オラリオに不明なユニットが接続されるのは間違っているだろうな 作:ニーズベルトの指環
模擬戦闘の後、あれよあれよと連れ出された酒場では、私の目の前で、私くらいの背丈の男性が……つまり小さい男性が、音頭を取っていました。
「新たなる家族を得たこと、そして無事に遠征から戻れたことを祝して……乾杯!」
「「「かんぱぁーい!!」」」
団長さん……名前は確か、フィン・ディムナさんだったでしょうか? 彼の号令のもとに、カツンとグラスがぶつかり合い、活気溢れる酒場、【豊穣の女主人】にもうひとつ華を加えています。
その様子を、一瞬冷めた目で見てしまったのはきっとヤケ酒をしていた多くのレイヴンやネクストを見てきたから。
でも彼らの目には希望と未来への宿願が爛々と輝いていて、それは私にとってはひどく久々に見るようなもので……とそこまで思いを巡らせていると。
カツン、と音が目の前から聞こえた。私の目の前に酒のグラスと瓶が置かれていることに気付いて、顔を上げ、首を傾げる私。
「飲みやがれ、てめぇが主役の会だぞ?」
「ベート、無理に勧めるなよと言いたいが……その様子ではお主もまんざらでもなさそうじゃな?」
「呑むのは久しぶり、でしょうか。お心遣いを無駄にはできません、いただきます」
カッと熱い感覚が喉を通り、私の口角が上がる。これはいい酒だ、逸品だ。いつかの私の主が私に勧めた酒、最後、あるいは最期に呑んだアレと比べても遜色ないでしょう。
「ほう……!」
「ドワーフの火酒がイケるのか……」
「いやはや彼女、だいぶ酒豪なのかもしれないな」
なにやら聞こえてくるが、そんなことはどうでもいい。
いい酒をいただいたのなら、その酒と向かい合い真摯に呑むべきだと、ある世界の『首輪つき』も言っていた。
あれはどの『首輪つき』だったでしょうかね。人類種の天敵になった『首輪つき』ではないことだけは覚えているんですけど。
さてそんな私はライン・フラウ。あらゆる世界線を巡るアーティフィシャルインテリジェンス『ラインの乙女』の一個体……のはずだった、人間だ。
自我の獲得どころか肉体の獲得までしてしまっている、となるともはやどういうことなのか皆目検討もつかず、ひたすらに戸惑いながら今も呑んでいる。ある意味、私の忌避するヤケ酒だ。あ、もう一杯……!
「おいガレス、そろそろ止めたほうがいいだろあれは?」
「なぜあいつはあぁも簡単にワシの火酒を空けられるんじゃ……」
強いて肉体を得た原因を探るとしたら、コジマ粒子と魔力と呼ばれるものの置き換えによる非論理的事象……未解明事象と言わないと科学論理が敗北したようで癪ですね。
魔力のことを仮にマナ粒子と呼ぶ。マナ粒子は私たちの元いた世界での科学的論理に従わない働きを行うことが、他の団員たちの【魔法】とやらを見て理解できた。
己もまた、世界間転移現象の間でコジマがマナに置き換わる、そのわずかな間になんらかの事象によって電子体が肉体となった……と説明するのが最も適当に思えます。
「ライン……? そろそろそこまでにしておかなければ明日が辛いぞ? 私はあまり酒を嗜まないからわからないが、酒を呑むものたちは大概明日ポーションを……おいライン? 聞いているか?」
しかし、この仮説が正しいとしても、マナ粒子とはなんなのかがいまいちわからない以上は意味のないこと。科学的な観点から物事を見るべきAIたる私が、こう述べざる得ないのは大変不愉快だが、オカルトとしか言いようがないですね……。
「ラインたん!? ちょっと待てや、それ五杯目や! なに考えとるんか知らんけど……あぁもう止めーや! ちょっ、誰か止めて……!」
そんなことを考えながら呑むラインが、目の前に女主人自らが運んできたペペロンチーノに反応して呑むのをやめたとき、その場の全員が胸を撫で下ろしたとか。
それなりの時間が立った。楽しく酒を呑む彼らは、酔いに酔って余興などしてみるかと言い放つ。
「じゃんけん大会や!! 勝ったらうちのママのおっぱい好きにできrヘブンッ!!」
「誰が許すかそんなこと……! あと私はママではない!!」
「「「さーいしょーはグー!!」」」
「お前ら……」
あまりにもあんまりなリヴェリアの姿が見られたり。
