新しい歳を迎えた次の日、1月2日の朝。僕と甘雨はこんな話をしていた。
「甘雨は初夢、見た?いつも通り気持ちよさそうに寝てたけど」
寝起きでまだ眠そうにしている甘雨に質問する。
「そういえば今日、でしたね...えっと...その...初夢、ですか...」
口ごもる彼女にさらに質問を重ねる。
「もしかして、嫌な夢とかだった?」
「いえ、そういう訳では無いんですが...えっと...」
恥ずかしそうな反応をする彼女を見て、核心に気づいてしまう。
「もしかして、僕の作った清心とスイートフラワーの料理に囲まれている夢?」
「な、なんで分かったんですか...!その通りです...」
僕の話に目を見開いて驚く。
「甘雨のことならなんでも分かるさ、食いしん坊だってこともね」
いつも通りのからかいに、いつも通りの反応を返してくれる。
「美味しい料理をいつも作ってくれるあなたがいけないんです...もう...」
「でも毎回残さず食べるどころか、おかわりも求めてくるよね?」
「それは...あなたの料理に私の胃がしっかりと掴まれてしまったからです...もう離れられません」
朝から甘い幸せな時間を堪能する。
「そういえば、あなたはどんな夢を見たんですか?」
一息ついた後、甘雨が質問してくる。
「それはもちろん、言わなくてもわかるよ
逆に質問で返されると思っていなかったのか、彼女が戸惑ったような表情をする。
「えっと.......自分で言うのも恥ずかしいんですが、私の夢、でしょうか...」
「ご名答。今日の夢にもちゃんと僕料理を食べて僕に向けて幸せそうに笑う甘雨が出てきたよ」
「あなたって、私の事本当に好きですよね...むず痒いですけど嬉しいです」
夢以上の笑顔で僕に笑いかけてくる彼女。
「でも、一つだけ言いたいことがあるんだ」
可愛らしい笑顔の彼女にひとつ呟く。
「甘雨の夢、僕出てきてないよね?」
すると、彼女の表情が笑顔から気まずそうな表情に一変する。
「えっと...出てきてない、です...」
「まあ確かに、今までの人生の長さを考えると、僕とすごした時間なんかつい最近のことなんだろうけどさ...」
柄にもなく拗ねた僕に、バツが悪そうな顔の甘雨が僕に向かって抱きついてくる。
「もう、拗ねないでください...ちゃんとあなたのこと大好きですよ。すぐ嫉妬しちゃう所も、美味しい料理作ってくれるところも、あなたが私のことを呼ぶ時の声も、全部全部大好きです。」
耳元で愛の言葉を囁いてくれる彼女のことを強く抱きしめる。
「そうだ、私にいい案があります」
耳元でぽしょっと甘雨が呟く。
「私と一緒に、二度寝しませんか?」
そういうや否や彼女が布団と共に覆いかぶさってくる。
彼女の香りと温かさに包まれながら、あっという間に眠りに落ちていくのだった....
起きた時にはすっかり夕方になってしまっていたが、今度はしっかり僕の夢を見てくれたらしい。
初夢、バイトしてる夢でした。チクショー!!