12月2日、甘雨に誕生日祝いの料理をふるまった後、僕と甘雨はのんびりした時間を過ごしていた。
「そういえば聞いた話なんですけど、月を眺めながらぼーっとするのってとっても心地よいらしいんです。私がいつも月海亭でいつも飲んでいるお茶をいただいてきたので、一緒にお月見しませんか?」
「僕でよければ喜んで」
あまり多くはない甘雨からの誘いに、少しうれしい気持ちになる。
甘雨とともに月が見える縁側に移動し、のんびりと話し始める。12月にしては暖かい涼風と美しい月光の下、ひざ掛けをシェアしながら僕はこの時間を堪能していた。
「今日もそうだし、最近甘雨って帰ってくるの早いよね?」
「そうですね、最近月海亭の秘書たちがとてもよく働いてくれるので、例年より仕事が少ないんです。」
お互いの顔を見るわけでもなく、月をのんびりと見ながら会話を続ける。
「なるほどね。まぁ僕と出会った頃の甘雨は忙しそうすぎて見てられなかったもん」
「その節はすいませんでした...。でも最近はおかげさまであなたと過ごす時間が増えたのでとてもうれしいです。」
そう言うと甘雨が少しだけ僕に近づき、手を重ねてくる。
「ふふ、こうやってあなたとのんびりする時間とっても好きです。」
彼女の手をやさしく握り返して、再び静寂が訪れる。
数分、お互いに無言の時間を楽しんだ後、あることを忘れていたことに気づく。
「お茶淹れるの忘れてたね、準備してくる」
「すっかり忘れてましたね、私の机に置いてあります。お願いしますね」
お茶の準備を終え、持っていこうとしたとき甘雨がやってくる。
「あれ、今持っていこうと思ったんだけどどうしたの?」
「いえ、少しだけさみしくなってしまいまして...」
そんな愛らしいことを言ってくれた彼女とともに先ほどまでいた縁側にもどる。
「ふぅ...落ち着くねやっぱり」
「あなたといるのも相まってとても大好きな時間です」
そんなうれしいことを言ってくれる彼女に質問をする。
「さっき寂しかったって言ってたけど何かあった?」
「特に何があったというわけではないんですが、誕生日だなって思った後になんとなく寂しくなってしまいまして...」
「大丈夫だよ、僕はどこにも行かないし」
「それはわかりますけど...いえ大丈夫です、ありがとうございます」
月明かりの下でもわかるほど、寂しげな表情を一瞬だけ浮かべた彼女をやさしく抱きしめる。座りながらだからか、多少強引になってしまったが、それでもしっかりと抱き返してくる。
「しばらくこうしてようか」
「ありがとうございます...とても安心できます...」
彼女の温もりを腕の中で感じながら、耳元で囁く。
「あらためて、お誕生日おめでとう。これからも僕だけの甘雨でいてね」
「こちらこそ、私だけのあなたでいてくださいね」
冬空に輝く月明かりの下で、僕らは静かにキスをした。
公式からの供給ほど捗るものはありません。