「そういえば甘雨、今日は何の日か知ってる?」
日付が変わって4月1日。僕は甘雨と寝る前にのんびりとした時間を過ごしていた。
「うーん...日付変わりましたよね...?あ、エイプリルフール、ですか」
少し眠そうな声で甘雨が返事をしてくる。
「そうそう。誰が言い出したか分からないけど嘘をついても良い?みたいな日だよね」
「なんか細かいところでルールとかあったりしますよね、午前中に限定するとか」
彼女が寝転がりながら僕の方を見てくる。
「そこで、今から甘雨に嘘をつこうと思います。」
「...はい?それはどういう...」
「えー...おほん。最近料理開発に手詰まってて、かと言って他の国の料理を食べさせる訳にも...ってことなので文句言わないでね」
「え、はい?えっと...」
彼女が困惑した表情をする。
「さぁ、僕はなんて言いたかったでしょうか。」
「あー、あー...。そういう事ですか。えっと、他国のアイデアを採り入れた新しい料理を開発したので味わってね...ってことですか?」
「おー、ご名答。ってことでもうすぐお披露目出来そうだから期待しててね」
「え、本当ですか...!楽しみにしてます...!」
彼女が嬉しそうな笑顔をうかべる。
「さて、次は甘雨の番だよ」
「う、えっと...急に言われても...」
一瞬考えるような仕草をした後、喋り始める。
「わ、私は、あなたのことが...き、き...きら......ダメです...いくら嘘と言ってもさすがに言えません...」
そんな愛らしいことを言ってきた甘雨に僕は思わず抱きついてしまう。
「ごめんごめん、ほんの遊びのつもりだったんだけど...まあ嬉しいこと言ってくれたし僕的には満足だけど...」
甘雨が僕を抱きしめる手に力が入る。
「もう...いじわるはやめてください...私は嘘偽りなくあなたが大好きなんですから...」
「ごめんごめん...よしよし」
そう言うと僕は彼女の頭を優しく撫でる。
「それにしても、もっと簡単な嘘でも良かったのに」
「咄嗟に言われても困ります...」
「まあそうだね、ごめんね。まぁ...自分に素直な甘雨とっても可愛いなぁって思って思わず抱きしめちゃったけど」
僕がそう言うと彼女が急に黙り込む。
そしてしばらくした後、
「ふふっ...騙されましたね。わざとそうすれば抱きしめてくれるかなって思ったんです。」
そう言うと彼女が少し僕から離れて得意げな顔をしてくる。
「え、え?ほんとに??もしかしてさっきの全部演技だったの!?」
「まぁ...こっちが嘘なんですけどね...あなたに対して嘘の気持ちを言えなかったのは本当ですよ、あなたもまだまだ、ですね」
気づいたら僕の1枚上手を行ってた甘雨に対し、まだまだ勝てないななんてことを思いながら、抱きしめあったままお互いの体温とともに眠りにつくのだった...。
早くこれになりたい