「面白い話ねぇ……あぁやっぱミノタウロスの逃走は笑えたなぁ。そうだろアイズ、迷宮の怪物ともあろうもんが情けねぇ」
「……一歩違えば大事故だったから、わからない」
「そうかよ、まあ……そうか? だが無様なもんは無様だ」
酔ったベートがミノタウロスの群れの情けなさを鼻で笑い飛ばしたり。
「だんちょぉ……すぅ……」
「くっ……恨むぞベート……!」
「ベートさんはどこに?」
「酔い醒ましに外に行ったぞ」
【勇者】最大の危機が密かに起こっていたりした。
そんな中においてラインはというと……
「ガッハッハッハ!! 酒が進むのぉ! ライン!」
「ガレス翁のおすすめはどれもこれも本当に素晴らしいお酒です、感謝しています」
「感謝などいらん、感じ入るのなら儂と共に呑め呑め」
「どうなっとるんこれ……?」
酒豪と酒豪、呑み交わしていたのであった。閉店間際に店主の女、ミアに声をかけられなければ恐らくは朝まで呑んでいたかもしれないとはその現場をハラハラとしながら見ていたロキの言葉だ。
時はさらに進み、翌日の朝。
「呑みすぎた……クソ、頭がいてぇ」
「少し節度を持つべきだったね……」
「儂らからすれば割と普通のほうなんじゃがなぁ」
二日酔いに苦しむ男二人に、もう一人の男が笑いながら声をかける。ドワーフのガレスにとって、酒とは日常だ。今さら二日酔いになるほど弱いものではない。
「そうだ、彼女……ラインは……?」
「彼女はロキの部屋におる、二日酔いもなにもなくな」
「あやつ、人の体を得た人に作られた知能と言っていたが……ドワーフの体を得たのか?」
「そういうわけでもなかろうて……あれは素で酒豪だ」
そんなガレスと酌み交わしたラインは、二日酔いを完全に踏み倒したのかあるいはそもそもならないのか、しっかりとした歩みをしてロキの部屋に入っていったらしかった。
件の部屋では、ベッドの上に寝転がるラインの上に跨がり真剣な顔で恩恵を刻むロキという構図があった。
「うちのもんが助けられた言うとったが、ほんまにあの……なんやったか、アーマード・コア? あれはえげつないわぁ……」
「元よりACとはそういうものですから、人の身で抗うことこそ愚かというべきなのですけれど……恩恵というのは凄まじいのですね。まあこちらの世界にやってきたときから実は異変があってですね……本来より小さいんですよね、ACが」
まあ便利なので構わないのですけど、と続けるラインに、気になって元の大きさを聞こうと考えたロキ。
「で、原寸はどんなもんなんや」
「ハングドマンは今のおよそ3.5倍といったところでしょうか……ホワイト・グリントも同じサイズまで縮められているのであれば5倍ほどでしょう」
頬をひきつらせるロキ。巨大兵器が人の形を持って戦う世界からこの少女はやってきているのだと改めて痛感する。
あとは差し障りのない会話とこの世界の常識とを言葉で軽く交わし、ロキは刻み込んだ恩恵を書き写す。
「さて終わったで、これで改めてうちの眷族や! よろしくな、ラインたん!」
「えぇ。ライン・フラウ、また新たな生き様をこの目に焼き付けましょう」
恩恵を刻みこんだロキが声をかけ、ラインが決意を改めた。そして身を起こすラインにロキはさらに、
「とりあえず、ステータスは初期はオール0やから割愛する。これが初期発現スキルや、目通しとき。他言無用で、これからの身の振り方をフィンとかと考えることにする……ええな?」
との言葉。ラインが頷くと、笑顔とともに、紙を手渡してきたので紙にラインは目を落とす。
その紙には、すでに3つの条項が入っていた。
【魔法】
・【コネクト】……無詠唱魔法。スキルの対象下にある機械を己の器とし、手足として操る。
【スキル】
・【格納基地】……武器を無制限に、機体を3機まで格納可能。同時に出せる機体はひとつ。機体が如何なる状態であろうと内部に機体が存在していれば修復可能。無条件でスロット2までのアセンを使用可能。また、スロット3のアセンはリソースを使用したぶんだけ使用制限時間を加算する。
・【人愛機構】……成長不可。精神汚染及び混濁の影響を抑制する。獲得した経験値を任意のタイミングで任意のリソースに変換する。
「予想はついていましたが、やはり成長は見込めませんか。代替はあるようですけど」
