バカとテストと金鍍金   作:ハガル_ゴールド

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 カリオストロ、口調が難しいよ


プロローグB

 

「……この学園が何を考えているのか理解に苦しむわね。教育環境として快適ではあろうが、明らかに異常すぎる」

 

「その分のとばっちりを受けてそうで物凄く怖いんだけど……」

 

Aクラスの教室を覗き込んだ時の二人の評価である。

噂で聞いたことがあるとはいえ、今まで見たこともなかった脅威の設備……ノートパソコンに空調設備、個人用のエアコン、リクライニングシートに個人用の冷蔵庫その他諸々のセットがデスクに設置されている。

更に壁付近には観葉植物や絵画なども並べられている……その絵画の中に何故か一枚だけ軍人の人物画が飾られている。

慈愛はその絵を見た時、見覚えがあるような錯覚に陥り、一瞬黄金の存在と重なったのだが、それは一瞬のことである……瞳の色が違うのだから違う人物の筈だと言い聞かせつつ。

 

「どこのホテルなんだろうね」

 

「格差社会というものを高校の頃から味あわせる目的であるならこれほど皮肉なものではないでしょう……ところでアレはやはり私の席なのでしょうか?」

 

「……じゃないかなあ…………メイドさんも居るーーー!!!?」

 

一つだけ、明らかにおかしい席があり、意図的に視線を向けていなかったのだが、見ただけで王が座るべき席という覇気を感じさせる座席・机と使用人が数名配備されているのである。

もはや学生としては在り得ないほどの優遇具合、他の生徒達がその席を見て硬直しているのは錯覚ではないだろう、すでにかなりの時間がたっているであろうにも関わらず、畏怖の視線を未だ主を迎えていない席に注いでいた。

 

「流石に今の私は一端の学生に過ぎないのですが……いくらなんでも是はやりすぎでしょう」

 

「でも……氷室さんが皆と同じ席に座っている図が想像できないんだけど」

 

「一介の一般性とに過ぎませんよ。例え、私が仮定としてどこかの国の王族だとしても、です……学生のうちはキチンとせめてクラス内では平等にして貰いたいものですよ」

 

かなりの不服ではあるが、それと同時に今更変更して欲しいと言って、今教室内に居るであろうメイドを解雇させるのも気が引ける。

と、言うよりも恐らくは慈愛に畏敬の念を抱いている教員連中が何かしたのだろうと慈愛は頭を悩ませた。

 

「もしくは……カリオストロの仕業かもしれませんね」

 

「召喚技術のオカルト部門の人だっけ?確か」

 

二人して滅多に姿を見せない教員ではない研究員の姿を思い浮かべる―――その男は未解明であるオカルト部分をほぼ掌握するかのような研究成果を挙げており、下手に切れない立場の人間……学園長ですら扱いに困り、唯一マトモに話をする事ができるのは慈愛だけであり、その事からも畏敬の念を深めている要因でもあるのだが。

何もしていない時でも大体その男のせいにしておけばいいだろうという理不尽な扱いを受けており、その男自身も例え冤罪であろうとも肯定はしないが否定もしないという胡散臭さ全開なので、その風潮が定着しているのである。

 

「まあ、いいでしょう……良くは無いですが、これ以上の遅れは避けるべきです。また昼にでもご一緒しましょう吉井」

 

「うん、そうだね……こっちに来るの?」

 

「えぇ、見学がてら」

 

そういいつつ、慈愛と明久は別れ、慈愛は教室の扉を開け放った……途端、決して緩やかではなく緊張し続けていた空気が更に緊張した。

圧倒的なまでの威圧感、少女自身が曰く所詮、金メッキでしかない存在ではあるが、本質を見抜いて通用しない西村教諭や慈愛自身の渇望を揺らがせる明久の存在以外はメッキの中の慈愛に気がつくことは無いのである。

例え慈愛の存在を知らない者でも一度目にしてしまえば例外なく己が価値観を破壊しつくされる程度である……もっとも、慈愛が知る本物であったなら見た瞬間、文字通り魂そのものが破壊されるだろうと推測されるほど圧倒的な存在感を持っているので、そのような感想を聞いたとしても特に何も感じないのだろう。

 

「遅れてしまい、申し訳ありません」

 

「い、いえ……皆の自己紹介が終わり、これからクラス代表である貴女の紹介だけでしたので」

 

「そうでしたか……!!(創造(Briah)――神世界へ翔けよ黄金化する白鳥の騎士(Vanaheimr Goldene Schwan Lohengrin))……私は氷室慈愛です、よろしくお願いします」

 

不愉快な気配を感じ取り、咄嗟にギャグ的瞬間詠唱状態の威力の無い上辺のみの攻撃を放ったが、それを感じ取らせること無く、平坦に頭を下げ、クラスメイトの顔を確認していく慈愛。

明久の事を襲おうとしたカッターナイフなどの群れをメッキとはいえ、最上級の聖遺物のおっかない槍などで打ち落としてなどいない。

それはともかくとして、誰もがメッキである黄金に畏怖の念を感じ取っている光景を見て、慈愛は満たされていた……

 

(これでいい……私はあの黄金の獣殿の威光を世界中全てに知らしめる為に存在している……私が一族の中で唯一黄金だったのはその為だったと実感できていればそれでいい)

 

演じている自分自身に酔っているのではなく、誰も慈愛自身を見ていない事を理解しており、慈愛が知った最高の器である黄金の獣殿の威光で眩んでいる事に歓喜しているのだ。

乗っ取りなど企んでなどいない……もしも本物が代償として自分自身を器として君臨しても喜んで差し出すだろう……そういう狂気が慈愛の中に渦巻いているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「随分と歪んだ思想ではある……ですが、やはり興味深い。そうは思いませんか?獣殿」

 

別の場所の様々な機械が設置されている部屋の中央で、研究衣を纏った影法師のような青年が、まるで少女の思考を読んだかのごとく口を開く。

 

「クリストフと同じような渇望では有るが……似て非なる渇望ゆえか弱いとはいえ彼女は貴方と同じ創造を扱える……とはいえ、それは現実にはクリストフの創造のみで今は(・・)別の事象でのみですが」

 

……誰かと話しているようだが、その話している相手は見えていない上に存在すら感知できない……少なくとも男以外には察知できないであろう。

 

「えぇ、確かに私達はこのような事象を知らない(・・・・・・・・・・・・・・・)。未知を見せて貰える代わりに獣殿はあえて力の一部の貸し出しに承諾しておられる。少女自身にはとてつもない重さでしょうが……」

 

と、ここで影法師が一枚の写真を取り出す……わざと選んだかのように女装している姿の明久だった。

見えても感知もできていない存在が態々その写真にした事に呆れているらしい、とはいえ影法師以外には見えないので判断しかねるのだが。

 

「さて、一応仕事は果たしておくとしましょう」

 

そう言って影法師―――アレクサンドロ・ディ・カリオストロは先ほどの独り言がうそみたいに作業に没頭し始めた。





 次でプロローグは終了、その後に慈愛の設定と原作との簡単な変更点をー

 次回もよろしくお願いします
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