甘雨が蛍さん達と行っていた探索も一区切り着いたある日のこと。午前中は玉京台で滞っていた仕事を済ませ、午後からは持ち帰って来た少しの仕事をこなす彼女と僕はまったりした時間を過ごしていた。
「ふぅ...久しぶりに落ち着いた時間を過ごせます。仕事は好きですが、あなたとの時間の方が今の私にとって大切です...なんて、少し照れますね」
探索に力を入れていた頃も一応夜には帰ってきていた訳だが、そこから残った仕事をこなして眠りにつく生活を送っていたので、まともに会話するのが4日ぶりくらいだったりする。
「僕も甘雨とこうやって過ごすのんびりした時間がとても好きだよ。」
仕事をこなす彼女にお茶を渡しつつ、そばに腰かける。
「甘雨、ちょっといい?」
「なんでしょうか?」
「近頃巷で流行っているらしいファッションアイテムをプレゼントしようと思って。というか付けて欲しいって言うお願いなんだけど。」
そう言って彼女にあるアイテム──メガネを渡す。
「レンズが入ってない伊達のメガネなんだけど、どうかな?」
「つける分には問題ないですが...どうでしょう?」
そう言って僕の方を見てくる眼鏡っ娘甘雨に僕は見事に心を撃ち抜かれる。
「あー...これはね...甘雨...」
「は、はい...」
言葉を詰まらせた僕に対し、不安になったのか心配そうに見てくる甘雨に対し言葉を続ける。
「めっっっっちゃ可愛い。似合ってる。とっっっても可愛い。」
語彙力を失ってしまった僕の熱烈な褒め言葉に顔を真っ赤にした甘雨は小さい声でぽしょりとこう呟く。
「もう...ばか、です...」
「と、とにかくこれはつけるのは家の中でだけってことにしてもらっていい?」
こんなに可愛い甘雨を他の人に見せたくない、なんて醜い独占欲からそんな言葉が口からこぼれる。
「他の人に見られるのは恥ずかしいので...大丈夫です...。」
むず痒いしばしの沈黙の後、彼女が口を開く。
「とりあえず、あなたが可愛いって言ってくれるので気が向いた時につけようと思います..。」
しばらく経って、日も傾きはじめた頃。
「仕事おわりました...ってあれ、寝ちゃってますね...。隣、失礼します」
夕飯の下ごしらえを済ませ、ソファで寝落ちしてしまった僕の横に彼女が腰かけてくる。
「いつも、ありがとうございます...起きた時にメガネをかけた私が隣にいたら驚いてくれるでしょうか...」
優しげな顔で僕の頭を撫でる彼女が呟く。
頭を撫でられる感覚に目が覚めた僕は、近くに人の温もりを感じ目を開ける。
「おはようございます、よく寝れましたか?」
「んん...ふぁ...ぉはよう、膝枕しててくれたの気づかなかった。ありがとね」
どうやら僕は膝枕に移行する時に目が覚めないほど熟睡していたらしい。
「って、甘雨、メガネつけててくれてるんだ。やっぱりすごく可愛いよ。似合ってる。美人秘書って感じだ。」
「もぅ...寝起き早々それですか...ふふっ、ありがとうございます」
そう言って見下ろしてくる彼女の顔はうっすら赤く染っていた。
うっかりメガネ姿の甘雨を目撃してしまったパイモンちゃんと蛍さんが僕のところにやってきたのはまた別の話。
他にも書きたいことは色々あったんですが、上手く話が繋げられなくて若干短めです...。