オラリオに不明なユニットが接続されるのは間違っているだろうな 作:ニーズベルトの指環
『今回の相手は【ロキ・ファミリア】幹部三名。こちらにはハングドマンの使用が許可されている。ただしオーバードウェポンの使用は周りに深刻な物的損失を与え得るため可能な限り控えることとする』
『この戦闘は、異世界に飛んだ私の現状の確認になり得る』
『明日を切り開くために戦う、それだけはなにも変わっていないね』
凄まじい威圧をぶつける3人の前に立つ1機。
【剣姫】、【凶狼】、【重傑】。それが今回の『ハングドマン』の模擬戦闘にあたっての敵であった。
「リヴェリア……そろそろ、いい?」
「あぁ。準備はできたか、ライン?」
『全武装展開可能、戦闘準備は常時完了しております』
「ベート、作戦通り行けるかの?」
「てめぇこそ遅れを取るなよ」
そしてそれらを聞き頷いたリヴェリアは、声を張り上げた。
「では、模擬戦闘! 開始!!」
3人の地を蹴る音と1機のブーストをふかす音が響いた。
なぜこうなったかというと、しばし時を巻き戻す。
ロキ・ファミリアホーム、【黄昏の館】主神の部屋。
「ロキ! 客人だ、今大丈夫かい?」
「おぉフィン! 帰ってきよったな、客もええで、入りやー」
「ではライン、入ってくれ。ここにいるのがダンジョンで教えた我らがファミリアの主神、ロキだ」
「失礼します、ロキ様」
部屋に入って、実在する神だというロキを不躾に観察する。
同時、ロキの目が見開かれ、ロキがこちらに近付いてくる。
リヴェリアがごく自然にラインを己の後ろに隠すと、ロキは……
「リヴェリアたんそれはないって! めちゃめちゃにかわいい女の子やんけ! せめて、せめて撫でさせてや!?」
生来の可愛い子が好きという性分を表に出してリヴェリアに抗議からの懇願をしていた。
「ダメだ」
無論すげなく懇願は弾かれ、ロキはなおも頼み倒す形を取る。
「そこをなんとか! 頼むリヴェリアママ!」
「誰がママだ!!」
「…………? 神……?」
それを見て、神と言われて感じていた神聖な雰囲気やらなにやらが、まとめて一度に四散したラインは困ったように首を傾げ、後ろからフィンが優しく、「わかるよ」と声をかけることになっている。
「と、とりあえず……ライン・フラウと申す者です、貴女の眷族の皆様には大変お世話になったため感謝します」
「おーそんな丁寧にされると背中ぞわつくわ、好きなように話してええで。こっちはラインたんって呼ばせていったぁ!!?」
凄まじいスピードで背中を打ち据えたのはリヴェリアであった。
「弁えろロキ……我々の恩人だ。深層のイレギュラーから生還できたのは間違いなく彼女のおかげでな」
「そっか。ライン、ほんまにありがとうな。親として礼を言わせてもらうで、今夜は宴会やな。で、うちはラインって名前を知らんのやけど……どこのファミリアのもんや?」
ロキはリヴェリアの言葉にラインを見据え、頭を下げてからどこに所属しているのかと問いを投げ掛ける。
その答えはその場のロキ以外の全員が信じられない答えを所持しているために、代表してフィンから語られることとなった。
「ロキ。驚くべきことではあるが彼女はファミリアに所属していないどころか、そもそも別の世界から来ている……らしいんだ。彼女の戦闘を見れば異なる世界から来た、というのにも得心が行くとは思うんだけどね」
「……なんやて? 別世界から、来た? 嘘やろと言いたいが、嘘やないのはうちが一番よう分かる……大変なことになったなこれは」
驚き目を見開き、嘘を疑おうとして神の基本スペックとなる嘘を見抜く力が反応しなかった事実に軽く肩を竦めるロキに、フィンはなおも続ける。
「この事実はまだロキ・ファミリア幹部クラスしか知らない。ロキ・ファミリア団長としても、個人としても、彼女をこのまま街に出すわけにはいかないというのが意見だ。ロキはどう思う?」
「神がほっとくわけあらへんやろがそんなん、うちも同感や。大変なことになる……どころじゃすまないやろな。この事実を隠せるだけ隠す、あるいは表沙汰にしても大丈夫な状態にするためにもラインはうちで迎えてもいいと思うで」
ロキとフィンの間で、ラインを【ロキ・ファミリア】の一員として迎えるという話がまとまったらしく、フィンが同じ目線から語りかけられる彼女と目を合わせ、こう問う。
「ライン・フラウ。僕たち【ロキ・ファミリア】には君を家族として歓迎する準備がある。君はオラリオに今日はじめて降り立った。助けられた僕たちは君の助けになりたいんだよ……君の意思を聞きたい」
