甘雨とほのぼのするだけ   作:ゆき。。

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まだ小正月ということで...(バイトが忙しかったんです)


甘雨と正月を楽しむだけ

 

 

 

大晦日の夜。布団に入った僕達は、遠くの方で鳴り響く鐘の音を聞きながら、こう呟く。

「あけましておめでとう、甘雨。今年も僕と一緒に1年をすごして欲しい。」

「あけましておめでとうございます。今年もあなたと共に過ごせますように。」

 

甘雨との新しい一年が幕を開ける。

 

 

朝。

「んー、よく寝た。初日の出とか関係なくすっかり太陽が昇っちゃってる...」

外の明るさによって目が覚めた僕は隣で寝息を立てている甘雨のことを眺める。

冬にもかかわらず朝からしきりに鳴いている鳥の声が早く起きろと急かしているかのようだ。

「うーーん、可愛い寝顔。寒いしもう少しだけ横になろうかなぁ」

誰に聞こえるわけでもなくそう呟いた僕は温もりの残る布団に再び横になる。

彼女の寝息に耳を傾けながら、外の雪がどれくらい積もって居るかと思考を飛ばす──

 

 

 

「ふぁ...朝、どころかもう昼ですね...少し寝すぎてしまいました...」

目を覚まし起き上がった甘雨は隣で寝息を立てる彼の方を見つめる。

「ふふ、今日はどうやら私の方が早起きのようですね。うーーん、でもやっぱり布団が暖かすぎるのでもう少しだけ寝ましょうか...」

そう呟くと彼女は布団に入り、彼に抱きつき再び眠りにつくのだった。

 

 

「んー、寝てしまってた...うわ、もう昼過ぎっぽいな...」

どうやらあれこれ考えているうちに二度寝をしてしまっていたらしい。横を見ると甘雨が僕の腕に抱きつきながら寝ている。可愛い。

「おーい、そろそろ起きて、甘雨。もう昼すぎてるよ多分」

すやすやと寝息を立てる彼女の方を揺する。

「んー...起きてます....」

「いやいや、寝てるじゃん」

「起きてます.....」

そんな意味の無い攻防を繰り返し、漸く彼女を起こすことに成功する。

「甘雨、忘れてるかもしれないけどお正月だよ?」

そう聞くや否や、座ったまま眠ろうとしてた彼女が目を見開く。完全に忘れていたらしい。

「はっ...!し、新年から恥ずかしいところを...えと...暖かいあなたが悪いんです!」

何としても僕のせいにしたいらしい彼女の頭をひとなでし、食事の支度に向かう。

「ご飯作るからちゃんと起きるんだよ?今日は面白いことをしようと思ってるからね」

「もう、子供扱いしないでください...」

彼女が洗面所に向かうのを確認したあと、キッチンへと向かう。

新しい1年の幕開けも、幸せに染っていた。

 

 

「それで、さっき言ってた面白いことってなんですか?」

食事を終えてのんびりしていると、甘雨が話しかけてくる。

「ああ、それを話すにはまず...庭に出ようか」

彼女と共に庭へ出る。真っ白に降り積もった雪で景色は一変している。

「雪だるまをつくろう!」

「雪だるま、ですか?」

訝しげに聞いてくる甘雨の視線を感じつつ製作に取り掛かる。

「ほらほら、甘雨も手伝って」

「起きた時からソワソワしてるなぁと思ったら雪遊びがしたかったんですか?仕方ないですね、手伝ってあげます」

優しげな言葉と共に彼女が僕の近くにしゃがみこむ。

「それで、どうすればいいんですか?」

「大きい雪だるまを作りたいから手頃なサイズの木の棒と目に使えそうな石を探して欲しい」

「分かりました、ふふっ、何だか子供と遊んでるみたいです」

テンションが上がってしまったことに若干の恥じらいを感じつつ、我を忘れるために雪玉政策に取り掛かる。

 

 

「そういえば、雪だるまといえば、少し前に蛍さんとモンドの方たちが作っていましたよ」

棒と石を見つけてきたらしい甘雨が話しかけてくる。

「へー!そうなんだ。じゃあそれに負けないような雪だるまを作らないとな」

「まあ蛍さんたちはドラゴンスパインの豊富な雪で作ってましたけど...」

「それは...勝てなさそうだ、、っと、よし。元の形はこんな感じでいいかな」

「結構大きいサイズになりましたね」

甘雨と同じくらいのサイズの雪だるまだ。

「ちょっと気合が入っちゃって...」

恥ずかしそうに言う僕に彼女が質問してくる。

「棒は横に刺せば良いですか?」

「そうだね、石は目になりそうな位置に置いておいて。僕は家から秘密兵器を持ってくるから。」

そう言うと僕は家の中に入る。

「ダメになりつつある人参と、マフラー編んだ時に余った糸で作った手袋を持って、と」

 

庭に戻ると甘雨がニコニコしながらこっちを見ている。

「どうしたの?そんなにニコニコして」

「見てくださいこの雪だるま。近くに落ちてた葉っぱを眉毛にしたんですけど、すごくあなた似ていると思いませんか?」

「いやいやそんなに...って確かに少し似ているかも。」

少し悔しくなった僕は持ってきた人参と手袋を雪だるまに付ける。

「これで僕には似てないでしょ」

「...ふふ...ふふっ...ふふふ」

口を手で覆いながら不気味に笑っている彼女に質問する。

「なんでそんなに笑ってるんだよ、、似てないよな?」

「その怒ったような表情、そっくりです...ふふっ...」

どうやら彼女のツボに入ってしまったらしい。

「まあ、そこも含めてあなたのことが大好きなんですけど、ね」

「好きって言ったらなんでも許してくれると思ってるな??まあそうなんだけどさ...」

「私この雪だるま気に入っちゃいました。蛍さんの知り合いにお願いして溶けないようにしてもらいます」

「まあ気に入ってくれたならいいけど...」

 

寒さを忘れるほど楽しんだお正月。彼女と過ごす1年はまだ始まったばかりだ。




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