12月2日、朝、仕事に行く甘雨に誕生日プレゼントを渡し、夜に向けて買い出しに行こうとしていた正午。
「ただいま、です」
出かける準備をしていたら、玄関から甘雨の声が聞こえてきた。
「あれ?早かったね、どうしたの」
「いや、それが…誕生日くらいは大切な人と過ごしたら?って刻晴さんに言われまして…」
「それで帰ってきた、と」
「あの、迷惑とかだったらまた仕事に戻りますけど…」
不安そうに僕の方を見てくる甘雨の頭を軽く撫でて、返事をする。
「いや、一緒に過ごそうか。今から買い物に行こうと思ってたんだけど、一緒にどうかな?」
「はい、もちろん喜んで着いていきます」
今日も彼女の笑顔は眩しかった。
二人で並んで昼間の璃月を歩いていると、隣にいた甘雨がそういえば、と話しかけてくる。
「璃月の街中に結構ワンちゃんいるじゃないですか。名前をつけて呼んでるんですけど、違う名前で呼んでも反応するワンちゃんがいるんです、それがとっても不思議だなって」
「へぇ…犬ってすごいんだなぁ。まぁとりあえず何か呼ばれたから反応している、みたいなこともあるかもしれないけど」
犬と戯れる甘雨を妄想しながら歩いていると、犬が二匹僕たちの方に近寄ってくる。
甘雨はその場に座り込んで、犬と戯れ始める。
「苦雪、今日はお友達を連れてきたのですか?」
直前まで妄想していたシーンが目の前で繰り広げられ、思わず僕はにやついてしまう。
「あれ、あなたもワンちゃんが好きなんですか?可愛いですよね、ワンちゃん…」
犬に癒されて笑っていると勘違いしたのか、あなたも撫でてみては、と彼女が言ってくる。
とはいえ、動物が好きなことに変わりはないので二人で犬をしばらく愛で続けたのだった。
「思ったより時間をとっちゃったな」
「ごめんなさい、ワンちゃんが可愛くてつい」
予定より押してしまったが、引き続き買い出しを続ける。とはいえ、僕の前で見せるデレっとした声とはまた違う甘い声が聞けたので割と満足はしていた。
「ぼくが一人で歩いててもあんなに犬が近づいて来ないんだけどなぁ」
「まぁ、そこはほら、色々ありますから…」
まぁいいけど、と一言こぼし、食材をチョイスする。
その後は何事もなく帰宅した僕たちは家の中でのんびりとした時間を過ごす。
「あの、少しだけ甘えてもいいですか?」
ソファでくつろいでいる僕の隣に、甘雨が腰掛けてくる。
「もちろん、でも珍しいね、何かあったの?」
「いえ、そう言うわけではないんですけど…今日くらいはわがまま言えるかなって思いまして…」
恥ずかしそうに甘雨が僕の腕にくっついてくる。ふわりと甘雨の香りがして、心拍数が上がる。
「いつでも甘えていいのに…」
「誕生日っていう理由がないと、恥ずかしいので…」
そこで話が途切れ、腕に彼女の温もりを感じながら幸せなひと時を過ごす。
やはり、彼女と過ごすほのぼのとした時間ほど幸せなものはないと思う。
俺、あの犬になりたい(誕生日ミニイラスト)