わらない。何も。

 

笑い合ってるあの人達が嫌だった。休日には皆揃って何処かへ出掛けようとするのが窮屈だった。私に気を遣って、なにかと話しかけてくるのが嫌だった。

 

嫌だった。何もかも、下らなかった。

 

だから反発して東の学校に通うって強引に決めてやったし、家出だってしてやった。

神浜に来てから顔を合わせたり、一緒に戦うことの増えた女の子の家に、転がり込んでやったんだ。

 

そうして今の私が出来て、それからはずっとそういう道を生きてきた。

私っていうやつの人生は、今はそういうものになってるんだ。

 

そうする内に面子も増えてさ。命の危険はあるにしろ、美味い飯、リッチな寝床に広い風呂。

そんで、まあ…退屈しないやつらとバカやって。

 

仲間じゃなくても、友達じゃなくても…隣に誰か居て、上手くやってたと思ったのにさ。

 

…なんで、こうなるかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん………」

 

 

目が開く。暗い景色の中に、何か光って、何かが浮いてる。…雲かな、あれ。光ってるのは…星?というか、空だ。空が見えてんだ。

 

つか、なんで空なんだ…いや、待て。

そうだよ、私らさっきまであのローブ共と戦ってて…なんだっけ。

くっそ、頭がボーッとする…!

 

 

(なんか…ソウルジェムが…?)

 

 

うん…そうだ。段々思い出してきたぞ。白ローブのジェムが濁りまくって、そんで…

そんで、なんかデカいのが攻撃してきて…!

 

 

(私の感覚が間違ってなけりゃ、あれは…!)

 

 

あのローブ女からなんであんなもんが飛び出してきたのかは分からない。けど私らがこうして倒れてんのは、あのバケモンに攻撃されたからだ。

 

そのお陰で、私は気を失ってたってことか。

空模様からして長いこと気を失ってたのかと思ったけど、そうなら今頃追撃なり叩き起こすなりされてるよな…。

なら、ローブ共に付き合わされてる内にそれなりの時間が経っちまった。そういうことか。

 

なんにせよ、次の攻撃があったらヤバい。とりあえず起きねえと…!

 

 

「んっ、ぐっ…!あっ…くぅっ…!」

 

 

急いで体を起こそうとしたけど、とにかく体が重いわ あちこち痛むわで、そりゃあもう酷いもんだった。

 

気を失う前の感覚と記憶が確かなら、アホみたいな量の魔力をぶつけられたはず。

物理的な衝撃でもないのに、ここまで身体にくるのかよ…クソッ!

 

 

「っあぁ!くっそ、立ち上がれね…ん?」

 

「〜!〜!!」

 

「お前…」

 

 

立ち上がることもできないでモタついてたら、どっからかシーのやつが駆け寄ってきた。

これまでも私にやったみたいに、回復の魔法をかけられる。

効果は覿面で、少し疲れが残るけど、まあ楽になった。

 

てか、心なしか なんか強い。波動っつーのか、魔力の広がりっつーのか。ダメージは割と酷いけど、そんな出力でやるか?

 

 

「つーかお前さ…!」

 

「?」

 

「………いや」

 

 

助けるならもっと早くしてくれんか。なんて言いそうになったけど、引っ込めた。

馬鹿馬鹿しいんだよ、都合のいい時だけそんな。

 

んなことより なんなんだよオメーはよ。よく把握できてないったって、とんでもねえ一発を貰ったのは確かなんだ。

でもこいつはピンピンしてんのな。涼しい顔で首傾げてりゃ誤魔化されるわけじゃねーんだぞ。

 

 

「うぅ…無事ですか、皆さん…」

 

「ん…なん、とか?」

 

 

後ろから知った声が聞こえたんで顔を向けてみりゃあ、先輩らも身体を起こしてるとこだった。そうだった、あいつらも一緒にぶっ飛んだんだったわ。

 

