TSから始まる世界征服魔王道   作:カンさん

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第五話

 封印のベルフェラーム。

 六大名家の一つで、他の名家共々ルシファブルム家を支えてきた一族。

 ベルフェラームに継承された魔法は『封印』。条件を整えれば神ですら封印できる魔族らしからぬ力。

 ベルフェラームの封印は魔王ですら解く事はできず、また術者を殺せば永遠に解除できない。

 つまり、ベルフェラームを暗殺しようとすれば、その部屋に永遠に封印される可能性がある訳であり――。

 

「という訳で僕を殺したら孤独死するまで此処に居る事になるのでご注意ください」

「だからってS◯Xしないと出られない部屋にする事ないでしょ!?」

 

 目の前の眼鏡イケメンにより、私はこの部屋に閉じ込められてしまった。

 あ、でもセック◯すれば出られるんだって。簡単だね。んな訳あるかボケ、ふざけんな。

 

「まぁ、安心してください。そちらの条件は適当に決めたので」

「安心できる要素が一つも無い……」

「僕、ロリよりも巨乳の方が好きなので……つまり貴女は守備範囲外です」

「一発殴らせろ」

「被虐主義も無いので遠慮します」

 

 くっ……どうせクソ雑魚ナメクジな私では到底敵わないから諦めるしかないが、腹立つな。

 

「さて」

 

 陰険眼鏡イケメン事プラタナスは、部屋にある椅子に座り、テーブル越しにあるもう一つの椅子に手を差し出し私に座る様に促す。

 そして、この部屋に封印の魔法を施した時と同じ台詞を私に投げかける。

 

「詳しく、じっくりと聞かせて貰いますよ――アナタの口から、真実を、事実を、全てを」

「……」

 

 

 逃げ道を封じられた私にできる事なんてあるはずもなく、抵抗を諦めて陰険眼鏡の前に座った。

 その様子にプラタナスは満足気に頷く。眼鏡かち割りたてぇ。

 

「さて、手始めに最初の質問を。貴女は現在戦う力を持っていない。それは事実ですか?」

「……お察しの通り、私には戦う力は無い。魔力は普通の魔族よりも多いみたいだけど、それ以外はからっきし。荒野に出たら体調を崩す程度には軟弱」

「ふむ……まさかそこまでとは」

 

 私の言葉を聞いて何やらブツブツと喋り出すプラタナス。見ていて怖いな。いや、白衣キャラには割とありふれた光景だけど。漫画とかアニメ、ドラマで出てくるキャラみたいに。

 あっ! というか今思い出したけど、コイツ私が目覚めた時に診てくれた医者じゃん! 何処かで見た事あると思ったら……。

 そんな新事実に気付くも、その事を伝える暇も無くプラタナスからの質問は続いた。

 

「貴女は今何歳ですか?」

「20……いや1歳?」

「それは貴女が目覚めてからの年数ですねぇ。好きな食べ物は?」

「ルアナさんが作ってくれたご飯とお菓子」

「現状それしか口にしていないからそうでしょうね。身長と体重は?」

「身長は確か145cm。体重は……ヒ・ミ・ツ」

「……」

「……」

「解析魔法で◯◯キロですか。もう少し食べてください」

「おいその魔法卑怯だろ、おい」

「趣味は何ですか」

「ルアナさんが持ってくる小説を読む事しかないな……」

「ふむ。思っていたよりも自堕落な生活をしていた様ですね。そりゃ荒野に出て吐く訳ですよ」

「う、うるへー」

 

 こんな感じで、まるでインタビューみたいなやり取りをした。……こんな事答えて一体何になるというんだ。

 その後もダラダラと受け答えし、私が飽きてきた頃にプラタナスの尋問は終わった。

 

「はい、お疲れ様です」

「やっと終わった……」

「これまでの質問と答え、そして今の貴女を見た結果ですが――とてもベルゼリディス卿を討ち倒したとは思えない」

「……」

 

