梁山泊
騎馬隊
騎馬隊…林冲より足の遅い馬がいるが、おおむね馬の方が林冲よりも賢いから馬もあまり気にしていない。
人物
・林冲(りんちゅう)…騎馬隊のボス。極限まで脳筋になった結果、身体能力と戦の指揮以外の信頼は得られなくなった。公孫勝が大嫌いで大好き。
・索超(さくちょう)…青騎兵を率いる、騎馬隊のオアシス。その良識と世間知は騎馬隊の軋轢で徐々にむしばまれている。
・扈三娘(こさんじょう)…梁山泊美人番付横綱であり、軍人の紅一点。斜め上な発言は、林冲すら吹っ飛ばすこともしばしば。
・馬麟(ばりん)…鉄笛の名手だが、マイ鉄笛以外の楽器は全く使えない。
・郁保四(いくほうし)…旗持ち。超一流の根性の持ち主だが、林冲による非効率スパルタ指導と相性が良すぎて、諸々をすごく遠回りしたのは否めない。
一.
索超「なぁ、馬麟」
馬麟「どうした」
索「林冲殿に頭が悪いと言われたのだが」
馬「それは」
索「言わんとすることも分かるのだ」
馬「ふむ」
索「俺は林冲殿に異をとなえる事が出来ん。それを物足りないと思われているのだ」
馬「…」
索「どうすればいいだろうか」
馬「そういうところだと思う」
林冲「索超。あれだ」
索超「どれですか?」
林「もういい」
索「」
林「扈三娘。あれだ」
扈三娘「あれでは分かりません、林冲殿」
林「」
扈三娘「具体的に言っていただかないと、部下が困ります」
林「ふん」
索(本当は、こうするのが正しいんだろうが)
林「索超あれだ」
索「あれとはなんなのだ、林冲殿?」
林「戦を言葉でするな、索超」
索(そうだけど!)
林「行くぞ、索超」
索(あれってなんだ!)
馬麟(飛ばすな、索超)
索(あれってなんだ!)
郁保四(索超殿、すげぇ)
索(あれってなんなんだ!)
林「それだ!索超」
索「どれ!」
・林冲(りんちゅう)…なぜそれが分からない!
・索超(さくちょう)…どれですか!
・扈三娘(こさんじょう)…具体的に言ってください。
・馬麟(ばりん)…たぶんあれだな。
・郁保四(いくほうし)…きっとそれですね。
二.
林「おい、扈三娘」
扈「はい」
林「お前、バレンタインって知ってるか?」
索(それは)
扈「知りません」
馬(ほう)
扈「林冲殿は何のことだと思いますか?」
林「それは」
索・馬・郁 (面白くなってきた)
扈「どこでお聞きになったのですか?」
林「それは、公孫勝の野郎が」
索(笑うなよ。郁保四)
扈「公孫勝殿?」
林「この話はやめだ。扈三娘」
扈「分かりました。公孫勝殿に聞いてくればいいのですね?」
林「やめろ扈三娘」
馬(素なのかわざとやってるのか判断に困る)
・林冲(りんちゅう)…もらえるっちゃもらえるけど、張藍の機嫌次第で出来栄えは乱高下する。
・索超(さくちょう)…結構もらえる。
・扈三娘(こさんじょう)…王英殿に聞いてみます。
・馬麟(ばりん)…しこたまもらえる。
・郁保四(いくほうし)…食堂のおばちゃんからもらえたが、給仕のあの娘からもらいたかった。
三.
郁「索超殿」
索「なんだ郁保四」
郁「農夫だった俺がこんなことを言いたくないのですが、俺はもっと頭が良くなりたいんです」
索「頭が良いとはどういう事を言うのだ?」
郁「そうですね。例えば呉用殿のように難しいことが言えたり…」
索「今お前は難しい事を言っている、と思うぞ」
郁「それは?」
索「あの二人の言い争いを聞いてみろ」
林「お前は馬鹿か、公孫勝。騎馬隊の方が強いに決まっているだろう」
公「馬鹿はお前だ、林冲。致死軍の方が強いのは分かりきった事だ」
索「お前はどう思う?」
郁「どうでもいいと思います」
索「あの二人は頭が悪いと思わないか?」
郁「それは」
索「争いは同じ格の者でしか起こらない、と読んだことがある」
郁「はい」
索「騎馬隊隊長と致死軍隊長。格は同じだ」
郁「はい」
索「しかし、言い争いは子供がするものだ」
郁「はい」
索「難しい話だな」
郁「そうですね」
索「俺たちは頭が良いと思うか?」
郁「違う、と思います」
索「俺もだ」
・索超(さくちょう)…この話は俺たちだけの秘密だぞ。
・郁保四(いくほうし)…無論です。
・林冲(りんちゅう)…致死軍がへなこちょこだから、騎馬隊はほっておけんのだ!
・公孫勝(こうそんしょう)…騎馬隊が馬鹿ばかりだから、致死軍の援軍が必要なのだろう。
四.
段景住「馬具を改良してみた」
索超「ほう」
段「これは座り心地を特化した」
索「フカフカだ」
馬麟「向こうの一角は」
段「あの馬の群にはイタズラ用の馬具が置いてある」
馬「嫌な気を感じる」
林冲「おい、段景住。馬の検分を始めるぞ、早くしろ」
段「嘘だろ」
索「知らね」
段(馬群を一つにさせやがった)
馬(これで段景住にも分からなくなった)
段「死ぬ前に内容を言ってもいいか」
索「…」
段「バネが飛び出すスプリング馬具」
索「…」
段「オイルが噴出する馬具」
馬「…今のは?」
段「目潰しが炸裂する馬具」
索「つまり…」
段「俺たちもただではいられんという訳だ」
林「総出で馬を捕獲した訳だが」
索(不眠不休で二昼夜か)
林「扈三娘にオイルが噴出し」
索(艶かしかった)
林「郁保四はスプリングで行方不明」
馬(一丈(3m)は飛んだな)
林「損害は以上」
索(郁保四は?)
馬(木に引っかかってる)
林「ではこれより、段景住の処刑を行う」
索「異議なし」
段「待って」
・林冲(りんちゅう)…馬を扱う者がなんということを!
・索超(さくちょう)…死域に入りかけたよ。
・馬麟(ばりん)…郁保四が器用に引っかかっているな…
・段景住(だんけいじゅう)…馬に108回引きずり回され続けた。
五.
索超「林冲殿は百里に乗っている時は輝くな」
馬麟「うむ」
扈三娘「人馬一体ですね」
林冲「おう、百里。いい調子だ」
百里風(喜)
林「どこまでも駆けよう」
百(了)
林(俺と百里の魂が一体となったようだ。こんな世界も悪くない…)
索「そしたら入る体を魂が間違えた?」
林(百)「うむ」
百(林)(怒)
索「皇甫端に来てもらった」
皇甫端「わしにどうしろと?」
郁保四「林冲殿が百里風に、百里風が林冲殿になってしまったのを直してください」
百(林)(早くなんとかしろ)
林(百)「いつもお世話になっています。皇甫端先生」
皇「いえいえ」
索「礼儀正しい」
馬「さすが百里風」
百(林)(俺を無視するな)
皇「食って寝れば直らんか?」
百(林)(直るか馬鹿)
林(百)「もう一度魂を一つにするのはどうでしょう」
皇「なるほど」
索「その手があったか」
扈「さすが百里風」
郁「すごい」
林(百)(この人たちも頭良くないな)
索「つまり、百里風が林冲殿に乗れば良いのだな」
林(百)「乗れ。林冲」
皇「待て、百里。気持ちは分かるが今はお前が乗る番だ」
林(百)「」
馬(かわいい)
百(林)(危うく乗るところだった)
林(百)「乗るぞ、林冲」
百(林)(お前に乗られるならいいか)
百(林)(行くぞ、百里)
林(百)(おう)
索「林冲殿の身体能力なら百里の走りを再現できるはずだ」
皇「そんなに上手くいくかのう」
馬「林冲殿なら大丈夫だ」
皇「どう思う、扈三娘」
扈「絶対戻れますよ。林冲殿ですから」
皇(妙な信頼は厚いのう)
郁(俺にも聞いてよ)
索「走った」
皇「!」
百(林)(百里。お前の身体になって分かったぞ)
林(百)(お前を乗せるのも苦労するのだ)
百(林)(戻ったら手入れしてやる)
林(百)(あんた人か?俺が走るより速いぞ)
百(林)(なめるな、俺を)
林(百)「走るのが楽しくて戻りそびれた」
百(林)(まだ走るぞ、百里)
皇「一生やってろ」
・林冲(りんちゅう)…騎馬隊リーダー。もう多くを語るまい。書くことがなくなったとか、そういうことではない。
・索超(さくちょう)…彼の良識は梁山泊の中でも上位にランクインする。
・扈三娘(こさんじょう)…林冲騎馬隊の紅一点。綺麗すぎるお顔と、キレッキレすぎる天然ボケ。
・馬麟(ばりん)…鉄笛仙(てってきせん)という笛の名手。最近は縦笛にも挑戦中。
・郁保四(いくほうし)…旗持ち。握力が強すぎて、食堂の皿を握り割ってしまうこともしばしば。
・皇甫端(こうほたん)…紫色のお鬚だから、紫髯伯(しぜんはく)。スープに髭が混ざると彩良く見えるけど、毛だからな。
・百里風(ひゃくりふう)…林冲の愛馬。林冲一番の相棒。
六.
張藍「林冲様が猫だったとしましょう」
林冲「おう…」
張「どうなさいますか?」
林「どうって…」
張「こら、林冲!」
林「!」
張「木に棒を叩きつけてはいけません」
林「稽古だ」
張「部下を投げ飛ばしてはいけません」
林「体術だ」
張「猫のする事ではありません」
林「俺は人だ」
張「人である林冲殿が獣になって夜に…」
林「まだ昼だ、張藍」
張「朝にされた事も…」
林「参った、張藍」
張「お食事の話ですよ?」
林「…」
張「何を想像されたのですか」
林「やめろ、張藍」
索超「翻弄されている」
馬麟「こんなのも悪くないな」
扈三娘「ぬるいですね」
郁保四「新鮮だ」
・張藍(ちょうらん)…林冲最愛の人。騎馬隊最強のご令嬢になるポテンシャルがあったと信じたい。
・林冲(りんちゅう)…大事にしろよ。嫁も友も部下も。
・索超(さくちょう)…モテる素質はある。本人的にはあまり。
・馬麟(ばりん)…モテる素質はある。本人的にはあまり。
・扈三娘(こさんじょう)…モテる素質しかない。中身の話は除くと。
・郁保四(いくほうし)…モテる兆しが見え隠れ?
七.
林冲「郁保四」
郁保四「はい」
林「…それでいい」
郁(俺は旗になるのだ。そうしていられる自分が本当に誇らしい)
林「…だからといって、本当に旗になるやつがあるか」
郁(旗)「どうもすみません」
索超「この旗が郁保四、ですか?」
旗(郁)「索超殿、こそばゆい」
林「お前は旗か」
郁(旗)「旗です」
林「そうか、旗か」
郁(旗)「旗です」
林「…」
郁(旗)「…」
馬麟(話が進まん)
索「お前も郁保四と一体になれば元に戻れるのか?」
郁(旗)「それが分からないんです」
索「なんと」
郁(旗)「白旗です」
馬「白旗だな」
林「何か言ったか、馬麟?」
馬「何も」
林「郁保四。馬鹿なことはやめて身体に戻れ」
索「痛そうにはためいてるな」
馬「旗だけにか」
郁(旗)「果たし合いをすればいいのではないでしょうか?」
索「その流れでいくのか?」
郁(旗)「林冲殿。私と果たし合いを」
林「やるのか?」
郁(旗)「白旗です」
馬「もういい」
林「面倒だ、郁保四を旗にくるんで吊るせ」
索「そうですね」
郁(旗)「雑!」
旗(郁)「もう慣れた」
林「む、風が」
索「おお、やはり騎馬隊の旗が見事にはためいていると爽快ですね」
旗(郁)「これだ、この風なのだ」
郁「戻れました」
林「そうか」
索「帰るぞ」
馬「鉄笛を吹いてやる」
郁「…」
・林冲(りんちゅう)…愛馬の名前は百里風。林冲より賢い。
・索超(さくちょう)…乾物屋の倅が軍人を飛び越えて騎馬隊の隊長をやっているのも、北方水滸伝ワールドの面白さといえる。
・馬麟(ばりん)…実は冗談を言うのが嫌いではない。気づかれないけど。
・郁保四(いくほうし)…林冲騎馬隊の旗持ち。馬乗りながら、旗持ちながら、剣を使って闘うのって凄すぎない?
八.
張藍「…」
林冲「…」
索超(何という威圧感だ)
馬麟(銅鑼係の郁保四が小さく見える)
騎兵(あれが張藍様か)
兵(向き合っただけで失禁しそうだ)
扈三娘「それでは、行きますよ、張藍」
林「待て、心の準備が」
張「私の愛する所を十言いなさい」
張「一つ!」
郁保四「!」
林「いつ見ても美しい!」
張「二つ!」
郁「!」
林「料理が上手すぎる!」
張「三つ!」
郁「!」
林「笑顔が愛らしい!」
張「四つ!」
郁「!」
林「可憐な瞳!」
張「五つ!」
郁「!」
林「笑い声で癒される!」
白勝(気が狂いそうだ)
安道全(蕁麻疹が止まらん)
張「六つ!」
郁「!」
林「傍にいると癒される!」
張「七つ!」
郁「!」
林「肩の施術が上手い!」
張「八つ!」
郁「!」
林「きめ細かですべすべの肌!」
張「九つ!」
郁「!」
林「二人の記念日を忘れない!」
張「十!」
郁「!」
林「全てを愛しているぞ、張藍!」
張「私もです、林冲様!」
・張藍(ちょうらん)…何がおかしいのですか?あなた方?
・林冲(りんちゅう)…十周回って何もかもどうでもよくなった。
・扈三娘(こさんじょう).…王英殿にやられたら、声を出す前に首を落とすでしょうね。
・索超(さくちょう)…俺は二度と張藍殿の目を見て話すことはできぬだろう。
・馬麟(ばりん)…棒打ちの罰の方がまだましだ。
・郁保四(いくほうし)…桴を投げ捨てて逃げ出したかった。
・安道全(あんどうぜん)…薛永の気付け薬を1ダース飲み干した。
・白勝(はくしょう)…久しぶりに寝込み、死線をさまよった。
九.
林冲「なぜか張藍が口を聞いてくれない」
索超「それは」
林「何か知らんか、扈三娘?」
扈三娘「検討もつきません」
林「弱った…」
馬麟「…鄆城に新しいスイーツ屋が出来たとか」
林「それが?」
馬「…手土産にしては?」
林「なるほど!」
索「さすが馬麟」
扈(なぜ知っているの?)
林「飯だ」
馬「…」
郁保四(当たり前のように取り分けるよな、馬麟殿)
扈「…」
索「それにしても馬麟」
馬「…」
索「乾物屋の倅目線から見ても、お前の配膳には一分の隙もないな」
馬「適当さ」
郁(林冲殿には肉増し増し野菜少なめでよそっているのを俺は知っていますよ)
扈「馬麟殿の女子力が高すぎるんです」
顧大嫂「あんたが低すぎるだけさ」
孫「勿体無いねえ」
扈「…」
孫「ところで扈三娘、そのミサンガは?」
扈「…馬麟殿に誕生日の贈り物として」
顧「センスあるじゃないか」
孫「嫁に欲しいね」
扈「私も!」
顧「あんたは旦那の世話をしてからもらいな」
・馬麟(ばりん)…鮑旭と一緒に、毎年欠かさず子午山にお中元とお歳暮を贈っている。
・林冲(りんちゅう)…手土産を渡すや否や、たちまち張藍の機嫌が直ってびっくりした。
・索超(さくちょう)…馬麟のきめ細かな気配りは騎馬隊に欠かせんよ。
・郁保四(いくほうし)…俺がきのこ苦手なのも知ってて、いつも抜いてくれるんですよね。
・扈三娘(こさんじょう)…馬麟殿のお返しに、ハンカチをプレゼントしようと思うのですが…
・顧大嫂(こだいそう)…悪くないけど、あまりお勧めしないね。
・孫二娘(そんじじょう)…プレゼントにも隠れた意味ってのがあるんだよ、扈三娘。
十.
馬麟「♪〜鉄笛〜♪」
扈三娘「いつ聴いても美しい音色ですね」
馬「適当さ」
扈「私も幼い頃、歌舞音曲を無理やりやらされていたのですが」
馬「そうなのか」
扈「いつのまにかそれが剣になっていました」
馬「扈三娘らしい」
扈「今でも出来るかな」
馬「?」
扈「馬麟殿」
馬「何か?」
扈「鉄笛を貸してもらえませんか?」
馬「…吹くのか?」
扈「昔習った曲を今でも覚えているか試したいのです」
馬「…俺のしかないが?」
扈「他に無いのでしょう?」
馬「…」
扈「…」
馬「…いいのか?」
扈「馬麟殿?」
扈「拙くても笑わないで下さいね」
馬(ファンが見たら卒倒するな)
扈「♪〜鉄笛〜♪」
馬(ほう)
扈「覚えているものですね」
馬「上手いじゃないか、扈三娘」
扈「今の曲を吹けますか、馬麟殿?」
馬「…吹けるが?」
扈「じゃあ今吹いてください」
馬「…今?」
扈「今」
馬「…今?」
扈「馬麟殿?」
・馬麟(ばりん)…飛竜軍との合同作戦の時に、なぜか王英が寄ってきた。
・扈三娘(こさんじょう)…笛を吹くのは嫌いじゃなかったんですけど、先生が嫌いでした。
致死軍&飛竜軍
致死軍&飛竜軍…闇の軍と資金源の塩の道を守る軍隊。各地で拠点を設けて戦いに臨むのだが、拠点に置いてある漫画を持ち出しする奴がいて、各拠点でいつも足りない巻がある。
人物
・公孫勝(こうそんしょう)…致死軍隊長。笑い声が独特と評されるが、それ以上に独特なところが多すぎて、今やだれも気にしなくなった。
・劉唐(りゅうとう)…飛竜軍隊長。公孫勝と出会う前は名の知れた博打打ちで、雑誌にコラムを掲載していた。
・楊雄(ようゆう)…致死軍の剣が標準装備だが、斬首用の刀の遣い手でもある。
・孔亮(こうりょう)…イケメンだが、ルックスのみで彼に惚れた女性は、おおむね彼の言動に幻滅するらしい。
・樊瑞(はんずい)…暗殺者。今まで暗殺した者の記録を詳細にとっており、孔亮は死のノートと呼んでいる。
・鄧飛(とうひ)…鎖鎌の名手。修行中はよくこんなめちゃくちゃな武器を使う気になったと思うほど、分銅でケガをしていた。
・王英(おうえい)…身長が小さすぎるから子供料金を提示されるが、顔を見られた瞬間大人料金に変更されるし、受付が全力で笑いをこらえている。
・楊林(ようりん)…日陰者あるあるネタには定評がある。
十一.
公孫勝「石秀、楊雄」
石秀「はい」
公「私は地下牢で一点倒立ができるようになったが」
石「はい」
公「なぜ頭で倒立しようとしたのだと思う?」
楊「…」
石「…」
楊(何が始まるんだ?)
石(分からん)
公「地下牢でも体を鍛えようと思った」
楊(発想が脳筋だよなぁ)
公「石畳の上で転げ回ることもやった」
石(裸ゴロゴロのことだな)
公「やがてそれにも飽きた」
楊(でしょうね)
公「それからなのだ、倒立を始めたのは」
石(引き込んで来るな)
公「始めは倒立も出来なかった」
石(だから公孫勝殿の房がうるさかったんだな)
公「それが少しづつ出来るようになってきた」
楊(いつまで続くんだ?)
石(検討もつかん)
公「ついに頭でやる時が来た」
石「…公孫勝殿」
公「…」
石「…オチはあるのですか?」
公「質問は許可していない、石秀」
・公孫勝(こうそんしょう)…オチなどいらん。
・石秀(せきしゅう)…結局何の話だったのだ?
・楊雄(ようゆう)…ただの頭倒立自慢だろ。
十二.
公孫勝「呉用殿が反乱の首謀者側近として潜入したとする」
呉用「具体的だな」
公「緊急離脱の合図を耳に覚えさせるぞ」
呉「何を言っている」
公「笛の音が聞こえたら手を上げろ」
呉「待て、説明しろ」
公「呉用殿のためだ」
楊雄「公孫勝殿は?」
劉唐「相国寺で摑まされた笛持ってどっか行った」
公孫勝「質問は一つだ」
呉「前提が分からん」
公「童貫軍の力を削ぐために、呉用殿が江南の反乱組織の側近として潜入したという前提だ」
呉「なるほど」
公「では笛を吹くぞ」
呉「待て、まだ質問は山ほど」
公「質問は一つと言った」
呉「しまった」
公「観念しろ、呉用殿」
呉「何も聞こえないぞ、公孫勝」
公「呉用殿の耳が悪いのだ」
呉「お前は聞こえているのか?」
公「」
呉「そのおもちゃはどこで摑まされたのだ?」
公「」
呉「経費ではおろさんからな」
公「」
呉「公孫勝」
公「」
呉「笛、逆さだぞ」
公「」
・公孫勝(こうそんしょう)…そんなわけない。
・呉用(ごよう)…ならばその吹き口はなんだ。
十三.
李逵「宋江様に致死軍を体験してこいと言われた」
公孫勝「…」
李「公孫勝、だよな?」
公「…」
李「飯食ってるか?顔色悪いぞ」
公「…」
李「致死軍の連中の服も穴だらけじゃねぇか」
公「…」
李「調練はどうでもいいが、この生活習慣の乱れは許せねえ。正させてもらうぜ」
公「…」
楊雄(お袋だ)
楊(李逵が来ただけで、兵の顔に生気が)
公「李逵」
李「なんだ」
公「誰が兵の服にアップリケを付けていいと言った」
李「穴がデカすぎたんだ。しょうがねえじゃねえか」
公「こんな服は着れん」
李「カッコいいやつならいいのか?」
公「そういうことではない」
楊雄 (お袋との会話を思い出すな)
李「じゃあ俺は行くぜ」
兵「…」
李「お前は俺の香料が大好きだったな。餞別だ」
兵「!」
李「お前の服の穴はいつでも俺が埋めてやる。安心して闘え」
兵「…」
李「お前は…」
楊「お袋…」
公「整列」
兵「!」
李「なんだってんだ」
公「あとで分かる」
兵「またきてね」
李「あいつら」
・公孫勝(こうそんしょう)…周囲があっと驚く少ない食事量。突風で少し飛ばされかけた。
・楊雄(ようゆう)…別の世界では嫁がいる設定に不満。もしかしたら顔が黄色い所よりも直すべきところがあるのかもしれない。
・李逵(りき)…李逵がお袋になる水滸伝ワールドがあってもいいではないか。文字が読めなくても気持ちは伝わった。
十四.
公孫勝「今日は劉唐はいないのか?」
鄧飛「他で任務ですね」
公「…」
鄧「…」
公「…」
鄧「俺は鎖鎌の稽古してますんで、用があったら声かけてください」
公「…」
鄧「…」
公「鄧飛」
鄧「何か?」
公「まさか室内でやるのか?」
鄧「そうですが?」
公「私に当たるだろう」
鄧「大丈夫です。鎖で遠くのものを持ってくる稽古です」
公「ほう」
鄧「机の杯を取りにいきます」
公「…」
鄧「!」
公「…」
鄧「…割れましたね」
公「…」
鄧「戸棚の引き出しを開けます」
公「…」
鄧「!」
公「…」
鄧「…戸棚ごと倒れましたね」
公「今すぐやめろ」
鄧「稽古を通じて上手くならないと」
公「その前に部屋の備品が壊滅する」
鄧「公孫勝殿が取って欲しいものは何ですか?」
公「話を聞かん奴だ」
鄧「硬くて、分銅で壊れないものだったら何とかなると思います」
公「劉唐は何を躾けているんだ」
鄧「劉唐ですか?」
公「あいつは壊れやすいからいい」
・公孫勝(こうそんしょう)…劉唐はなぜこいつをスカウトしてきたのだ。
・鄧飛(とうひ)…鎖鎌の使い手。弟分の楊林を試しにして鎖鎌の可能性を模索しているが、楊林は堪ったものではない。
十五.
劉唐「公孫勝殿は?」
楊雄「見つかりません」
劉「致死軍、飛竜軍合同かくれんぼ大会は昨日で終わりだが」
楊「騙すのありにしたのが裏目に出ましたね」
劉「終了時刻は伝達したのか?」
楊「それすら自分を騙す情報だと思ったのでは?」
樊瑞「もういいのではないですか?」
公孫勝「まだだ、樊瑞」
孔亮「もうほっといていいんじゃないか?」
楊「なんて事を、孔亮」
劉「合図の指笛を吹いてみよう」
劉(もう終わりですよ、公孫勝殿〜♪)
公(騙されんぞ、劉唐〜♪)
劉(昨日まででおしまいです〜♪)
公(いいからさっさと私を探せ〜♪)
劉「だめだ。まだ完全にその気だ」
孔「もういいよ」
劉「こうなったら、全員で公孫勝殿を探すぞ」
楊「そうですね」
孔「〜♪」
楊「孔亮?」
孔「まあ見てろ」
公「姑息な真似を」
樊「公孫勝殿、ここは危険です」
公「なに?」
樊「山に移りましょう」
公「!」
劉「!」
楊「公孫勝殿、見つけた!」
公「はめたな、樊瑞」
孔(お手柄だ)
樊(なんの)
・公孫勝(こうそんしょう)…日頃ストイックすぎる分、たまに遊ぶ時の力の入れ具合が尋常ではない。
・劉唐(りゅうとう)…必然的に鬼。赤髪鬼(せきはつき)なもんで。
・楊雄(ようゆう)…孔亮に騙されて見つかった。
・孔亮(こうりょう)…騙すのありにした張本人。
・樊瑞(はんずい)…こんな事もあろうかと、あらかじめ孔亮と符丁を決めておいて良かった。
十六.
劉唐「この季節の山中は虫が多いな」
楊雄「毎年うんざりしますよ」
劉「楊雄は刺されんな」
孔亮「一番不味そうだからじゃないか?」
楊「お前の血はさぞかし冷たかろうな」
樊瑞「致死軍一の冷血漢だもんな」
公孫勝「…」
劉(!)