「私に他のアテがあるわけでもない。ここが唯一の好機だと心得る。したがって、これからよろしくというのがもっとも適当だろう」
その場の全員が彼女の言葉に苦笑する。
「まどろっこしいのぉ、まあそういう奴とは思っとったが」
「これからはラインも我らの家族だ。ルールは私が教えよう」
その言葉を受け、ラインは微笑み、ふと思い立った、というフリをわざわざしてまで問題を提起した。
「しかしだ、リヴェリア副団長にガレス翁。私がこのファミリアに入るためにはひとつ問題があるのだ」
「問題、とは?」
「簡単な話、私に実力があるのか? という話だ」
あぁ、という声がロキ以外から漏れる。
確かに、実力があるから途中から入る、という話はあるがその実力が証明されなければやっかみや嫉妬を受けることになるのは目に見えた話だ。
したがって、多くのファミリアメンバーの集まる場で実力を示さねば認められないだろうと彼女は説明をした。
「ふむ、では見てやるとするか……ただ、間違いなくベートかアイズは飛び込んできたがるぞ?」
「まとめて相手しよう、そのくらいしなければやっていられない」
「なんだと? 自信過剰……と言いたいところだが、あの姿が基本ならばそうもなるといったところか?」
「アイズにベートにガレス翁……模擬戦闘が楽しみだ」
「まあラインたんがええならうちは構わないけどなぁ……よし、人集めにでも行ってくるわ」
そういってロキは部屋を出る。ガレスは笑いながら、ベートとアイズを探しに後追いして部屋を出ていき、リヴェリアは審判を勤めるのと結界を張るのとで忙しいとぼやいて消えた。
残ったのはフィンとライン。フィンはラインを案内するために残っているのである。
フィンは、ラインに心配の声をとりあえずと言った様子で掛けていた。
「大丈夫なのかい? ライン。君がどんなに強かったとしても……」
「大丈夫だ、フィン。私自身は貧弱で、脆い弱者に過ぎないかもしれないが、『ハングドマン』が、『ホワイト・グリント』が私と共にあるのだから」
フィンは僅かにたじろいだ。ラインの瞳は、昔のアイズのそれによく似ていたためだ。だが、その熱量ある瞳の中にたしかな理性を見て、落ち着きを取り戻す。
そして、ついうっかり忘れていった己の神の失態に気付き後ろ髪をかきながら、フィンは申し訳なさそうに、
「そうか。楽しみにしているよ。一応聞いておくけど……【神の恩恵】はどうしたい?」
と聞くのであった。ラインはその問いに対して、とくにこだわりはないと前置きしてから、
「模擬戦闘が終わったあと、刻みこんでもらおう。どのみち私の戦闘は私の肉体には依存していないため影響はないに等しいだろうからな」
と返し、フィンに逆に己を舞台へと連れていくようにと頼み込む。
フィンも頷いて、彼女を連れて訓練場へと向かったのだった。
まあともかく、今こうして戦っている前にはそんなことがあったのだ、と誰に説明しているのかわからないと思いつつも、すでに『ハングドマン』となっているラインは眼前の盾を見据えた。
普段は影響がひどく行わない思考への侵食を許可していく。
【ライン・フラウ】の思考が、人類を最も愛したAI……『ハングドマン』の本来の持ち主の残留思念の影響を受け、曲がる。
『まあやるなら本気でやろうか! その方が楽しいだろう!?』
「ガレス!」
「わかっとる!!」
『見せてみな、お前たちの力を』
引き金を、引く。
『KARASAWA』が唸る。
盾を抜いて、裏のガレスに届きかねない光を、ガレスは盾を手放すことで回避して、カウンターの拳を叩き込まんと肉薄。
ブーストをふかして走るベートに勢いを乗せたタックルを繰り出し、ベートがとっさに回避する。
「【吹き荒れろ】!」
アイズの剣が切り抜けようとする、が。
『まだまだルーキーだね! 甘い、甘いよアハハハハ!』
「ッ!?」
「バカな! あそこから切り返して……!」
「左膝の盾を当てたのか!?」
それは俗にいうブーストチャージと呼ばれる技術であったが、さすがに彼らがそれを知るはずもない。
さらに、レーザーライフルの最高峰、『KARASAWA』を背面に戻し牽制として撃ち込まれたライフルはベートをさらなる回避に追い込み、猶予を与えない。それでもそこは第一級冒険者たち、即座に体制を整え3人同時に連携して飛び込む。
次の瞬間、
『いいね、最高だ!』