 ダラっとしている私に投げ掛けられた言葉は、私自身が思っていた事。しかし周りの魔族達は疑いこそしたが最終的には私が討った事に納得した。だからこうしてキッパリと否定されるのは新鮮だった。

 

「しかし、ベルゼリディス卿の遺体を解析した所、貴女の魔力残滓が残っていたのは事実。それも、死因と思われる首の切断面から」

「何それ初耳」

「ええ、今初めて言いましたから。そして、ペアルキア様、アストラ殿、ルアナ殿の証言から他の者……つまり第三者が偽装した可能性は低い。証言者の中に嘘の証言をしている者が居なければ」

 

 まぁ、普通に考えてそうなるよね。

 

「そして、貴女の証言から察するにアストラ殿、ルアナ殿が貴女を祭り上げるために嘘の証言をしている可能性は十分に高い」

「ですよねー」

「かと言って尋問しても彼らは口を漏らさないでしょう。それどころか証拠隠滅の為に殺されそうですねぇ。僕も貴女も」

 

 そう言ってハハハと笑い声を上げるプラタナスは、暫くすると落ち着き……。

 

「何で貴女そんな面倒臭い事になっているんですか? これ下手に突いたら駄目な案件じゃ無いですか」

 

 そう言って冷や汗を垂らして顔を青くさせ、頭を抱えて机に伏せた。っておい! 

 

「お前、全て分かっていて私を尋問しているんじゃ無かったのか!?」

「いえ、全く。ちょっと疑問に思ったので調べてみようかなーと思ったら、思っていた以上の厄ネタでちょっとドン引きしています。……これ、聞かなかった事にしたらダメですかね……」

「逃さんぞ。此処まで来たらお前も一緒にこの苦しみを共有して貰う!」

 

 そもそも、こうして私に接触して、さらに部屋に閉じ込めている時点でアウトだと思う。今までのアストラやルアナさんの行動的に敵認定されるのでは? 

 

「はっはっは――え? 僕死んじゃう?」

「おう、地獄に一緒に堕ちろ」

「遠慮したいですねぇ」

 

 ため息を吐いて、そもそもとプラタナスは続ける。

 

「何故彼らは貴女に武功を上げさせたいのですかねぇ。その計画とやらも全貌が見えませんし、関わっているのが果たしてその二人だけのみなのか」

「そしてアストラさん的には、私はそれができて当然だと思っている。できなかったら殺すと思っている」

「ふむ。貴女……このままだとアストラ殿に殺されるか、魔王様に処分されるかの二択ですね」

 

 グッサリと私に現実という名のナイフを突き刺すプラタナス。

 こう、何というか、手心という物は無いのですか……? 

 

「そんな事してたら僕も貴女も死にますからね。はぁ、何故こんな事に」

「それは私の台詞だと思うんですけど」

「いや、そもそもその計画とやらも記憶を失う前の貴女が立てた物でしょう? 話を聞く限り。だったら貴女は被害者じゃ無くて主犯格ですよ主犯格。まぁ記憶喪失を演じようとして本当に記憶喪失になっている間抜けですが」

「ぐぬぬ」

 

 全く私の知らない所で責められるのは納得できないな。しかし普通に考えれば目の前の男の言う通りなので何も言い返せない。しかし悪いのは私ではない、前の私だ。だから私は無罪。証明完了。

 

「証明できていないですよはい有罪――仕方ありません」

「お?」

「何ですかその期待してる顔は腹立ちますね。……お察しの通り、これからは貴女に協力しますよ」

 

 凄く嫌そうな顔でプラタナスはそう言った。

 お、おおおお! 正直もう流されるままで良いと思っていたけど、ここに来て仲間獲得か! もしくは道連れとも言う。

 

「僕は何も知らないまま貴女に心酔し、あくまで貴女に従う。そしてアストラ殿達の計画を知らない。そういう設定で行きますか」

「おー……! そして私はニート生活に戻って……」

「そうすると直ぐにアストラ殿に殺されますよ。あぁ、僕の好奇心がこの様な事態を招くとは」

 

 なんだかさっきからこの男、私に対してかなり失礼なのでは? 

