落ち葉が増え始めた11月終わり。僕にとって一番大事な日─甘雨の誕生日が迫っていた。
「うーん...今年は何にしようかなぁ...」
あと一週間ほどで誕生日を迎えるというのに、僕は未だにプレゼントに迷っていた。
色々考えながら街を歩いていると、お茶を飲みながら講談に耳を傾けている男性に目が行く。
「あの人は...確か往生堂の...って、プレゼントあれがいいか」
突然閃いたプレゼントの案を忘れないうちに買いに行くことにする。あとは料理も考えないとな...
誕生日前日の夜、布団に入った僕は隣にいる甘雨におもむろに話しかける。
「そういえば甘雨ってアクセサリーとかつけないの?」
「アクセサリーですか...別に私に必要ないかな...と思いまして」
「まぁ確かに甘雨はいつでも可愛いとは思うけど」
「寝る前に恥ずかしいこと言わないでくださいよ...もう」
隣でもぞもぞと動く甘雨に少しだけ近寄る。
「ごめんごめん。おやすみ、甘雨」
「おやすみなさい。また明日、です」
翌朝。
「甘雨、お誕生日おめでとう。今後1年が甘雨にとって幸せでありますように。」
「わ、ありがとうございます...!もうそんな時期でしたか...」
眠そうな目で洗面所に向かおうとする甘雨にお祝いの言葉を贈る。
「はい、プレゼント。出来れば付けて欲しいな、って」
「これは...イヤリングですか?」
「そうそう。普段髪で耳は隠れてるけど、ちらっと見えた時にあったらいいなって...」
「そういうものなのでしょうか...でも嬉しいです、後で着けたところ見せてあげますね」
洗面所に行く甘雨を見送り、朝食を並べ終える。ちょうどそのタイミングで甘雨が洗面所から出てきた。
「どうですか?似合ってますか?」
甘雨の耳元で輝く小さな清心の耳飾りに目を奪われる。
「いい…すごく似合ってるよ」
無意識に彼女の耳を触り、まじまじと見つめる。
「えっと…嬉しいんですけど…くすぐったいです」
そう言いながら僕の胸元で身を捩る甘雨に対し「ごめんごめん」と謝りながら、彼女の頭を軽く撫でる。
「とっても似合ってるよ、ありがとうね着けてくれて」
先ほどの耳元での余韻が抜けないのか、少し潤んだ目で僕のことを見上げて、甘雨がこう返事をしてくる。
「こちらこそ、素敵なプレゼントをありがとうございます。大切にしますね」
「まぁでも、戦いの時に邪魔だったら外してもらっていいからね」
「その時は腰の飾りと一緒につけるので大丈夫ですよ」
どうやら僕のプレゼントは神の目と同等に大切らしい。
「じゃぁ甘雨、いってらっしゃい。夕飯は豪華な物を考えてるから、楽しみにしててね」
朝食を食べ終え、いつものように仕事に行く甘雨を見送る。
「はい、行ってきます。とその前に一つお願いが…」
僕の方へ近寄って、小声で彼女が呟く。
「いってらっしゃいのキス、してほしいです…」
照れながらそう言ってくる彼女の顎を優しく持ち上げ、唇を落とす。
「ふふっ、ありがとうございます。行ってきますね。」
彼女が出ていった後、あまりの可愛さとあっという間だったキスに呆然としたまま、僕はしばらくその場を動けずにいた。
「甘雨、誕生日おめでとう」
「刻晴さん、ありがとうございます」
窓際で仕事中だった甘雨に刻晴が祝いの言葉をかける。
その瞬間、空いていた窓から風が入り込む。
「その耳飾り、とても素敵だと思うわ。どうしたの?」
風でなびいた髪の隙間から、耳飾りがちらちらと見えている。
「これは、ふふ…大切な人からのプレゼントです」
その時の甘雨の笑顔は、今まで見た中で一番可愛かったと、後に刻晴は語るのだった。
耳元にちらっと見えるイヤリング、とてもえっちだと思います。