楊(刺されまくっている…)
孔(俺などより血も涙もないはずだが…)
樊(一体なぜ…)
公「蚊が多いな」
劉「蚊帳に入ってしまったのですか?」
公「奴らも生きるのに必死だからな」
孔「…殺さないんで?」
公「一寸の虫にも五分の魂と言うではないか」
樊(暗殺してきた俺への皮肉か?)
・公孫勝(こうそんしょう)…師匠の教えで虫は殺さないが、青蓮寺の兵は虫けらのように殺す。
・劉唐(りゅうとう)…血の凍るような作戦を命令される公孫勝殿が…
・楊雄(ようゆう)…蚊の目線で見ても、やっぱり不味そう。
・孔亮(こうりょう)…冷血漢の血は暑い夏には蚊にとってむしろありがたい。
・樊瑞(はんずい)…蚊を箸で捕らえる特技は夏場にウケる。
十七.
公孫勝「樊瑞」
樊瑞「はい」
公「お前の顔は随分と四角いな」
樊「…」
公「だからなんだ、というわけではないんだが」
樊「これを言われたのは108人目です、公孫勝殿」
公「記念品でもくれるのか?」
樊「気にしてるんですよ」
公「だから刺客にスカウトしたんだ」
樊「嘘ですよね?」
公「…」
公「四角い刺客か」
樊「良い加減にしてください」
公「先日の仕事は?」
樊「完璧です」
公「四角い刺客に死角なし、か」
樊「…」
公「四角い刺客は死角がないのが刺客の資格さ」
樊(どうすりゃ良いんだ、俺は)
公「風が」
樊「砂が目に…」
公「…」
公「四角い刺客の視覚を奪う風とは見事だ」
樊「からっ風です」
公「…寒いな」
樊(あんたのギャグがな)
公「たまにはいいな」
樊「公孫勝殿」
公「…」
樊「残念ながら、失格です」
公「刺客失格?」
樊「ですので公孫勝殿」
公「…」
樊「刺客試験に参画してください」
公「この辺で丸く収めよう」
・公孫勝(こうそんしょう)…真顔でボケ倒すことがあるから周りはたまったもんじゃない。
・樊瑞(はんずい)…顔の縦と横の長さの比が黄金比になっているらしい。
十八.
劉唐「行きますよ、公孫勝殿」
公孫勝「…」
劉「!」
公「」
孔亮「いただき!」
楊雄「孔亮!」
劉「公孫勝殿が食べてないのに先に食うな」
孔「そんなこと言ったって、劉唐殿」
劉「…」
孔「そしたら全員でそうめんを見逃すことになってしまうではないですか」
公「…」
樊瑞「配置を変えよう」
劉「前衛に公孫勝殿と樊瑞」
公「…」
樊「…」
劉「間を楊雄と楊林が受け」
雄「…」
林「…」
劉「殿に孔亮と王英だ」
孔「…」
王英「背が届かねえんだが」
劉「最後に滞留した麺を食え」
王「…」
劉「では行くぞ」
公「…」
劉「!」
公「」
樊「!」
劉「!」
公「」
樊「…」
雄「…」
林「!」
劉「前衛では厳しいですか、公孫勝殿?」
公「…」
樊(箸使いが思ったより下手くそだな、公孫勝殿)
劉「役割を交代しましょう、公孫勝殿」
公「…」
劉「…」
公「…」
劉「公孫勝殿?」
公「!」
劉「公孫勝殿!」
雄「俺たちに流してください!」
孔(腹ペコだったのか)
王(俺たちは食えるのかな)
・公孫勝(こうそんしょう)…普通に食えばいいではないか。
・劉唐(りゅうとう)…致死軍飛竜軍合同調練のレクリエーションです。
・楊雄(ようゆう)…薬味は生姜とネギ。
・孔亮(こうりょう)…薬味に李逵の香料を隠し持っていたが、匂いでバレて取り上げられた。
・樊瑞(はんずい)…タンパク質がほしい。
・楊林(ようりん)…甘辛いキノコが好き。
・王英(おうえい)…伸びきったそうめんしか食えなかった。
騎馬隊&致死軍
騎馬隊&致死軍…林冲と公孫勝のやり取りを四コママンガにしたある致死軍の兵の連載が、梁山泊でじわりと大人気。
十九.
林冲「おいウスノロ」
公孫勝「なんだ、馬鹿」
林「馬鹿とはなんだ」
公「言ったのはお前が先だ」
林「俺はウスノロと言ったのだ。馬鹿とは言ってない」
公「本当に馬鹿だな、林冲」
林「頭をねじ切るぞ、公孫勝」
公「こんな馬鹿をつれてやっているのか、騎馬隊は」
林「許さんぞ、公孫勝」
索超「やはりこの二人だけでは話が終わらん」
劉唐「ダブルボケだからな」
・林冲&公孫勝…文字数がある限りただただボケ倒し続ける、本家公認カップル。至高のボケ宋江と組んだ時のみツッコミに回る。
・索超&劉唐…お互いのお頭の情報交換は密にしており、連絡ノートの数は郁保四の背丈ほどになった。どこに収納しよう。
二十.
公孫勝の野郎はウスノロだ。それなのにあいつは痩せこけて肌が白すぎる。どうしてそこまで不健康な生活を貫くのか、俺には理解できない。飯くらい意地汚く食らいたいだけ食らえばいいと思う。自分は生きていてはならぬなどとほざいて死にたがるところが本当に嫌いだ。あいつが死ぬ時は俺が殺してやる。
林冲は極め付けの大馬鹿だ。とにかく一目散に死に向かって突っ走っていく。何故そこまで死に魅せられているのか、私には理解できない。あいつが死ぬのは大いに構わんのだが、とどめを刺すのは絶対に私だ。その役だけは、誰にも譲るつもりはない。せいぜい首を洗って私が殺すまでの余生を楽しんでいろ。
二十一.
林冲「たまには騎馬隊以外のことをやってみないか?」
索超「面白そうですね」
林「歩兵とか」
索「水軍もありますよ」
扈三娘「重装備部隊も」
郁保四「工兵はどうでしょう?」
林「馬麟は?」
馬麟「…お任せします」
林「つまらん」
馬(致死軍が良いなんて言えんだろ?)
公孫勝「ぬるいことを考えているな、林冲」
林「出やがったな、ウスノロ」
公「そのウスノロに調練で勝つつもりか?」
林「なに?」
公「致死軍の調練に騎馬隊のバカどもが付いていけると思えん」
林「面白い。致死軍の木偶どもの調練など寝ながらこなしてやろう」
扈(馬麟殿が凄く嬉しそうに見える)
索「郁保四が早々と脱落した」
扈「あの巨体では無理もありません」
索「しかし、扈三娘」
扈「はい」
索「馬麟が物凄く張り切っているように見えないか?」
扈「見えます」
索「ファンなのかな?」
扈「きっと」
馬(劉唐からもらった致死軍ハンドブックを大事に取っておいて本当に良かった)
・林冲(りんちゅう)…案の定余裕綽々でこなしたが、百里風の心のケアに思わぬ時間がかかってしまった。
・索超(さくちょう)…致死軍スタイルの扈三娘が結構可愛かった。
・扈三娘(こさんじょう)…意外と致死軍も性に合うかもしれない。
・馬麟(ばりん)…念願が叶ったひと時だった。その日の笛もかつてないほどノリノリ。
・郁保四(いくほうし)…木に引っかかった。
・公孫勝(こうそんしょう)…意外と扈三娘が致死軍向きで驚いた。馬麟?普通かな。
二十二.
林冲「今度は貴様らが騎馬隊の調練に参加する番だ」
公孫勝「くだらん…」
林「根暗な部下どもが色めき立ってるぞ」
楊雄(夢みたいだ)
楊林(一度参加したかったんだ)
林「早く馬に乗れ」
孔亮(久しぶりだな)
劉唐(たまには良いだろう)
王英「林冲殿、俺は?」
林「身長制限に引っかかった」
王「」
林(落馬しても楽しそうにしてやがる)
雄(楽しすぎる)
錦(疲労が心地よい)
王「…」
扈三娘「王英殿?」
王「!」
扈「この間致死軍の調練に参加したんですが」
王「どうだった?」
扈「意外と向いてました」
王「そうか」
扈「王英殿、それでは」
王「…」
孔「浮かれやがって」
劉「お前もな」
林「なかなかやるではないか、楊雄」
雄「!」
林「お前は…」
錦「錦豹子の楊林です!」
林「豹子頭に似ているな」
錦「!」
公「ナンパはその辺にしろ、林冲」
林「お前の陰気な調練が部下を暗くしているのがよく分かったぞ」
公「余計だ」
林「公孫勝」
公「…」
林「悪くないな」
公「そうだな」
・公孫勝(こうそんしょう)…騎馬隊の調練が楽しいなど、奇特な部下だ。
・楊雄(ようゆう)…顔色がとても良くなった。
・楊林(ようりん)…林冲と楊雄がいたら、楊も林も使えないではないか!
・劉唐(りゅうとう)…調練に騎馬隊のエッセンスを取り入れようと思った。
・孔亮(こうりょう)…青州軍時代を思い出した。
・王英(おうえい)…見学。扈三娘ばっか見てた。
・林冲(りんちゅう)…もっと日向で遊べば良いものの。
・扈三娘(こさんじょう)…次があったら王英の乗れる馬は用意してあげよう。
二十三.
索超(本当にやるのか?)
馬麟(肚を決めろ、索超)
公孫勝「…」
林冲「…」
索(来た!)
公「…」
馬(あいつは!)
郁保四「林冲殿、おはようござ」
林「!?」
郁「!?」
索「お前という奴は…」
公「…」
馬「公孫勝殿」
公「…」
馬「いくつ穴を掘られたのですか?」
公「七つ…」
索(多っ)
郁「助けてください」
林「そういえば、地面から罠の気を感じる…」
索(林冲殿のスイッチが入ってしまった)
馬(厳しい戦いになるぞ)
公「…」
林「…」
扈三娘「林冲殿。今日の調練は」
林「…」
扈「!?」
馬(バラエティに出しちゃいけない奴が落ちた)
公「…」
索「公孫勝殿…」
公「肚を決めろ、索超」
扈「…」
馬(扈三娘の怒りの気が…)
林「穴は七つ」
公「…」
林「索超、馬麟…」
索「!」
馬「!」
林「劉唐、楊雄…」
劉唐「!」
楊雄「!」
林「それに、公孫勝の野郎の気か」
公「…」
林「ここにある穴を、お前らの墓穴にしてやろう」
扈「林冲殿」
郁「俺たちも含めてませんか?」
林「…」
索「…」
馬「…」
公「寝返るなよ、お前ら」
索「!」
馬「!」
林「気の乱れが…」
索「しまった」
馬「くそっ」
公「!」
索「公孫勝殿!?」
林「貴様ら!」
索「穴に落ちるわけには」
馬「鉄笛を…」
林「遅い!」
索「!?」
馬「!?」
林「裏切り者には血の制裁が必要だ」
劉「俺たちは行間で穴に落ちた」
楊「敵ながら見事だ、林冲殿」
林「…」
公「…」
林「残りの穴は一つ…」
公「…」
林「その穴に落ちるのは」
公「貴様だ林冲」
林「ついに姿を見せたな、ウスノロ」
公「…」
林「この穴の配置を見て気づいたことがある」
公「…」
林「北斗七星の配置になっているな、公孫勝」
公「その穴に落ちるのは」
林「お前だ、公孫勝」
公「なぜかな?」
林「北斗の党の一員ではないか」
公「…」
楊(自爆した…)
劉(ちなみに俺も一員な)
林「木偶の棒め」
公「…」
索(よく分からんが…)
馬(どうやら相当恥ずかしい失敗らしい)
林「顔が赤いな、公孫勝」
公「…」
劉(マジで?)
楊(写メ見せてください)
林「穴があったら入りたいのではないか?」
公「…」
林「俺が叩き落として」
張藍「林冲様、忘れ物」
林「張藍!」
公「!」
林「野郎!」
公「!?」
林「!?」
張「…」
扈「どうなったの、張藍?」
張「ホールインツーです」
・張藍(ちょうらん)…厳しい精査の上、出す人と出さない人を厳選した。
出す人
・扈三娘(こさんじょう)…無言の彼女が何より怖い。
・郁保四(いくほうし)…ストレッチしたら意外と平気だった。
出さない人
・林冲(りんちゅう)…一体何の企画だ、公孫勝。
・公孫勝(こうそんしょう)…思いつきだ。
・索超(さくちょう)…穴に落ちるのは絵巻の自分だけで十分すぎるのに…
・馬麟(ばりん)…鉄笛の大事なところに土が入った。
・劉唐(りゅうとう)…あとは呉用殿に阮三兄弟と白勝だ。
・楊雄(ようゆう)…こんなお頭つれてやってるんですよ、晁蓋殿…
二十四.
林冲「くそっ!」
索超(林冲殿はさっきから何を?)
馬麟(公孫勝殿と頭倒立で立合いをすることになったそうだ)
索(どうしてこうも容易く、相手の土俵で勝負してしまうのかな)
林「俺も地下牢暮らしが二年あれば間違いなくできたのに!」
索(そしたら梁山泊はあったのか?)
馬(本気で言っているな)
扈三娘「林冲殿は何を?」
索「頭倒立の練習だ」
扈「また公孫勝殿ですか」
馬「分かってきたな、扈三娘」
林「!」
扈「林冲殿を固められれば、勝機があるのでは?」
索「どうやって?」
扈「私に考えがあります」
馬「…」
林「ちゃんと支えろ、郁保四!」
郁保四「…」
公孫勝「一夜漬けでできるようになったのか、林冲」
林「…」
劉唐「両者用意!」
公「…」
林「…」
索(扈三娘!)
扈(張藍!)
張藍(承知)
劉「はじめ!」
公「…」
林「…!?」
張「これより、林冲様恥ずかしい話十選集朗読会を始めます」
索「よろしくお願いいたす」
馬「…」
扈「…」
郁「…」
公(まさか微動だにしないとは…)
林「」
張「今日は皆さんの心に残ったフレーズを、私がその時のことを思い起こしながら、朗読いたします」
扈「では、父との遭遇で、張藍のお父上と初めてあった時の場面を」
索「王道だな」
林「」
公(目が血走り始めたぞ?)
張「それでは…」
林(動くに動けん)
張「林冲様。次はどちらのお店に行きましょうか?」
張(林)「…どこでもいい」
張「ならば、菓子の店に…」
張(林)「そこはちょっと…」
馬「煮え切らないな」
扈「どこでもいいと言ったのに…」
林「」
公(顔が赤くなってきたぞ…)
張「ならばどこならいいのですか!」
張(林)「お前が決めてくれ」
郁「めんどくさいですね」
索「いい加減にして欲しいですな」
林「」
公(林冲が死域に入った!)
張「…父上」
張(林)「誰のだ」
扈「決まってるじゃないですか…」
馬「本当にそういうところだな、林冲殿」
林「」
公「…私の負けだ」
劉「公孫勝殿!?」
公「このままだと馬鹿のまま死ぬぞ、林冲」
・林冲(りんちゅう)…薛永の丸太をゴルフスイングにする事で気を断つことに成功した。勝敗は覚えてない。
・索超(さくちょう)…よくそれで夫婦になれたな…
・馬麟(ばりん)…失礼にもほどがある…
・扈三娘(こさんじょう)…第一印象最悪じゃないですか。
・郁保四(いくほうし)…笑った笑った。
・張藍(ちょうらん)…この物語はノンフィクションですからね。
・公孫勝(こうそんしょう)…実はがっつり聞こえてた。
・劉唐(りゅうとう)…むしろ朗読会の方聞いててどうでもよかった。
本隊
本隊…始めに剣か槍か戟のどれかを選ぶ。基礎を会得して、下級将校以上になってから、やっと鞭とか青龍偃月刀とか持てるようになる。
人物
・関勝(かんしょう)…朝令暮改が多いと言われるが、朝言ったことを本気で忘れているだけだから悪気は全くないがタチが悪い事この上ない。
・呼延灼(こえんしゃく)…鞭を習うクラスは厳しいことこの上ないが、会得したらまず並みの将校ではなくなっている。
・穆弘(ぼくこう)…身支度で一番時間がかかるのは眼帯を選ぶ時。
・張清(ちょうせい)…スライダーの投げすぎで肘を痛め、登録抹消中。戦はストレート一本でいいだろう。
・宋万(そうまん)…腕力は梁山泊でも上位。梁山泊ウエイトリフティング銀メダル。
・杜遷(とせん)…彼の粘り強さは歩兵を率いるのにぴったり。悩み相談の個人面談も気軽に応じてくれる。
・焦挺(しょうてい)…梁山泊相撲番付横綱。梁山泊奉納土俵入りの栄誉を譲る気は無い。
・童威(どうい)…童猛と間違われても、何とも思わなくなった。
・韓滔(かんとう)…梁山泊の畑で彼が育てる野菜は一味違う。
・彭玘(ほうき)…若手将校を引っ張り出しては酒の飲み方をレクチャーしているが、いずれ役に立つんだ、これが。
・李袞(りこん)…未だに一世一代の土下座を忘年会で真似される。
・丁得孫(ていとくそん)…落ちてる紐を蛇と見間違えて悲鳴をあげたところを扈三娘に見られた。
二十五.
穆弘「!」
呼延灼「珍しいな、穆弘が落馬するなど」
穆「いかん、眼帯が」
呼「今日は調練用か?」
穆「連休明け初日用の眼帯だ」
呼「哀しい目をしているな」
穆「貸してくれ」
呼「ほれ」
穆「…」
呼「…」
穆「大変だ。何も見えない」
呼「目の付け所が違うぞ、穆弘」
穆「うまいな」
・穆弘(ぼくこう)…目の付け所が違うのは眼帯だけではない。
・呼延灼(こえんしゃく)…自分は眼帯よりも顔の刀疵に憧れてたな。
二十六.
李袞「申し訳ねえ、穆弘殿」
穆弘「気にしなくて良いが、聞いてもいいか?」
李「なんですか?」
穆「謝罪する時のお辞儀の角度だ」
李「はあ」
穆「実に見事な鋭角になっている」
李「そこ褒められたのは初めてです、穆弘殿」
穆「お辞儀の名手だな、李袞」
李「お辞儀の名手」
・穆弘(ぼくこう)…弟の穆春と口喧嘩した時は、穆春が悪くてもつい先に謝ってしまう。
・李袞(りこん)…TPOをわきまえたお辞儀の角度は一度の狂いもない。天性のお辞儀の達人である。
二十七.
瓊英「張清様」
張清「瓊英!」
呼延灼「あれが噂の瓊英か」
関勝「確かに目の覚めるような美人だ」
張「呼延灼、関勝!俺の妻を紹介させてくれ」
関「大好きが顔から溢れ出ているぞ、張清」
張「俺の妻の瓊英だ」
瓊「瓊英と申します。いつも旦那様がお世話に」
呼「いや、全く」
関「瓊英殿の噂はかねがね」
瓊「まあ」
呼「礫も得意とか」
瓊「旦那様ほどでは」
張「しかし上手いぞ、瓊英は」
関「差し支えなければご披露していただけないか?」
瓊「拙い技ですが…」
呼(眼光が鋭くなった)
瓊「!」
関・呼「!!」
瓊「この程度ですけど」
関「美しいアンダースローだ、瓊英殿」
瓊「僭越ながらお二人に申し上げたいことが」
関「なんでもどうぞ」
瓊「実は父が良い砥石を仕入れておりまして」
関「なんと」
呼「ちょうど探していたのだ」
瓊「お二人は武器が命ですからご入用かと思い、お試し品をお持ちしました」
関「買う!」
呼「素晴らしい奥方だ、張清」
張「だろう?」
・張清(ちょうせい)…瓊英が大好きだが、彼女の素晴らしさは彼が思っているよりもずっと深いところにある。
・瓊英(けいえい)…商人の養父のもとに育つ。彼女の営業成績を抜くのは、張清の礫を避けるよりも難しい。
・関勝(かんしょう)…青龍偃月刀の斬れ味が抜群になったので、大喜びで定期購入を始めた。
・呼延灼(こえんしゃく)…鞭の仕上がりに大満足。
二十八.
張清「瓊英が完璧すぎる嫁なのだが」
関勝「ほう」
張「完璧すぎて、申し訳ない話、少しだけ息苦しさを感じてしまうこともあるのだ」
関「贅沢な悩みな気がするが、言っていることは何となく分かるぞ」
張「間抜けの達人として、瓊英に隙を伝授してくれ、関勝」
関「間抜けの達人…」
関「瓊英殿」
瓊「あら、関勝様。御機嫌よう」
関「実はある事を伝授するため、来させてもらった」
瓊「それは?」
関「隙だ、瓊英殿」
瓊「!?」
関「あなたへ隙を伝えるためにやって来たのだ」
瓊「…私には張清様が」
関「…?」
瓊「…」
関「いかん!申し訳ない。その好きではないのだ、瓊英殿」
瓊「隙でしたか、関勝様」
関(不意打ちに弱いな)
瓊「小さい時から一部の隙も許されぬよう育てられたので…」
関「あの張清のことだから、あなたの隙も含めて愛する事が出来ると思うぞ」
瓊「もっと隙を見せろと…」
張「瓊英、それは…」
瓊「隙です、張清様」
張(何をレクチャーしたのだ、関勝」
・瓊英(けいえい)…この衣装が私なりの隙なのですが…
・張清(ちょうせい)…今夜は眠れそうにない…
・関勝(かんしょう)…レクチャー翌日の張清の消耗ぶりは一体…
二十九.
関勝「連環馬はどんな戦法なんだ?」
呼延灼「馬に馬甲を付け横つなぎにし、相手を蹂躙する戦法だ」
関「よくそんな戦法を思いついたな」
呼「初めて試した時は大変だった」
関「だろうな」
呼「馬も兵も負傷し、始末書を何枚書かされたことか」
関「よくもう一度挑戦したな」
呼「実は裏があってな」
関「聞こう」
呼「童貫に相談に乗ってもらったのだ」
関「なんと」
呼「とても親身になって聞いてくれてな」
関「珍しい」
呼「色々と助言をくださった恩があるのだ」
関「皮肉なものだな…」
呼「…悪い思い出ばかりではないのだ、官軍にいた頃も」
関「…実は俺もだ、呼延灼」
呼「良い後輩もいた」
関「…たまに思うことがある」
呼「何を?」
関「もしも宋が、俺たちを受け入れられる国だったら、と」
呼「…」
関「そうではないから、今梁山泊にいるのだがな」
呼「俺たちの原点は、宋国だ」
関「ああ」
呼「俺たちは、どこへ行くのかな、関勝」
関「行けるところならどこへでも、ではないかな」
・関勝(かんしょう)…俺の友も軒並み冷遇されていると聞くしな…梁山泊に呼んでやりたいよ。
・呼延灼(こえんしゃく)…趙安とは一度、共に戦ってみたかったな。
三十.
穆弘「皆、筆は用意したな」
関勝「…」
呼延灼「…」
宣賛「…」
穆「ここに無地の眼帯を用意した」
関「…」
穆「今日の眼帯はここに自分で目玉を書き、その書いた目玉の性格になりきり、調練を行おう」
宣(何の罰ゲームですか?)
関(隊長オリジナル調練企画が穆弘の番になったのだ)
呼(前回は俺だ)
関「まつ毛を書くな、宣賛」
宣「関勝殿こそ、カラコンみたいな色を足さないでください」
呼(子どもか、こいつら)
穆「書けたなら眼帯を付けろ」
関「…」
呼「…」
宣「…」
穆「今からその目玉の性格になるのだぞ」
宣「ヘイ、関勝?」
関「ボンジュール、宣賛」
穆「おう」
呼(ノリが良すぎる)
宣「随分と長い睫毛ですな、マドモアゼル関勝」
関「あなたの眼の色も青眼虎より青いわね、ムッシュ宣賛?」
穆「世界観が面白いな、二人とも」
呼「…」
穆「呼延灼?」
呼「西洋かぶれめ。キザな輩の台詞を聞くとこの刀疵が疼く… 」
関「ナイト呼延灼様…」
穆(何か忘れてる気がするが、いいか)
・穆弘(ぼくこう)…この閉じられし目が開かれる時、真の力が解き放たれるのだ。
・関勝(かんしょう)…妖術が解き放てるのかしら、ムッシュ宣賛?
・宣賛(せんさん)…ナイト呼延灼殿に、護衛していただくのですな。
・呼延灼(こえんしゃく)…おう、護衛なら俺に任せろ。マドモアゼル関勝。
・徐寧(じょねい)…まだ調練に来ないのか、隊長たちは…
三十一.
張清「瓊英の美しさに歯止めがかからなくて…」
林冲「張藍との仲も良好だな」
張「最近あまりに美しすぎて、目があったら石になってしまうように動けなくなる」
林(そんな物の怪がいなかったかな?)
張「見つめ合うと素直に喋ることなど到底できない」
林「梁山泊と瓊英殿を選ぶなら?」
張「瓊英」
林「迷いがないな」
張「もし瓊英が童貫の娘だったら、俺は禁軍の将になり、お前らと戦をしていただろう」
林「宦官だぞ?」
張「林冲はどちらを選ぶのだ?」
林「それは…」
張「梁山泊と張藍殿を選ぶなら」
林「…その問いはやめてくれ」
張「なぜだ?」
林「それは…」
張藍「…」
百里風「…」
林(どこで聞きつけてくるのだ)
清「林冲?」
瓊英「…」
林「瓊英殿!」
清「聞き捨てならん!」
林「違う!あの木陰に」
清「誰もいないではないか!」
林(致死軍エクササイズの成果か)
清「貴様、張藍殿がいながら瓊英を狙うとは」
林「私は張藍しか愛さん!」
百「!」
藍「よしよし」
瓊「…」
・林冲(りんちゅう)…いつもこの話題になると必ず現れるのはなぜなのだ…
・張清(ちょうせい)…瓊英が禁軍に行くと言ったら?無論俺も行くがなにか?