その言葉にロキは目を見開く。なぜ、ラインが最初から己が成長できないと断じていたのかを問う。
「簡単に述べましょうか、神ロキ。人に作られた知能であった私は、人の身体を得ましたが、それって本当に正しい形の魂と呼べるものでしょうか?」
「正しい形の魂なんてもんがどんなもんかうちにはわからん。色ボケにならわかるんやろがな……ま、恩恵に縋るほどラインは弱くないと考えることもできるし考えかたは自在やな」
ラインはその言葉を受け、ふむと考えるように呟いてから頷いた。
「そうですね、そう言うこともできるやもしれません。証明してみましょう、私にもそれができるはずだ……」
「ま、根を詰めんように頑張りや。さ、フィンのところ行くで?」
部屋を出る。女神が小さな手を握る。小さな手は女神の手を握り返した。
フィンとロキが向かい合い、何事か話している。
「僕個人の意見としては、レベル7相当で発表してしまっても構わないと思っているし、あの遠征に出た面子も、あの模擬戦闘を見た者もみなそういうと思う……が、ファミリア全体のことを考えて、都市外のレベル5が昇格したレベル6……としてもいい気がするな……だけど」
「都市外でレベル5、なぁ……どんな化物と渡り合いしたらそうなるんやって話や。うちらはそれを知らん以上、どっかでボロが出るで」
なんの話かといえば、ラインをレベルいくつとして発表するかという話なのではあるが。
如何せん一生レベルアップすることがないレベル1な癖に実力はかの【猛者】にも劣らないとくれば、レベル1と発表するわけにもいかないのである。
ラインはふと、化物という単語からアームズフォートを想起して、【格納基地】にアクセスしてなにかを取り出した。
「化物と戦った証拠……これとかどうです?」
「ラインたん、それは?」
「とある企業の最終回答にして地上へ見切りをつけたアホみたいなデカブツ、アンサラーくんの部品です」
「オーパーツやな」
「オーパーツでしょうね」
「却下や」
「そんなー!」
化物的なやべーやつらとは世界線を渡り歩きながら数々の傭兵たちと組み戦っていた彼女であるから、敵機の部品というものはぽこじゃか転がり出るが、悉く神々の興味を惹くものばかりでロキは頭を抱えた。
「もうええわ、どうにでも誤魔化したろ……うちに喧嘩売るつもりかでなんとかしたろ」
「一番ダメな吹っ切れ方だね、ロキ」
フィンもまた、吹っ切れた変な笑いになっていた。ロキは一縷の望みをかけて解法を問う。
「なにか案があるんか?」
「僕がひそかに守り抜いて鍛えた後がm……」
「おーけー、もう言うな。無しや。二つ名が【勇者の隠し子】になる」
「わかってたさ通らないことくらい。どうしたものか……」
この後、フィン、ロキ、ラインの3人は三十分ほどの時間をかけて、嘘でも本当でもない極めて曖昧なはぐらかしの方向性で説明の台本を練ることとなる。
なお、深入りする奴は潰すという前提は最後までそのままだったらしい。
恩恵をゆるくまとめますと!
元々できてたことを魔法の概念にまとめてあるだけだよ!詠唱なしって元々できてたことが魔法的だったってことなんですよね。
成長しないよ!経験値はストックされてていつでも別のエネルギーに転換できるよ!具体的には魔力。他のものにもできるけど基本魔力だよねぇ…
魔力つぎ込んだ分だけ三機目の機体、つまり切り札中の切り札の使用時間が伸びるよ!ちなみに燃費は超劣悪。
どのくらい劣悪かって仮に三機目がすっからかんだと今のラインでは丸3日深層で狩りをしてやっと2時間分の魔力に変換できる経験値になる、リヴェリアに魔力を注ぎ込んでもらえればリヴェリアがマインドダウンする代わりに30分くらい動かせる。どちらかというとリヴェリアがおかしい側なんだけどね!!
なんか余計な設定がこぼれ落ちてますがそれはそれとしてこんな感じです。
評価と感想があると次を書くモチベに繋がるのでぜひお願いします。たぶん誰でもできるようになっているはずですのでどうぞよろしくお願いします。
登場させてみたいオーバードウェポンは?(ヒュージキャノン及びグラインドブレードは登場済み)
-
マスブレード
-
マルチプルパルス
-
ヒュージミサイル
-
ヒュージブレード