オラリオに不明なユニットが接続されるのは間違っているだろうな   作:ニーズベルトの指環

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目覚め

 …………ここは、どこなのだろうか? 

 

 まず、ソレはそう自問した。答えは出るはずもなく、その問いに纏わる思考は放棄された。

 

 ソレは、先程まで戦いの最中にあって、今なぜか迷宮にいる。

 

 ソレは、人を模し、人ならざる見た目をしていた。

 

 青を基調とした全身を包み込む外装、顔を覗けばそこには単眼。手には重厚にして長大な銃、己の中に刻み込まれた記憶から名前を引きずり出せばその名を『KARASAWA』というらしいそれがある。

 

 背面に装備されているのは全てを焼き尽くす暴力と形容された超大型兵装・オーバードウェポンの一種、『ヒュージキャノン』。

 

 見る人が見れば、ソレの名をこう呼ぶものもいるのだろう。

 

 そう、『ハングドマン』と。

 

 数分の後、『ハングドマン』は目的を更新した。

 

 復帰したレーダーに写り込んだ、大量の生体反応への対応が次の目的となったのだった。

 

 

 

【ロキ・ファミリア】はダンジョンの50階層において死地に立つこととなっていた。

 

 控えめに言ってそこは地獄のようであった、とは誰の言葉だろうか? 

 

 芋虫のようなそれが、列をなして拠点に迫るのをただ黙って見ているわけにも行かず、応戦するも、傷から漏れでた溶解液によって武器が溶けていく。

 

 状況は絶望的だった。その場の支配者たる絶対にして玲瓏な声が響くまで。あるいは、彼らをまとめあげ続ける【勇者】の声が届くまで。

 

「【ウィン・フィンブルヴェトル】!」

 

「待たせたね! ここからは僕たちも加勢する!」

 

「「「うおおおおおおおっ!!!」」」

 

 芋虫どもが凍りつき、砕き散らす。キャンプ内のモンスターは一瞬でその数を減らす。だが、敵もまた、おめおめと殲滅されるわけにも行かなかったらしく。

 

「なんだあれは……追加、か?」

 

「大きな……それも、二……ううん、三体も……?」

 

 三体……巨体が三つ、絶望もまた三つ。【勇者】の判断は。

 

「……ッ、撤退する! 最低限の荷物をもって引くぞ! 悪いがアイズ、ベート! 一瞬時間を稼げないか!?」

 

「任せろ」「任せて」

 

 最適解であった。引き際を弁えるというのはこういうことだといわんばかり。だが、巨体はダンジョンを登っていく性質があるように見え、それだけが【勇者】の心を悩ませていた。その時だった。

 

「とにかく、撤退を……」

 

『目標確認。生体反応、多数。状況把握……敵性行動体、3』

 

「……なんだ?」

 

 青が翔んだ。巨体の裏から青の装甲が飛び出し、地面を軸にブーストの勢いを殺して反転。

 

『非推奨行動:それ以上の接近』

 

 現れたのは、『ハングドマン』だった。銃口を向け、最後通牒を突きつけていた。

 

「青の巨人……? いや、大きさ自体はオッタルよりも少し大きいくらいか。装甲が厚いために大きく見える、のか?」

 

「団長! なにがなんだかわかりませんけど、早く退きましょう!」

 

「……そうだ、そうだフィン。僕は団長だ。死んではいけない……戻ろう、殿にはもう二人が行った。アレと協力すればあるいは……!」

 

 そうフィンが背を向けて走りだし、残されたのは『ハングドマン』と殿の二人。

 

『言語通信不可、非推奨行動を確認。殲滅開始前に確認事項、言葉は通じるか?』

 

「……ッ! なんだてめぇは!?」

 

「私はアイズ・ヴァレンシュタイン……あなたは?」

 

『回答:その問いに明確な答えを持たないが、敵ではないことを理解してくれることを願う』

 

「協力してくれるの?」

 

「アイズ! 見ず知らずの奴に……!」

 

『回答:是』

 

「チッ! 悠長に話しちまった、来るぞ?」

 

『問題はない』

 

 次の瞬間二人と一機が飛び出す……と見えて、一機は銃口を絞り一撃を放った。

 

 巨体を貫く、凄まじい光。

 

 一撃で仕留められ、そして巨体の粉塵を蓄えるという性質によって爆発したそれを見て、アイズとベートが、己の前にいるそれらに対する認識を変え、戦闘を開始した。

 

 戦闘の音はそう長く続くことはない。まずベートに加勢し、やはりチャージを終わらせた『KARASAWA』の光でぶち抜くと、声をかけた。

 

『無事か、人よ』

 

「チッ、助けられるとはな……アイズは?」

 

『回答:風が粉塵を蹴散らしている、今しばし待てばいいだろう』

 

「そう、か……クソが、俺は……」

 

『貴方が弱いわけではない。噛み合わないこともある』

 

「フン……普通に話せるのかよ?」

 

『回答:場合による』

 

「…………そうかよ」

 

 そして、アイズもまた、戦いを終わらせる。

 

「【吹き荒れろ】! 【リル・ラファーガ】!!」

 

「アイズ! 飛び退け!!」

 

 爆破の風に背を押され、アイズが『ハングドマン』の方向へ戻る。

 

『敵性存在の撃破を確認、オールコンプリート』

 

「あの……良かったら、ついてきてくれませんか」

 

「アイズ!? 何を言ってやがる!? 意志疎通ができるとは言うが、あのモンスターよりも奥からやって来たんだぞこいつは! モンスターの可能性も……!」

 

『回答:同行する。また、モンスターなる存在ではない』

 

「……好きにしろ。俺はてめぇに助けられた、文句を言う場合じゃあなかったな」

 