・張藍(ちょうらん)…張清も中々のアレね、瓊英。
・瓊英(けいえい)…お見苦しいところを…
・百里風(ひゃくりふう)…厩で乱雲に意地悪して憂さ晴らし。
遊撃隊
遊撃隊…遊撃隊が妓楼に来た時は、料金をだいぶ上乗せしている。まぁ隊長が散々やらかしたから仕方ない。
人物
・史進(ししん)…最近なぜか「したたか」という言葉が気に食わなくなってきた。
・杜興(とこう)…重装備部隊で元気にやってる李応殿を尻目に、また今日も史進の尻を見なければならぬのか。
・陳達(ちんたつ)…彼の跳躍からの槍の技は中々防げない。
・施恩(しおん)…ノリでスマホトレーディングを始めてみたら、意外と儲けられた。けっこう向いてるかも。
・穆春(ぼくしゅん)…商店街の惣菜タイムセールに勇んで出陣するも、近隣のおばちゃんたちに遮られた。
・鄒淵(すうえん)…遊撃隊サバゲーでは無敵。まず史進を自滅させるところから始める。
三十二.
史進「俺たち遊撃隊の野郎はバカばかりだな」
陳達「なんだとこの野郎」
史「穆春はバカだろ?」
陳「あいつはバカだ」
史「施恩は替天行道バカだろ?」
陳「筋金入りだな」
史「鄒淵だって賢いとは言えんだろ?」
陳「言えん」
史「じゃあもう俺が一番賢いんじゃないか」
陳「それは無い」
穆春「好き勝手言いやがって」
施恩「史進より賢い自信はあるぞ」
鄒淵「そうだ」
陳「人望ねえな」
史「貴様ら」
穆「俺は史進よりも賢い兄上の弟だから賢い」
陳「ん?」
施「俺は史進よりも替天行道を暗記しているから賢い」
陳「…」
鄒「俺は史進よりも山に詳しいから賢い」
陳「同レベルだった」
史「お前らの賢さはその程度か」
陳「強気だ」
史「穆弘の賢さは関係ないだろう」
穆「む」
史「替天行道は暗記するものではない。この世で活かすものだ」
施「不覚」
史「山の事なら子午山で学んだ」
鄒「ぐ」
史「やはり俺が一番のようだな」
陳「む、風が」
史「しまった」
陳「履いてねえのかよ」
・史進(ししん)…裸馬鹿
・陳達(ちんたつ)…常識の範囲内の馬鹿。
・施恩(しおん)…替天行道馬鹿。
・穆春(ぼくしゅん)…かませ馬鹿。
・鄒淵(すうえん)…普通馬鹿。
三十三.
杜興「李家荘の執事だったこのわしが、下品極まりない貴様らにお行儀というものを叩き込んでやる」
陳達「うるせえ、老いぼれ」
鄒淵「くたばりぞこないめ」
杜「貴様ら」
史進「ご老体、無理をなさるな」
杜「︎」
史「陳達も鄒淵も失礼ではないか」
陳(そういえばあいつ、お坊っちゃんだった)
史「杜興殿。奴らが悪いのは口と頭だけ。そうカリカリなさるな」
陳(なんか腹立つな)
杜「すまなかった」
鄒(謝った)
杜「行儀の良い史進ほど気持ちの悪いものは無かった」
史「何だと」
杜「史進は口を利くな。口汚くても行儀良くても腹がたつわい」
史「」
陳(ひでえWWW)
・史進(ししん)…王母様によるしつけは忘れてないけど…
・杜興(とこう)…行儀だけは良いの、史進。
・陳達(ちんたつ)…ギャップが激しすぎる。
・鄒淵(すうえん)…音一つ立てず飯食うもんな。
三十四.
宋江「正月だ」
晁蓋「新春隠し芸大会を始める」
呉用「1番。遊撃隊将校による、これが本当の隠し芸」
晁(察した)
宋(ウキウキ)
呉(察した)
史進「おめでとうございます!」
晁(やっぱり)
宋(!?)
呉(隠しきれてない)
林冲「出てるぞ」
張順(俺たちセーフですよね)
李俊(ふんどしはセーフだ)
史「この竜の面を下腹部に付けて…」
晁(雑だな)
宋(…)
呉(若さなのか)
宋「史進!」
史「︎」
晁(このトーンは…)
宋「他の者も芸を止めよ」
呉(マジギレの宋江殿の声だ)
晁(しかし)
宋「一列に並べ」
呉(裸で説教受けるのか?)
張「宋江殿がキレた」
李「なんで?」
宋「この正月というのにお前らときたら」
史「すみませんでした」
林(史進が裸で宋江殿に謝ってるWWW)
晁(これ笑ったらダメなんだよなWWW)
呉(ダメですWWW)
宋「これだけ立派な体躯をしているのに、亡くなった父上に申し訳なくないのか!」
史「…申し訳…ないです」
李(WWWWW)
張(WWWWW)
宋「施恩」
施恩「申し訳ございません、宋江様」
晁(泣くな、施恩。裸で)
呉(きついな)
宋「お前ら、また来年出直してこい」
史「はい…」
晁(やっと終わった)
呉(二刻はやってましたね)
宋「やれやれ」
晁「…」
呉「…」
張「俺ら出た方がいいですかね」
李「辞退しよう。腹が痛くてたまらん」
・晁蓋(ちょうがい)…次が最後のチャンスだな。
・宋江(そうこう)…くだらないにもほどがある。
・呉用(ごよう)…粗さの中に光を見出した。
・史進(ししん)…自身のふがいなさに号泣。リベンジを誓った。
・施恩(しおん)…宋江に叱られた自分が情けなかった。
・李俊(りしゅん)…俺たちは太鼓の演奏だからな。
・張順(ちょうじゅん)…(李俊殿のふんどし緩くないか?)
・林冲(りんちゅう)…くだらねえ。
三十五.
晁蓋「梁山泊暑気払い恒例、隠し芸大会を始める」
宋江「史進には決して脱がぬよう、深く釘を刺しておいた」
呉用「脱ぐための諸条件が揃いすぎてますからな」
晁「それでは行ってみよう」
呉「一番。遊撃隊将校による…」
宋「呉用?」
呉「服を脱いではならぬなら、脱がずに脱げればいいのだろう!」
史進「…」
宋(きちんと着ているではないか)
陳達「…」
穆春「…」
晁(黒子が…)
史「…」
陳・穆「!」
宋(なんと!)
呉(誰も何もしていないのに着物が消えるように脱げた)
晁(黒子が偽装とは…)
史「…」
宋(これは叱らずに見届けよう)
晁(腕を上げたな、史進)
史「…」
晁(ついに下着一枚までこぎつけたが…)
呉(ここが芸の分水嶺だぞ、史進)
史「…」
晁(史進の気が客席を圧倒している)
呉(笑い声一つ起きない)
史「喝!」
宋(脱げる!)
陳「これが本当の隠し芸だ!」穆
宋(まさに脱げる一刹那に、最小限の布で補うとは…)
晁「見事だ、史進」
呉「涙が…」
・史進(ししん)…芸終了後の気の緩みから、退場でやらかしてしまった。
・陳達(ちんたつ)…最後の布のパス練習は、調練よりも本気でやっていた。退場は知らん。
・穆春(ぼくしゅん)…天井から服を脱がせる施恩の技術も中々だったろ?退場は知らん。
・晁蓋(ちょうがい)…芸は完璧だったのに、まさか退場であんな事に…
・宋江(そうこう)…竜頭蛇尾とはこの事だ!
・呉用(ごよう)…感動の涙が退場でご破算。
三十六.
晁蓋「中秋の隠し芸大会を行う」
宋江「おおむね察したが、私からはもう言うことは何もない」
晁「それでは行ってみよう」
呉用「一番。遊撃隊将校による…」
宋「この順番を見直すべきではないのか?」
呉「天恥無用」
史進「…」
晁(着ているな)
史「…原始、裸は実に太陽であった。真正の太陽であった…」
陳達「!」
穆春「!」
宋(雷と鳥が!)
呉(どういう趣旨なんだ)
史「今、裸は月である。着物に依って脱ぎ、林冲によって輝く、公孫勝のような蒼白い顔の月である」
林冲「…」
公孫勝「…」
呉(とんだとばっちりだ…)
施恩「!」
宋(灯を消した…)
施「史進は言われた」
史「光あれ」
晁「!」
施「こうして、光があった」
宋(跡形もなく着物が消えている…)
施「史進は光を見て、良しとされた。史進は光を裸と呼び、闇を着物と呼ばれた。裸があり、着物があった。第一の日である」
呉(なんとスケールの大きな話だ)
史「第二部に続く」
・史進(ししん)…調練そっちのけで脚本書いてた。
・陳達(ちんたつ)…字は読めないが演技力は中々。
・穆春(ぼくしゅん)…台詞覚えるのが苦手。
・施恩(しおん)…演出と朗読の名手。
・晁蓋(ちょうがい)…不覚にも見入ってしまった。
・宋江(そうこう)…不覚にも続きが気になってしまった。
・呉用(ごよう)…不覚にも演出の妙に唸ってしまった。
・林冲(りんちゅう)…あとで首を捩じ切ってやろう。
・公孫勝(こうそんしょう)…あとで遊撃隊に嫌がらせをしよう。
呉用「第二部史進の園」
宋江(楊春が蛇に)
楊春「園のどの木からも食べてはいけない、などと史進は言われたのか」
穆春「わたしたちは園の木の果実を食べてもよいのです。でも、園の中央に生えている木の果実だけは、食べてはいけない、触れてもいけない、死んではいけないから、と史進はおっしゃいました」
楊「決して死ぬことはない。それを食べると、目が開け、史進のように裸を知るものとなることを史進はご存知なのだ」
穆「…もし私が死んでも、あなたの中に生き続けますか?」
楊「勿論だ、女よ」
晁蓋(女だったのか)
穆「…美味しい。あなたも食べて、男」
陳達「…美味い」
楊「…」
穆「!」
陳「!」
穆「…なぜ裸なの!?」
陳「何か隠すものを…」
史進「どこにいるのか」
穆「!」
陳(…軸が喉に引っかかっちまった)
穆「…あなたの足音が園の中に聞こえてきたので、恐ろしくなり、隠れております。わたしは裸ですから」
史「お前が裸であることを誰が告げたのか」
陳「…女です」
穆「…蛇です」
楊「…」
史「このようなことをしたお前は、あらゆる将校、あらゆる兵の中で呪われるものとなった。お前は、生涯這いまわり、調練を受ける」
楊「…」
史「男と女」
陳「…」
穆「…」
史「男の調練の苦しみを大きなものにする。男は、苦しんで調練をする。女は男に求められ、したたかに精を放たれる」
史「お前らが食べた果実は恥を知る果実だ」
陳「…」
穆「…」
史「恥さえ知らなければ、お前らは裸という光を浴び続けることができた」
陳「…」
史「だが、恥を知ったが故、着物という闇に己が光を閉じ込めることになったのだ」
穆「…」
史「楽園から去れ」
陳「そんな!」
穆「死んでしまいます」
史「嘆く者は死ね!」
陳「!」
穆「!」
史「死してなお、私の中に生き続ける、光を探す旅に出よ」
陳「…?」
史「この書が、おまえらの心に光を当てる」
穆「替天行道?」
宋(こんな使い方を…)
呉(どこから出したのでしょう?)
史「死ねぬぞ、その書を持つかぎり」
陳「死にません」
穆「もっと、苦しんでみせます」
晁(凄い…)
史「ひとつだけ、頼みたいことがある」
陳「なんですか?」
史「私に、止めを刺せるか?」
穆「!」
陳「史進様!」
史「蛇の毒に、やられたようだ…」
楊「…」
陳「いつの間に…」
史「止めを、刺せるか?」
穆「史進様…」
史「できるかできないか、訊いているだけだ」
穆「…できます」
史「史進だと思って、止めを刺せるのだな」
陳「この書に誓って」
史「よし、止めを刺してくれ」
穆「…」
史「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。海の魚、空の鳥、地を這う生き物をすべて支配せよ」
施恩「天地万物は完成された。史進は御自分の仕事を完成されたが、蛇の毒に、斃れた」
陳「史進様」
穆「おさらばです」
史「!」
陳「…なにが見えますか?」
史「裸が」
施「史進は御自分の命を離れ、安息なさった。これが天地創造の由来である」
晁(私は、泣きそうだ)
呉(酒を、飲みましょう)
宋(まるで、自分が成した事のようだ…)
・史進(ししん)…裸であることを忘れさせる完成度。最優秀賞の授賞式も、無論裸。
・陳達(ちんたつ)…訳が分からなかったが、役に入り込んでいた。
・穆春(ぼくしゅん)…穆弘に号泣されながら熱演を讃えられた。
・施恩(しおん)…さすがの朗読力。
・楊春(ようしゅん)…緊急招集されたが、その場でも呼吸が合うさすがの付き合い。
・晁蓋(ちょうがい)…人は裸である必然性を感じた。
・宋江(そうこう)…いつかこんな事をする機会があるかもしれんな。
・呉用(ごよう)…史進にここまで感動させられるとは…
三十七.
史進「一度の失敗をあげつらい、しつこくネタにするのは、人として恥ずべき行為ではないか」
杜興「お前の人として恥ずべき行為が滑稽すぎるからネタにされるんじゃ」
史「いつも服を着てるだろう」
杜「わざわざ言うまでもないことじゃな」
史「公共の場で裸になったのはあの時だけだ」
杜「なるな」
史「杜興の糞爺を黙らせたい」
陳達「俺はあの件では杜興の味方だぞ」
史「裏切るのか、陳達」
陳「俺は厠と体を洗う時と妓楼に行く時しか脱がん」
史「脱ぐではないか、陳達」
陳「脱ぐ時しか脱がん」
史「俺が脱いではいけない時に脱いだと言いたいのか?」
陳「だからネタにされてんだよ」
史「俺は裸で外を駆け回りたいから脱いだ訳ではない」
陳「まだやんのか」
杜「いい加減にしろ、史進」
史「貴様らの分からず屋ぶりにはうんざりだ」
陳「俺の台詞だ」
杜「わしは配属された時からうんざりしているが?」
史「尻でもくらえ」
陳「履いてねえのかよ」
杜「お前の性根のように汚い尻だ」
・史進(ししん)…見せびらかしたいからではない!ノーパンだと爽やかだから履いてないだけだ!
・杜興(とこう)…李応殿のぬいぐるみに語りかける夜が多くなった。
・陳達(ちんたつ)…少華山の時から履いてなかったな。そういえば。
三十八.
史進「妓楼に行くぞ、鄒淵」
鄒淵「二度とお前などと行くものか」
史「…」
史「妓楼に行くぞ、陳達」
陳達「誰がお前と行くか」
史「…」
史「行く口実はないものか…」
安道全「史進、杜興の内服薬を持ってきたが、どこにいるか知らないか?」
史「これだ!」
安「妓楼の女たちの健康診断?」
史「引き受けてくれないか、安道全?」
安「喜んで引き受けよう」
史(しめた)
史「李瑞蘭に、心置きなくしたたかに精を放つのも久しぶりだ」
安「待たせた、史進」
史「お前も悦ばせたのか?」
安「大喜びだった」
史「やるじゃねえか」
安「天にも昇る心地だと言っていたよ」
史「!?」
安「日頃の修行の賜物だな」
史「…」
安「彼女も今日は良く眠れることだろう」
史「…」
安「是非また来て欲しいと連絡先まで頂戴してしまった」
史「なんてこった」
李巧奴「また来てくださいね」
安「私の鍼がここまで喜ばれたのは初めてだ」
・史進(ししん)…またパンツを忘れてきた。
・鄒淵(すうえん)…史進と行ったところより良い店を見つけたが、絶対に教えない。
・陳達(ちんたつ)…実は李瑞蘭に惚れられてる。
・安道全(あんどうぜん)…他の女の子の連絡先までしこたま頂戴してきた。
・李瑞蘭(りずいらん)…独りよがりな史進はもういい。
・李巧奴(りこうど)…李瑞蘭の同僚。久しぶりに清々しい朝を迎えたのも安先生のおかげ!
三十九.
穆弘「春!」
穆春「兄者…」
施恩(また忘れ物か?)
陳達(予備のパンツを調練中届けに来た時は驚いた)
弘「父上から手紙が」
春「調練の後で良いだろう」
弘「そうはいかん」
春「頼むから皆の前で辞めてくれ、兄者」
弘「二人の時なら良いのか?」
春「違う!」
施(仲良いな)
陳(一方通行だがな)
史進「俺も兄貴が欲しいと思ったことはあるが、ああいうのはな…」
陳「調練の妨げだぜ」
史「この間たしなめたら、眼帯から火を噴きやがった」
陳「目じゃねのか?」
春「…」
弘「お前の可愛がっていた猫が子猫を産んだぞ!」
春「声がデカい、兄者」
史(家でやれ)
施(猫か)
陳(俺たちはネコ科だ)
弘「邪魔をした」
史(邪魔なんてもんじゃねえ)
弘「じゃあな、春。調練が終わったら手を洗うんだぞ」
春「いつも身体ごと洗ってる!」
陳(シャンプーハットしながらな)
弘「あと…」
春「…」
史「お疲れ」
春「…」
史「穆春?」
春「見ろ史進!子猫が!」
陳「またやるのか?」
施「可愛いな」
・穆弘(ぼくこう)…穆春に会いに行く用の眼帯を付けて来た。
・穆春(ぼくしゅん)…可愛がっていた猫の話のせいで調練の終了時間が四刻伸びた。
・史進(ししん)…俺たちの兄貴分というと、朱武か。あいつもめんどくせえよな。
・陳達(ちんたつ)…神機軍師のくせに、勢いで突っ走るとこあるよな。
・施恩(しおん)…実は武松が心の兄貴分。
四十.
史進「…」
李瑞蘭「…」
〜したたか〜○
史「…」
李「じゃあ、銀5粒ね」
史「値上げしたのか?」
李「追加料金よ」
史「なぜだ」
李「もう相手しないわよ」
史「…分かったよ」
李「…」
史「…」
李「早くしてよ」
史「…財布が」
李「忘れたとは言わせないわよ」
史「…」
李「九紋竜様、お支払い不可能です」
史「コールするな」
用心棒「困りますな」
史「…」
用「九紋竜様のうっかり、という事で間違い無いですな?」
史「…」
用「人間ですからそういう事もありますがね」
史「…」
用「うちにこっそりお越しになるならば、財布くらいキチンとお持ちいただかんと」
用心棒B「おい、もう一人財布忘れた間抜けがいるぞ」
A「どこのどいつだ?」
B「この爺だ」
杜興「…」
史「!?」
杜「!?」
A「お知り合いですかな?」
B「まさかこんな所で、って面してますよ、二人とも」
史「…」
杜「…」
A「二人でどうやって落とし前つけるか、ご相談していただけますね?」
・史進(ししん)…命からがら帰ることはできた。詳細は覚えてないが、服を着ていなかったことだけは覚えている。
・杜興(とこう)…命からがら帰ることはできた。詳細は覚えてないが、話を聞いた時の李応の顔だけは死ぬまで忘れないと思う。
・李瑞蘭(りずいらん)…安先生来てたのは内緒にしといたわ。いくらでも金持ってたからね。
四十一.
史進「おい、爺」
杜興「なんじゃ、小僧」
史「双頭山に飛ばされるんだとな」
杜「これでもう貴様の尻を見ずにすむから清々するわい」
史「こちとら老いぼれのカビ臭い吐息と同じ場所で息をするのもうんざりしていたから好都合だ」
杜「最後まで口汚い小僧だ」
史「口内が汚い爺が言うな」
陳達「その白髪頭で双頭山かよ」
杜「黒々とした毛髪が、大バカ供のせいで真っ白だ」
鄒淵「抜けなかっただけましだ、老いぼれ」
杜「史進の三下風情がよくも兵など率いて戦っていたもんじゃ」
陳「さっさと帰れ」
杜「言われんでも帰るわ」
鄒「当分その面見たかねえな」
杜「こっちが願い下げだ」
杜「遊撃隊の屑どもめ…」
杜「さて、双頭山に」
騎兵「!」
騎「!」
杜「なんだ!」
騎「道中くたばるんじゃねえぞ、爺!」
騎「あんたより長生きするのが俺の夢なんだから、死ぬなよ!」
杜「生意気な!」
騎「退け!」
杜「待たんか!」
遊撃隊「達者でな!」
遊「さっさとこのアーチをくぐりやがれ、爺!」
遊「向こうから骸になって帰ってくるんじゃねえぞ!」
杜「屑どもが…」
・杜興(とこう)…やる事が稚拙だぞ、バカども。
・史進(ししん)…こういうのに弱そうだよな、あの爺。
・陳達(ちんたつ)…涙ぐむ顔が眼に浮かぶぜ。
・鄒淵(すうえん)…なんだかんだで面白い爺だよな。
騎馬隊&遊撃隊
騎馬隊&遊撃隊…騎馬隊のあまりの速さについていけなかった史進は、自分を含む兵隊全員の衣類をキャストオフしてリベンジを果たす。その代償は扈三娘からの侮蔑に満ちた眼差しであった。
四十二.
林冲「強くなったな、史進」
史進「俺は林冲殿すら上回る男になる」
林「ほざけ」
史「王進先生すら上回る男になるつもりだ」
林「大きくでたな」
史「まあどれだけ強くなろうとも」
林「うむ」
史「王母様には死んでも勝てんだろうがな」
林「全面的に同意だ、史進」
史「怖いってレベルじゃないんだよな」
林「俺も着衣の乱れを厳しく指摘された時は死を覚悟した」
史「王母様に躾けられたテーブルマナーは、強烈だった」
林「梁山泊じゃ役に立たんな」
史「王母様より強い人はいらっしゃるのだろうか」
林「童貫すら躾けてそうだ」
史「まさか」
童貫「行儀が悪いな、鄷美」
鄷美「失礼いたしました」
童「手づかみで食ってはならん、畢勝」
畢勝「申し訳ございません、つい…」
童「お前ら、行儀の調練を受けさせてやろうか」
鄷「それだけはご寛恕を」
童(私が心底恐怖を覚えた唯一の相手が、王進殿のご母堂とは死ぬまで誰にも言えん)
・王母(おうぼ)…戦の指揮とか武術の強さとかにいくら秀でていようとも、それらを完全に無力化する最強おばあちゃん。
・林冲(りんちゅう)…襟のシミを見つけられた時の顔が忘れられない。
・史進(ししん)…箸の使い方を正された時の飯は全く味がしなかった。
・童貫(どうかん)…定食屋で店員に不躾な態度をとったところを公衆の面前で厳しく叱られた。
・鄷美(ほうび)…ガサツ
・畢勝(ひつしょう)…ズボラ
四十三.
史進「…」
林冲「どうした、史進」
陳達「何を黙ってやがる」
鄒淵「らしくねえぞ」
史「…父上の命日だったことを思い出してな」
林「そうか…」
陳「そういえば、俺は遠目で見たことがあるかもしれないぞ」
史「なんだと?」
陳「俺たちが頭になる前に、少華山で下っぱやってた時のことだ」
史「まだ王進先生にも出会ってない頃だ」
陳「棒を持ったくそ生意気な小僧と手を繋いでいたおっさんがいた」
林「絶対史進だろ、そいつ」
鄒「それで?」
陳「棒を持った小僧がしきりに文句を言っていたな」
史「あの時は色々やらかしてたからな」
林「今はやらかしてないとは言わせんからな、史進」
陳「文句垂れながら親父と手を繋いで歩いて…」
史「それは触れないでくれ、陳達」
陳「…すまん」
鄒「らしくねえが、悪くねえな」
林「人は死ぬ」
史「林冲殿?」
林「俺たちも、死ぬ」
陳「…」
林「死んだらどうなると思う?」
鄒「その時考えるな、俺は」
陳「俺も」
史「…」
侯真「史進殿?」
・史進(ししん)…何も言えん。
・林冲(りんちゅう)…俺は白い世界があると思うんだ。
・陳達(ちんたつ)…俺は暴れるしか脳がねえからな。病になろうとも槍を振り回してやるさ。
・鄒淵(すうえん)…俺は散々獣を殺したからな、その俺が最後は獣の餌になるなら本望だ。
・侯真(こうしん)…酒です、史進殿。
水軍
水軍…船の量に対して船乗りや漕ぎ手の数が慢性的に足りないのが悩みのタネ。交易も始めようと計画中だが、漕ぎ手が足りねえって言ってんだよ。
・李俊(りしゅん)…柄じゃないと言う割には、交易で儲ける才能があるのは闇塩商人時代の杵柄か。
・張順(ちょうじゅん)…エラのみならず、鱗まで出来始めた気がするのは気のせいか。
・阮小七(げんしょうしち)…あだ名は活閻羅(かつえんら)。現世の閻魔様。地元の村では喧嘩が一番強かったが、童猛と引き分けて、李俊にはコテンパン。
・童猛(どうもう)…童威と入れ替わったことがあるが、案の定何一つ支障をきたさなかった。
・項充(こうじゅう)…メンタルはあまり強く無い。李俊の軽口をめっちゃ根に持つタイプ。
・阮小二(げんしょうじ)…博打で最近弟子の趙林にもカモられ始めてきた。船作らせろって。
四十四.
張順「本当なんだよ」
李俊「にわかに信じがたいが」
張横「久しぶりだな、順」
順「兄貴、良いところに」
横「どうした」
李「張順が魚と喋れると言って聞かないんだ」
横「喋れるぞ」
李「張横までそう言うのか」
横「論より証拠、見せてやれよ」
順「あれか!」
李「なんだ、あれって?」
横「まあ見てろ」
李「魚影が」
横「これは宋国広しとはいえ、順にしか出来ん」
李「こいつは!」
魚「李俊のチキン野郎」
横「魚を統率して泳がせることができるんだ」
李「魚にチキン野郎と罵られるとは」
順「見たか、李俊殿」
李「あの魚どもを一網打尽にして捌いて干物にしてやりたくなったぞ」
順「それは絶対にやめろ」
李「なぜだ」
順「俺の部下だぞ。それを殺すと言うのか」
李「しかし、張順」
順「なんだ」
李「あれを見ろ」
宋江「今日は大漁だな、盧俊義」
盧俊義「おう!」
順「」
・張順(ちょうじゅん)…魚と話せるが、それはつまり人間関係ならぬ魚関係まで背負いこむことになるのだ。
・李俊(りしゅん)…宋江の釣った魚が久しぶりに美味かった。
・張横(ちょうおう)…弟は昔よりさらに魚に近づいてきてると思った。
・宋江(そうこう)…交渉の結果、張順と対立している区域での釣りのみ許可された。
・盧俊義(ろしゅんぎ)…おう、おう。(今釣った鯉も張順の部下なのか?)