さっさと帰ってりゃあいいものをさ。バカがよ。

 

 

「どうなったんですか、私たち…?確かさっきまで工場みたいな…」

 

「分かりませんが、こう…体が凄く重くて、痛くて…でもいきなりそれが消えましたわよね?」

 

「ねー!マジさ、グテーって倒れちゃってて…じゃなくてっ!!」

 

 

先輩らの話を耳で拾って、ああ、シーのデカめの治癒魔法がそっちにも作用したんだな なんて適当に考えた矢先に、マジ子がデカい声出しながら地面を叩いた。 明らかに余裕がなさそうな態度で。

 

……まあ、流石に私でも分かる。地べたにノビる前の事を思い出したんじゃあ、そりゃな。

 

 

「皆もマジで見たっしょ!?あんな…あのデッッかいやつ!!あれ…あれさ…!!」

 

「ちょ、やめましょうってマジ子さん。分かりますけどその、落ち着こうっていうか…」

 

 

チビが宥めても、マジ子のやつは聞かない。こいつ、魔法少女の真実ってのを知って 大分まいってるらしい。

それ以前に生首だの血の噴水だの、グロいもんまで見せられてるんじゃ、無理もない。それは私も同じだし。

 

 

「や、できるわけなくね!?だってあんなんさ…あのマリョクハンノーってさぁ!まるで…!!」

 

「『魔女みたいだ』って?」

 

「っ!」

 

 

あのバケモンを見た時に、私が思ったこと。多分、私以外も考えたこと。それを具体的にブチ撒けようとしたマジ子に続けるみたいに、声が聞こえた。

外だってのに、よく通る。さっきまで散々聞かされてた、イラつくやつの声。

 

声の方に向けば、案の定。白ローブが手下引き連れてゾロゾロと。

 

 

「てめぇ…!」

 

「はぁーっ…おはよう。えっと、よく寝れたみたいね?あの、よかったわよ。お…おっ死んでなくて。はー…」

 

「や、なんで疲れてんですかこの人…」

 

「あ、多い日なんじゃね!?」

 

「うっさいわね!!」

 

 

チビのツッコミ、マジ子のボケ。下品でしょ!なんて声を張る声の主、白ローブ。そんなもんどうでもいいとしてだよ。

 

確かに肩で息してんのは気になる。私らをボコしてくれやがったのは明らかにこいつから出てきたアレが原因だろうけど、白いの自身が疲れるような攻撃したようには見えなかったぞ。

 

 

「しゃーないじゃない、疲れんのよ"ドッペル"出すのは!慣れてないと特にね!」

 

「……あ?」

 

「ドッ…なんです?」

 

「ドッペルよ、"ドッペル"!アンタらも見てたでしょ!盛大に吹っ飛ばされたんだから」

 

「んだ、そりゃ…」

 

 

また訳のわからん話が出やがった。ドッペルってなんだよ。ゲンガーっていうアレか?

都市伝説から名前だけ取ったのか知らねーけど、そんな名前してるならあのバケモンも、まさかウワサの類なんじゃ。

 

なんて、考えてはみたけどさ。

 

 

(……………)

 

「なによ」

 

 

アレはウワサとは違う。

 

白いのを睨みつけながら、自分で自分の疑問を否定する。ここ最近やたらとシーを始め、ウワサに遭遇してきてんだ。魔力のパターンだのなんだの、そういうのを覚えちまってる。

 

だから違う。そもそも白いのからあのドッペルってのが出てきた時から感じてたことが全てなんだよ。

 

ウワサじゃない。あの魔力は、魔女のソレだろうが!

 

 

「……で?」

 

「ん?」

 

「魔女みたいだっつったのはお前だろ。講義だかは続いてんだろ!さっさと言えよ…!」

 

「なぁに?アンタもーそんな…はぁぁぁ〜」

 

「お前!!」

 

 

『ったく、今まで散々聞く耳持たなかったクセにー』とか抜かしながら、私の憤りは受け流されてく。こいつ、ふざけやがって…!

