コロコロ甘雨、可愛いんだろうなぁ。
甘雨の誕生日の翌日。
今日は甘雨が同僚から勧められたという釣りへ来ていた。
「いやー、気持ちいいね。外でのんびりするのは」
「そうですね。ただ少し、眠たくなってしまいます。」
川辺に腰かけのんびり釣り針を垂らしているが、まだ1度も当たりはない。ぽわぽわと眠そうな表情をうかべる甘雨の方を眺めていると、少し強い風が吹く。水面がキラキラと輝き、風になびいた水色の髪も美しくなびく。
そのあまりにも美しい姿に見とれてしまい、糸を引く気配に気づくのが遅れてしまう。
「あっ!ひいてますよ。あぁ...逃げられちゃいましたね。もう、よそ見なんてしてるからです。」
少しジト目で僕の方を見てくる甘雨に、君を見ていたなんてことは言えずにぼーっとしてたと適当な言い訳をする。
「せっかく私が用意した釣り餌なんですから、無駄遣いしないでください。」
ジト目の次は可愛らしいプク顔を浮かべ、あまり彼女がしない表情の連続に僕の頬が緩んでしまう。
「ごめんごめん、ちゃんと集中するから、ね?」
「もう、次逃がしたら怒りますよ?」
「が、頑張ります、、、」
そう言うと、真剣な顔で釣りと向かい合う。が、当然そんなすぐに当たりが来るはずがない。
「最近、蛍さんがフォンテーヌで連続少女失踪事件を解決したらしいですよ」
数分の沈黙の後、突然そんなことを甘雨が話し始める。
「なに、そんな名探偵みたいなこともしてるの?」
「らしいですね、パイモンさんが自慢げに語ってくれました」
「想像できるなぁ、こう、腕を腰に当ててえっへんってしてるの」
「可愛いですよね、あれ。そういえば...話は変わるんですけど、留雲借雲真君に最近お会いしてない、、ですよね?」
「ないけど、どうして?」
「いえ、急に今思い出したことがあって...。留雲真君が立て板に水を流すかのようにつらつらと私の恥ずかしい過去をあなたに聞かせるって夢なんですけど...」
「ああ、小さい頃はコロコロとしていて山頂から転がり落ちたっていう...?」
「もう!その話はやめてください...本当恥ずかしいんですから...って、なんで知ってるんですか!」
「えーっと...秘密、、ということで、、、」
僕に掴みかかりそうな程の剣幕でそう言ってくる甘雨をなだめる。
「あれって夢じゃなかったんですか!もう...次会ったら文句を...」
なんて歓談をしていたら急に甘雨の釣竿の糸が引っ張られる。
「おっとと、逃がしませんよ」
ぐぐぐ、と強く糸が引かれている。
「おおお、すごい力だ。手伝おうか?」
「んん、大丈夫です。呼んだ時には手伝ってくださいね」
そう言うと真剣な顔をして魚?と向き合う。
あっちへ行ったりこっちへ行ったり。離れたり近づいたり、甘雨の腕がプルプルしてきた頃に魚も観念したのか水しぶきとともに釣り上がる。
「はぁ...はぁ......つ、釣れました...おっと、逃がしませんよ」
そう言うと近くにあったバケツに魚を入れ座り込む。
「お見事、大物だね」
「ふふ、初めての割には大きいのが連れたんじゃないでしょうか」
そう言うとどちらかともなく笑い合い、彼女の頭を撫でる。
「さすがです、甘雨様」
「む、なんかむず痒いからやめてください、あなたも様付けで呼びますよ?」
「うーん、確かにくすぐったいね、いつも通りでいいか。」
なんてことを並んで座りながら話しつつ、あっという間に昼食の時間である。
「今日は甘雨の手作り、楽しみだなぁ。」
「あまり期待しないでくださいね、あなたの方が上手なのはわかっているので...」
「大丈夫だよ、美味しいもん」
そう言うと、彼女がカバンから出した容器を受け取り、並んで食べ始める。
「うん!やっぱり美味しい。この環境ってのも相まって最高だね。ありがと、甘雨」
「ふふ、どういたしまして。我ながら良い出来だと思います」
自然と方を寄せあって座りながら食事をする甘雨を遠くから見守る仙人─もとい留雲借風真君は満足そうに笑い、良い相手を見つけたなと一言零し、飛び去るのだった。
甘雨と釣りに行きたい人生でした。