その言葉と共に、地面にグレネードを叩き込むと、爆発により3人を弾き飛ばしつつ、爆風で己の身体を後方へ運ぶ。
そして、背面に背負っていた『ヒュージキャノン』とは異なるオーバード・ウェポンが、ついに使われるときが来たと言わんばかりに唸りをあげようとしていた。
『仕切り直しだ、改めて……』
「ベート、撹乱に回れ! アイズ、魔法の出力をあげてもよかろう! あの光を喰らってなお無傷な結界じゃて、行けるぞ!」
「アイズを主軸にするんだな、付き合ってやる!」
「任せて、ベート、ガレス!」
『じゃあちょっと悪いけど……あ、ぽーいっと!』
次の瞬間、ハングドマンの左腕がパージされる。
もとあった左腕の位置に、異様な新たな腕が装着される。
背面に背負っていた巨大な、連なった6本の鋸が半身になったハングドマンの、後ろに回した右腕に扇のように装備され、筒状を作り出し、鋸の刃も、鋸の筒も急速に回り始める。
『【不明なユニットが装着されました。システムに深刻な障害が発生しています。直ちに使用を中断してください】』
『システム障害……で? それがなにか問題? このまま行っちゃうよー?』
その展開された兵装の名は、『グラインドブレード』。
『オーバードウェポン』……規格外兵装のひとつであり、6本の高速回転する鋸のような炎を纏うブレードで『轢き殺す』兵器だ。
「なんという……!」
『これは模擬戦闘だしね、これ使うのもどうかとは思ったんだけどね! 実力を見せろとのオーダーでね!! さあ耐えきって見せろ!!』
そのとき、ベートとガレスは叫んでいた。
「「アイズ!」」
「寄越せ!」「使え!」
「わかった……! 【吹き荒れろ】!」
風を吸い込み、フロスヴェルトが風の刃を蓄えた。
綺麗に撃ち抜かれ、穴の空いた盾を構えたガレスは、アイズに盾を蹴らせるための即席の壁。
風を纏った姫はガレスの盾を蓄力と初速付けに利用するために勢いよく蹴りつけ、ガレスも盾を押し込んで姫を放つ。
一足先に突進していたハングドマンの鋸に風の刃が衝突した。無論、先のベートのフロスヴェルトによるものだ。それだけでは止まらないが……確かに勢いを緩める。
「【リル・ラファーガ】ァッ!!」
『へえ、なかなかやるじゃない、それなりにはさ』
そして、嵐の尖槍は確かにグラインドブレードの突進を止めて……
『まあ、勢いが止まってもあと一回は振れるんだけどね』
凄まじい炎熱纏うそれを、ハングドマンは全身で突き出した。
耳障りな高音と轟音が響き、焼きつくされた地面が見える。
余波だけで、身体を凄まじい距離吹き飛ばされ、壁に打ち付けられたのだとアイズはやっと理解した。
『やりすぎたね、アハハハハ! ……ふぅ、本当に申し訳ない」
「うっ……私たち、負けた?」
「あぁ。あまり無理に動くなよ、アイズ」
ベートに声をかけられる。凄まじい力の余波だけでこれだ、本当たりなど即死以外あり得ないだろうと思われた。
勝者は、全てを焼き尽くす暴力をやってのけたそれは、中身の少女になってリヴェリアに怒られていた。
このあと、自分にも雷が落ちることをなんとなく理解したアイズは珍しく頬をひきつらせるのであった。
【思考混濁・侵食について】
元は『ラインの乙女』というAIを源流に様々な英雄の愛機を運用するライン・フラウは、元の英雄の残留思念に影響を受ける。
特に、その人物がAIであれば、より強くデータが混濁、侵食され、戦闘時にそのAIを彷彿とさせるようになる。
というわけで早くもアンケートより『グラインドブレード』でした。
評価感想、いつでもお待ちしております。感想はつけてくれたらモチベが上がるし返信もちゃんとしようかな、と。
次回以降アンケートからはグラインドブレードが選択肢からなくなりますのでご了承ください。
登場させてみたいオーバードウェポンは?(ヒュージキャノン及びグラインドブレードは登場済み)
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マスブレード
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マルチプルパルス
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ヒュージミサイル
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ヒュージブレード