 

テメーの身体から出てきたのが魔女みてーだっつって、それにYESを返されたんだぞ。素通りできるわけねえだろ!

 

 

「魔女と同じ魔力を感じるのはね、当然なのよ。あれは穢れの塊なんだから。魔女だって多かれ少なかれそれを纏っているでしょ?」

 

「じゃあ…あれってやっぱ、魔女なの?マジで?」

 

「正確には、魔女になるはずだったものってとこね」

 

「は?なんですかそれ…。なんでそんなもんが貴女の中から出てくるんです」

 

「え…体の中に飼ってるとか…じゃ、ない…よね?」

 

「発想がキモいわよ!!そうじゃなくてねえっ!」

 

 

白いのは強めに短い溜め息を吐いてから、またこっちに向き直って、言った。

 

 

「魔法少女はねえ!魔女になるの!」

 

「ソウルジェムに溜まった穢れが形を成して、本来なら魔女になるところが、この街ではドッペルになる。分かる?魔女の持つ穢れは元を正せばね!魔法少女が持ってたものですよって話なのよ!え!?」

 

 

言われたことを理解することは、できなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………はっ」

 

 

息が、漏れた。多分、頬も引き攣ってたと思う。

思うってのは、よくわからんかったから。

 

自分達の何もかもが止まったのかと思った。それくらいパタっと静かになっちまったんだ。私達は。

 

時間なんて碌に経ってないはずなのに、もう何分、何時間もそうしたような感覚になる…それくらいの静けさ。ある意味無音だったのかもって…。

 

 

「なん…?」

 

「ん?」

 

「なんつったお前?え、なに?」

 

 

聞き返す。いや、分かってんだよ、なに言われたのかは。でもこう、なんてーの。

噛み砕けねえんだよ、自分の中で。日本語なのに言葉通じねえの。

 

ちょ、なになに、なに?や、もっかい言ってくんねマジでっつーか何言ってんだこいつっていうか頭おかしいんじゃねーのかお前よ!!

 

 

「2回も言わせないでよ…。だからぁ」

 

「ぃやいやいやいやいやいやいやいやいや…」

 

「なによ!?」

 

「ンないないないないないないない」

 

 

大袈裟に首と手を左右に振りながら、壊れた機械みてえに同じ言葉を連呼する、私。

 

だってそれほんとバカの言うことじゃねーか。私らの魂が石っころになったってよりもだいぶ。すげえジョークだよほんと…。

 

 

「まほ……え?」

 

「魔女って…魔女、だよね…?」

 

「分かりませんわ…貴女方が何を言っているのか…」

 

 

ほれ見ろお前…。先輩らも私の後ろからやんややんや言っとるわお前。

この後に及んで揺さぶりかよ。いい根性してんなお前ら。マジ今度こそ殴り飛ばすか?え?

 

 

「…ま、分かるわよ。これが魔法少女最大の真実だからっても、信じられない子の方が多いもの。………私も、その一人だったわ」

 

「て、ていうか、あの…羽根になった子は、ほぼほぼそうっていうか…」

 

「そんな…」

 

 

いや、そんなじゃねえだろうが先輩よ。

え、なに?信じるわけ、ローブ共の言ってること。いやいやいや、ちょっと待てよ。

そりゃ、ソウルジェムのことは本当だったけど、だからっつってお前…!