四十五.
李俊「お前は井の中の蛙だ、阮小七」
阮小七「なんだいきなり」
李「つまり大海を知らない」
七「生まれがこの辺なんだから仕方ねえだろ」
阮小二「なら海に連れてってくれよ」
趙林「何人女を引っ掛けられるか勝負しましょうよ、李俊殿」
李「よし、表向きは海の船造りがどうのとかいう理由を拵えておけ」
童猛「海も久しぶりだ」
張順「俺は潯陽江の方が馴染み深いが、良いもんだな」
李「遊びに来たんじゃねえぞ」
童「だけど、俺たちまで行く理由がないんじゃないですか?」
張「梁山泊の水軍みんな引き連れて、調練でもするおつもりで?」
李「表向きはな」
童「…裏の理由は?」
李「…遊びに来た」
童「さすが李俊殿!呉用殿に出来ないことを平然とやってのける」
張「そこにシビれる、あこがれるぅ!」
李「貧弱な呉用殿には及びもつかんだろう」
七「これが海か」
二「広いな」
趙「李俊殿、あの女ヤバいですよ」
李「どいつだ?」
趙「あの超美人」
瓊英「…」
李「ヤバっ」
童「やれやれだぜ」
瓊「あら、李俊殿に水軍の皆さん、御機嫌よう」
李「バカンスか、瓊英殿?」
瓊「仕事帰りの一息です」
鄔梨「誰かいるのか、瓊英?」
瓊「李俊殿と水軍の方々が」
鄔「なぜこんなところまで?」
李「…海で調練を」
鄔「今汗をかいたな、李俊」
李「!」
鄔「これは嘘をついている味だ」
李「鄔梨〜」
瓊「父上に嘘は無駄です」
李「交易船を融通するから、見逃してくれ」
瓊「本当に、そこまでしてくださるのですか?」
李「約束する」
瓊「だが断ります」
李「なに!」
瓊「この瓊英が最も好きな事のひとつはご自身でご自身のことを強いと思ってらっしゃる方にNOと断る事です」
李「この李俊が!」
瓊「李俊殿。だからあなたはヘタレなのです」
李「!」
瓊「調練をサボると心の中で思ったなら、その時既に調練をサボっているのです」
李「瓊英殿の覚悟が、言葉でなく心で理解できたよ」
張「みるみる老いたな、李俊殿」
七「釣れた!」
趙「徐々に日が暮れます」
二「海の船を見に行こう、趙林」
・李俊(りしゅん)…呉用からの罰について、考えるのをやめた。
・童猛(どうもう)…説教中、時を止めて逃げたかった。
・阮小七(げんしょうしち)…時を吹き飛ばして過去に戻り、海に行かない選択をしたかった。
・張順(ちょうじゅん)…説教中の時を飛ばせないかと思った。
・阮小二(げんしょうじ)…説教中に時を加速させたかった。
・趙林(ちょうりん)…説教を別の世界の自分に受けさせたかった。
・鄔梨(うり)…盲目の商人。李俊の汗は、ゲロ以下の匂いがプンプンした。
・瓊英(けいえい)…泳いでいる最中、不思議な弓と矢を見つけた。
重装備部隊
重装備部隊…大型機材の作成や攻城兵器を作るのが得意。断金亭の宴会用大道具も担当している。
人物
・李応(りおう)…飛刀は項充と同じくらい得意。項充が速さなら、彼の持ち味は命中精度。
・解宝(かいほう)…解珍に習った刺又の遣い手。大工仕事でも意外と便利に使える。
四十六.
李応「まだ駄目か…」
解宝「そろそろ休めよ、李応殿」
李「あと少しなのだが」
解「盧俊義殿の無茶ぶりだろう?」
李「しかし、空を飛べる乗り物は必ず出来るはずだ」
解「そうだろうけど…」
李「!」
解「夜中なのに迷惑な連中だ…」
李「凌振の大砲…」
解「李応殿?」
李「これだ!」
李「協力感謝する。凌振、魏定国」
魏「しかしなあ、李応殿」
李「なんだ」
魏「正気か?」
李「至って」
魏「昨日の睡眠時間は?」
李「二日前に遡るが…」
凌「野暮だぞ、魏定国」
解「李応殿、これは…」
李「人間大砲だ」
凌「砲手の腕がなったぞ、李応」
湯隆「梁山泊の化物は軒並み馬鹿だな」
解「ただ吹っ飛ぶだけじゃねえだろうな?」
李「俺の衣装に秘密がある」
魏「鷲か?」
李「撲天鵰マンだ」
解(一昔前に見たなこんなの)
李「凌振、頼む」
凌「任せろ」
湯「保険は入ったのか?」
李「もしもの時は、故郷の家族に満額振り込まれる」
解(止めらんねえな、これは)
凌「点火!」
魏「…」
凌「発射!」
李「!」
魏「飛んだ!」
解「五体は満足だな」
魏「落ちるぞ!」
湯「見てらんねえよ」
解「空を見ろ!」
魏「鳥だ!」
湯「飛ぶ乗り物だ!」
凌「いや、撲天鵰マンだ!」
李「!」
魏「飛んでいる、だと?」
湯「すげえものを見た」
凌「見事だ、李応」
解「…」
魏「どうした、解宝」
解「水を差すようなことを言っていいか?」
湯「…」
解「李応殿は、むささびの飛び方から着想した」
魏「むささび?」
解「李応殿の様な格好で木々を飛び移る小動物だ」
湯「つまり?」
解「鳥じゃない」
凌「野暮だな、解宝」
解「凄いのは分かる」
魏「…」
解「しかし、どうもしっくりこない…」
李「大成功だ!」
魏「着地まで見事だ、李応殿」
湯「どうなるものかと思ったぜ」
解「李応殿」
李「見たか、解宝」
解「見たぞ、李応殿」
李「飛んでいる時にふと気づいた」
解「…」
李「鳥じゃないな、撲天鵰マン」
解「李応殿!」
魏「熱い抱擁を…」
湯「似た者同士か」
凌「次は俺の番だ」
・李応(りおう)…欧鵬にも飛んでほしいな。
・解宝(かいほう)…偵察に使えんかな。
・凌振(りょうしん)…体重制限に引っかかり、必死のダイエット中。
・魏定国(ぎていこく)…絶対に死なないなら、俺もやってみてえな。
・湯隆(とうりゅう)…失敗したことを考えないなんて、考えられん…
二竜山
二竜山…梁山泊の2軍。だいたい2~3年を目途に梁山泊入りを目指す調練プランを立てているが、どうしてもいつまでたっても梁山泊に行けない古参の兵が出てくる。
人物
・楊志(ようし)…隊長。長々と続いた嫁自慢がやっと終わったと思ったら、また同じくらいの時間の息子自慢が始まる。
・秦明(しんめい)…隊長。長々と続いた嫁自慢がやっと終わったと思ったら、また同じくらいの時間の息子自慢が始まる。
・解珍(かいちん)…虎の着ぐるみを着ているように見えるが、毛皮100%の代物である。
・郝思文(かくしぶん)…副官。長々と続いた嫁自慢がやっと終わったと思ったら、また同じくらいの時間の息子・娘自慢が始まる。
・石秀(せきしゅう)…曹正の健康診断結果を肉屋目線で評価した結果、挽肉のカサ増しに使える程度の品質とのこと。
・曹正(そうせい)…何かと下らないギャグを言っては、石秀に肉切り包丁を持って追いかけ回されている。
・蔣敬(しょうけい)…兵站担当。出荷される豚が曹正に見えてきた。
・李立(りりつ)…兵站担当。得意げに料理を振舞ったが、意外と普通だった。
・周通(しゅうとう)…梁山泊かませ犬ランキングトップ3に入る剛の者。それは強いのか?
・黄信(こうしん)…あだ名は鎮三山(ちんさんざん)。二竜、桃花、清風の山々を巧みに馬で駆けさせされて一流だからな!と兵に発破をかけすぎて呼ばれるように。
・郭盛(かくせい)…あだ名は賽仁貴(さいじんき)。古の方天戟の使い手薛仁貴だぞ!なんちゃって!って意味。
・燕順(えんじゅん)…部下の恋愛相談に乗ることも多いが、おおむね結論は妓楼に行け!
・鄭天寿(ていてんじゅ)…彼のプロマイドは熱心な二竜山の奥様方に高値で取引されている。
・楊春(ようしゅん)…無口だが、見ようによってはまんざら悪い顔ではない。
・鄒潤(すうじゅん)…額のこぶがトレードマーク。頭突きを極める調練は過酷を極めたという。そりゃそうだよ。
・龔旺(きょうおう)…虎の刺青をしている。銭湯に行ったとき、機嫌の悪い巨人ファンの爺にいちゃもんをつけられた。
四十七.
楊志「いつ食っても曹正の作った」
曹正「…」
楊「羊の腸詰は美味いな」
曹「なあ、楊志」
楊「なんだ」
曹「この腸詰は西洋でソーセージと言うのだ」
楊「それが?」
曹「俺が作ったソーセージだ」
楊「?」
曹「俺の作ったソーセージ」
楊「分かってる」
曹「分かってない!」
周通「楊志殿らしい」
・楊志(ようし)…隊長。長々と続いた嫁自慢がやっと終わったと思ったら、また同じくらいの時間の息子自慢が始まる。
・曹正(そうせい)…何かと下らないギャグを言っては、石秀に肉切り包丁を持って追いかけ回されている。
・周通(しゅうとう)…梁山泊かませ犬ランキングトップ3に入る剛の者。それは強いのか?
四十八.
石秀「曹正は肉屋だが」
曹正「操刀鬼の曹正とは俺のことだ」
石「実は俺の実家も肉屋だったのだ」
曹「初耳だな」
石「お前の解体の腕は認めるが、俺だって負けたもんじゃない」
曹「面白い」
石「負けた方が解体されるルールで勝負だ」
曹「待て、石秀」
楊志「美味いもんが食えると聞いて」
曹「解体の腕を競うのがメインのはずだが」
石「料理まで競うのも悪くなかろう」
曹「俺は秘伝の曹正のソーセージで勝負するぜ」
石「今なんと言った、曹正」
曹「曹正のソーセー」
石「次言ったら腸詰と一緒に煙で燻すからな」
曹「発想が物騒なんだよ、お前は」
楊「やはり曹正の羊の腸詰は美味い」
曹「ソーセー」
石「…」
曹「」
楊「?」
石「楊志殿。俺の煮込みを食ってくれ」
楊「石秀が料理の名手とは知らなかった」
石「牛をバラして内臓をグツグツと煮込んだ逸品だ」
楊「…」
曹「美味いが、後味が悪いな」
楊「食欲を落とさないでくれ」
石「バカな」
・楊志(ようし)…腹ぺこになるとついついそこら辺の屋台で買い食いをしてしまい、嫁さんと楊令に叱られる。
・石秀(せきしゅう)…致死軍から配属されたせいか、発想が血生臭い。そういうのは解体だけにしといてくれよ。
・曹正(そうせい)…石秀にお腹を触られながらBクラスと呟かれた時は肌に粟が立った。
四十九.
楊志「令、土産だ」
楊令「曹正殿のソーセージですね!」
志「今なんと言った、令」
令「曹正殿のソーセージ!」
志「面白すぎるだろ、それWWW」
令「曹正殿のソーセージ!」
志「曹正のソーセージ!」
済仁美(楊令と同レベルの旦那様も可愛い…)
楊志「曹正」
曹正「なんだ」
楊「やはり楊令は天才だ」
曹(また始まった)
楊「お前の羊の腸詰を見てなんと言ったと思う?」
曹(まさか)
楊「曹正のソーセージだとさ!」
曹「…」
楊「笑った、笑った」
曹「…」
曹「楊志にあそこまで受けるギャグだったとは」
石秀「俺に言ったら、お前の腸を腸詰の皮にするからな」
・楊志(ようし)…精神年齢は楊令と一緒。下手したら下回ることもしばしば。
・楊令(ようれい)…この頃からすでに武術の才の片鱗を見せ始めており、楊志の痣を増やすこともしばしば。
・済仁美(さいじんび)…楊志の妻。楊令はまだしも、楊志の思いがけない幼さにときめくこともしばしば。
・曹正(そうせい)…ならば、俺の人生の一代記をそーせー記というのはどうだ?
・石秀(せきしゅう)…屠殺包丁を研いでくるから、そこを動くな。
五十.
曹正「今日も暑いな、石秀」
石秀「そうだな」
曹「汗が止まらん」
石「肉汁だろう」
曹「…」
石「あまり肉汁を垂らすと旨味が逃げるぞ、曹正」
曹「そんなに俺を肉屋に卸したいのか」
石「ブーブー言うな」
・石秀(せきしゅう)…これで部下の人望は厚いんだから不思議だよね。
・曹正(そうせい)…どうして俺は豚を解体する時に複雑な気持ちになるのだ?
五十一.
楊志「二竜山相撲大会決勝だ」
蒋敬「石秀と曹正の因縁の取組になるとは」
楊「既に凄まじい気がぶつかり合っている」
蒋「見ものですね」
周通「見合って見合って」
石秀「…」
曹正「…」
周「はっけよい」
楊「…」
蒋「…」
周「のこった!」
石「!」
曹「!」
楊「これは」
蒋「曹正のまわしが」
楊令「母上。曹正殿のソーセージ、小さいですね」
済仁美「厚い皮に包まれてるわね」
周「のこった!のこった!」
志「全く気にしてない」
蒋「本気だ」
令「私はもっと太いのが好きです」
済「小ぶりだと物足りないわね」
石「」
曹「」
済「楊令。汁が垂れてるわ」
令「たくさん出てきました」
志「いかん、石秀のまわしまで!」
蒋「大惨事だ」
令「熱い!」
済「大きいから気をつけて口に運びなさい」
令「…」
済「舐めてはいけません」
石「」
曹「」
令「」
済「頬張りすぎ、楊令」
蒋「殴り合いになった」
周「ブレイク!」
令「ごちそうさまでした!」
済「美味しいおかずだったこと!」
・楊志(ようし)…相撲大会から総合格闘技にルール変更し、替えのパンツを用意させた。
・蒋敬(しょうけい)…二竜山の簿記担当、基、兵站担当。
・周通(しゅうとう)…行事からレフェリーにチェンジした。
・石秀(せきしゅう)…太くて硬い。信念の話である。
・曹正(そうせい)…彼のソーセージは小ぶりでも絶品。さっきから何かを連想している者は、心が汚れているのだ。
・楊令(ようれい)…曹正のソーセージが大好物。口いっぱいに頬張るのが何よりの幸せ。
・済仁美(さいじんび)…男たちの浅ましい大乱闘をしり目に、母子水入らずの時を過ごした。
五十二.
楊志「曹正のソーセージを売り出すための戦略会議だ」
曹正「しかしなあ、楊志」
楊「嬉しくないのか?」
曹「パッケージに私が作りました、とデカデカ俺の顔写真を載せるのはどうだろう?」
楊「石秀の名案だが」
石秀「顔が見える食品を売ることは、安全・安心に関わりますからな」
曹「…」
曹(俺の面が割れるだろう、石秀)
石(豚の安全・安心など知ったこっちゃない)
楊「石秀?」
石「曹正の顔写真は良いとして、二竜山で作りました!というのは広めない方がよさそうですね」
楊「確かにその通りだ」
曹(自分で気づいてくれ、楊志)
楊「すると、曹正の顔写真も良くないかもしれんぞ」
石「それは曹正を豚かソーセージのキャラにアレンジしましょう」
楊「名案だ」
曹(野郎)
石「デザインは私が」
曹「楊令にさせろよ、楊志」
楊「のった!」
石「チッ」
曹「商品名も普通に…」
楊「それはない」
曹「え?」
楊「楊令のギャグセンスを否定する気か、曹正」
曹「吹毛剣を、しまえ」
・楊志(ようし)…見ろ曹正、楊令は絵の才能まであったぞ!
・石秀(せきしゅう)…そもそものネタ考案者が自分のタイトルを返上する訳にはいかんだろう、曹正?
・曹正(そうせい)…俺が、楊令考案キャラクターの着ぐるみを着るのか?
五十三.
曹正「俺が死ぬ前に聞いてくれ、周通」
周通「…」
曹「羊の腸詰を、西欧ではソーセージというのをたまたま知った」
周「…」
曹「楊志と会う前は、そのギャグで食卓を豊かにしたものだ」
周(どうだろう…)
曹「楊志と出会い、石秀の野郎が二竜山に来てから風向きが変わってな」
周「出番だぞ、曹正」
楊令「曹正のソーセージ!」
曹「!」
楊志「カット!」
曹「またダメなのか、楊志」
志「呼吸にして一つ半遅い!」
曹「動きにくいのだ、この着ぐるみは」
志「文句は侯健に言え!」
石秀「…」
志「石秀も調練の動きが活かせてないぞ!」
石(俺の分まで用意させるとは…)
曹(死なば諸共、道連れだ)
志「令を見習え!一度もNGを出していないぞ!」
曹(それは確かに凄い)
志「死域に入るまで続けるからな」
志「よし!」
曹「」
石「」
蔣敬(えらいことになってた…)
令「蔣敬殿!」
蔣(同じ時間撮影したはずなのにこの余裕)
志「見事だ二人とも」
曹「」
石「」
志「では第2部を」
曹
石
蔣(切れた)
・楊志(ようし)…日頃は広い視野を持つが、その焦点が楊令に絞られた瞬間がヤバイ。
・石秀(せきしゅう)…楊令考案ソーセー君の着ぐるみは、下腹部の締め付けが痛む。
・曹正(そうせい)…楊令考案セージ君の着ぐるみは、腹回りがキツくて汗が止まらない。
・楊令(ようれい)…長いセリフがあるのに一度も噛まず、死域にも入らずに、撮影をやりとおした。
・周通(しゅうとう)…カメラの予備バッテリーも切れたらどうしようかと思いながら、一緒に死域に入っていた。
・蔣敬(しょうけい)…確かに美味しいから売り上げは期待できますけど、このCMがプラスに働くかといえば…
・侯健(こうけん)…私は仕立て屋であって、着ぐるみ職人ではないからな?
五十四.
曹正「出来たぞ!」
楊志「曹正?」
石秀「まさか雌豚と子豚をもうけたのではなかろうな?」
曹「」
石「!?」
楊「…何が出来たのだ?」
曹「曹正のソーセージの新作だ」
楊(もう飽きたんだが)
曹「早速楊令に食わせに行くぞ、楊志」
楊「今のお前にソーセージ作り以外の仕事はないのか?」
曹「曹正のソーセージの新作だ、楊令」
楊令「今までと何が違うのですか、曹正殿?」
曹「食べれば分かる」
令「…すごく、大きいですね」
済仁美(なぜ卑猥に聞こえるのかしら?)
令「大きすぎてお口に入りません」
曹「ならば、楊志の吹毛剣で半分にしてくれ」
志「そんな事で楊家の家宝は使わん!」
済「野菜も食べてね、楊令」
令「トマトが二つも…」
曹「…切れんな」
志「中に何が入っているのだ?」
曹「切ってからのお楽しみだ」
令「曹正殿早く!」
石「許さんぞ、豚め…」
曹「いかん!」
石「!?」
志「曹正のソーセージの先から…」
済「したたかにチーズが…」
令「すごいものを見ました」
・楊志(ようし)…曹正のソーセージしたたかチーズ入りか…
・石秀(せきしゅう)…楊志と同じ位置に火傷が出来た。
・曹正(そうせい)…石秀の怪我が完治するまで、豚小屋に強制移住させられた。
・済仁美(さいじんび)…今夜、楊志様にお願いしよう…
・楊令(ようれい)…美味しいんですけど、なんだか変な気持ちです。
五十五.
曹正「ソーセージの店頭販売を実践して、お客様アンケートを取ろうと思う」
楊志「良いことだ」
石秀「店頭の提供スペースは豚舎の仕切り2頭分か…」
曹「…様々な味やアンケート用紙にも工夫を凝らした」
蔣敬「大事なことです」
石「男女の他に豚の雌雄も必要ではないかな?」
曹「言わせておけば」
曹「いらっしゃい!」
子供「曹正のソーセージの曹正だ!」
曹「美味いぞ!」
子「したたかチーズはないの?」
曹「…あれは、やめたんだ」
子「そうなんだ」
子「そしたら、曹正のソーセージの曹正のソーセージ!って芸ができたのにな」
曹「どういう意味だ、それは」
石「WWW」
楊「WWW」
蔣「WWW」
子「ハムは作らないの?」
曹「ハムか…」
石「こいつがハムみたいなもんだから、紐で縛り付けお歳暮にして送ってやろうか?」
子「いらねえよWWW」
子「ベーコンは?」
石「こいつの汗は塩気が強すぎるから食えたもんじゃない。やめておけ」
子「酷いやWWW」
曹「石秀」
楊「教育上、そこまでにしろ」
・曹正(そうせい)…完売したし、アンケートも絶好調だ。
・楊志(ようし)…もっとTPOをわきまえろ、石秀。
・石秀(せきしゅう)…なぜか曹正といると、スイッチが入ってしまうのです…
・蔣敬(しょうけい)…派手なCMや奇抜な商品ではなく、堅実な商売が何よりですね。
五十六.
林冲「…」
楊令「!」
林「!」
楊「」
秦明(私が見ても厳しい稽古だ…)
穆弘(こんな稽古を毎日続けているんだぞ、秦明)
李俊(将来が末恐ろしいな)
林「やめ」
楊「…」
林「…」
楊「…」
林「なんだ、楊令」
楊「…」
林「始めるのか…」
秦(どうしたんだ?)
穆(まあ見てろ)
李(もう少し覗こう)
楊「!」
林「…この染みの事か?」
楊(コクリ)
林「…汁物を零したのだ」
楊「!」
林「…着物のシワの事か?」
楊(コクリ)
林「…今は単身赴任中だからな」
楊「!」
林「今日は野菜を食ったか、だと?」
楊(コクリ)
林「…」
秦(これは?)
穆(林冲の稽古並みに厳しい、楊令の生活習慣チェックだ)
林「今日のスタンプは無しだと!」
楊(コクリ)
林「厳しすぎるぞ、楊令」
楊「…」
秦(お前が言うな、という声が聞こえた)
穆(俺もだ)
李(どの口が言いやがる)
林「今日もらえなかったら、罰を受けるではないか」
楊「…」
秦(罰?)
穆(スタンプの数で、家の処遇が変わるらしい)
李(奥方の依頼さ)
・林冲(りんちゅう)…結局赴任期間中に3個しかもらえなかったので、室内では着ぐるみのみ着用する罰を受けている。
・楊令(ようれい)…(張藍様たっての依頼だからな。しっかりやらねば)
・秦明(しんめい)…私も楊令の前では襟を正さなければ。
・穆弘(ぼくこう)…視界が狭いもんで、よく食卓の杯を零しちまうんだ。
・李俊(りしゅん)…楊令からイエローカードを一番貰っている。
五十七.
鄭天寿「ほれ、楊令」
楊令「…」
公淑「見事な銀細工ですね」
鄭「昔とった杵柄ってやつですよ」
楊「…」
鄭「兄ちゃん、やるだろう?」
公「楊令、御礼は」
鄭「礼などいりません。持ってきな」
楊「…」
公「鄭天寿殿、ありがとうございました」
燕順「おい、鄭天寿」
鄭「どうした」
燕「女の髪飾りを作ってくれ」
鄭「またかよ」
燕「持ってるとモテるんだ、あれは」
鄭「作ってるのは俺だぞ」
燕「金は出してんじゃねえか」
鄭「割り増してくれ。俺だって忙しいんだ」
燕「王英の嫁の分も作ってやったらどうだ?」
鄭「死んでも無いな」
秦明「鄭天寿」
鄭「秦明殿。珍しい」
秦「簪を作って欲しいのだが」
鄭「簪、ですか?」
秦「…」
鄭「かしこまりました」
秦「料金は」
鄭「いりませんよ」
秦「そういう訳には」
鄭「宴で振舞ってくれたらチャラにしますって」
秦「鄭天寿」
鄭「必ず、届けますから」
秦「頼む」
・鄭天寿(ていてんじゅ)…腕の良いイケメン銀細工師。気のいい兄ちゃん。
・楊令(ようれい)…鄭天寿に作ってもらった装飾品が初めてのおしゃれ。まだ大事に付けてるよね。
・公淑(こうしゅく)…誰かからもらった銀の簪は二人にとって大切なもの。
・燕順(えんじゅん)…例え窮地に陥ろうとも、彼の銀細工と共に戦い続けるのだ。
・秦明(しんめい)…花栄と仲が良かったな。
五十八.
秦明「公淑は素晴らしい」
郝思文「最近の素晴らしいことは?」
秦「容の心を巧みに読んで的確にあやしていた」
郝「素晴らしい」
秦「陳娥殿は?」
郝「やはり素晴らしいです。帰ったら食いたいと思ったものが出てきます」
秦「奥方同士の仲も非常に良好だ」
郝「妻には死ぬまで敵いませんな」
解珍「惚気るな、愚かな旦那どもめ」
秦「厄介な爺が」
郝「いつも物を運ぶ籠に乗って参上されますよね、解珍殿」
解「わしの死んだ嫁は、それはそれは虎のようだったぞ」
秦「初めて聞く話だ」
解「いつもわしの作る料理に不満を言っていた」
秦「シンプルに不味かっただけではないか?」
解「散々わしの肉刺しとタレを食っておきながら、その言い草はなんだ」
秦「それは悪かった」
郝「誰しも始めたての頃はありますからね」
解「まあ、保健所の職員をいなすのが巧みだったのは感謝していたがな」
秦「保健所が訪問してきたのか?」
郝「それはまずい」
・秦明(しんめい)…公淑がゴキブリ退治で使った狼牙棒の後始末を文句ひとつ言わずやってのけた。
・郝思文(かくしぶん)…陳娥は私の心が読めるな。隠し事などしようものなら、大変な目に合う。
・解珍(かいちん)…凌蘭という妻だったんだがな、妻への想いはタレの壺に引き継がれておる。
五十九.