 我、魔王の娘ぞ? 君、魔王の部下ぞ? 

 

「申し訳ありませんが今の魔王に興味は無いので。それにこれからはその魔王様、そして反乱軍からの暗殺その他諸々の対処しないといけませんし」

「そうだった……」

 

 プラタナス曰く、パッパ達普通に私の命狙っているみたいだし。

 ……ん? ちょっと待って。反乱軍が私を狙ってのは何で? もしかしてあのロリコンジジイ倒したから? 

 

「そうですね。能力的には一、二を争うくらい強いですから。ですので僕も興味を持ち、魔王は危機感を抱き、アストラ殿は喜んだ」

 

 あのロリコンジジイ起爆スイッチか何かだったのか? アイツのせいで一気に不幸になった気がする。おのれ、ベルゼリディス。

 

「とりあえずこれからも貴女のその愉快な奇跡は起きると限らないので、対策魔道具を作ります。幸い無駄に魔力ありますし」

「無駄とか言うな」

「貴女が死ねば僕の首も飛びます──これからよろしくお願いしますね」

 

 そう言ってプラタナスは手を差し出した。

 話していてムカつく奴だなーと思ったけど、コイツ顔は良いんだよな。だから、という訳でもないし、追い詰められて崖っぷちてのもあるけど、私は割と迷う事なくその手を取った。

 

「こちらこそ。頼りにしてるぞプラタナス」

 

 こうして私は仲間を一人手に入れる事に成功した。

 暗い未来に一筋だけ、光が見えた気がした。私、魔族なのにね。

 

 

 ◆

 

 

 プラタナスの魔法は条件が揃えば神すら破れない封印を施す事ができる。

 しかし、それと同時にその条件を突破すれば封印は容易く破る事ができる。

 例えばさっきプラタナスが言っていた様におセッセすれば出られると言っていたが、もし本当にそれが封印を解く条件ならば、にゃんにゃんすれば解除可能だ。

 

 そして、この部屋を封印した時に、プラタナスは自分の疑問が解消されれば封印が解ける様にしていた。

 つまり、全てを知って晴れて私の道連れ仲間となったコイツに当初抱いていた疑問は無くなっており、当然封印魔法は効力を失っている訳で――。

 

「――ロゼリア様!」

 

 バンッと強い力で扉を開いて部屋に駆け込んできたアストラとルアナさん。彼らは直ぐに私とプラタナスの間に入り……。

 

「ベルフェラーム卿。覚悟は良いな」

「わざわざ封印の魔法を使ってまで外界と隔離――命が要らないようですね」

 

 そしてそれぞれ長刀と魔力球を突き付けて、今にも殺そうとしている。

 待て待て待て待て。

 初っ端から殺意フルスロットルで出てくるんじゃあない。ほら、プラタナスさん余裕の表情浮かべてるけど冷や汗ダラダラやぞ。膝も笑ってらぁ。

 

「ソイツは私に心酔しているらしい。私達の計画に加わるとの事だ」

「信じられないな」

「ならば魔法を使う必要もありません」

 

 しかし二人は聞く耳持たない。おっとこれは不味いぞ。このままではプラタナスがプラとタナスに別れてしまう。アストラの長刀で。

 

 あっ、視線で救難信号送ってきた。オッケーブラザー。地獄の底まで相乗りすると決めたんだ助けてやるよ。

 

「お、落ち着いて二人とも。何もされてないから」

「しかしロゼリア様。このお方は六大名家の一角。つまり現魔王派閥の魔族です。とても信用なりません」

「それとも何か? コイツを信用に値する何かがあるのか?」

 

 いや、その理由は大体君達のせいなんだけど。過激過ぎて敵を殺す所とか。そんなん知ったから私の仲間になったんですけど……。

 しかし、それを素直に伝えても仕方がない。むしろ私も殺される。芋蔓式に殺されるし、コイツも死ぬ。

 つまり一蓮托生って訳だ。そんな相棒に等しいプラタナスを救うには……そうだ。

 