 

 

「はっ……!」

 

「?マジ子さん…?」

 

「はいウソ────!!!!」

 

「うわビックリしたぁ!!」

 

 

マジ子のやつが、聞いたこともないような大声を張り上げる。チビのやつもビビったらしい。私もビクってなった。

シーまで反応してるじゃねえかよ。

 

 

「そんなの…そんなん、ウソに決まってんじゃん!だっておかしいもん、そんな…!魔法少女があんなさ…カイブツになるなんて!!ねえ!?」

 

「あ、あの、ちょ…マジ子さん」

 

「あ!マジわかった!アレっしょ?アタシらがテキだからって、あの……アレ!ホンロー?とかさ!ジョーホーのサクソー?とかで…!ピヨらせようとしてさ…!!」

 

「えと…落ち、着こ?マジ子ちゃ…」

 

「だからぁ!!ぜーっっったいウソ!!ね!?」

 

 

後ろ振り返ってマジ子のツラを見てやれば、まあ酷いもんだった。泣いてるみてえな、笑ってるみてえな、ない混ぜの顔。

 

息継ぎも碌にしないで思いっきり叫んだもんだから、肩で息してる。そのまま眺めてりゃ、目に涙まで浮かんできやがった。

 

…血ィ浴びたり散々だってのに。次はこれだもんな。そもそも帰りたがってたし。

 

 

(泣きてえのは、私も同じか…!)

 

 

マジ子程じゃねーけど、マジでもうワケ分かんなくて叫びだしてえ気分なんだよ。

なんだそりゃ、ふざけんな、嘘つくな、殴るぞ!って。

ただマジ子が先に限界ブッチしちまったから、一時的に抑えられてただけ…。

 

 

「まぁ、そーかもな。マジ子のやつの言う通り…全部口から出任せなんじゃねーの?え?穢れがどうだのって…どうせまたお前らマギウスお得意の、妙な手品でも使ったんだろうが…!」

 

「手品ぁ?手品ねえ…。まぁ、実際そうなんでしょ。かなり高度な手品。ま、私達は知らないけど」

 

「はあ?」

 

「だから!それがウソなんでしょ!?そーやってアタシらのフアンとかアオって…!っ………もぉー!!」

 

「ああもう…マジ子さん…!」

 

 

叫び疲れても、気持ちはまだ治まらないらしい。

涙声で食ってかかるマジ子を、先輩が駆け寄って落ち着かせようとしてる。

 

それを見てると何でか ローブ共に対してイラついてきて、そのまま またヤツらの方に向き直る。

 

 

「で?証拠は!」

 

「証拠?魔女化…魔女になるっていうことの?」

 

「たりめーだろが!それなりに魔法少女やってきてなぁ、聞いたことねーぞ んな話!」

 

「それこそ当たり前よ。人間の形を失って怪物になるんだもの。チームを組んでるか、実際に魔女化を目撃したやつしか知らないでしょ」

 

「それに、多分…言っても、信じない…誰も」

 

「そゆこと」

 

「チッ…!」

 

 

年長さんの台詞と、ムカつくけど…白いのの言葉で納得させられちまう。

ああそうだな。その通りだよ…。でもなあ、それが…今の話が本当だって決定的な証拠はまだねえだろうがよ!

…ああ、クソ!なんでこんな焦ってるみたいになってんだ、私は!

 

そんなわけねえだろ…事実かもしれねえなんて思っちゃいない。

ウソですなんて言って貰って、一刻も早く安心したいなんて、そんな…!

 

そんなこと、私が思うわけねえだろ!!

 

 

「そもそもね、魔女はどこから来たのよ。あんな漫画かアニメの中でしか見ないような化物、どこからか生えてきたりするわけないでしょ?」

 

「それともなにー?地底人だとか、もしくは宇宙人だとか言ってみるー?だとしたらヤベーね。侵略者との、地球を賭けた戦争だよ戦争」

 

「ッ………」

 

 

何か言ってやろうとした。とにかく何か反論しようと思ったのに、先にローブ共にあれこれ言われちまって、言葉なんて出なくなる。

 

目の前の敵に怒りはあっても、それを形にして突っ返せなきゃ、言い負かされたのと変わらねえじゃん…!

