「今夜は流星群が見えるらしいです」
澄み渡った星空が冬の訪れを表すようなある日、甘雨がそんなことを言ってきた。
「へぇ、突然またどうしてそんなことを?」
「蛍さんのお知り合いの占星術師がそんな話をしてたんです」
ここのところ忙しく空を見上げる余裕もなかったなと思い甘雨にこんな提案をする。
「じゃあ、今夜、というか寝る前は一緒に夜空を見上げようか」
「ふふ、大賛成です」
楽しみと言わんばかりの彼女の笑顔はどの季節も可愛いなと思いつつ夜を心待ちにするのだった。
寝る前、風邪をひかないようにとひとつの毛布にくるまりながら2人で夜空を見上げる。
「この星空は甘雨が生まれるずっと前から変わらないのかなって思うと不思議だよね」
「私に年齢の話しないでください...とはいえたしかに不思議ですね」
ぼーっと見上げながら交わす二言三言が静かな夜に響き渡る。
すると突然、
「あ!見えました!」
いつもより高いトーンの甘雨の声が左からする。
「え、嘘、見えなかったんだけど」
「ふふっ、流れ星競走は私の先制ですね」
いつの間にか始まってたらしい競走に出遅れてしまった僕はひとつも見逃すまいと先程よりも目を開きながら空を見上げる。
「お、見えた!ちょっと長かったから1.5ポイントにしていい?」
「ダメですよ、1は1です」
そんなじゃれあいをしながら5分ほどだった後、そういえば、と甘雨が話を始める。
「流れ星が流れてる間にお願いごとを3回心の中で言うとその願いが叶うかもしれないって占星術師の方が言ってましたよ」
「へぇ、面白いね。お願い事かぁ...次チャレンジしてみようかな」
3回、となると短めのお願いが良いのかな、なんて考えているとタイミングよく流れ星が見える。
「いや、間に合わないよ3回は」
「私も間に合いませんでした...そういえばその占星術師の方は金欠らしくて"モラくれモラくれモラくれ"って言っているらしいですよ」
そんな裏話を聴きながらふと思ったことを話す。
「星を見るイベントしたらお金入ると思うんだけどな...凝光様に提案してみたら?」
「む、確かにいいかもしれないです...帝君がこの国を作る前から星空があるって考えるとまた考え方も変わるかもしれないですし」
そんな真面目な話もしつつ、視線は相変わらず上を見ている。
すると、一際長い流れ星が流れる。今しかない!そんなことを思いながら願い事を唱える。
「間に合った!」
「間に合いました!」
2人ほぼ同時にそんなことを言うので顔を合わせて笑ってしまう。
「甘雨は何をお願いしたの?」
「え、それ聞きます...?そういうあなたの方から教えてください」
「そりゃもう、"ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒"ってお願いしたよ」
そういうと、甘雨の方から恥ずかしさを隠すようなくぐもった声が聞こえてくる。
「んぅ...不意打ちは...ズルいです...」
どうやら照れたらしい彼女が少しだけ僕の腕を握ってくる。
「ほら、甘雨はなにをお願いしたのか教えてよ」
「えっと..."一緒にいたい一緒にいたい一緒にいたい"ってお願いしました...」
そんな愛くるしい発言に心臓を鷲掴みにされた僕はどうにかくぐもった声で返事をする。
「な...なるほど、ちょっと甘雨の気持ちがわかったかも...これは恥ずかしいね」
照れ隠しのために彼女の手を握り、熱くなった頬を冷やすように空を見上げる。
「お互いの願いを叶えるために、ずっと一緒に居なくちゃね」
「もちろん、私はどこにも行きませんしあなたの事を離しませんよ?」
余談だが、流れ星競走は2ポイント差で甘雨の勝ちとなり、翌日の夕飯が少しだけ豪華になるのだった。
1ヶ月に1話を最低ノルマとしたい...。
皆様いつもありがとうございます。