ゆっくりと更新する予定です……二ヶ月以上空けないようには心がけます
設定に関してはプロローグ編が終わってから……
出会いと別れの象徴や穏やかな気候である春の季節の中を一人の少女が優雅な足取りで歩いていた。
風に揺れる黄金の髪が揺れる度に周りの空気も黄金に染まる錯覚を覚え、周りを歩いていた人々は確実に一度は立ち止まっている……女性であろうが男性であろうが関係なく、歩いている少女の美貌に悪魔や天使という表現が共通して刻み込まれているようであった。
多量の視線を集めたとしても少女は恥ずかしがる事も鼻を高くする事も無く、堂々と通っている学園へと足を向けていた。
「遅刻だぞ、氷室」
「すみません、西村教諭……卿に無駄な労働を強いたようで……それとおはようございます」
少女にしては若干声が低く、少年と見るには若干声が高い中性的な声色で少女は誠意を押し出した礼で謝罪をする。
通常の者であればその態度を見ただけで逆に恐縮してしまうような態度ではあるのだが、良くも悪くも少女の目の前の教員は生徒を常に平等に見ている。
少女を平等に一人の人間として見るのは少女が覚醒した中で出会った人物の中ではたった二人しか存在せず、少女自身は憧れに習って常に平等に全てを愛しているのだが、どうしてもその二人の人物だけは特別にしてしまっている。
そのあたりを要努力として課題としているのだが、完全なる黄金にはなれないとも分かっているので別にいいかもしれないとも思っているのだ。
「ああ、おはよう。まあ、別に構わないんだがな……連絡は送られてきている分、もう一人の遅刻者よりはマシだ」
「おや、私以外にも遅れたような者が居るのですか」
このような日に遅刻してしまう人物が自分以外に居るとは思っていなかったのか、若干興味深い瞳を覗かせ、いつの間にか受け取っていた封書を素手で丁寧に切り取りつつ、気配を感じ取ったのか後方を見やり、走りよってくる人物に気がつき、多少目を見開いた。
「吉井、遅刻だぞ」
知っている名前と共に西村教諭のドスの利いた声が駆け寄ってきた少年へと突き刺さる。
それを横目で見ながら少女は自身を無視された事に若干の苛立ちを覚えつつも、これはいけないと首を横に振り回しながら気持ちを整えて心を落ち着かせる。
「おはようございますてつz……西村先生!!!」
頭を軽く下げて挨拶している少年……先ほどの少女の時と同じではあるのだが、比べてしまうと少年のほうはどこか間抜けなように感じる礼である。
とはいえ、少年が間抜けなのではなく、少女と比べるとという意味合いなので、一般的にはそう悪くは無い部類の礼である。
尚、少年が先ほど口に仕掛けた鉄人とは目の前の教員の渾名であり、教員の趣味のトライアスロンが理由の一つとして挙げられている。
「吉井、おはようではないだろう」
それはそうである挨拶は大事ではあるのだが、それよりも先に謝罪をしないのが可笑しなことである、とはいえ少女も連絡ありとはいえ遅刻してしまったので、五十歩百歩だと思い、黙ってみていた。
それはそうとして、穴が開くほどまでに見つめているのに少年の方は相変わらず少女の方に気がついておらず、その鈍感具合が伺える。
「えっと、本日も肌が黒いですね」
「お前は遅刻の謝罪よりも俺の肌の方が気になるのか……?」
遅刻の謝罪よりもその人物の肌の具合を気にするのもこの少年ぐらいのものであろう。
「そっちでしたか、すいません……ってうわあ!!?氷室さん!!?」
「ようやく気がついたのですか……まあ、卿に言っても仕方ないとはいえ目の前の出来事に集中しすぎなのもどうかと思いますよ?」
眉間にしわを寄せつつ、指でもむ少女、先ほどの圧倒的な圧力は消え去り、ただの少女にしか見えなくなった……どうにもこの少女は少年の前では無意識にメッキが剥がれるようである。
少女自身が自覚していない為、修正する事も不可能ではあるのだが……不思議と他の人にはばれてはいないのである。
「それと、おはようございます明久……まさかモーニングコールをしたと言うのに遅刻するとは思いませんでした」
「う……いやあ、その後ついつい眠気に負けちゃって……」
「確かにこの時期、睡魔に負けてしまうのは道理だとは思いますが……」
「これ以上遅れる気か」
西村教諭の言う事にそれもそうかと思い出し、少女は再び無意識にメッキを被る……少年―――吉井明久―――はその事に気がつき若干苦笑しつつも、指摘しない。
そうして明久も封書を受け取って破ってから中身を取り出してクラス分けの表の結果を見る。
色々と話す隙間を見つけれなかったせいなのか、西村教諭は何も言う事無く見届けている。
少女―――氷室慈愛(ヒムロ シア)―――はその様子を見てから慈愛も見ていない事に気がつき、表を見る……もっとも見るまでもなく結果は分かりきっているのだが。
――――吉井明久:Fクラス
――――氷室慈愛:Aクラス・主席
この地点で、一人の少年の思惑は崩れ去ってしまった。
次の投下はもう少しかかるかもしれません、基本的にストックしてないので。
では、また次回