 

 

「まぁ私らも?この話だけは完全に信じさせんのは無理だろう〜ってことで落ち着いたわよ。そう出来るだけの手段も、今日は使えないらしいしね」

 

「だからその。呼ぶことにしたんすよね」

 

「呼ぶだぁ…!?」

 

「助っ人…特別講師ってやつ。感謝しなさいよ〜?その為にわざわざ、神浜の外に近い場所選んでやったんだから」

 

「あの…神浜市の外で、待ってもらってますので…」

 

 

助っ人…助っ人だと?こいつらが呼べる助っ人で、今の壮大な与太話を完全に信じさせられる説得力を持つ奴なんて…。

 

 

「まさかとは思いますが、マギウスとかって方々ですか?貴女方のトップに立つという…」

 

「バカ言わないで!マギウスはいつでも忙しくしていらっしゃるわ。残念ながらこんな細事に気を割いてる時間なんてないわよ」

 

「そうですか…」

 

 

私も先輩と同じことを考えたけど、ピシャッと否定される。違うのかよ…じゃあ誰なんだ。

今更他の羽根だの魔法少女だの連れてこられたって、説得力があるとは思えねーぞ。

 

…まさか、またウワサでも使うんじゃねえだろうな。洗脳かなんかして、無理矢理信じさせるみたいな…!

 

 

「ま、なんにせよね。私達の出る幕は終わり。帰るわよ、アンタ達!」

 

「へ〜い」

 

「あ、ようやくすか?いやー話すこと無くて退屈だったっすよもー」

 

「!?」

 

 

けど、洗脳だのって危惧する私の内心とは逆に、ローブ共がやったことは帰り支度。こっちに背中を向けて、どっかに行こうとしやがる。

 

 

「あ…!?おい待てよ、コラァ!」

 

「あ〜?なーによもう。講義は終わりよ終わり!いや終わりっていうか、引き継ぎ?」

 

「んなこた どうでもいいんだっつーの!逃げんじゃねえよ!!」

 

「人聞き悪いわねー!なに?まだ戦りたいとか?冗談よしてよ、もう決着ついたでしょ」

 

「あぁ!?」

 

「やめといた方がいいわよ。またドッペルの餌食になりたくなければね」

 

 

『命は大事にしなさいよ〜』なんて呑気に抜かして、あいつらはどんどん遠ざかる

 

…かと思ったら、もう一回こっちに振り向いて、思い出したみたいに言った。

 

 

「あ、そーそー!感謝しなさいよー?あんたに引っ付いてるそこのウワサにねー」

 

「ウワサってのはねー!自分にプログラムされた行動しか取らないの!アンタにベタベタすんのも助けるのも、そのプログラムのお陰なんだからねー!」

 

「っ!?」

 

「まっ!こっちには手出しできないようにもされてるみたいだから?戦力としては期待しないことねー!!以上、アンタが聞きたがってたウワサのことよ!さよーならー!」

 

 

言うだけ言って、今度こそローブ共は去っていった。

私はといえば その後すぐにシーの方に向いて、じっと見つめてる。反射的な行動だった。

 

 

「〜〜?」

 

 

確かに、こいつについて詳しい話を聞かせろとは言ったし、私もそれを目的にはしてたけど…。

でも待ってくれよ。脳みそも精神も、パンクしそうなんだって。

 

少しの間 シーと見つめ合う形になっちまったけど、結局最後には私の方から目を逸らした。なにをどうすりゃいいんだか、もう分からなくて。

 

後に残ったのは、誰も喋らないことで生まれる静けさと、すっかり日が暮れて暗くなった景色だけ。

 

 

「………その、どうします?」

 

「…なにが」

 

「や、その…講師の方、待たせてるって…」

 

「は?そんなもん…」

 

 

神浜の外で待ってるとか言ってたけど…正直知ったこっちゃねーよ。あいつらが呼んだってんなら、どうせ私達にとっちゃ敵だろ?