『気にすることはないとあれほど言っただろう』

 

 そうして、【ロキ・ファミリア】の幹部たちと引き合わされることとなった『ハングドマン』であった。

 

 緊張感がみちる空間で、【勇者】が会釈をした。合わせるように『ハングドマン』が軽く頭部を下げ、それを見た残りの者たちはどこか抱いていた敵意を霧散させられる。

 

「さて……まずは君に感謝を述べよう。僕はフィン・ディムナ、君は?」

 

『回答:答えは持ち合わせていない。私は私がなんなのかを知っているが私が誰なのかを知らないためだ』

 

「では君はなんなんだい?」

 

『推奨:この姿を見る』

 

 青い装甲が、光に溶ける。そこに立っていたのは身長140cm程度の少女であった。

 

「なっ……」「子供?」「小人族か?」

 

「【ロキ・ファミリア】に対し情報開示ランクを底上げ……私はシステムの管理人。最も適当な名称すらも忘れ果て、それでも構わない作られた命である」

 

「あの青い装甲は?」

 

「機体名:ハングドマンはガレージに格納されている」

 

「他に装甲の類いはあるのか?」

 

「機体名:ホワイト・グリントはこの場所での使用に向かないため、ハングドマンを使用していた。また、過去の遺産ではあるが、切り札もある」

 

 何気なくもうニ種類あると言い放つ彼女に頬をひきつらせる幹部たち。そしてフィンはさらに問う。

 

「君はどこのファミリアに所属している?」

 

「疑問:ファミリアとは」

 

「なんだと……? ファミリアを、知らないのか?」

 

「回答:是。突然熱帯雨林の中に居たのだから外界の様子などわかるはずもない」

 

 いくらかの説明とさらにダンジョンについての説明を受けて、納得したと頷く少女。

 

「上に登れば出られるというのであれば、私は今の外界を知らねばならない。ここには、コジマがない。いや、コジマの役目をある粒子が代替しているために汚染がない。外界がどうなっているのか、この目で見なくてはならない……そのような判断をする」

 

「地上までなら、僕たちも共に向かえる。食糧も僅かながらわけられるがどうだい?」

 

「了解。食糧はガレージに貯蔵があるため最低限でも構わない」

 

 話し合いが終わると同時、再び光に溶けて少女は『ハングドマン』になった。そうして片膝をついて声を出す。

 

『しばらく世話になる』

 

「あぁよろしく頼む、私はリヴェリア・リヨス・アールヴ、副団長だ」

 

「アイズ・ヴァレンシュタイン……アイズでいい」

 

「ベート・ローガだ……さっきはすまねぇな」

 

「ベートが謝った……!? あ、ティオナ・ヒリュテだよ、こっちはお姉ちゃんの……」

 

「ティオネ・ヒリュテよ。少しの間だけどよろしくね?」

 

「ドワーフのガレス・ランドロックだ。なにかあれば頼れ」

 

『助かる』

 

 そういったやり取りがあってから数日。

 

 全ての立ちはだかる障害を粉砕して上がってきた彼らの前にミノタウロスが立ちはだかった。

 

 無論、今さら敵ではない存在であり、即座に撃滅される……はずだったのだが。

 

 奴らは逃げ出したのだ。プライドを投げ捨て、脱兎のごとく。

 

「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」」」

 

『追撃する』

 

 本来の流れであれば、ミノタウロスは上層に出向き、一人の少年にトラウマを与えるはずだが、そんなことは認められない。

 

 記憶を多くの範囲で失っていても戦闘技術と人類への愛は残っていたソレは、即座にオーバーキルとも言える『KARASAWA』を放ち最も離れてしまっていたミノタウロスを射殺するとブーストをふかす。

 

『奥に逃げた3匹を落とす、残存勢力の撃破を』

 

 そうして無事に【ロキ・ファミリア】プラス一機は誰にも被害を与えることなく地上に出ることとなったのだ。

 

 

 

 日の光を眩しそうに見上げる外装を解いた少女。少女はひとり呟く。

 

「汚染されていない世界は……こんなにも美しい。英雄たちの戦ってきたあの醜い世界よりもずぅっとずっと、綺麗で……あぁ、今まで私を使ってきた英雄たちよ!」

 

「おい……?」

 

「リヴェリア、そっとしておけ。あの女の悲願だったらしいからな」

 

「ガレス……お前がそういうなら下がるか」

 

 なおも大きな呟きは続く。

 

「あぁ、どうか見れるものなら見てくれ! アナトリアの傭兵よ! 首輪つきよ! そして、人類を愛することを教えてくれた我が原点よ……! そして許してくれ、私だけがこんな夢に逃げることを……」

 

「もういいか?」

 

「ぁ……申し訳ない、日の光を見て、つい」

 

「構わないさ。さて、僕らのホームに案内するからついてきてほしいんだけど……便宜的な仮の名前が欲しい。なにかあるかい?」

 

「あぁ、そうだ……やっと、少し思い出した。私の名前は、ライン。『ライン・フラウ』……」

 

「そうか。じゃあ行こうか、ライン」

 

 頷いたラインは、青の装甲を纏わないままに日の下を歩ける事実に心から涙しながら、【黄昏の館】へと歩み出した。

 




感想評価はいくらあっても困りはしない、足りない点の指摘をぜひともくれると嬉しく思います。

主人公の名前についてはグレーゾーンなネタですが、【Dir Frau der Rhein】すなわちラインの乙女のドイツ語訳からライン・フラウとさせて頂きます。

登場させてみたいオーバードウェポンは?(ヒュージキャノン及びグラインドブレードは登場済み)

  • マスブレード
  • マルチプルパルス
  • ヒュージミサイル
  • ヒュージブレード
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