避けられない。そう悟って腹を括った。直後に私を、とてつもない衝撃が襲う……はずだったんだけど。
「…………あ?」
柔い。すごい柔い。むにゅーんって音がするくらいソフトな感触。なにこれ。困惑しながら、こんな素敵な耳をお持ちな方のほうを見ると、顔がバックリと割れていた。なにあれ。何か見えてるけど、まさか中身なのか?
「赤さん!」
「先輩」
後ろから呼びかけられて振り返る。こっちに駆けつけて来た先輩を見て、そういえばと思い出す。どうして魔女の耳があんなに柔らかかったのか、納得がいった。固有魔法だ。
先輩の固有魔法は「軟化」。名前の通り、対象を柔らかくする。攻撃には向かないけど、こういう時には便利だ。先輩が、魔女にその魔法を使ったんだな。
「はぁ…。何とか間に合いましたわ…」
「正直ダメかと思った。…ありがと」
「いえ、それはいいんですけど」
「あ?」
「いえ、ですから、そろそろ軟化が」
言われてすぐに立ち上がって、体に触れっぱなしの耳に、力いっぱいの蹴りをくれてやった。痛がった魔女が怯んで、隙が出来た。
「今か!?」
「あ、ちょっと赤さん!連携は!」
チャンスと思って、魔女の懐に飛び込む。今なら当たる。そう確信して、パイルに思いっ切り魔力を込める。もらったぞ!
「!」
そう思ってブチ込んだ渾身の一撃だったけど、魔女のやつは嘘みたいな反応速度を見せて、両腕を交差させて防いだ。流石に腕にはダメージが入ったようだけど、それじゃ意味がない。
「マジでか…。って!やば…!」
防がれるなんて思ってなくて、少しショックを受ける。だから、敵の目の前で一瞬でも隙を作っちまった。それを見逃す魔女様じゃない。駄々っ子みたいに、両腕をブンブン叩き付けてくる。
「痛いたいたいたい!いった…ちょ、いった…ぐっほ…!!」
かと思いきや、お次は見事なボディブロー。頭を守っていて、ボディがガラ空きなのがいけなかった。完全に体勢が崩れた私に、魔女は締めのアッパーを放った。
「ぶっ…!!」
良いのを貰っちまった。成す術無しでぶっ飛んで、地面に叩きつけられる。くっそ、思っくそしくじった…!
「赤さん!大丈…げぇっへっ!」
先輩が私のところに来ようとするのを、手伝ってあげるとばかりに魔女が繰り出した、見事なヘッドバット。横っ腹に思いっきり食らって、私の傍にすっ飛んできた先輩。女の子が出しちゃいけない声だったぞ、今の…。
「う……ぐっ…」
「あっ…か、さん…」
んなことよりも、ヤバい。これは本当に。魔女を倒すどころか、こっちが殺される…!情けないし悔しいけど、今度はこっちが逃げるしか…。
でも奴はそんなこと許してくれないらしい。両耳を大きくのばして、私達を滅多撃ちにする。
「っ……!!づっ…ぁ…!」
「…っ……ぅ…!っ……」
絶え間なく痛みが襲って来る。魔女の耳が激しく打ち付ける中で、言葉にもならない呻き声しか上げられなくなった私達は、ただそれを受け入れるしかなかった。
どれくらい時間が経ったんだろう。気付けば、魔女の攻撃は止んでた。私も先輩も、幸い生きてはいるみたいだ。でも意識は朦朧としてるし、身体も倒れたまま全然動いてくれない。それでも何とか頭を持ち上げて、魔女を探す。
見つけた。魔女は私達っていう外敵をボッコボコにして一安心らしい。さっきまでのパニクった様子は何処へやら、悠々と逃走に入ろうとしているところだった。
それを見て、「あぁ、また上手くいかなかった」なんて感想が浮かんでくる。何でなんだ…。相手が反撃してくるのは想定してたし、慢心だって…まぁ、少しはしてたかもしんないけど。
(そういや、一人で突っ走っちゃったんだよなぁ……)
耳を蹴って、魔女の懐に突っ込んだ時だ。あれがそもそも間違ってたんだよな…。先輩が連携するって言ったのに聞かないで、倒せると思っていきがって、突っ走って…。何やってんだ私は。ちゃんと先輩の言うこと聞いてりゃあ…。
…いや、そうしたってダメだったと思う。結局、最後には崩れてたと思う。今までほとんどそうだったんだから、そう考えずにはいられない。それはやっぱり、私と先輩が、お互いを信じ切れてないから。
上辺だけ。何となく仲良くしてるつもり。一緒の家に住んでて、一緒にご飯も食べて。会話はするし、買い物にも二人で行く。でもこいつが何なのか知らないし、私のことは知って貰わなくていい。そんな、形だけのコンビだから……。
そんなやつらが一緒に戦ったって、長いこと続くわけなかったのかなぁ。そう思いながら、持ち上げた頭を下ろして、目を閉じた。
マギレコ本編の出来事
・いろはがかえでから話を聞き、結界を追跡。誘い込まれて、逆に結界に捕らわれた。