追記:蛍の口調を修正。
月逐い祭も終わりに近づいたある秋の日。甘雨曰く、今日は事務仕事が忙しくて帰りが遅れるとのことなので、腹ペコで帰ってくる彼女を労うべく秋の味覚を振る舞うことにする。
秋の味覚、と言えば栗とか松茸とか秋刀魚などが挙げられるが、菜食主義の彼女が食べられそうなものでレシピを試行錯誤する。
「こんにちは!」
キッチンで頭を悩ませていた僕の耳にふと声が届く。蛍さんが来たようだ。
「蛍さん、こんにちは。生憎だけど甘雨は今日、忙しいらしいんだ。何かあるなら伝えておこうか?」
「こんにちは、今日は採れたての松茸と栗をお裾分けに来た。」「オイラたちがわざわざ持ってきてやったんだぞー!感謝しろよな!」
そう言ってたくさんの食材が入った籠を掲げる蛍さんとえっへんと胸を張るパイモンちゃんから籠を受け取る。
「こんなに沢山、わざわざありがとう!ちょうど夕飯で甘雨に特別なものを振舞おうと思ってたんだ。」
「どういたしまして、甘雨さんは戦闘の時に遠距離から援護してくれるからとても助かってる。気にしなくていい。」「そうだぞ!甘雨の攻撃は氷がパシュッってなってオイラたちも助かってるんだ!」
さすが甘雨、どこでも引っ張りだこで凄いな、なんて感想を抱きながら蛍さんたちの話に耳を傾ける。
「っと、ごめんなさい、他にも用事があるからこの辺で失礼する。甘雨さんには近いうちに稲妻に行くと伝えていただけるとうれしい。」「またなー!次こそはオイラにも料理を食べさせろよ!」
まるで嵐のように去っていく2人を見送りながら改めて今夜のレシピを模索する。
すっかり日も落ち、夜が更けて来た頃、玄関から彼女の帰ってくる音がする。
「ただいま...帰りました...ふぅ」
いつもより疲れきった声の彼女に我慢できなくなった僕は抱きついた。
「お疲れ様、甘雨。今日もよく頑張ったね。」
軽く抱き返してくる彼女がこう返事をする。
「暖かいです...ふふっ、ありがとうございます。お腹、ぺこぺこです。夕飯おねがいしてもいいですか?」
恥ずかしそうに耳元でそう囁く彼女の荷物を受け取りリビングへと向かう。
「ちょっとまっててね、もうすぐ出来上がるから。いつ寝てもいいように先に着替えておいで」
「そうですね、そうします。」
いそいそと部屋に入っていく彼女を尻目に今日のメインディッシュを完成させる。松茸のとてもいい香りが部屋に広がる。ちょうどお米の方も出来たようだ。
「ふわぁ...とてもいい香りです...」
いつの間にか戻ってきた彼女が頬に手を付きながらうっとりとしている。
「昼間に蛍さんとパイモンちゃんが松茸と栗を持ってきてくれたから今日はそれを使った秋の味覚堪能レシピにしてみたんだ。」
「蛍さんと話したんですか...むぅ...私が早くあなたに会いたいと思いながら仕事してた時に...まあいいです」
日に日に依存度が増している彼女に冷や汗を書きつつ、机に料理を並べていく。
「松茸は贅沢にバター焼きにしてみたんだ、そしてこっちは炊きたての栗ご飯!自分で作っておいてあれだけど、美味しそうだなぁ」
「早く...早く食べたいです!」
子供がナイフとフォークを机にトントンやりそうな程食欲を募らせる彼女に愛しさを抱きつつ、ご飯をよそって渡す。
「「いただきます」」
お淑やかで百合の花のように歩く姿が美しい普段の彼女を知る人が見たら驚きそうなほど、それでいて上品な食べっぷりを見せる彼女に作ってよかったとしみじみ思う。
「ん〜...この松茸の香りとバターの塩気が絶妙にマッチして、まるで秋が鼻から抜けていくような...こっちの栗ご飯は栗の甘さとコメの甘さが喧嘩をせずに共存していてどんどん食べ進めてしまいます...」
「おかわりはあるから、ゆっくり味わってね」
幸せそうに、嬉しそうに食べる彼女を見てるだけでお腹いっぱいになりそうだ。
「料理王決定戦に出てたら間違いなく優勝してると思います!それくらい美味しくて好きな味です...」
「僕は甘雨だけに料理を食べてもらいたいから料理王決定戦には興味はないかな」
僕の発言に少し顔を赤らめた彼女が少し怒ったような口調で返事をしてくる。
「いまは食事中なのでそういうドキッとする発言は禁止、です」
そんな会話をしながら存分に舌鼓を撃つのであった。
「うぅ...まだおなかいっぱいです...。」
その日の夜。布団で横になる僕の横で食べすぎたらしい彼女がそうこぼす。
「運動しなくてはいけませんね...」
小さい頃の姿にコンプレックスを持っている彼女にとって、太るというのは死活問題のようで、時々こうやってストイックになるのだ。
「あぁ、そういえば近いうちに稲妻に行くからよろしくって蛍さんが言ってたな。また冒険でもするんじゃないか?」
「まだどうやら行ってない島があるようなので...そこの探索だと思います。その時に沢山歩き回るから食べ過ぎも大丈夫ということで...」
僕の前だと時々自分に甘いところを見せる彼女をみて、こういうところも可愛いんだよな、と1人頷く。
「ところで、今日はお仕事たくさん頑張ったので、ご馳走以外にもご褒美があっていいと思うんです...!」
布団の中でわざわざこっちを向いてそう行ってくる彼女にこう返す。
「よっしゃ、何でもいいぞ、何して欲しい?」
「ぎゅーして、なでなでして欲しいです...」
甘えるように僕の手を握ってくる彼女の要望に答えるべくぎゅっと抱きしめて頭を撫でる。
「はぁ...落ち着きます...。」
横になりながら抱きしめ合うというやや不自然な体制ながらも、どうやら彼女はご満悦のようだ。
「...すき、です」
耳元でぽしょりと彼女が呟く。
「僕もだよ」
優しく頭を撫でながら僕は返事をする。
「もぅ...好きって言ってください...」
少し不機嫌そうに抱きしめ返す力が強くなる。
「ごめんごめん、僕も甘雨のこと大好きだよ」
「や、やっぱり恥ずかしいです...」
僕の胸元に顔を埋める彼女がぐりぐりと頭を胸板に押し付けてくる。よっぽど恥ずかしかったらしい。
なんてやり取りをしながら夜が過ぎ去っていく。
秋はまだ、始まったばかりだ。
いつもより文字数多くない...?
夜中に書いてるせいでとてもお腹すきました。
原神の中だと松茸はどうやら春の食材らしいですがまあ細かいことは置いておいてください。