郝嬌「秦明様」
秦明「何かな、郝嬌殿」
郝「赤ちゃんはどうやってできるのですか?」
秦「それは」
郝「どうやって?」
秦「なぜ、私に」
郝「秦明様なら赤ちゃんの仕込みを終えたばかりだからよく知っていると、解珍様が」
秦「あの糞爺」
秦「それはだな、郝嬌様」
郝(様?)
秦「私も、赤子を作った時のことはよく覚えてなくて」
郝(お顔が真っ赤)
秦「いかん。調練の検分の時間だ。その事は父上に聞いてみたら良いと思う」
郝(父上も似たような感じなんだけど)
秦「すまぬ。さらばだ。郝嬌様」
郝(郝嬌様なんて、関勝殿に呼ばれて以来…)
秦「やれやれ。戦ならこんな事にはならんのだが」
燕順「久しぶりだったろう、楊春」
楊春「まあ…」
秦「どこに行っていたのだ?」
燕「いやあ。久しぶりに里の妓楼に…」
秦「不埒者!」
燕「」
楊(今、疾駆の勢いを乗せたラリアットを…)
・郝嬌(かくきょう)…郝思文の娘。ぽやっとしているが、可愛いからよし。関勝と何かがあり、既に陥落させている。
・秦明(しんめい)…二竜山の指揮官。子どもの性教育のために裴宣が作ったテキストを読んで赤面した。
・解珍(かいちん)…秦明へのセクハラが面白すぎる。お互い50を超えた爺のはずだが。
・燕順(えんじゅん)…すけべ番長王英。イケメン鄭天寿という二大女泣かせを従わせたツワモノ。かくいう自分もなかなかの物。
・楊春(ようしゅん)…地味。戦の指揮はやたらできるが、地味。史進に振り回された過去あり。
六十.
郝嬌「秦明様」
秦明「…何かな、郝嬌様?」
郝「秦明様は公淑様のどこが好きなんですか?」
秦「そうだな…」
郝「…」
秦「人に優しく、思いやりがあり、芯が強いところ、かな」
郝「意外…」
秦「意外とは?」
郝「解珍様は、どうせおっぱいが大きいからだろうって言ってました」
秦「糞爺め」
秦「もう解珍のスケベ爺にものを尋ねてはならん、郝嬌様」
郝「ですが、すごく貴重な事を教えていただきましたよ?」
秦「どんな?」
郝「秦明様が好きな女性を前にするとどうなるか、とか」
秦「…」
郝「秦明様が公淑様を奥様にする時にいかに鈍臭かった、とか」
秦「狼牙棒はないか、公淑」
解珍「待て、秦明」
秦「幼気な女子に何を教えているのだ、解珍」
解「戯れだ」
秦「不健全な青少年育成を聚義庁に告発するぞ」
解「悪かった」
郝瑾「解珍殿」
秦「大人の話をしているから待て」
瑾「麓の妓楼の話ですか?」
秦「!?」
解「…」
秦「保護者を交えて面談を行うから首を洗って待っていろ、解珍」
・秦明(しんめい)…この日の二竜山は霹靂火が鳴り止まなかった。
・郝思文(かくしぶん)…この日の二竜山は井木犴怒涛の流星群が降ってきた。
・陳娥(ちんが)…真顔で理詰めで詰問する様は秦明にして、背にじわりと汗をかいた。
・解珍(かいちん)…青少年へのセクハラ案件として始末書と反省文を書かされた。
・郝嬌(かくきょう)…秦明様って純情なのね、兄上。
・郝瑾(かくきん)…俺もお前も将来どんな人を好きになるのかな。
六十一.
解珍「…」
黒鉄「…」
解「長生きしたもんだ」
黒「…」
解「…お前ももう、走れんか?」
黒「!」
解「すまん。お前ならまだまだ走れるよな」
黒「…」
解「悪かったよ…」
黒「!」
解「黒鉄?」
黒「!!」
解「どこへ行く!」
黒「!!」
解「待て!」
解「黒鉄!」
黒「!」
解「…」
黒「!」
解「…老いぼれたのは、わしだと言いたいのか、黒鉄」
黒「!!」
解「独竜岡一の猟師を舐めるな!」
黒「!!」
解「走るぞ、黒鉄」
黒「!!」
解「一息つくのはいいだろう、黒鉄?」
黒「…」
解「…二竜山とはいえ、いつの間にか随分と深い所に来たな」
解「帰れるかな…」
黒「…」
解「ため息か、今のは」
黒「…」
解「すまん、黒鉄」
黒「!」
解「走るな!」
黒「!!!」
解「黒鉄?」
黒「…」
解「もう分かるぞ」
黒「…」
解「黒鉄?」
黒「…」
解「…そういうことか」
黒「!」
解「…」
黒「…」
解「黒鉄」
黒「…」
解「さらば」
黒「!」
・解珍(かいちん)…黒鉄?きっと二竜山を元気に駆け回って獲物を探しとるよ。
・黒鉄(くろがね)…しょうがない飼い主め。最期の走りくらい綺麗に終わらせやがれ。
双頭山
双頭山…ある時は、ノッポと脳筋の二人三脚。またある時は、バンドの活動拠点。趣向が違いすぎるんじゃねえか?
人物
・朱仝(しゅどう)…兵たちの間では、髭に意志があるのではないかとの噂をたてられたが、真偽のほどを知っているのは雷横だけ。
・雷横(らいおう)…陳達と跳躍競技で勝負したらほぼ互角。彼は高さ。陳達は距離に自信あり。
・董平(とうへい)…風流喪叫仙というバンドリーダー。アルバム作成時は調練すらままならない。
・宋清(そうせい)…また曹正のソーセージであらぬ誤解を受けて、取引先からクレームを受けた。
・孟康(もうこう)…旗がやたら目立つ。郁保四もうなるデザイン。
・李忠(りちゅう)…兵卒だろうが年下だろうが、教えを乞う時は真摯に聞く姿勢に定評あり。
・孫立(そんりつ)…鞭はかなり強い。嫁には弱い。
・鮑旭(ほうきょく)…盗人時代の昔馴染みがよりを戻そうと連絡を取ってくるが、全部突っぱねてる。
・単廷珪(たんていけい)…風流喪叫仙のライブでの水の仕掛けは定評がある。
・楽和(がくわ)…最近お姉ちゃんが本当に面倒くさくなってきた。
六十二.
雷横「双頭山は個性に乏しくないか?」
朱仝「俺もそう思っていた」
宋清「中途半端だよな」
雷「二竜山のような育成をするわけでもないし」
宋「生産をする現場でもないし」
朱「軍も梁山泊の兵より少し弱いし」
雷「Bクラスだな、俺ら」
朱「コアなファンが付いてきそうなチームだ」
雷「双頭山をAクラスにするにはどうすれば良いだろうか」
朱「将校を補充してもらう」
雷「なぜか俺に会う事はなさそうな気がする」
宋「双頭山近辺を梁山泊の領土にする」
雷「遠い未来にやってのける気がするな」
朱「お前の意見は、雷横?」
雷「兵を鍛えぬく」
宋「雷横らしい」
孟康「なんですかこれは」
雷「双頭山のマスコットだ」
朱「背がでかいからぴったりだな」
孟「あんたの方がでかいだろう」
宋「確かに、双頭山のマスコットがピンなのはおかしいな」
雷「言い得て妙だ」
朱「やらんぞ」
雷「俺がやろう」
宋「私がやる」
朱「ならば俺が」
雷・宋「決まりだ」
朱「」
・朱仝(しゅどう)…双頭山マスコットの春くん。引くほどデカいから子供が寄ってこない。
・雷横(らいおう)…マスコットのコンビ芸を考案したが悉く滑った。
・宋清(そうせい)…マスコットが双頭山のイメージダウンに繋がらないかとても心配。
・孟康(もうこう)…双頭山マスコットの秋くん。やっぱりデカイから、並び立つと圧迫感が凄い。
六十三.
鄧飛「…」
裴宣「…」
朱仝「これはどういうことだ、孟康」
孟康「裴宣が二刀流の遣い手だと知った兄貴が立ち合いを所望してな」
雷横「二刀流と鎖鎌の立ち合いとは」
楊林「顔はいかついとはいえ、文官だろ?兄貴の相手になるのか?
孟「見ていよう…」
鄧「!」
裴「!!」
楊「やはり技量の差が…」
朱「よく見ろ、楊林」
雷「小手試しの分銅を巧みに跳ね除けているぞ」
朱「動きも無駄がない」
孟「やるではないか、裴宣」
鄧「!」
裴「!!」
楊「兄貴が鎖で裴宣の片腕の剣を奪った!」
孟「勝負あったか」
朱「いや待て、裴宣が」
雷「これは」
裴「!」
鄧「!?」
朱「一気に裴宣が間合いを詰めた」
雷「完全に意表を突いた動きだ」
鄧「!」
裴「!」
楊「兄貴もかろうじて鎌で弾いたが…」
朱「やめ!」
裴「ありがとうございました」
鄧「…見事だった、裴宣」
雷「良い立ち合いを見せてもらった」
鄧「飲馬川の頭になれるぜ、裴宣」
・裴宣(はいせん)…不思議と気が合いますな。鄧飛と孟康とは。
・鄧飛(とうひ)…俺たちもお前みたいな頭脳派が頭領だったらだいぶ違ったかもな。
・孟康(もうこう)…堅物そうな顔してるが、話せる奴だよ。
・朱仝(しゅどう)…遠くの山は馬が川で水を飲んでいるように見えるな。
・雷横(らいおう)…裴宣もきっと将校になれる器だぞ。
・楊林(ようりん)…強え文官も悪くねえな。
六十四.
朱仝「!」
雷横「!」
朱「!」
雷「!?」
朱「…とったぞ、雷横」
雷「くそっ」
朱「今日はお前の奢りだ」
雷「…負けた男の戯言を一言だけ言わせてくれ」
朱「…」
雷「髭で撹乱するのは無しではないか?」
朱「…なんのことかな」
雷「野郎…」
朱「俺はこの髭でハンデを背負った立ち合いをしていると言っても過言ではない」
雷「なぜそんなリスクを…」
朱「そのリスクと引き換えに得た技の数々を、お前は卑怯だと言いたいのか、雷横」
雷「たしかに、暗器に精通したものを卑怯だとは言いたくない」
朱「ならば」
雷「だが、髭なんだろう?」
朱「髭も暗器だが?」
雷「何言ってやがる」
朱「…お前なら、見せても良いか」
雷「何をだ?」
朱「俺の髭の中の小宇宙を…」
雷「何を馬鹿な」
朱「…」
雷「!?」
朱「…どうだ?」
雷「…おう」
朱「言わずもがなだが」
雷「誰にも言わん、いや、言えん」
朱「ならばいい」
雷(…すげえものを見た)
・朱仝(しゅどう)…髭を剃るときは細心の注意を払わないと色々大変だという。
・雷横(らいおう)…髭の中に一体何を収納してやがる…
六十五.
朱仝「なぜ髭がないのかって?」
鮑旭「美髭公というのに、なぜ髭がないのか新兵が気にしていました」
朱「…新兵に教えるには早い」
李忠「まあそうでしょうな」
鮑「李忠殿はご存知なのですか?」
李「いや、知らないよ」
鮑「私も孫立殿も知らないです」
朱「今知ってるのは宋清だけか…」
鮑「…」
李「鮑旭。そういうのは、本人が酔っ払って泣きながら話す機を待つのが鉄則だ」
朱「なんだと、李忠」
李「そうやって一人で上に立つことになった者の重荷を、少しでも背負える副官になりたいかな、私は」
朱「…」
鮑「そういうものに、私は疎くて…」
李「お前は大丈夫だ、鮑旭」
鮑「李忠殿?」
李「今のお前には分からんかもしれんが、私にはお前は大丈夫だということだけは、はっきり分かる」
朱「俺も分かる」
鮑「?」
李「今は分からないを愉しめ、鮑旭」
朱「だいぶもどかしいがな」
鮑「はあ」
李「もう一つ分かるのは」
鮑「…」
李「孫立の女房はダメだ」
朱「分かる」
鮑「分かります」
・朱仝(しゅどう)…苦労してると労わり方も渋いな。
・李忠(りちゅう)…本当はもっと立派になってるはずだったんですがね。
・鮑旭(ほうきょく)…あの言葉が、今の私には少しだけ分かった気がします。
六十六.
董平「鮑旭は今でこそあんな馬鹿丁寧な口調で話すが」
楽和「…」
董「昔はどうしようもない盗っ人だったらしい」
楽「意外ですね」
董「俺は鮑旭にあの頃の気風を思い出してもらいたいんだ」
楽「黒歴史ほじくり返さなくても」
董「鮑旭の荒々しさを取り戻そう」
楽(今のままでいいと思うけどな)
鮑旭「董平殿」
董「おう、鮑旭」
鮑「兵の調練にて報告したいことがございます」
董「鮑旭」
鮑「はい?」
董「荒々しく報告しろ」
鮑「荒々しく、ですか?」
董「荒々しく」
鮑「…」
董「…」
鮑「…棒で叩きませんか?」
董「…叩かんが?」
鮑「…本当に?」
董「なぜ叩くんだ?」
楽(何かあったな)
鮑「しからば」
董「…」
鮑「孫立の野郎は要領良く適当にやってやがる」
董(ドラマでも見たことない変貌ぶりだ)
鮑「兵を走らせるのも飽き飽きだが、今日も四刻走らせたぜ」
楽(内容は真面目だ)
鮑「将校に使えそうな奴のリストはこちらにまとめてある。読んでおいてくれ」
董「律儀だな、鮑旭」
・董平(とうへい)…面白半分でちょっかい出して後悔することが多い。
・楽和(がくわ)…馬麟とのセッションはチケットを売り出した直後に完売する。
・鮑旭(ほうきょく)…荒々しくしゃべると背後が寒くなる。
六十七.
鮑旭「この通りだ、楽和」
楽和「…」
鮑「私と馬麟のバンドにぜひボーカルとして参加してくれないか?」
楽「…」
鮑「双頭山のイメージアップにもなるではないか、楽和」
楽「喪門仙の曲は聴いているよ、鮑旭」
鮑「本当か?」
楽「魂を揺さぶられるとは、まさにこの事だと思った」
鮑「ならば…」
楽「身内のカラオケで歌ったこともある」
鮑(無断配信されていたとは…)
楽「あそこまで心を込めて歌えたのは初めてだったと言ってもいい」
鮑「そこまでのファンなのに、なぜ?」
楽「姉がロックを嫌がるんだよ、鮑旭」
鮑「そういう…」
楽「不良の音楽などけしからんと」
鮑(人のこと言えるのかな)
楽「しかし、私も梁山泊の男だ」
鮑「楽和!」
楽「謹んで、引き受けよう」
鮑「ありがとう!」
董平「…」
楽「隊長?」
董「…ドラムで混ぜてくれ」
鮑「喜んで!」
楽「…風流双槍将のお手並み拝見といきましょうか」
董「聞いて驚け」
鮑「次の馬麟の休息日は…」
・鮑旭(ほうきょく)…ギター担当。喪門仙から風流喪叫仙にバンド名を変更した。風流かどうかは聞き手次第。
・楽和(がくわ)…ボーカル担当。新しい楽曲の扉が開いた音がした。姉のLINEの通知もオフ。
・董平(とうへい)…ドラム担当。やっと歌舞音曲が出来る設定を活かせた、と感無量。あだ名は双槍将(そうそうしょう)だが、所により風流双槍将とも呼ばれる。
・馬麟(ばりん)…鉄笛担当。溜まりに溜まった有給を全部使って、双頭山にて活動中。
・王母(おうぼ)…無断配信している宋のカラオケ店に警告の手紙を書いてくれた。
六十八.
董平「風流喪叫仙が売れすぎて大変だ」
鮑旭「調練もままならなくなってきましたからね」
馬麟「林冲殿にどう言い訳したらいいか」
楽和「そんな中、ニューアルバムを拵えねばならなくなりました」
董「宋清め」
鮑「我々で双頭山が潤うなら」
董「俺たちの懐も潤うが」
鮑「平日は調練ですからね」
董「しかし困った事が一つある」
鮑「それは?」
董「作詞家がいない」
楽「確かに」
馬「今まで古の名詩のカバーで済ませていたものな」
董「ニューアルバム作成にあたり、俺たちのオリジナル楽曲を作る必要があるのだ」
鮑「梁山泊に詩の名手は?」
馬「…」
楽「…」
董「いないのだ、それが」
鮑「蕭譲殿?」
董「字は上手いが、オリジナティはない」
楽「呉用殿?」
董「呉用殿がロック?」
馬「李逵は?」
董「童謡になりそうだ」
鮑「…母上が」
馬「王母様が?」
鮑「活動に困ったらこの袋を開けろと」
董「それは?」
鮑「この袋です」
董「開けてくれ」
楽「この詩は!」
鮑「なんと…」
・董平(とうへい)…美男バンド風流喪叫仙ドラム。あの詩のもつエネルギーは一体…
・鮑旭(ほうきょく)…ギター。母上の作風とはまた違う詩ですね。
・楽和(がくわ)…ボーカル。ここまで心地よいシャウトができる歌は初めてです。
・馬麟(ばりん)…鉄笛。この心の熱さ、替天行道を読んだ時と同じだ…
六十九.
董平「俺たちも売れに売れてここまできたのだと、感慨深い思いはあるのだが」
鮑旭「うっかり自分たちが叛徒であることを忘れてしまいそうになりますね」
楽和「手引きをありがとう、燕青」
燕青「当然だ」
馬麟「まさか開封府でライブをするなど、夢にも思わなかった」
燕「しかし、違和感がある」
董「それは?」
燕「我々の顔は割れているはずなのに」
鮑「はい」
燕「青蓮寺が動きを見せないどころか、我らを護衛するかのような動きを見せているのだ」
楽「なぜ?」
燕「検討も付かん」
聞煥章「なぜ梁山泊の者の活動を許可するのですか」
袁明「風流喪叫仙に手を出す事は禁ずる」
洪清「…」
侯健「万一の逃げる手筈は、手を打ってある」
董「助かるよ」
燕「今回は私も笛で混ぜてくれ」
馬「無論だ、燕青」
鮑「馬麟とは違う笛の名手と聞いているから、合わせるのが楽しみです」
董「一体何人入ったのだ?」
楽「双頭山の兵より多そうですね」
董「少し、複雑だな」
鮑「では、行きますか」
董(なんという熱気)
楽(生きていてよかった)
鮑(母上に届けたい…)
燕(!?)
馬(燕青?)
燕(あれは、袁明と洪清)
袁「…」
洪「…」
燕(まるで何かを懐かしむような顔だ)
馬(お前のソロだぞ、燕青)
燕(任せろ)
女性「…」
董(誰だ?)
鮑(ステージに?)
楽(仮面をしていても、美しさが分かる)
馬(…)
燕(そういう事か)
李師師「…」
燕(ならば私の全力の笛で応えよう)
燕「♪〜竹笛〜♪」
李「♪〜舞踏〜♪」
董(なんだこれは…)
鮑(言葉にならない…)
楽(今はこの二人の世界を届けよう)
馬(…)
燕「…」
李「…」
燕(…返すぞ)
董(任せろ)
鮑(見ていてください、母上)
楽(行きます)
馬(…)
董「…終わった」
鮑「しかし…」
楽「私たちは帰れるのですか?」
燕「心配ない」
馬「燕青」
燕「…」
馬「あの女は誰だ?」
燕「…」
董「気にするな、馬麟」
燕「…彼女のおかげで、私たちはここから出られる」
馬「…」
袁「李師師様」
洪「お戯れが過ぎます」
李「つい…」
聞(訳が分からん)
・董平(とうへい)…東平府の太守の娘もいた気がした。
・鮑旭(ほうきょく)…ファンサービスもしたいところですが、今回はそうもいきませんよね。
・楽和(がくわ)…女性人気ナンバーワン。
・馬麟(ばりん)…本当に聴かせたい友を思いながら吹いていた。
・燕青(えんせい)…李師師から玉の腕輪を貰っていた。
・侯健(こうけん)…衣装でも力になれて何よりだ。
・袁明(えんめい)…次は無いですよ、李師師様。
・洪清(こうせい)…玉の腕輪はどこへ?
・李師師(りしし)…舞に夢中で失くしてしまったようです。
・聞煥章(ぶんかんしょう)…音楽など何がいいのかさっぱり分からん。
・呂牛(りょぎゅう)…お前のそういうところは嫌いだ。
七十.
董平「宋国による我々の楽曲の無断利用が後をたたんから、公式PVを作ることになった」
鮑旭「まさか宋国が不正をなすとは」
馬麟「俺たちが謀反人とはいえけしからん国だ」
楽和「謀反人の権利を認める国はあるのでしょうか…」
董「我々も撮るが、他の部隊にも作成してもらった」
鮑「見てみましょう」
董「致死軍・飛竜軍か」
公孫勝「…」
馬「将校と兵が勢ぞろいだ…」
楽「このために招集してくださったのでしょうか」
劉唐「…」
楊雄「…」
孔亮「…」
公「!」
董「凄い!」
鮑「兵が舞っている…」
馬「身軽な兵揃いだからな」
楽(統率が取れすぎて、逆に不気味だ…)
董「歌そっちのけだな」
董「…問題作だ」
鮑「察しました」
馬「十八歳以上の禁は?」
董「貼ってない」
楽「全年齢対象なんですか?」
董「…笑ったら負けだぞ」
鮑「今少し笑いましたね」
史進「…」
鮑「やはり…」
馬「待て、鮑旭」
楽「アングルが…」
董「見えそうで見えんだと!?」
史「…」
陳達「…」
鄒淵「…」
史「」
陳「!」
董「遠近法…」
史「」
乱雲「…」
鮑「乱雲の顔で…」
史「…」
杜興「!!」
馬「見える寸前で杜興が横入りに…」
楽「間が完璧だ」
史「」
陳「」
鄒「」
董「各自絶妙な配置で…」
鮑「誰が撮ったのでしょう…」
董「…ラストだ」
史「!!」
董「」
鮑「詰めが甘い!」
・董平(とうへい)…予約者特典に混ぜようか?
・鮑旭(ほうきょく)…希望者特典にした方が炎上しないのでは?
・馬麟(ばりん)…しかし、動画を無断転載されたら結局炎上するぞ。
・楽和(がくわ)…そんな心配するなら、私たちのイメージダウンに直結することを考えてくださいよ!
・宋清(そうせい)…結局メンバーでPV撮って、遊撃隊の楽曲使用は許さなかった。
・公孫勝(こうそんしょう)…我ながら壮観だったと感無量。
・劉唐(りゅうとう)…同時進行の任務の進捗が心配でならなかった。
・楊雄(ようゆう)…まさか全軍全員いるとは、高廉も思わなかったようです。
・孔亮(こうりょう)…俺たちのPVにもできるんじゃねえか?
・史進(ししん)…無声PVにされたが、これはこれで味わい深いものがある…
・陳達(ちんたつ)…宋国チャンネルの広告動画に混ぜてやろうぜ。
・鄒淵(すうえん)…遊撃隊チャレンジのハッシュタグで視聴者に投稿してもらおう。
・乱雲(らんうん)…裸の史進と阿吽の呼吸。
・杜興(とこう)…李応と出会った時、膝から崩れ落ちた。
流花寨
流花寨…弓矢を作る職人は、三顧の礼で梁山泊に招かれた。花栄も尊敬してやまないその道40年の大御所。
人物
・花栄(かえい)…弓矢より難しいことができないイケメン隊長。
・朱武(しゅぶ)…陣形敷きてえなぁ、とよくぼやくようになった。
・孔明(こうめい)…優しすぎて、食べたかった定食のおかずを物欲しそうな花栄についあげてしまう。
・欧鵬(おうほう)…鉄の槍の稽古相手はもっぱら呂方。方天戟とはいい勝負ができる。
・呂方(りょほう)…週刊占いの的中率に宋国メディアからの依頼も殺到している。
・魏定国(ぎていこく)…相手の心の炎を焚きつける、火付け役によくなる。ただ、凌振に火をつけるんじゃなかった…
・陶宗旺(とうそうおう)…梁山泊キルスコアランキング上位に自分がいる理由が分からないまま、石積み組んでた。
七十一.
花栄「弓の稽古に飽きた」
朱武「お前ほど極めたらな」
花「騎射だって出来るぞ」
朱「あいにくやる機会がないな」
花「馬からそっくり返って十連射して外さないんだが」
朱「弓を作った人もそこまで極めてくれたら本望だな」
花「最近は矢をいなくても貫けるようになってきた」
朱「なんだそれは」
花「あつらえたように欧鵬がやって来た」
朱「射るのか?」
花「」
朱(凄い気だ)
花「!!」
欧「!」
朱「欧鵬!」
花「案ずるな朱武。気絶しただけだ」
朱(普通案ずる…)
花「小李広のエア弓矢だ」
朱「すげえものを見た」
朱「戦で使えるのではないか」
花「だめだ。これ一回で一万本くらいのエネルギーを使う」
朱「しかし、これは脅威だぞ」
花「こんなの使うくらいなら」
朱「こんなのって」
花「私が一万本射れば、一万人殺せるぞ?」
朱「もうエア弓矢は使うな、花栄」
・花栄(かえい)…弓の名手でイケメン。どっかで見た設定だな。物心ついた頃には手の皮が分厚かった。秦明が結婚した時は新婦のお父さんのようなリアクションを見せた。
・朱武(しゅぶ)…花栄の軍師だが、その前は裸ん坊の暴れん坊史進のお守り役だった。その頃に比べたら胃薬の量は四分の三に減った。
・欧鵬(おうほう)…将校としてよりも、目撃者として優秀。信じられないものを見たときは、だいたい彼が先にいる。その真相は15巻にあり。
七十二.
