「...さい!起きてください!そんなところで寝たら風邪をひいてしまいますよ」
微睡みから愛しい人の声によって現実に引き戻される。
どうやら夜食後にそのままうたた寝をしてしまったらしい。
「おはよう、甘雨。この後はまだ残業?」
起き上がった僕の隣に座り込んできた甘雨にそう問いかける。
「そうなんです。海灯祭関連の報告書が山ほど...」
申し訳なさそうな顔をしたあと、恥ずかしそうな顔で可愛いお願いをしてきた
「ですから...その...軽食を作っていただきたいのです」
こう見えても彼女は食いしん坊なのだ。僕は大好きな彼女のために笑顔でこう答える
「了解、とっておきの清心料理を作っておくから日付が変わる前には帰ってきてね」
甘雨は少し驚いた顔をしたあと笑顔で残業に向かっていった。
「残業に行く顔じゃなかったな...」
僕のつぶやきは璃月の喧騒に吸い込まれ、いつしか一抹の寂しさが心に残るのだった。
「ただいま戻りました!」
日付が変わる少し前、満面の笑みの甘雨が帰ってきた。
「可愛い。...じゃなくておかえり、甘雨」
寂しかったからかつい本音が漏れてしまった。冬の寒さ以外の要因もありそうなほど顔を真っ赤にした甘雨がこう答えた
「いきなり言われて照れちゃいました。なんか恥ずかしいですね。ありがとうございます。」
照れながらいそいそと家に入る甘雨を迎え入れながら彼女の話に耳を傾ける。
「今日、刻晴さんに「甘雨、最近日付が変わる前には必ず帰るけど男でもできたのかしら?」と聞かれたんです。それを聞いた凝光様が「ただでさえ蛍からも熱心に召集がかかるのにそんなことある?」と言っていたのですがどう答えるのが良かったのでしょう...」
それを聞きながら僕は甘雨のために作った清心のサラダを食卓に置いてこう答えた
「とりあえず食べてみてよ!香菱にこの前教わった絶雲の唐辛子とスイートフラワーのドレッシングをかけてみたんだ」
言うが早いかあっという間に平らげてしまった甘雨に僕は唖然としながらこれは作りすぎない方がいいと密かに決めるのだった。
「清心は生に限ると思っていたんですが、なかなかどうして素晴らしいものですね!あなたが作ってくれたというのもあると思いますが...もう無くなってしまいました。」
少しもの寂しそうな顔をする甘雨に対してこう呟いた
「蛍さんが甘雨のために不思議な壺で清心を育てているんだろ?蛍さんさえ良ければまた作ってあげるさ」
さっきとは表情を一転させ
「今度は蛍さんにも食べさせてあげたいです」
とニコニコしながら言うのだった。
「で、刻晴様と凝光様が何か言ってたんだろ?」
清心のサラダで遮ってしまった会話の流れを再開させる。
「私に男ができたんじゃないかって言う話です...まぁ...その...大きい声で肯定も出来なくて...」
照れながらそう言う甘雨に愛おしさを感じ頭を撫でながら答える
「まぁ、その辺は甘雨に任せるよ。どの道蛍さんには言ってあるんだしそのうち知られると思うけど」
「確かにそうですね...今度時間が出来た時に言ってみますね」
僕もまた忙しくなるなと思いつつ、甘雨と共に布団に潜り込んだ。
「そういえば稲妻に行くそうじゃないか」
布団の中でのふとした僕の呟きに眠そうな声で甘雨が答える
「蛍さんのお兄様の手がかりを探すのが目的らしいです。まさか南十字船団と稲妻人が共に行動しているなんて...凝光様が嘆くのも少しわかる気がします」
「稲妻はあまりいい噂も聞かないし、いざと言うときは蛍さんのわーぷ?ですぐ戻ってくるんだぞ」
照れからか身を捩らせた甘雨に対し、僕はさらにこう続ける
「でも美味しそうなレシピがあったら教えてね、甘雨用にアレンジしてあげるから」
今すぐにでも飛び出しそうなくらい目を輝かせた甘雨に苦笑いしながら、いつも通りの璃月の夜が更けていくのだった。
続く...かも?