「お前達には言っていなかった事がある」

「ほう。聞かせてもらおうか」

「実はプラタナスは――ロリコンなんだ」

『――』

 

 ピシリッと時が止まった錯覚を覚える。ベルゼリディスの時の魔法を使っている訳でもないのに。

 アストラもルアナさんも、そしてプラタナスも絶句して此方を見ている。そしていち早く復活したアストラが反論する。

 

「そ、それならむしろ余計に信用ならんだろう!?」

「尤もな意見だ。しかしなアストラ。こいつは……良いロリコンだ」

「は?」

「私には分かる。何せ悪いロリコン、ベルゼリディスを知っているからな」

 

 いやだってアイツ本当にヤバいからね。夢にも出てくるレベルでヤバいからね。六大名家とか言われているけどただのロリコン変態ジジイだからね。

 

「良いロリコン。悪いロリコン。そんなの人の勝手。本当に良いロリコンなら弱いロリコンでも勝てる様にするべき……という訳だ」

「いや意味が分からんぞ!?」

 

 混乱しているのか普段の不遜な態度からは想像出来ない程にアストラは狼狽していた。ルアナさんなんて一言も喋れないレベルだ。

 私はその隙に脊髄反射でそれっぽい言葉を並べ立てた。

 

「前々から私の事が気になっていたらしくてな、今回こっそり私のもとに来た訳だ。ロリコンだから私と話したかった。ロリコンだから私とそういう関係になりたかった。ロリコンだから魔王よりも私達側に着いた。求婚は断ったが、魔王達の私への態度にはいい加減腹に据えかねていたらしくてな。だから丁度良いと、今回こちらの陣営に引き入れさせて貰ったそういう訳だからソイツを殺すな納得しろ良いな!?」

 

 後半は捲し立てる様に言っていて、自分でも何を言っているのか分からなかった。しかし効果はあったのか、アストラもルアナさんも先程までの殺気は霧散した。

 しかし、何処となく二人のプラタナスを見る目は厳しい。

 

「……これが、ベルフェラームの当主か。嘆かわしい」

「な!?」

 

 元々奇人みたいなプラタナスだけど、アストラのその言葉、表情、そして視線には心外だったのか、ショックを受けたかの様に苦悶の声を上げた。

 さらに。

 

「……気持ち悪い。300超えている癖に」

「――」

 

 うん……女性からのそういう言葉って辛いよね。その辺は人も魔族も違うんだ。

 真っ白になっているプラタナスにコッソリと手を合わせて謝っておく。ごめんね。

 

「事情は分かった。だが、今後は二人っきりにするつもりは無い。頼んだぞルアナ」

「ええ、承りました。封印の魔法が有用なのは良く知っていますので。ええ、それはもう」

 

 能力的にも認められているっぽいから、殺される事は無さそうだ。

 ただ、もっと大事な物を殺してしまった気がする。

 

 その後も幾つかの尋問が続くも、プラタナスはアストラ達に迎え入れられて、そのまま二人に連れられて部屋を出て行った。あそこまで擁護したから大丈夫だと思うけど……不安だ。

 

(あなた悪魔ですか?)

(悪魔じゃないけど魔族ですね、はい)

 

 部屋を出る時のプラタナスのこちらを見る視線が痛かったな……。メチャクチャこちらを非難する目で見ていた。ごめんて。いつか正式に謝るから。

 アイコンタクトで話し、それを目敏く発見したアストラがプラタナスのケツを蹴って外に出たら。

 うむ……よし!

 これでアストラ達は大丈夫だな! プラタナスも! 多分、おそらく、メイビー。

 

「直近の問題は……」

 

 私は、先ほどプラタナスに言われた事を思い出す。それは。

 

『それと、ペアルキア様は暗殺されて、敵が成り代わっていますよ』

『え?』

『それも六大名家の一角、催眠のアスモロセウスに」

 

 今この魔王城に潜伏しているヤバい奴を警戒しないとな……。

 

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