花栄「私といえばなんだと思う?」
朱武「弓だな」
花「お前ですらそうなのか、朱武」
朱「落胆するなよ」
花「気になって流花寨の兵全員に聞いてみたんだが」
朱(お気楽なもんだな)
花「全体の95%がそう答えた」
朱「残りの5%は?」
花「イケメン」
朱「チッ」
花「よく通る舌打ちだ」
朱「お前はどんな結果だったら満足なのだ?」
花「そうだな」
朱「…」
花「…」
朱「思いつかんのか?」
花「思いつかんな」
朱「そんなもんさ」
花「弓が上手いのも、顔が良いのも当たり前なものだから、もっと本人的に意外性のある答えがほしかった」
朱「チッ」
花「舌打ち上手いなあ、朱武」
朱「じゃあ弓とイケメンを除いてアンケートをとれば良いのではないか?」
花「さすが神機軍師」
朱(そんなんで褒められても)
花「もう一度アンケートを取ってくる」
朱(戦時中なんだが)
朱「どうだった?」
花「見事に収束した」
朱「一番多かったのは?」
花「特になし」
朱「やっぱり」
花「チッ」
・花栄(かえい)…弓矢とイケメンを除いたら?間抜け、じゃないですか?(魏定国)
・朱武(しゅぶ)…史進とは違うベクトルで我が道を行く花栄は、また違っためんどくささがあるという。
七十三.
花栄「やれやれ」
朱武「どうした、花栄」
花「飛麟が、息子が反抗期らしい」
朱「息子がいるんだったな、花栄は」
花「流花寨にいては、家族も呼べん」
朱「帰ってやれよ、花栄」
花「俺だけそんな訳にはいかん」
朱「花栄」
花「どうした」
朱「神機軍師が守る流花寨は心配か?」
花「朱武」
花「会ったらすぐに戻る」
魏定国「そういうのを野暮って言うんですよ」
花「すまん」
朱「さっさと帰れ」
花「そうさせてもらう」
魏「家族か」
朱「お前は、魏定国?」
魏「天涯孤独って訳じゃねえが、もう会えんだろうな」
朱「そうか」
魏「お前はどうなんだ?」
朱「家族はいないが兄弟がいる」
花「なにもかもが懐かしい」
妻「…」
花「なんと言って会えばいいかな」
妹「兄上!」
花「お前がいたのを忘れていた」
妹「相変わらずね」
花「そう言うな」
妻「花栄様!」
花「変わりないか?」
妻「誰かのおかげで身も細る思いです」
花「誰のせいかな?」
妻「…」
花「すまん」
花「飛麟は?」
妻「最近ずっと山に一人きりでいます」
花「そうか」
妻「私にはどうすることも出来なくて」
花「お前にも、飛麟にも、寂しい思いをさせているな」
妻「そんな」
花「たまには父親らしいことをさせてくれ」
妻「お願いします。花栄様」
花「山の中というと…」
花飛麟「…」
花「やはりな」
飛「!」
花(上手くなったものだ)
飛「!」
花(力が有り余っているのだな)
飛「!」
花「!」
飛「!?」
花「力を抜け、飛麟」
飛「父上!」
花「それでは10年経っても岩は貫けんぞ」
飛「!」
花(今の飛麟に言葉はいらんな)
飛「!」
花(俺も弓で付き合うとしよう)
飛「!」
花「!」
花(まだやるつもりか)
飛「!」
花(嬉しそうな顔をしやがる)
飛「!」
花「飛麟」
飛「はい!」
花「今日はここまでだ」
飛「父上」
花「おう」
飛「ありがとうございました」
花「飛麟」
飛「はい」
花「私は今から流花寨に帰る」
飛「そんな」
花「母上と叔母さんによろしくな」
飛「私も一緒に」
花「ならん」
飛「なぜです」
花「お前が子どもだからだ」
飛「子どもでも矢を射ることはできます」
花「その矢で何を射るつもりだ?」
飛「敵を」
花「敵とは、人のことか?」
飛「人でも、敵です」
花「敵にも家族がいる」
飛「!」
花「友もいる、愛する人もいる」
飛「…」
花「お前のような息子がいる敵も、必ずいる」
飛「…」
花「それを痛いほど分かっていても、私は敵を射殺すのだ」
飛「どうして?」
花「それが私の選んだ道だから、かな」
飛「…」
花「次に会う時までに、私はお前の問いの答えを探しておくよ」
飛「いつ、会えますか?」
花「それは分からない」
飛「必ず会えますよね」
花「全力を尽くす」
飛「約束ですよ」
花「当たり前だ」
飛「父上は破ってばかりだ」
花「そうだったかな?」
花「元気でな」
飛「手紙を書きます」
花「読んだら、必ず返す」
飛「父上の返事は、いつも遅いからな」
花「忙しいんだ。必ず返すから、勘弁してくれ」
飛「…」
花「…」
飛「…」
花「またな」
飛「…」
花(私は、何人の敵を射殺し、彼らの家族を悲しませたのかな)
朱「どうだった」
花「見ての通りだ」
朱「お前のためのとっておきを用意してある」
花「その山積みの書類だな」
朱「ご明察」
花「朱武」
朱「なんだ」
花「恩にきる」
朱「ならとっとと仕事を片付けろ」
花「昼飯後でいいか?」
朱「お前なら、朝飯前だろう?」
花「腹が減っては、戦はできんよ」
・花栄(かえい)…実は帰り道で迷い、一日ロスしていた。
・朱武(しゅぶ)…久しぶりに陳達、楊春に手紙を書こうと思ったが、字が読めなかったな、あいつら。史進は、別にいいか。
・魏定国(ぎていこく)…郝思文の家族といる姿が微笑ましかったな。特に末息子のでかいおっさんがいる時の。
・花栄の妹…実は彼女も弓の名手。実家で教室を開いている。
・花栄の妻…見合い結婚だった。第一印象は最高だったが、一緒に暮らせば暮らすほど、諸々の鈍臭さに呆気にとられた。
・花飛麟(かひりん)…10歳くらい。顔が良く弓が上手いこと以外鈍臭いところまで父に似ている。
七十四.
花栄「…」
李俊「もう一度だ、花栄」
魏定国「あの二人は何を?」
童猛「どっちが鈍臭いかの勝負をしている」
魏「…それは?」
童「李俊殿は花栄殿に泳ぎを教え、花栄殿は李俊殿に弓を教えて、双方の鈍臭さを競うそうだ」
魏「それには客観的な評価がないと…」
童「それも含めて鈍臭いからいい」
李「流花寨の大将が未だに泳げないのはまずいぞ」
花「それではまず、浮くところから教えてくれ」
李「浮き方だと…」
魏「率直に教えを乞う姿勢は評価できる」
童「まさかそこからとは…」
李「力を抜くのだ」
花「では力の抜き方も教えてくれ」
李「…」
魏「主体性がないな」
童「やはり鈍臭い」
李「まず何も考えないで水面にたたずめ」
花「…よし」
李「それがつかめたら、浮くところは解決した」
花「浮けるようになったぞ!」
魏「無邪気だ」
童「李俊殿も根気強い」
李「浮けるようになったら、自由に泳いでみろ」
花「…分かってきたぞ!」
魏「ほう」
童「身体能力は高いからな」
魏「結果、ここ一番で花栄殿が足をつり、その救出に李俊殿だけでは難航した結果、張順が緊急出動するという双方鈍臭い結果に終わった」
童「五分だな」
李「弓か…」
花「…」
魏「俺らも物好きだな」
童「面白いからいい」
李「!」
花「どこに射ている!」
童「…バレたのか?」
魏「大丈夫か」
李「!」
花「前に飛ばせ、李俊」
魏「限度がある…」
童「ギャラリーに甲冑を容易しなければ死人が出る」
李「頼むから、一から教えてくれ」
花「お前は呼吸を教えられて出来るようになったのか?」
李「…」
魏「花栄殿なら言わんとすることは分からなくもないが」
童「俺なら矢を折って帰るな」
花「…少し待て」
李「?」
魏「的を後ろに?」
童「何をする気だ」
李「…意味が分からんが」
花「射れば分かる」
李「!」
魏「当てた!」
童「李俊殿の明後日の方角を捉えたのか!」
李「当たった」
花「まず、矢を射ることを覚えよう」
魏「鈍臭さを生かす教えとは」
童「見事な鈍臭さだ」
魏「結局李俊殿は後ろの的に当てる妙技を会得した」
童「これが素だから恐れ入る」
魏「鈍臭さも伸ばすと技になるのは、俺たちの学びだ」
童「限度ははち切れてるがな」
花「…」
李「…」
魏「結局どちらが鈍臭いかな…」
童「誰が決めるのだ?」
趙林「それはお二人に」
魏「!」
童「いつの間に」
趙「俺に気付かぬとは、中々の鈍臭さですな」
魏「くそっ」
童「蟷螂窺蝉とはこの事だ」
趙「…どういう意味ですか?」
魏「盧俊義殿に聞け」
趙「今から結果発表をしますので、審査員席に」
魏「用意されているとは…」
童「難しいジャッジになるぞ…」
花「…」
李「…」
趙「結果発表です!」
魏「…俺は、泳ぎのここ一番で足をつってしまう鈍臭さに共感したから、花栄殿に軍配だ」
花「よし!」
趙(よしなのか?)
童「俺は、正面に矢を射れないのが信じ難いから、李俊殿に軍配を上げる」
李「覚えてろ、童猛」
趙「票が割れたので、同率優勝です!」
魏「いいのか、それで」
童「どうでもな」
趙「メダルが一つしかないので、はんぶんこしましょう」
魏「お前も鈍臭いぞ」
童「運営まで鈍臭いとは」
趙「!」
花「半分とは言い難いな」
李「俺はいらん」
趙「…じゃあ花栄殿」
花「割れたメダルはいらないよ」
趙「…」
魏「全員鈍臭いな」
童「誰が得した?」
趙「…アガリです」
劉唐「…」
・花栄(かえい)…泳げるようになったぞ!という微笑ましくも鈍臭い姿は、殺伐とした流花寨の兵の癒しになっている。
・李俊(りしゅん)…弓を射る時の技は宴会では大ウケ。誰も素の技量だと思ってないから。
・魏定国(ぎていこく)…俺らが覗いている時は、俺らもまた覗かれているんだな。
・童猛(どうもう)…李俊に尻を蹴り上げられた。
・趙林(ちょうりん)…蟷螂窺蝉の意味を知り、賢人の智慧に少し触れた気がした。
・劉唐(りゅうとう)…言葉巧みに趙林の分け前も博打で巻き上げた。その銭はどこへ?
聚義庁
聚義庁…脳筋・ポワポワ・パワハラしかいない3トップに、頭脳が苦悩しない日はない。
人物
・晁蓋(ちょうがい)…村の保正時代の武勇伝は事欠かないが、ノリで塔を背負いながら川を渡るのだけは二度とやらない。
・宋江(そうこう)…ノリで説教するが、着地点を決めてないから、双方どうしたらいいのか分からなくなることがしばしば。
・盧俊義(ろしゅんぎ)…ノリで無茶ぶりして、職人たちの納期を破らせることもしばしば。ただ、その後の気前はいい。
・呉用(ごよう)…なんなんだよこの3人、と思いながら今日も深夜残業。
・柴進(さいしん)…また新しいビジネスを思いついた。
・阮小五(げんしょうご)…呉用の良い息抜き相手。碁もオリジナル将棋もいい勝負。
・宣賛(せんさん)…梁山泊節目の宴会では、頭巾にひと工夫凝らしてやってくる。
七十五.
宋江「梁山泊大運動会の目玉」
呉用「大障害物競争ですね」
盧俊義「今回も手が込んでいるのかな?」
呉「宣賛統括の元、李雲、湯隆、凌振、解宝、陶宗旺、魏定国、単廷珪が本気を出しました」
宋「見るものが見ればヤバさが分かるな」
盧「怪我人は?」
呉「医療班を配置済みです」
宋「さすが呉用」
呉「郁保四が脱落しました」
宋「湯隆の鉄条網はくぐり抜けられる気がせん」
盧「関勝が、頭ひとつ出ているぞ」
宋「フラグの気を感じるな」
呉「魏定国、凌振の瓢箪矢、地雷、大砲ゾーンです」
盧「落ちた」
宋「宣賛の落とし穴か」
呉「行動パターンを読み尽くしている」
盧「死人は出んよな、呉用」
盧「単廷珪の泥濘と濁流で李逵が脱落したか」
呉「陶宗旺、解宝、李雲による石積みと兵器の急斜面です」
宋「最大の難所だ」
盧「登りきればゴールだ」
呉「索超と劉唐が」
盧「解宝の卵鉄に吹き飛ばされた」
宋「石積みも炸裂した」
盧「死人は出んよな、呉用」
宋「死ねばそこまでのものだ、盧俊義」
盧「先頭は誰だ?」
呉「林冲と公孫勝と史進です」
宋「裸で走ってるのは?」
盧「言うまでもないぞ、宋江殿」
呉「史進が穴に落ちました」
宋「ゴール!」
盧「同着か?」
呉「いや、あれは?」
盧「王定六が既にゴールしているだと?」
呉「障害物エリアを迂回して裏からゴールした?」
宋「審議!」
高みの見物
・宋江(そうこう)…王定六のズルは許せん!
・盧俊義(ろしゅんぎ)…王定六の奇策は正直あり。
・呉用(ごよう)…上に同じ
優勝者と敗者
・王定六(おうていろく)…戴宗の入れ知恵で物議を醸したが、表ルートの倍以上走った事が分かり見事優勝。
・林冲(りんちゅう)…公孫勝の野郎に足を引っ張られなければ。
・公孫勝(こうそんしょう)…林冲のバカに走路を遮られなければ。
・史進(ししん)…単廷珪ゾーン前で既に裸。
プロ仕掛け人軍団
・宣賛(せんさん)…走者の行動パターンを読みきった落とし穴の配置はさすが。
・湯隆(とうりゅう)…林冲に賭けたがスッた。
・李雲(りうん)…公孫勝に賭けたがスッた。
・解宝(かいほう)…史進に賭けたがスッた。
・陶宗旺(とうそうおう)…手堅く王定六に賭けて儲けた。
・凌振(りょうしん)…呼延灼に大砲を当てそうになった。
・魏定国(ぎていこく)…見てて笑い疲れた。
・単廷珪(たんていけい)…上に同じ。
脱落者たち
・郁保四(いくほうし)…ビリッケツで完走した姿は宋江の感動を呼んだが、デカすぎて胴上げを断念された。
・関勝(かんしょう)…この穴に関勝殿が落ちる、という落書きを見つけて倍ムカついた。
・李逵(りき)…無事張順に回収された。
・索超(さくちょう)…落とし穴?落ちるわけないだろう。
・劉唐(りゅうとう)…石積みの下敷きになり救助が難航したが赤毛で分かった。
行間の脱落者たち
・呼延灼(こえんしゃく)…泥沼で徐寧に足を取られ道連れにされた。
・徐寧(じょねい)…賽唐倪を着用して善戦したが、泥沼に沈没した。
・李俊(りしゅん)…濁流に流される大失態。水軍勢はしばらくネタにして愉しんだ。
・張清(ちょうせい)…コースを外れて迷子になったところを致死軍に発見された。
・燕青(えんせい)…意外と最初の方の落とし穴に落ちる番狂わせ。
・石勇(せきゆう)…劉唐と同じ石積みに巻き込まれたのに救助隊に気付かれなかった。
七十六.
宋江「魯達」
魯達「はい」
宋「この書物の」
魯「替天行道ではないですか」
宋「この内容」
魯「…」
宋「本当に私が言ったことなのか?」
魯「宋江殿?」
宋「冊子になってから初めて読んだのだが」
魯(初めて?)
宋「泣きながら一気に読んでしまった」
魯「世界の中心で志を説かれた方が?」
宋「早い話が内容を全く覚えてなかった」
魯「聞きたくもない話ですな」
宋「冊子になって初めて読んだから、とても新鮮な気持ちで読むことができた」
魯「…」
宋「私も今すぐ梁山泊に一人の兵として加わりたいと胸が震えるほど感動したぞ、魯達」
魯「ここが梁山泊で、あなたは頭領です、宋江殿」
宋「しかし、この諸悪の根源が私を悩ませているのだ」
魯「原作者と思えない暴言だ」
宋「施恩を知っているな?」
魯「替天行道マニアの」
宋「彼の同好の士のオフ会に招待されたのだ」
魯「彼らにとって宋江殿は神ですからな」
宋「私も読者として参加できたらどれ程良かったか」
魯(ツッコミきれん)
・宋江(そうこう)…彼の発言は全て、誠心誠意、真心を込めて言っている。ボケているつもりは全くない。
・魯達(ろたつ)…改めて替天行道を読んでみたら号泣した。この冊子の内容は、本当に俺が書き留めたんだっけ?
七十七.
宋江「梁山泊博打大会だ」
盧俊義(博打って公にやるものなのか、呉用?)
呉用(公に反乱起こしてる私たちが今更気にすることではないかと)
盧(一理ある)
劉唐「…」
石勇「…」
白勝「…」
穆弘「…」
宋「決勝はこの四人でポーカーをしてもらう」
盧(麻雀じゃないのか?)
呉(ルールを知らないそうです)
穆「…」
宋「穆弘が劣勢だ」
李俊「穆弘が次に身体のどのパーツを賭けるか、賭けようぜ」
童猛「前歯に銀一粒!」
李立「俺は左の小指!」
阮小二「残りの目玉!」
趙林「…」
劉「…」
石「…」
白「…」
穆「」
趙「穆弘殿、手札は?」
穆「このままで、いい」
劉「ハッタリはきかんぞ、穆弘」
穆「俺は全てのチップに加えて…」
俊(何を賭ける?)
穆「!」
趙「!」
劉「!」
石「!」
白「!」
穆「残りの目玉を賭ける」
阮「当たった!」
俊「しかし洒落にならん」
阮「確かに」
白「早く治療を…」
穆「そんな事より貴様ら、賭けるか降りるか決めないか!」
白「」
劉「…」
石「…」
白「俺は、降りる」
劉「…ならば俺は」
穆「…」
劉「全てのチップに加え、この赤毛を賭ける」
穆「!」
石「俺も、全てのチップに加え…」
穆「…」
劉「…」
石「勝った者が無償で俺を働かせる権利を一月分賭ける」
俊(面白くなってきた)
阮(しかし、穆弘の目玉が…)
穆「…」
劉「…」
石「…」
趙(穆弘殿が両目に眼帯を…)
劉「穆弘…」
穆「なんだ、劉唐」
劉「きさま!見えているなっ!」
穆「!」
石「降ろせたのは白勝だけだな」
白「ハッタリなのか!?」
劉「眼帯を、外せ」
穆「…」
石「そちらではない、今つけた方だ」
穆「…負けた」
白「見せろ、穆弘」
穆「なぜ分かった?」
劉「俺たちはお前の右目側にいたからな」
石「拙い芝居だ」
穆「!」
白「くそ!」
俊「ただの間抜けか」
阮「俺は勝ったからな」
劉「それでも賭けるのか、穆弘?」
石「没遮攔を遮るのも悪くない」
穆「野郎…」
宋「穆弘イカサマにより退場!」
盧「本当にやりかねん」
劉「…」
石「…」
宋「梁山泊博打王の龍虎が相打つとは」
盧「高度な戦になるぞ」
劉「…」
石「…」
劉「石勇」
石「…」
劉「部屋の床下と屋根にいる蚤どもを、全て潰せ」
趙「!」
石「ならば劉唐」
劉「…」
石「さっきから耳障りな風の音を、止めてくれるよな?」
趙(これがプロ…)
劉「二枚チェンジ」
趙「…」
石「三枚チェンジ」
趙「…」
盧「趙林も見事なディーラーになった」
呉「船大工見習いですよね?」
劉「…」
石「…」
劉「ロイヤルストレート・五虎将」
石「…ファイブ・タイガー」
盧「関勝、林冲、秦明、呼延灼、董平!」
呉「雷横、燕順、王英、李雲、顧大嫂!」
宋「劉唐の勝ちか」
盧「見応えのある博打だった」
呉「穆弘のイカサマは?」
盧「おもちゃと血糊の演技だが、あの二人の目は欺けなかったな」
宋「なるほど」
石「…俺の負けだ」
劉「今日はついてるな」
石「…まだ何か隠してるのか?」
劉「さて?」
趙(初めに俺を買収した時点で劉唐殿の勝ちです)
・劉唐(りゅうとう)…金よりも自分の運を試したくてやっている。
・石勇(せきゆう)…賽子博打だったら彼に分があった。
・穆弘(ぼくこう)…薛永に不意打ちで鎮静剤を打たれなかったら本気でやってた。
・白勝(はくしょう)…養生所連中の相手じゃ無敵でも、プロには勝てねえや。
・趙林(ちょうりん)…買収された金も、結局劉唐にカモられた。
・宋江(そうこう)…博打好きが多いな、梁山泊は。
・盧俊義(ろしゅんぎ)…鄒淵、鄒潤、孫新も中々の遣り手らしいぞ。
・呉用(ごよう)…戦とはどうも勝手が違うらしく、朱武も宣賛も予選負けです。
・李俊(りしゅん)…俺も弱くはないぞ。
・童猛(どうもう)…ならなんで決勝にいねえんだよ。
・李立(りりつ)…途中で日和るからな、李俊殿。
・阮小二(げんしょうじ)…小五と小七とよくやったな。
七十八.
宋江「梁山泊飛び道具使い選手権だ」
盧俊義「飛刀の部は接戦だったが項充が勝ち上がったか」
呉用「選手入場!」
花栄「…」
張清「…」
項充「…」
龔旺「…」
丁得孫「…」
盧「各自の得意距離が違いそうだが」
呉「裴宣、蔣敬による綿密な計算で各人の公平で適切な距離を設定しています」
宋「花栄と丁得孫はずいぶん遠いな」
呉「弓と飛叉ですからね」
盧「それぞれの的の大きさが違うのはそういうわけか」
宋「第一投、構え!」
花「…」
張「…」
項「…」
龔「…」
丁「…」
宋「狙撃!」
花「!」
張「!」
項「!」
龔「!」
丁「!」
盧「凄い…」
呉「命中は当然ですね」
宋「花栄と張清と項充の勝負か」
盧「龔旺が途中から投げやりになってしまったのが惜しまれる」
呉「丁得孫も飛叉を一本しか用意していなかったそうです」
宋「その代わり第一投の点数は一番だったぞ」
盧「その一投に全てをかけて、二投目を辞退するとは潔い」
呉「個人技の部に移りましょう」
花「!」
宋「岩を貫くか」
呉「あり得ないことなんですよね」
盧「そうらしい…」
花「!!!!!!!!!!」
宋「10連射して全て同じ所に…」
盧「もう花栄が優勝ではないか?」
呉「次は馬からそっくり返って10連射すると…」
宋「もう花栄はお腹いっぱいだ」
盧「張清に移ろう」
花「!」
張「…」
宋「9つの的当てか」
盧「呉用、それは?」
呉「スピードガンです」
張「3番」
呉「158km!」
宋「インハイのストレートか」
盧「強気だ」
張「9番」
呉「スライダー!」
宋「膝下から曲がるとは」
盧「堪らん」
張「8番」
呉「フォーク!」
宋「これは三振だ」
盧「配球も巧みだ」
項「…」
宋「あの二人の後か…」
盧「項充は?」
呉「全方位の的を全て貫くと」
項「!!!!!!!!」
宋「8つの的を瞬時に…」
盧「八臂哪吒か」
項「!!!!!!!!」
呉「左右の的を交互に!」
盧「舞っているようだ」
項「!!!!!!!!」
宋「上の的まで…」
呉「同率優勝ですな」
・宋江(そうこう)…何かを投げるのも技量がいるのだな。
・盧俊義(ろしゅんぎ)…燕青も弩の名手だぞ。
・呉用(ごよう)…実は私も若い頃は鎖を飛ばす武器を愛用してました。
・裴宣(はいせん)…名アンパイア。
・蔣敬(しょうけい)…名スコアラー。
・花栄(かえい)…馬からそっくり返って10連射をイナバウアーと呼んでいる。
・張清(ちょうせい)…瓊英にもやらせたら、あっさりパーフェクト。
・項充(こうじゅう)…飛刀は最大24本まで携帯可能。
・龔旺(きょうおう)…槍を投げる時のルーチンがある。
・丁得孫(ていてくそん)…あえて一本しか持ち歩かないので、結果には大満足。
七十九.
宋江「梁山泊クロスカントリーリレーだ」
盧俊義「走る、駆ける、泳ぐの三人でチームを組むのだな」
呉「戴宗、馬麟、阮小七」
宋「王定六、索超、童猛」
盧「石勇、林冲、張順の三チームか」
宋「史進は?」
呉「代わりに馬麟が入りました」
盧「駆けている途中で着物が脱げる不正が発覚したのだ」
宋「ただリレーをして終わるわけではなかろうな?」
呉「もちろん梁山泊精鋭による妨害が入ります」
戴宗「…」
王定六「…」
石勇「…」
盧「石勇の勝ち目が見えんが…」
呉「他の二人が速すぎるんです」
宋「始め!」
戴「!!」
王「!」
宋「戴宗が神行法を」
呉「禁止はしていませんからね」
盧「勝負になるか?」
石「…」
孫二娘「給水だよ」
戴「…」
孫「…」
戴「!?」
孫「ハズレ引いたね」
宋「戴宗が止まれなくなった?」
盧「給水で酒を盛られたらしい」
呉「馬麟に襷を託す隙もなかったとか」
盧「騎馬の部は?」
呉「妨害を志願した者が手の込んだ罠を仕掛けていますよ」
宋「誰だ?」
盧「決まっているではないか、宋江殿」
公孫勝「…」
孔亮「そろそろですな」
劉唐「それにしても」
張藍「私も混ぜていただき光栄です」
劉「まさか志願されるとは」
孔「馬を傷つけるわけにはいかんが」
公「乗り手への容赦は不要だ」
張「無論です、公孫勝殿」
孔(普通旦那の応援するもんじゃねえのかな)
索「!」
林「!」
宋「さすが百里風は速い…」
盧「おや?」
呉「百里風の様子が?」
林「どうした、百里?」
百里風「!」
林「こいつは!」
百(喜)
宋「百里風が道草を食い始めた」
盧「信じられん」
呉「どんな罠が?」
劉「何をしたのですか、張藍殿?」
張「百里は甘党なのです、劉唐殿」
劉「はあ」
張「主が滅多に食わせない分、こうなったらテコでも動きませんよ」
林「百里!蜜付きの草など食っている場合ではない!」
百(大喜)
索(今のうちだ)
林「頼む百里、今は駆ける時間…」
劉(降りたぞ)
公(やれ)
孔「!」
林「貴様ら!」
宋「致死軍の総攻撃か…」
盧「しかし林冲相手に勝算はあるのか?」
呉「そこは公孫勝ですから」
林「木偶の群れに俺が負けるわけ」
林「!?」
公「お前の動きなど手に取るように分かる」
宋「落とし穴か」
盧「定番だな」
呉「掘らされた陶宗旺がぼやいてました」
林「襷を渡せんではないか!」
公「穴を這い登ってこそのお前だろう、馬鹿」
張「御機嫌よう、林冲様!」
林「張藍!?」
張「公孫勝殿に志願しました」
林「なんと…」
張「林冲様」
林「…」
張「林冲様のチームが勝ったら、一週間林冲様の言いなりになる、と言ったら?」
林「!!」
劉(今跳躍だけで出てこなかったか?)