 

今一番ブン殴りたくて仕方ねえ白ローブ達が帰っちまった以上、私もここに居る理由なんて…

 

 

「……っあー、もうっ!!」

 

「え…チビ、ちゃん?」

 

「いい加減頭に来ますよ!こっち散々ブン回して疲れさせて、挙句の果てには外にゲスト来てるから続きはそっちでって!?ざっっっけんじゃねーですよ!グロ見てゲロまで吐いてんですよこっちは!!」

 

「…………」

 

「やーもうやだ!ホントあの人ら…!!もうこうなったらね、抗議してやりますよ抗議!その特別講師とやらにです!!」

 

「あ、ちょ!?おチビさん…!んもー!」

 

 

チビのやつもとうとうブチギレて、何処かにズンズン歩いていく。先輩はそれを追いかけていって、少し遅れてから年長さんとマジ子も続いた。

まだ凹んでるらしいマジ子に、年長さんが寄り添いながら。

 

私も結局は先輩らの後を追いかけて、神浜の外に出てみることにした。

ローブ共の口ぶりからして この場所から少し歩けばすぐらしいし、あのアホ共が呼びつけた講師とやらの顔も見てやろうと思ったから。

 

憂さ晴らしついでに一発ブン殴ることも、当然視野に入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーもう、おチビさん…!いい加減待って下さいったら!」

 

「ここ…なのかな?少し、歩いたよね…」

 

「知んない…」

 

 

さっきの廃工場…まあ、もう吹っ飛んじまったみてーだけど。

とにかく、さっきの場所から多少歩いて、見慣れないところまで来た。

 

もうビル群なんて背後にしかなくて、目立つものなんて街灯か道路くらい。

 

ホントに居るのかね。こんな場所にわざわざ来て、待ってるような物好きが。

 

 

「おや?君達は…」

 

「っ!誰です!?」

 

 

訝しんで辺りを見回してるところに何処からか響いた、誰かの声。ここに居る全員…いや、シーは別にして。

 

とにかく、皆が声の主を探した。

 

 

「この辺りで待っているよう言われたからそうしていたんだけれど、僕の待ち人は、どうやら君達だったようだね」

 

 

また聴こえた。今度はハッキリと、声のした方向まで分かる。なんか聞き覚えのある声だった。

 

その方向に体ごと向いて、姿を探す。

 

点々と灯る光の下…もっと言うなら、街灯の光と、光が当たらない影との境界に居座るようにして、そいつは居た。

 

 

「やあ、みんな。久しぶりだね」

 

 

小さくて、真っ白な身体。何考えてるか分からない表情。 耳から伸びた長いなにかと、その何かを囲って浮かぶリング状の物体。

 

なるほど、聞き覚えがあるわけだよ。私も、先輩らも…それどころか、魔法少女なら誰でも聞いた声だろうな。

 

魔法少女を生み出す者。 契約により、肉と魂を分つ者。

 

そのキュゥべえってやつは、いつか最後に見た時と変わらない姿でそこに居た。夜の闇でもハッキリ分かる赤い目を、いやに不気味に光らせながら…。

 

 

 

まあ、次の瞬間にはチビに首絞められながら宙吊りになってたんだけどね。

 

 

 

 





マギレコ本編の出来事

解散宣言に戸惑ういろはを他所に、やちよは現れた記憶キュレーターと戦う。拒絶の言葉と態度を崩さないやちよに、いろはは苛立ちを募らせる。
尚も食い下がるいろはに自身の胸中を打ち明け、己から離れるよう懇願するやちよだったが、いろはの頑固さはそれをよしとせず、ついにはやちよの考えを変えようと、単独でウワサを撃破する。

それでも「リーダーとしての自分が"他者を犠牲にして生存する魔法"を持っているのは危険だ」と考えるやちよに対し、いろは は 「これからは自分がリーダーになる」と宣言する。

どこまでも真っ直ぐないろはの想いに根負けしたやちよは、涙ながらに笑みを浮かべ、いろはの名を呼んだ。
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