海灯祭を終え、忙しそうだった甘雨もうとうとする時間が増えていた2月の半ば、もといバレンタイン当日。どうやらたまにはしっかり休めと刻晴さんから言われたらしく、今日は甘雨のお仕事が休みなのである。
「私...休日何してましたか?お仕事ですか?」
久々の手持ち無沙汰に違和感があるのか、甘雨がそんなことを聞いてくる。
「いや...そういえば確かに...僕とくっついてるかお昼寝してるか...くらい?」
「休日...何したらいいんでしょう。」
「そうだな...僕が言うのもなんだけど、今日はバレンタインだしお菓子作りとかしてみたら?」
僕がそう提案すると、その手があったと言わんばかりの表情を浮かべ、返事をする。
「それ、素晴らしいですね...お菓子作りしてみます。ふふ、楽しみにしていてください」
しばらくして、お菓子の甘い香りが部屋に漂い始める。
「~♪」
キッチンの方からご機嫌な甘雨の鼻歌が聞こえてくる。気づかれないようにこっそりと彼女の様子を伺う。
「あの...私の事見てるの気づいてますからね」
「ごめんごめん、、料理してる姿が新鮮だったからつい」
甘雨にしてはめずらしいジト目を浮かべながら僕のほうを見てくる。
「とはいえ私も料理をしているあなたのことを見ていることもありますし...少し恥ずかしいですけど許します」
「え、そんなに僕のこと見てたの?」
彼女から飛び出した発言に思わず驚いてしまう。
「もしかして気づいてなかったんですか...?」
「そう...だね、集中してることも多かったし」
少し気まずいような沈黙の後、甘雨が話しかけてくる。
「あの、これ味見してくれませんか?」
僕の前に彼女の手が差し出される。
「はい、あーんしてください」
「いや、自分で食べ「あーんしてください」
ぐいっと先程よりも目の前に差し出された手を見て、仕方なく口を開ける。
「ん、美味しいじゃん。ていうか砂糖使ったの?」
「自分では食べないので、よりおいしくするために使ってみました」
「あれ、食べないの?」
「今日はバレンタインってことなので、あなたに渡すつもりでしたよ」
そんな彼女の発言に思わず心臓が跳ねる。
「お、おう...少し照れるね」
「ふふ、そういうことなのでもう少し待っていてくださいね」
そんなふうに笑いかけてくる甘雨を見て、何度目か分からない心臓の高鳴りを覚えるのだった。
「お待たせしました、私からのプレゼントです」
そう言いながら小皿に乗ったお菓子を持ってくる。
「普段あまり作らないので、失敗しているかもしれませんが...」
「ありがとう、味見した時美味しかったし大丈夫だよ」
甘雨から小皿を受け取り、食べ始める。
「ん、とっても美味しい」
「それなら良かったです」
「ありがとう、美味しかったよ。」
「どういたしまして、です。日頃の感謝と愛を込めておきました...」
そんなことを言ってくれる彼女を近くに呼び寄せる。
「こちらこそいつもありがとうね、大好きだよ」
甘雨の美しい青髪を撫でながら愛を囁く。
傍から見るとお菓子よりも甘い空間がそこに拡がっているのは明白だった。
月イチ投稿目指してますが、なにぶん忙しいもので...。