孔(思考するだけ無駄だからやめよう)
公「…」
林「百里」
百(!)
林「行くぞ」
百(怖)
宋「凄まじい疾駆だ…」
盧「一体どんなやりとりが」
索「頼んだ」
童猛「任せろ」
林「!」
張順(やべえ勢いだ)
林「張順」
張「おう…」
林「負けたら八つ裂きにするからな」
張「まあ任せておけ」
戴「止まれん!」
阮小七「戴宗の馬鹿野郎め…」
戴「!」
阮「!?」
馬麟「戴宗、これを」
宋「戴宗が…」
盧「水面を走っている…」
呉「波紋が…」
盧「ありか、宋江殿?」
宋「見ていよう」
童(張順も速いが、速さなら俺も自信はある)
張(浪裏白跳に敵うと思うな)
戴「こうなりゃヤケだ!」
李俊「出番だな」
項充「普通ならあんたが選手だろう、李俊殿」
李「部下に花を持たせてやったのさ」
項(こういうところが鼻持ちならねえ)
単廷珪「激流を起こす装置はいつ起動する?」
李「まだ待て」
項「お前どうして水軍にこないんだ、単廷珪?」
単「どうしても船が駄目なんだ」
李「惜しいな」
単「水流の事ならいつでも聞いてくれ」
項「奴らが来た!」
単「いつでもいけるぞ、李俊」
李「よし、いけ!」
宋「激流が!」
盧「これは堪らん」
呉「戴宗が…」
戴「!」
宋「なんと!」
盧「これは見事な」
呉「すごい…」
李「誂えたような板が…」
項「波に乗ってやがる」
単「誰が用意したんだ?」
阮「準備良すぎるぞ、馬麟」
馬「たまたまさ」
童(くそ!)
張(翻江蜃の限界さ)
宋「童猛が苦戦しているが」
盧「さすが張順」
呉「戴宗と張順の勝負ですね」
戴「このまま波に乗れれば…」
張「!」
戴「なんだ!?」
宋「張順の魚部隊か」
盧「勝負あったな」
呉「やはり梁山湖は張順の縄張りですね」
林「勝ったぞ、張藍」
張「…お手柔らかに」
・宋江(そうこう)…戴宗はどこへ?
・盧俊義(ろしゅんぎ)…走るついでに北の蔡福たちの遣いに出した。
・呉用(ごよう)…相変わらず無駄がありませんね、盧俊義殿
・戴宗(たいそう)…盧俊義殿は気前がいいからな。
・王定六(おうていろく)…普通に走って一番ならいいだろ?
・石勇(せきゆう)…孫二娘の元から来た間諜は使える奴が多いんだ。
・孫二娘(そんじじょう)…結局全部酒なんだけどね。
・馬麟(ばりん)…湖の罠ならそんな事だろうと思ってな。
・索超(さくちょう)…林冲殿にも百里風にもどうしても一歩及ばんのが口惜しい…
・林冲(りんちゅう)…覚悟しろ張藍。
・張藍(ちょうらん)…獣にならないでくださいね。
・公孫勝(こうそんしょう)…もっと深く掘らせればよかったかな。
・劉唐(りゅうとう)…深さの問題ではないかと。
・孔亮(こうりょう)…邪魔しながら応援するってのも高度な技だ。
・陶宗旺(とうそうおう)…落とし穴を掘ってばれないよう隠すのは大変なんですからね。
・童猛(どうもう)…蛤じゃ魚には勝てねえのか…
・張順(ちょうじゅん)…貝には貝の良さがあるじゃねえか。
・阮小七(げんしょうしち)…出番取られちまった…
・李俊(りしゅん)…童猛も不甲斐ねえな。
・項充(こうじゅう)…出てないあんたが言うな。
・単廷珪(たんていけい)…水流も味方につけろ、李俊。
・史進(ししん)…罰として一人で走って駆けて泳ぐ事になったが、誰にも相手されなかった。
八十.
瓊英「…」
林冲「…」
宋江「梁山泊野球大会で騎馬隊と本隊が当たるとは…」
盧俊義「呼延灼の巧打で本隊が一点勝ち越したが」
呉用「九回裏ツーアウト満塁で林冲」
宋「三塁走者は俊足の索超だ」
盧「張清は気が気ではないな」
呉「しかし、瓊英殿のアンダースローは林冲とはいえ容易くは打てません」
瓊「!」
林「!」
宋「初球から林冲の内角を突くとは」
呉「本当に只者ではないですな、瓊英殿は」
盧「関勝のサインに首を振っていたからな」
瓊「!」
林「!?」
宋「ここで緩いカーブ…」
盧「林冲は完全に直球を意識していたな」
呉「コースは甘かったですが、見事に読みを外しましたな」
瓊「…」
林「…」
宋「林冲も流石だ」
盧「粘ってフルカウントだ」
呉「四球でも同点ですが…」
宋「瓊英は林冲を打ち取る気だぞ」
盧「運命の一球だな」
瓊「!!」
林「!?」
呉「…」
盧「…なんだ、今の浮く球は」
宋「ライズボール…」
瓊「ありがとうございました」
林「完敗だ、瓊英殿」
・瓊英(けいえい)…クローザー。必殺技は最後の最後まで見せない主義ですの。
・林冲(りんちゅう)…エースで四番。最後にソフトボール投げで来るとは、参ったよ。
・宋江(そうこう)…扈三娘と馬麟は両打ちなんだな。
・盧俊義(ろしゅんぎ)…林冲は野手の方が向いているのではないか。
・呉用(ごよう)…郁保四は捕手向きではない気が…
・張清(ちょうせい)…先発。ベンチで座りながら目を見開いて気絶していた。
・関勝(かんしょう)…キャッチャー。投手の長所を引き出すリードが持ち味。
・呼延灼(こえんしゃく)…サード。林冲の速球を逆方向にもっていく巧打はさすが。
・索超(さくちょう)…センター。急先鋒の名に恥じぬ俊足。
・馬麟(ばりん)…セカンド。チームバッティングの名手。
・扈三娘(こさんじょう)…ショート。サイン無視して打つけど結果は残す。
・郁保四(いくほうし)…キャッチャー。デカイから。
八十一.
宋江「梁山泊二十四時間テレビのフィナーレを飾る一万里マラソンのランナーが着到できない?」
呉用「戴宗が神行法の札を切らし、王定六が肩の違和感を訴え途中棄権しました」
盧俊義「肩なら走れるのではないか?」
宋「他に走者は?」
呉「林冲が行ったのですが、百里風が片道でそっぽを向いたと」
盧「走者はどこにいるのだ?」
呉「戴宗が道半ばすぎとのことらしく…」
宋「スタミナはさすがだが、いかんせん間に合いそうにない…」
呉「楽和のサライもサビに入りましたね…」
盧「マズイな…」
宋「ラスト10分を迎えたぞ」
呉「公孫勝たちの偽装ももう限界です」
盧「そうだ!」
呉「盧俊義殿?」
盧「燕青」
燕青「…」
楽和「〜♪〜」
宋「感動が梁山泊を包みはじめた…」
呉「しかし、ランナーは?」
?「…」
宋「あれは?」
蔡福「…」
呉「蔡福?」
蔡「」
呉「ボロ雑巾のようだ…」
宋「長距離走った感はある」
蔡「」
呉「ゴール!」
宋「…感動せんな」
呉「…確かに」
蔡「」
・宋江(そうこう)…やはり男は顔だな…
・盧俊義(ろしゅんぎ)…蔡福のズームで視聴率がダダ下がりしただと!
・呉用(ごよう)…一体蔡福に何が…
・戴宗(たいそう)…あとで勘定したら、酒をチャージしていたら意外と間に合ったらしい。
・王定六(おうていろく)…走るのは全身運動だから身体のケアは欠かせないのさ。
・林冲(りんちゅう)…千里は走れんのか、百里は…
・百里風(ひゃくりふう)…遠い!
・楽和(がくわ)…彼のズームでは視聴率がダダ上がりした。
・燕青(えんせい)…また私は心を殺してしまった…
・蔡福(さいふく)…三徹したボロボロの帰り道、燕青に拉致され襷を託された。
三兄弟
三兄弟…李逵にストライキを起こされた兄貴分二人は、餓死寸前まで追い込まれたことがあるらしい。
人物
・魯達(ろたつ)…片腕では家事などできぬではないか。
・武松(ぶしょう)…李逵に全部やってもらっていたから、家事などできる気がしない。
・李逵(りき)…だったらもっと労わってくれよ!
八十二.
魯達「関勝はお前より子どもだったな」
李逵「そうだよ、兄貴」
魯「じゃあ林冲は?」
李「俺よりバカ」
魯「公孫勝」
李「俺より凶暴」
魯「呉用」
李「俺より迂闊」
魯「燕青」
李「俺より鈍感」
魯「宋江殿」
李「俺よりピュア」
魯「武松」
李「俺より間抜け」
武「なんだと」
魯(的を射ている)
魯達(ろたつ)…片腕を無くしても、自身の両腕とも言える弟分二人を抱えている兄貴。その弟分も腕が二本あるから実質腕は五本ある。
武松(ぶしょう)…無口で喋らない分、想像力は豊か、だったら良いな。
李逵(りき)…武松を堕落させる弟分。目覚まし、料理、洗い物、寝床作り、洗濯、裁縫を担当。見事すぎるお袋っぷり。
八十三.
武松「李逵」
李逵「なんだい、兄貴」
武「これ以上、俺を甘やかさないでくれ」
李「お!」
武「このままではお前に依存して堕落してしまう気がしてならんのだ」
李「何日持つかな?」
武「飯と服と寝床の準備と朝起こすだけで充分だ」
李「何を引き算したんだ、兄貴?」
・武松(ぶしょう)…拳を鍛えすぎて、手先を使う作業が大の苦手になってしまった。叩き壊すのは大得意だぞ。
・李逵(りき)…柴進から稀に見る高待遇のオファーが届いたけど、やっぱり字が読めなかった。
八十四.
魯達「武松」
武松「…」
魯「不精すぎるぞ、武松」
李逵「?」
魯「李逵がいなくても自活していた頃はあったではないか」
武「…」
魯「李逵は完膚なきまでにお前を堕落させたかもしれんが」
武「…」
魯「俺はそうならぬ自負がある」
武「…」
魯「李逵を俺に貸せ、武松」
武「嫌だ…」
魯「武松!」
柴進「結果は?」
李「三日で堕ちた」
柴「ダメンズだな、李逵」
・魯達(ろたつ)…李逵に甘えすぎた戒めとして、三日三晩の滝行を敢行したが、雑炊の匂いに一目散。
・武松(ぶしょう)…李逵のレンタルサービスを利用する者にもれなく付いてくる。
・李逵(りき)…もし俺が女だったらどうなってたのかな?
・柴進(さいしん)…豪華な食材を取り揃えて自炊を始めたが、火を付けられず断念。
八十五.
宋江「全くお前らときたら」
魯達「…」
武松「…」
李逵「宋江様。兄貴たちは悪くねえ」
宋「李逵」
李「俺の料理がちょっと美味くて、裁縫と寝床作りがちょっと得意で、朝起きるのがちょっと早いのが悪いんだ」
魯「そのちょっとが、我らには100万里よりも遠いのだ」
武「もう自活できる気がしない」
宋「お前らに単独の旅を命ずる」
魯「そんな」
武「死んでしまいます」
宋「嘆く者は死ね!」
魯「!」
武「!」
李「宋江様」
宋「李逵は二人が帰るまで梁山泊で私の供をせよ」
魯「…」
武「…」
李「…」
呉用「魯達は子午山で酒浸り。武松は開封府の闇武術大会のチャンピオンになったそうです」
宋「志を忘れていなければ良い」
呉(絶対忘れてる…)
李「宋江様」
宋「なんだ、李逵」
李「たまには会議に出なよ」
宋「なんだか歩くのが億劫なのだ」
呉(もう李逵が頭領で良いな)
・李逵(りき)…結局どれだけ強かろうが偉かろうが、胃袋を握ってしまえば頭は上がらなくなるのだ。
・宋江(そうこう)…盧俊義よりも太った。
・魯達(ろたつ)…王母様の厳しい禁酒プログラムを遂行中。
・武松(ぶしょう)…洪清との直接対決のチケットは歴代最高値で取引されている。
・呉用(ごよう)…激務過ぎてどれだけ食っても太る兆しがない 。
八十六.
李逵「兄貴に出来なくて俺が出来ることの割合が多すぎる」
武松「…」
李「俺が出来なくて兄貴が出来ることを挙げるだけ挙げてくれ」
武「文字の読み書き」
李「一つ」
武「泳げる」
李「二つ」
武「拳で石を砕く」
李「俺は板斧で砕けるからダメだ」
武「…」
李「それだけとは言わせねえぞ、兄貴」
武「替天行道の暗唱」
李「俺も覚えたぜ」
武「いつの間に?」
李「施恩が繰り返し教えてくれた」
武「…」
李「なら俺も、二つだけしか兄貴ができねえことをやらないぞ」
武「…」
魯達「どうした、二人とも」
李「兄貴が出来て俺が出来ねえ事が二つしかねえんだよ、大兄貴」
魯「なるほどな」
魯「李逵が出来なくて、俺が出来ることか…」
李「大兄貴は?」
魯「文字の読み書き」
李「…一つ」
魯「泳げる」
李「…二つ」
魯「替天行道の暗唱」
李「…俺も出来る」
魯「いつの間に?」
李「施恩が…」
武(無間地獄か?)
・李逵(りき)…なまじっか戦闘力は魯達、武松と同じくらいなので、彼らが戦闘面で出来ることはほとんど出来る。
・武松(ぶしょう)…ご飯と起こしてもらうの二つを選択した。
・魯達(ろたつ)…ご飯と洗濯の二つを選択した。
八十七.
魯達「李逵」
李逵「はいよ」
魯「…いつもながら美味いぞ」
李「当然さ」
魯「俺の腕もお前に調理してもらいたかった」
李「どうやって食べたんだい?」
魯「焼いただけさ」
李「そりゃ危ねえ」
魯「林冲は腹を壊したらしい」
李「無理ねえよ」
魯「お前ならどう料理する?」
李「そうだな…」
李「豚の骨と魚で出汁を取って、汁物を作って…」
魯「おう」
李「大兄貴の肉は、しっかり火を通して、甘辛く煮詰めて燻製させて」
武松「…」
李「野菜も合わせて麺にするかな」
魯「美味そうだ」
武「なにを言っているのだ、兄者」
魯「李逵に拳骨だな」
李「なんでだよ!」
魯「武松の拳を食うなら?」
武「兄者!?」
李「不味いに決まってら」
武「李逵!?」
李「食えるところもねえし、出汁が出るほど味もしねえだろ」
魯「辛口だな、李逵」
李「味しねえってば」
武「…敵の血を吸いに吸っているから、あるいは」
李「熊が蜂の巣壊してるのと訳がちがうだろうが、兄貴」
・魯達(ろたつ)…げんこつで出汁をとるというのは?
・李逵(りき)…豚の骨だよ。兄貴の拳じゃねえ。
・武松(ぶしょう)…万が一食う時が来たら、確かめてやろう。
養生所&薬方所
養生所&薬方所…梁山泊文治省の年寄が集会所を作ろうと画策したが、安道全に無碍なく断られた。
人物
・安道全(あんどうぜん)…治療の邪魔は誰であろうと許さん。
・薛永(せつえい)…私たちの仕事場で茶飲み話はやめてください。
・白勝(はくしょう)… 俺らの仕事量を一月こなせたら考えてやらなくもないぜ。
・文祥(ぶんしょう)…安道全の弟子。最近針治療を教えてくれるようになった。
・馬雲(ばうん)…薛永の弟子。何言ってるか分かんないのに、言いたいことは分かる。
八十八.
安道全「たまには医者らしいことをしよう」
白勝「いつもしてんじゃねえか」
安「あれは趣味だ」
白「趣味…」
安「健康診断をしよう」
白「いいな」
安「これにかこつけて、医療機器をしこたま発注するぞ」
白「ほどほどにな」
安「…」
白「どうした」
安「…増築は出来るか?」
白「何をする気だ」
林冲「俺たちに必要なのか?」
安「無論だ」
林「俺に悪いところなどない、ヤブ医者」
索超(言葉)
馬麟(態度)
扈三娘(頭)
郁保四(脳)
安「お前は精密検査をする」
林「何」
安「頭の検査だ」
林「貴様」
安「その汚い言葉遣いと態度は頭が悪いか脳がいかれている証拠だ」
索・馬・扈・郁(さすが安道全)
林「やめろ、安道全」
安「肺腑の矢の摘出手術に比べたらぬるいぞ」
林「そっちの方がマシだ」
安「正気か、林冲」
林「正気だ」
馬(酔っ払いが酔ってないと言うのと同じだな)
索(WWW)
安「男になれ、林冲」
林「嫌なものは嫌だ」
安「丸太だ、薛永」
薛永「⁉︎」
白(林冲のための増築だったのか)
林「死ぬかと思った」
馬(解釈に困る)
安「結果を見るぞ」
白(こそ泥時代の俺に、MRI使ってるなんて言ったらどんな顔するかな)
安「これは…」
林「…」
安(外科が専門だから全く分からん!)
林「安道全?」
安「残念だ、林冲」
林「死ぬのか?」
安「健康だ」
林「よかった!」
安(よかった、バカで)
・安道全(あんどうぜん)…医療行為のスキルのみ限界突破。他は皆無。
・白勝(はくしょう)…経費が降りず実費でMRIを買わされたが、クーリング・オフを適用できるか心配。
・薛永(せつえい)…健康診断のデモを担当したところ、セルフ人体実験がたたり、血液検査で異常値を連発し、安道全に大喜びでICUに搬送された。
・林冲(りんちゅう)…健全すぎる肉体は脳を蝕む。
・索超(さくちょう)…胃潰瘍気味。
・馬麟(ばりん)…注射が苦手。
・扈三娘(こさんじょう)…梁山泊で筋肉量が激増。
・郁保四(いくほうし)…体は頑丈。メンタルは繊細。
八十九.
宋江「受難だったな、盧俊義」
盧俊義「全くです、宋江殿」
宋「燕青も死線をさまよったな」
盧「そうですな」
宋「燕青が」
盧「はい」
宋「治療している時にうわ言を言っていてな」
盧(闇塩の拠点と重要人物の名だな)
宋「重要な事を言っているのだと思い」
盧「?」
宋「書き出しておいた」
盧「」
宋「あいにくその紙は部屋に置いてあるのだが」
盧「今すぐ持ってきて、私の前で燃やせ、宋江殿」
宋「大事なものでないのか?」
盧「大事なものだからこそ、燃やすのだ」
宋「意味が分からん」
盧「誰にも見せていないだろうな?」
宋「多分…」
盧「多分?」
宋「絶対!」
安道全(私に見せた紙か?)
盧「目眩がしてきた」
安「概ね察したよ、盧俊義殿」
宋「持ってきたぞ」
盧(正確にもほどがある)
宋「燃やすぞ」
盧「急げ」
宋「燃やした」
盧「良かった」
宋「ところで、盧俊義」
盧「なんだ」
宋「紙は燃やしたが、中身を覚えてしまった私はどうなるのかな」
盧「紙と同じ目に合わせてやろうか」
・宋江(そうこう)…過ぎた善意は悪意よりも恐ろしい結果を招く。
・盧俊義(ろしゅんぎ)…こんなんでバレるなら沈機に言った方がましだ!
・安道全(あんどうぜん)…他人事だと空気はそこそこ読める。
・燕青(えんせい)…大ハッスルして盧俊義の大ピンチに立ち向かった。真相は12巻!
九十.
白勝「お前らを見ていて常々思う」
安道全「なんだ、白勝」
薛永「?」
白「健康とはなにか」
安「つまらん事を」
白「医者が言うせりふか」
安「患者を健康にするのが医者の仕事だろう」
薛「さすが、安道全」
白「すまん、言葉が足りなかった」
安「?」
白「お前らの健康とはなにかと言う事だ」
安「私達の健康?」
白「安道全は医者の不養生を超越した労働時間なのにピンピンしている」
安「三徹のなにが不健康なのだ?」
白「薛永は己を実験台にし、薬の効能を確かめている」
薛「この間は死ぬかと思いました」
白「お前ら自身の健康にもっと気を配るべきではないだろうか」
安「名演だ、白勝」
安「しかし、私は患者を診ないと死ぬ病にかかっている」
白「確かに」
薛「私も、自分で試さない薬を人に使うというのはできません」
白「薬師の鑑だ」
安「むしろ私は白勝の健康が気になる」
薛「私も」
白「…それを言うならよ」
安「…」
薛「…」
白「頼むから俺に休みをくれ」
安「仕事が回らんのだ」
・安道全(あんどうぜん)…患者を一日でも診ないと禁断症状が出る、医療ジャンキー。
・薛永(せつえい)…好きで薬草を摂取してるわけじゃないんですけど、あの苦味は堪らなく美味しかったです。
・白勝(はくしょう)…安道全・薛永向けの業務マニュアルは日々改訂され続けているが、勤務時間外の仕事にカウントされるのがものすごく腑に落ちない。
九十一.
薛永「腹が減った…」
馬雲「∑(゚Д゚)」
白勝「いかん。薛永が腹ぺこになった」
薛「…」
安道全「文祥!」
文「朱富の店に!」
安「違う!顧大嫂だ!」
文(そこまで分からん)
呉用「すまん、薛永。睡眠薬の処方を」
薛「」
呉「薛永?」
白「今補給するから待っててくれ」
安「薛永のピットインだ」
文「買ってきました!」
安「薛永!」
薛「」
安「何!顧大嫂じゃない?」
薛「」
安「文祥!」
白「朱富の饅頭を湯隆の所で香ばしくしたやつを大至急持ってこい!」
文(なんて解析力だ)
薛「」
馬「(´-ω-`)」
安「薛永は腹ペコになるとこうなるんだ」
呉「…」
白「寝てら」
文「買ってきました!」
安「薛永!」
薛「」
安「何!両面ではなく、片面だけ香ばしくしたやつじゃないと食わんだと?」
薛「」
文「…」
安「文祥!」
文「ただ今!」
薛「…」
白「こうなると頑固だからな」
安「テコでも動かん」
呉「…」
白「ここで寝かせるか」
安「呉用殿に一服盛るぞ、白勝」
・薛永(せつえい)…片面の香ばしさに香料の風味が足りなかったから食べなかった。
・馬雲(ばうん)…( *`ω´)
・安道全(あんどうぜん)…薛永の表情から食べたいものを読み取る様はさながら診察。
・白勝(はくしょう)…食わなかった饅頭は俺たちの分だ。
・文祥(ぶんしょう)…ここからあと三往復する事になるのをまだ知らない。
・呉用(ごよう)…口周りがやけに苦いが、よく眠れた。
練兵場
練兵場…サンドバックや技をかけるための木偶が、どことなく王倫に似ているのはきっと気のせい。
人物
・徐寧(じょねい)…うるさすぎるのでとうとう賽唐猊着用禁止区域を設けられてしまった。
九十二.
王倫「畜生、楽しそうにしやがって」
宋万「まだいやがったのか、クソ首領」
杜遷「さっさと成仏しろ」
王「お前らナチュラルに見えすぎではないか?」
焦挺「うわ、首領だ」
李雲「マジかよ…」
湯隆「見たくねえもんを…」
王「見えすぎだろ…」
朱貴「潔くさっさと消えてくれ、王倫」
王「お前ら」
朱「元友人として最後の忠告だぞ」
王「死んでから言うな」
焦「!」
王「!?」
李「すり抜けた!」
杜「やるな、焦挺」
湯「俺も行くぞ!」
王「貴様ら、俺が生きていた時は腑抜けていたくせに」
宋「死人に口なしだ」
杜「嫌がらせされるのが嫌ならとっとと消えろ」
焦「生前の報いだ、馬鹿首領」
林冲「…」
王「!?」
宋「お、林冲だ」
杜「林冲、ここに王倫がいるぞ!」
王「呼ぶな、馬鹿」
林「王倫?」
王「離せ、李雲」
李「お前、霊になっても雑魚だな」
林「王倫って誰だ、杜遷?」
王「」
焦「さすが林冲殿」
宋「過去を振り返らない主義だな」
林「?」
王「」
李「泡食って気絶してら」
・杜遷(とせん)…実は一番王倫を殺したかった。
・宋万(そうまん)…王倫のデベソを全力で弄る所存。
・焦挺(しょうてい)…一番えげつない嫌がらせをしれっとやってのける。
・李雲(りうん)…俺に捕まる霊ってなんだよ?
・湯隆(とうりゅう)…その手で触るな、李雲。
・朱貴(しゅき)…古参全員の変貌ぶりに驚きつつも、王倫なら仕方ないと思った。
・林冲(りんちゅう)…案の定見えない。
・王倫(おうりん)…存在そのものを抹消されし、初代首領。霊界でも御察しの小者扱い。
九十三.
史進「師匠!」
李忠「坊ちゃん!」
兵「史進殿の師匠があんなおっさん?」
兵「あの人がもしかして王進か?」
兵「王進があんなしょぼくれてる訳ないだろ」
兵「ていうか、坊ちゃんってWWW」
史「…」
李「…」
史「お互いの呼び方を考えませんか」
李「私もそう言おうとしたところだ」
史「まさか師匠が梁山泊にいるなんて」
李「九紋竜の名は聞いていたが、まさかこんな所で会うとは」
史「…」
李「…」
史「…良い天気ですね」
李「私たちはお見合いをしている訳ではないぞ、史進」
史「…」
李「…気まずいな」
史「お互いの黒歴史熟知してますもんね」
李「私を稽古でコテンパンにした話は、問題ないぞ」
史「師匠のオリジナル必殺技の話は…」
李「絶対にやめろ」
史「むしろそっちを話したいんですけど」
李「お前だってノリノリで覚えてたじゃないか」
史「餓鬼でしたからね」
李「今でも覚えてたりするのか?」
史「…バッチリです」
李「マジかよ」
・史進(ししん)…初めての武芸の師匠が李忠だった。入門者向けではあったが、すごい癖が強い棒術だったらしい。
・李忠(りちゅう)…108の必殺技をもつ李忠流棒術の師範。これでもかというほどダイナミックな動きで翻弄するも、足元がお留守になりがちなのが致命的な弱点。
九十四.
焦挺「…」
燕青「…」
宋万「焦挺と向き合っているイケメンは誰だ?」
杜遷「燕青というらしい」
宋「梁山泊相撲横綱の焦挺に、相撲で勝負するのか?」
杜「体術の達人という噂だ」
宋「面白そうだ」
杜「体格差が気になるが」
焦(このイケメン、強い…)
燕(チャーミングな顔に似合わぬ強者だ)
燕(しかし…)
焦(…!)
宋「おお!」
杜「見事だ」
焦「」
燕(私の敵ではない)
宋「凄いぞ、燕青」
杜「見事な技だった」
燕「…」
宋「しかしな、燕青」
燕「…」
杜「相撲で投げっぱなしジャーマンスープレックスは禁じ手ではないかな」
燕「あ!」
焦(地獄突きを返せばよかった…)
・焦挺(しょうてい)…梁山泊プロレスでは、顔に似合わぬ悪役レスラー。得意技は地獄突きとヘッドバット。
・燕青(えんせい)…謎の覆面レスラーとして大人気。背中の鳳凰の刺青がトレードマーク。
・宋万(そうまん)…杜遷とタッグを組んで、梁山泊プロレス初代タッグ王座のチャンピオンとなった。
・杜遷(とせん)…ライバルは童威、童猛の双子タッグ。
九十五.
周通「兄貴は打虎将というくらいだから」
李忠「ああ」
周「虎を倒したんだろう」
李「本当だからな」
周「まあ本当に倒したところで、武松がいるんじゃ二番煎じなのは否めん」
李「この野郎」
周「そこで兄貴が真の打虎将になるために」
李「ん?」
周「梁山泊の虎退治をしてもらおう」
李「面白い」
周「錦毛虎か?」
李「矮脚虎なら、ギリギリで勝てるかもしれん」
周「頼りねえな」
李「病大虫ならいけるな」
周「あいつは侮れんぞ」
李「あの小太りには負けないさ」
李「参った」
周「フラグ乙」
薛永「お疲れ様でした」
李「強いな、薛永」
薛「いえ、そんな」
周「病気の虎に負けてるようじゃ、万全の虎なんかとてもじゃないな」
李「くそ」
薛「ところで周通殿、足元の野草を採ってくれませんか」
周「はいよ」
薛「雑に毟るな」
周「」
李「強い」
・李忠(りちゅう)…自称虎をやっつけた男。あだ名は打虎将(だこしょう)。打虎将の李忠だ!と名乗られた武松は、笑いを堪えるのが大変だった。
・周通(しゅうとう)…梁山泊かませ犬ランキング殿堂入り。強い周通なんて、らしくない。
・薛永(せつえい)…多分二人で来られても勝てました。
李忠VS梁山泊タイガース
・挿翅虎(そうしこ)…双頭山頭領。一撃で負けた。
・錦毛虎(きんもうこ)…清風山頭領。あっさり負けた。
・矮脚虎(わいきゃくこ)…清風山サブ。体格で有利でも引き分け。
・跳澗虎(ちょうかんこ)…少華山サブ。ころっと負けた。
・花項虎(かこうこ)…張清組サブ。善戦したが負けた。
・中箭虎(ちゅうせんこ)…張清組サブ。善戦したが負けた。
・病大虫(びょうだいちゅう)…薬屋さん。ご覧の有様。
・笑面虎(しょうめんこ)…酒屋さん。武術素人に勝っても…
・青眼虎(せいがんこ)…大工さん。意外に強くて負けた。
・母大虫(ぼだいちゅう)…女将さん。闘う前に土下座した
文治省
文治省… 梁山泊の事務所。定時上がりを推奨しているが、推奨した当の本人は深夜残業常習犯。
人物
・蕭譲(しょうじょう)…李逵が名前を書けるようになった時の喜びようが忘れられない。
・金大堅(きんだいけん)…判子作りの名手だが、朱肉をよく忘れる。
・裴宣(はいせん)…梁山泊の領土で博打を解禁した際のルールブックは、劉唐や石勇もうなるほどの完成度。
九十六.
金大堅「なあ、蕭譲」
蕭譲「どうした?」
金「わしが言うのはとてもおかしいと、我ながら思うことを言ってもよいか?」
蕭「…よいぞ」
金「判子っていらんよな」
蕭「」
金「…今お前が思考回路をフル稼働してツッコミを探しているのはよく分かる」
蕭「ショート寸前だ」
金「だってな」
金「手続きの本人確認になぜ判子なのだ?」
蕭「私怨の気を感じる」
金「忘れた場合は、秘密の質問で良いのではないか?」
蕭「お前の秘密が文治省の者にだだ漏れになっても良いのか?」
金「筆跡でも良いと思う」
蕭「わしの前でよくそれを言えたものだな」
金「…お前のせいか」
蕭「何が?」
金「お前がおるから、筆跡鑑定をしても本人確認にならんのではないか?」
蕭「顔写真で一発だが」
金「判子はいらん!」
蕭「すると、金大堅」
金「なんだ」
蕭「お前の仕事は?」
金「…」
蕭「…」
金「…仕事に戻るか」
蕭「懸命だ」
金(この宛名にこの印はおかしいと思うが知ったこっちゃない)
・蕭譲(しょうじょう)…この時のハンコが戴宗を窮地に陥れる事をまだ知らない。
・金大堅(きんだいけん)…この時のハンコのせいで戴宗から三ヶ月分の神行法の飲食代を負担させられることになる事をまだ知らない。
九十七.
蕭譲「恋文の代筆?」
李逵「…」
蕭(誰に?とか字が読めんだろう?と聞くのは無粋じゃな)
李「…」
蕭「喜んで引き受けるぞ、李逵」
李「本当か!」
蕭「なんて書けばいいのかな?」
李「俺の言う通りに書いてくれ」
蕭「よしきた」
蕭(なんて微笑ましい恋文だ)
李「蕭譲」
蕭「誰にも言わんよ」
李「…」
蕭「届けるのはお前がやるのだろう?」
李「考えてなかった…」
蕭「わしが届けたら、意味が変わってしまうぞ?」
李「…」
蕭「…」
李「…分かった」
蕭「まあこの手の事には渡す勇気ってのは必要じゃな」
李「…やってみる」
李「蕭譲!」
蕭「どうだった?」
李「大成功だ!」
蕭「返事はその両手の大荷物じゃな?」
李「お前のおかげだ、蕭譲」
蕭「わしはお前のやりたかった事の手伝いをしただけじゃよ」
李「お前のところの皆んなで食ってくれ!」
蕭(いつも買い物で世話になってる店へのお礼状が、李逵の恋文か)
・李逵(りき)…いつも行く、素晴らしい食料品や香辛料を揃えるお店にどうしても日頃のお礼を言いたかった。
・蕭譲(しょうじょう)…たまにはこんな仕事もいいもんじゃな。
九十八.
朱貴「今日も荒れてるね、首領」
王倫「林冲が来てから荒れない日はない」
朱「荒れてない日は?」
王「無い」
朱「荒れが日常だな」
王「逆に並の荒れでは荒れだと認識しなくなったかもしれん」
朱「それは?」
王「寝床に毒蛇が入ってた」
朱「!?」
王「どうせ窓から入ったんだろうが」
朱(絶対違う)
王「宋万と杜遷と焦挺が練兵場でひそひそ話してたんだが」
朱(あいつら…)
王「私が話しかけたら、一目散に逃げていった」
朱(処断されるぞ)
王「どうせ私のサプライズパーティーでも開こうとしてるに違いないだろ?」
朱「ポジティブだな、首領」
・王倫(おうりん)…小者界のアイドル。ポジティブシンキングと猜疑心の組み合わせが歪。
・朱貴(しゅき)…もっと王倫と距離をとって、あの三バカに自重を促そう。
・杜遷(とせん)…古参の三バカ。略して古三バカ。年長だが、実は血の気が一番多い。
・宋万(そうまん)…古三バカ、次男。杜遷より冷静だが沸騰しやすさは大差ない。
・焦挺(しょうてい)…末っ子。バカというにはIQが高すぎる。
九十九.
朱富「よく来てくれた、薛永」
薛永「ご内密な話ということなので」
顧大嫂「扉を閉めるよ」
薛「顧大嫂殿?」
孫二娘「別にあんたを取って食おうってわけじゃないよ、薛永」
朱(なぜか説得力を微塵も感じない)
孫「あんたを食おうとしても、添加物満載で食えたもんじゃなさそうだからね」
薛「勘弁」
顧「痺れ薬を作りたいのさ」
薛「そんな水のほとりの賊徒みたいな真似を」
孫「あたしらもそうじゃないか」
朱「我々の店を青蓮寺の密偵が探ることもありうると思う」
薛「確かに」
顧「そんな時のために作っておくのも、やぶさかじゃないだろう?」
薛(一番いらなさそうな人だと思いますけど)
孫「勿論堅気には使わないよ」
薛「わざわざ言わなくても」
顧「教えてくれよ、薛永」
薛「怖い」
顧「これが効くのかい?」
薛「少なくとも四刻は気絶しますよ」
朱「ありがとう、薛永」
孫「職場のセクハラ爺で試そう」
薛「用法用量を守って正しく使ってくださいね」
孫「風邪薬じゃないよ」
・薛永(せつえい)…孫二娘の見立てでは滋養のありそうな男だと言う。どういう意味だ。
・朱富(しゅふう)…笑いながら客をたしなめる事があるが目は笑ってない。あだ名の笑面虎(しょうめんこ)の由来である。
・顧大嫂(こだいそう)…強い。とても強い。
・孫二娘(そんじじょう)…彼女にセクハラした上役の爺がトイレ休憩から帰ってこない。
百.
宋江「ついにこの日が来てしまったか…」
施恩「皆、今回は特別ゲストをお招きしている」
魯達「誰だ?」
宋「今この瞬間、朱貴の店に青蓮寺の軍でも襲いに来ないかな」
朱貴(今すごい殺気が!)
宋「行かぬわけには、いかぬか…」
魯「誰が来るのだ?」
施「そろそろお見えになります」
宋「待たせた、施恩」
施「替天行道の生みの親、宋江様です」
魯「なんと!」
宋(なぜいる、魯達)
同志A「マジかよ施恩!」
B「いかん、涙が」
魯「俺も…」
宋(なぜお前まで)
C「」
D「こいつ感動のあまり失神したぞ」
宋(そこまで!?)
施「それでは宋江様を囲んで、オフ会を始めましょう!」
宋(死ぬ)
施「替天行道暗唱ゲーム!」
宋(早速敗北必至のゲームが始まった)
施「魯達殿、13Pの2段落目から!」
宋(刻みすぎだろう)
魯「〜」
施「クリア!」
宋(即答した)
施「A、45Pの3行目から」
A「〜」
施「惜しい。読点の間が一呼吸ズレた」
宋(気が狂いそうだ)
施「宋江様の番です!」
宋(終わった)
B「施恩、それは宋江様に失礼ではないか?」
宋(いいぞ、B)
施「申し訳ございません、宋江様」
B「宋江様には全文暗唱タイムアタックに挑戦してもらわないと」
C「施恩のハイスコアを塗り替えてくださいね」
宋(またすごい企画が用意されている)
施「宋江様はそちらでよろしいですか?」
宋「ああ…」
宋(この冊子一冊でここまで楽しめるものなのか?)
A「魯達殿が書き留められたのですか?」
魯「いかにも」
D「すごい!」
C「書きながら泣きませんでした?」
魯「泣かぬわけないだろう、C」
C「そうですよね」
宋(私の義憤がここまで人の心を動かすとは)
B「それでは始めましょうか」
宋「…」
宋「皆」
施「?」
宋「今日この場に替天行道の同志の中でも選りすぐりの精鋭たちが集う場に招いてもらった事を、心から感謝する」
施「宋江様…」
魯「涙が…」
宋「私もこの場に来て、改めてこの書が生まれるきっかけになった想いが、熱く蘇ってきたのを感じている。施恩のおかげだ」
施「宋江様…」
宋「この感謝の想いを、オフ会の締めの挨拶に変えさせていただきたい」
施「…」
魯「…」
宋(決まった…)
B「…宋江様」
宋「どうした、B」
B「感激のあまり、涙が止まらないのですが、どうしても申し上げたい事がございます」
宋「何でも言え、B」
B「まだ会が終わる時刻まで、四刻あります」
宋「」
・宋江(そうこう)…タイムアタックは泣き真似をしながら、つっかえるのを誤魔化し続けた。
・魯達(ろたつ)…施恩が発行している替天行道有料メルマガを全部購入して来た。
・施恩(しおん)…梁山泊一の替天行道マスター。宋江からの感謝の言葉に涙が止まらなかったが、オフ会はキチンと定刻通り続けた。
・朱貴(しゅき)…オフ会コースも充実!
・速読のA…本隊騎兵
・暗唱のB…致死軍
・記憶のC…文治省
・修繕のD…大工
百一.
李俊「会計は…」
阮小七「手間だが個別で頼む、朱富」
李「しまった」
童猛「その手は食わねえぞ、李俊殿」
張順「俺たちが計算できないと思って割り勘した挙句、少し自分の分を安く勘定するとは、なんとせこい男だ」
項充「たまには俺たちに奢る男気を見せてくださいよ」
阮小二「銭単位で割り勘だもんな」
趙林「一度だけ盧俊義様のご飯にご相伴にあずかったことがあるんですけど」
童「どうだった?」
趙「かっこよかったです」
七「さすが盧俊義殿」
項「どこかの大将とは器が違え」
二「しょっぱいのは塩だけで充分だ」
張「塩捌いてたら、てめえの財布までしょっぱくなっちまったか、李俊殿」
李「野郎ども…」
朱富「乱闘なら表でやってくれ」
童「さすが朱富」
項「明瞭会計が売りなだけはある」
七「やはり個別会計だな」
二「違いない」
張「李俊殿の男気がみたいな」
李「表で見せてやるから、かかってこい」
趙「…」
朱「…」
趙「朱富殿」
朱「…」
趙「二割高いね」
朱「黙ってろ」
・李俊(りしゅん)…力が強いだけのことはあるのでとりあえずまあまあ強い。
・阮小七(げんしょうしち)…くそう、覚えてやがれ。
・張順(ちょうじゅん)…水の中なら負けんのだが…
・童猛(どうもう)…梁山湖の鯉に愚痴を聞いてもらった。
・項充(こうじゅう)…またふさぎの虫が鳴いた。
・阮小二(げんしょうじ)…実は結構強い。
・趙林(ちょうりん)…場の支配者が一番強いのは、博打と一緒だ。
・朱富(しゅふう)…当然だろ?
塩の道
塩の道…梁山泊の金稼ぎ部門。ただ同然で腐るほどとれる海の塩をぼったくり価格で売っていたから、塩は国有品だったんだよ。
人物
・盧俊義(ろしゅんぎ)…闇塩の首魁。でかくて太っている。筋肉もすごかったがいかんせん脂肪に包まれつつある。
・燕青(えんせい)…彼の背中には綺麗な鳳凰の刺青があるらしい。めったに見せないけど。
・蔡福(さいふく)…中年・恰幅が良い・小柄・女性経験無・インドア派・内気・粘り強い。仕事は抜群だが職業柄地味すぎる。陽キャラへの呪詛がエネルギー源。
・蔡慶(さいけい)…中年・痩身・高身長・女性経験有・アウトドア派・陽気・見切りが早い。仕事は兄に頼りがち。兄の呪詛が巡ってくる日も近い。
百二.
蔡慶「宋江殿からビデオが届いた」
蔡福「梁山泊といっしょ?」
慶「宋の子供達を入山させる子供番組を作成した。見てくれ」
福「梁山泊も宋にプロパガンダを仕掛けていくのか」
慶「いや、もしかすると」
福「?」
慶「宋江殿は純粋に子供達に見てもらいたいのではないかな」
福「たちが悪すぎる」
福「始まった」
宋江「良い子のみな!おはよう」
福「良い子は梁山泊に入らん」
慶「WWW」
宋「歌のおにいさんの宋江だ」
福「楽和では無いのか」
楽和「うたのおねえさんの楽和よ」
慶「かわいいな」
福「可憐だ」
宋「それでは歌を歌おう」
福「酒を持ってくる」
慶「つまみは俺が」
福「楽和のパートが際立つな」
慶「宋江殿は?」
福「中の下」
宋「体操のおにいさんを呼ぼう」
戴宗「よう」
福「戴宗はおっさんではないか」
楽「体操のおねえさんも来て!」
楽大娘子「はーい!」
福「おねえさん…」
慶「おねえさん…」
福「やたら淫らな体操だったな」
慶「子供に見せられん」
宋「最後に替天行道を暗唱しよう」
福「お前言えるか?」
慶「2ページくらい」
宋「…」
福「…」
宋「…」
福「始まらんな」
宋「…替天行道は皆の心にある」
慶「は?」
宋「また来週!」
慶「作者じゃないの?」
福「冒頭から忘れてるとは」
・蔡福(さいふく)…一仕事終えるたびに激痩せするが、たまの休日で激太りしている。
・蔡慶(さいけい)…近場の飯屋で理不尽な悪口を言われてブチ切れだが、宋国宰相蔡京(さいけい)のことだったので平謝りした。
梁山泊と一緒 キャスト
・宋江(そうこう)…梁山泊首領ポワポワ派。やる事なす事全て善意から始まっているから、無下にできないけどすごく困る。
・楽和(がくわ)…歌のおねえさんを引き受ける代わりにギャラを上乗せしてもらった。
・楽大娘子(がくだいじょうし)…楽和の姉ちゃん。女性陣全員にオファーを蹴られ仕方なくオファーしたところ、ホスト通いで金策に困っていた事もあり快諾した。
・戴宗(たいそう)…酒場でイキっている所を宋江にスカウトされた。足がめちゃくちゃ速いが、体操では活かせない。
子午山
子午山…ある時は岩を砕く怪物。またある時は綺麗な笛の音。またまたある時は、全裸の変質者が徘徊していると、近隣の子供たちは噂しており…
人物
・王母(おうぼ)…近隣の子供たちにも大人気なおばあちゃん。
・王進(おうしん)…近隣の子供たちの名を思い出そうとして死域。
百三.
史進「鮑旭。早く水浴びに行くぞ」
鮑旭「脱ぐのが早すぎます、史進」
史「夏を先取りしているだけだ」
鮑「すぐ脱ぎたがりますよね、史進は」
史「俺の竜がそう囁くのだ」
鮑「それにしても、見事な刺青ですね」
史「実家の近くに住んでいた彫り師の爺さんの、最期の仕事だったんだ」
鮑「そうだったんですね」
史「悔いのない人生だったと言っていたよ」
鮑「よく見せてください」
史「惚れるなよ」
鮑「…ん?」
竜1「右肩の竜を見よ」
竜2「へその下の竜を見よ」
鮑「…」
史「何を凝視している」
竜5「左肩の竜を見よ」
竜6「右乳首の竜を見よ」
竜7「背中の竜を見よ」
鮑「…」
史「気持ち悪いぞ、鮑旭」
竜8「尻の竜を見よ」
鮑「…」
史「なんなんだよ」
竜9「うんこ排出口」
鮑「WWWWW」
史「?」
・史進(ししん)…俺に死角などない!
・鮑旭(ほうきょく)…いつか史進の友達に会ったら教えてやろう。
・彫り師の爺さん…史進が自身では絶対に見ることの出来ない位置に、様々な仕掛けを施して逝った。
百四
鮑旭「…史進がいなくなったら」
王母「こんなに静かになるものなんですね」
鮑「うるさくない日はありませんでしたね」
母「昔からそうだったのですよ」
馬麟「…おい」
母「何ですか、馬麟?」
馬「…客だ」
鮑「馬麟、もっと口の利き方を…」
母「構いません、鮑旭」
馬「…」
母「お客様?」
客「失礼します」
母「こんな山奥にどんなご用事ですか?」
鮑「お茶をどうぞ」
客「私は旅の講談師なのですが」
母「はい」
客「麓の村の子どもたちがこの山には化け物が出る、との話をしていたので、聞き取りに参りました」
母「化け物?」
鮑(武松は化け物だな)
客「中でも心惹かれた化け物の話が」
母「はい」
客「暗闇を徘徊する棒を持った裸の巨人の話でしてな」
母「…」
鮑(絶対にあいつだ)
客「裸で山の木々を飛び移ったり、棒で大樹をへし折る化け物だそうで…」
鮑(やってたな、そんな事)
客「ご存知ありませんか?」
母「…そうですね」
客「…」
母「後できつく叱っておきます」
客「?」
・王母(おうぼ)…少華山に手紙を書きます。
・鮑旭(ほうきょく)…茶菓子まで用意してくれてありがとう、馬麟。
・馬麟(ばりん)…気まぐれだ。
・客…ただならぬ気を感じましたので、聞くのをやめましたわい…
・史進(ししん)…朱武が読んで失神してる手紙を見て察した。
百五.
鮑旭「私も楽器に挑戦してみたくなった、馬麟」
馬麟「ほう」
鮑「笛はお前がやるから、他の楽器がいいな」
馬「ならば、次に里に行った時楽器屋に行こう」
鮑「こんな所か」
馬「琵琶とかどうだ?」
鮑「ほう」
馬「琴もあるぞ」
鮑「悪くないが、もっと野性味のある楽器がいいかな」
馬「ならば…」
馬「このギターはどうだ?」
鮑「一気にバグらせたな」
馬「李白モデルと杜甫モデルは、流石に無理だが」
鮑「古の詩人はロックを嗜むんだな」
馬「曹操モデルは何とか買える価格だぞ?」
鮑「これなら手持ちの銭で買えそうだ」
馬「短歌行は初心者に優しい曲らしいな」
鮑「まさに歌うべし、か」
鮑「楽譜が全く読めん」
馬「俺もだ」
鮑「お前もか、馬麟」
馬「俺はノリで吹いてる」
鮑「じゃあ私も、ノリで弾いてみるか」
馬「チャレンジャーだな、鮑旭」
鮑「こんな高価な買い物は初めてだ」
馬「俺も協力しよう」
鮑「お前を人肉饅頭にしてやろうか!」
馬(キャラが盗人時代になっちまった)
・鮑旭(ほうきょく)…ギターは今の自分より、盗人時代の自分の方が相性が良かった。
・馬麟(ばりん)…鮑旭とバンドを組む時に備え、荒々しい曲の練習中。
百六.
鮑旭「…」
馬麟「…」
王母「緊張しているのですか?」
鮑「とても…」
馬「これほど多くの人の前で演奏など…」
王「誰にでも、初めてはありますよ」
鮑「…」
王「2人に言っておきます」
馬「…」
王「いくらでも失敗しても、構いません」
鮑「母上?」
王「失敗は必ずあなた達の糧になります」
王「だって、喪門仙の初ライブなのですよ、2人とも!」
鮑「…」
馬「…」
王「全力で楽しまないと、つまらないじゃないですか」
鮑「母上が一番若々しいな、馬麟」
馬「俺たちらしくなかったな、鮑旭」
王「行きますよ!」
鮑「はい!」
馬(しかし、血化粧する時からノリノリだったな、王母様)
鮑「…」
馬「…」
王「見事でした、鮑旭、馬麟」
鮑「今は、何も考えられません…」
馬「余韻がまだ残っています」
王「大切にするのですよ」
馬「…」
鮑「しかし母上がこのような化粧をされるなんて…」
王「私にも若い頃はあります、鮑旭」
馬(王進先生に…)
王「なりません、馬麟」
馬「!」
・王母(おうぼ)…彼女の若い頃を知る者は開封府にもごく一握り。老舗の茶屋のお婆ちゃんが幼馴染だったとか。
・鮑旭(ほうきょく)…こんな私でも世間に居場所があるのですね。
・馬麟(ばりん)…人のために笛を吹くのも悪くないな。
・王進(おうしん)…三人のライブに感激しながら死域。
百七.
楊令「困った」
張平「どうしたのですか、兄上?」
楊「財布を忘れたらしい」
張「またですか」
楊「うっかりしていた」
張「家に戻るのも遠すぎますし」
楊「戻ってたら日が暮れるな」
悪者「やい、小僧ども!」
張「カモですよ、兄上」
楊「特別だぞ、張平」
悪「化け物か貴様ら」
張「こいつも無一文ですよ」
楊「けしからんな」
悪「お前が言うな」
張「返り討ちにされるお前が悪い」
楊「もっと計画的に金を使えんのか」
悪「使えたら追い剥ぎなんかしねえよ」
楊「仕方ない。私たちが困った時のための銀をやろう」
悪「かたじけねえ」
張「おい、楊令」
・楊令(ようれい)…梁山泊頭領の器を持つものは、得てして間抜けなところがあるのだ。
・張平(ちょうへい)…器用すぎて小回りが利きすぎたので、大きくなりきれなかった気がする。まぁ十分でかいんだけどさ。
百八.
楊令「張平」
張平「はい」
楊「今ここで私の物を何でもいいから盗んでみろ」
張「もう盗みました」
楊「何!」
張「気づいてなかったのですか?」
楊「何を盗んだのだ?」
張「今私はどんどん楊令殿の大事な物を盗んでますよ」
楊「…私の時間か」
張「ご名答」
楊「そういうのはいい、張平」
楊「テイク2だ、張平」
張「しからば」
楊「…」
張「…」
楊「面と向かってなら容易くは盗まれないぞ」
張「王進先生!」
楊「!」
張「…」
楊「いらっしゃらないではないか」
張「私の勝ちです。楊令殿」
楊「何!」
張「楊令殿の目を盗みました」
楊「まいった」
・楊令(ようれい)…張平のとんちには敵わん。
・張平(ちょうへい)…搦め手に弱いんだよな、楊令殿。