なんか第四次聖杯戦争に神霊が来ちゃったんですが…。 作:イビルジョーカー
思わずやってしまった。
衛宮切嗣。それが男の名前だった。
彼は死の運命にある人々の救済を切実に願い、その為の努力もした。
だが、どうあっても全てを助けられないと悟った時。
切嗣は……十の内一を切り捨て九を救う選択肢をとった。
より多くの人間を救う為に他の誰かを犠牲にする。その為の切嗣は自らを何の感情も
持たない機械とし、優秀な天秤の秤手であろうとした……だが、彼はあまりにも人間
過ぎた。
誰かが歓喜する笑顔は彼の胸を満たし、誰かの慟哭する声は彼の声を震わせた。
無念の怨嗟には怒りを共にし、寂寥の涙には手を差し伸べずにはいられなかった。
人の世の理を越えた理想を追い求めるというのであれば、そんなものは目的を決した
時に切り捨てるべきである。なのに………男はそれができなかった。
苦悩と葛藤の果てに彼は聖杯の存在を知る。
いかなる祈りをも成就させる『万能の願望機』としての聖杯を。
「これが……あの伝説の聖剣の鞘」
上記で語った男こと衛宮切嗣は自室のテーブルに置かれている『それ』に驚愕の二文字を
顔に浮かべていた。
そこにあるのは、サファイアのような美しい青と神聖さを感じさせる金を基本色とし、どう見ても
『1200年前の代物』とは思えないほど傷一つ無ければ、一片の風化さえ見受けられない『鞘』。
この鞘の名は『アヴァロン』。
かのブリテンの騎士王『アーサー・ペンドラゴン』が所持していたとされるもので、持つ者に絶大な
治癒力を齎すという、未だこの世に現存する宝具の一つ。
切嗣としては、目当てのものが見つかって嬉しむところだが、むしろ喜びというより、こんな代物を
本当に見つけてしまうアインツベルンの現当主『ユーブスタクハイト・フォン・アインツベルン』の
執念さに呆れ返るばかりだった。
しかし、それだけアインツベルンは聖杯に固執していた。
そもそもユーブスタクハイトこと『アハト翁』を含むアインツベルンが、外部である『遠坂』や
『間桐』の手を借りてまで『聖杯を造ろう』という結論に至った根本的な理由は、他でもない
『第三魔法』の再現だった。
第三魔法はアインツベルンの大昔の当主が至った『五つの魔法』の一つであると同時
にアインツベルンが保有してきたものだ。
それが1000年以上も前の大昔、第三魔法は使い手と共に唐突に失ったのだ。
当時のアインツベルンの文献の中には、第三魔法とその使い手をどのようにして失ったのか、
また使い手はどうなったのか、そのことについてはまったく綴られていなかった故に今も憶測
だけが飛び交い、依然として真相は闇の中だ。
しかしアインツベルンにとっては、そんなこと『どうでもよかった』。
何故なら失った『過程』や『原因』などより『どうやって再現するか』の方が重要だったからだ。
この突然的な事態にアインツベルンは何とかして第三魔法の再現に試行錯誤を費やしたが、結局、
全てが徒労に終わり果てた。
しかし、彼等は諦めなかった。
『聖杯』という途方も無い力を秘めた『万能の願望機』を考え出し、聖杯鋳造に必要
な魔術を有している『遠坂』と『間桐』に同盟を持ちかけ、聖杯で根源に穴を穿ち、
更にその穴を固定することで根源へ至ろうと企てた。
ところが聖杯がその願いを聞き届けるのは、たった一人の祈りだけだった。
そして『聖杯戦争』という『誰が聖杯の担い手として相応しいか殺し合いで決める』
為の儀式を開催したものの、アインツベルンは聖杯戦争で敗戦を喫すばかりで一向に
聖杯を手にすること叶わずにいた。
だからこそ外部との接触及び干渉を嫌悪する筈のアインツベルンは、今度の聖杯戦争
である『第四次聖杯戦争』に勝つ為、一人の男をアインツベルンに迎え入れた。
その手段を問わないやり方と対魔術師戦に特化した『魔術師殺し』の男『衛宮切嗣』を。
「いずれ聖杯戦争は始まる……負けられないな、絶対に」
アヴァロンにそっと手を置きながら、誰にも聞こえない位…小さく細い声で彼はそう呟いた。
※
聖杯戦争の始まりは三つの名門家から始まった。
『間桐』と『遠坂』、そして『アインツベルン』の通称『御三家』は様々な伝承や伝説で
語れる聖杯の再現を企て、神秘学においてこの世界の外側にある次元論の頂点に君臨する
力『根源の渦』に至ることを最大にして究極の目的とし、御三家同士は互いに己が秘術を
提供することで万能の願望機たる『聖杯』を創り上げることに成功した。
だが、ここで思わぬ欠点が発覚した。
聖杯がその願いを叶えるのは『たった一人』のみだったのだ。
そこからは聖杯を巡り御三家同士による血に塗れた争いが起きたことで御三家の同盟関係
は破綻、結果的に勝敗が付かなかった為に次回からはちゃんとしたルールを設けることで
事を収めたという。
これが『聖杯戦争』の始まりである。
「君のその手に現れた紋様は令呪と呼ばれるものだ。サーヴァントを統べる為の強制装置
であると同時に聖杯によって選ばれた参加資格でもある」
「…………」
イタリアのトリノにある遠坂家が保有する別荘の一室で現遠坂家当主『遠坂時臣』は、目
の前にいるカソック姿の青年『言峰綺礼』の手に刻まれた令呪や聖杯戦争に関わる様々な
説明を行っていた。
「聖杯戦争の実態は英霊たるサーヴァントを召喚し、使い魔として使役する戦いなんだ。
よってマスターにはそれ相応の魔術の素養が必要になると同時に本来なら聖杯が選ぶ七人
というのは皆、魔術に通ずる者の筈なのだが……」
「魔術と縁のない、そればかりか仇なす者が選ばれた……ということですね?」
綺礼の言葉に時臣はゆっくりと頷いた。
「魔術師、ましてや魔術使いですらない者がこれだけ早期の段階で聖杯にマスターとして
選抜されるというのは、極めて異例のことだろうね」
「……しかし、英霊を召喚し使役するというのは……」
「信じ難いと思うのは無理もないだろうね。何せ英霊とは歴史や伝説にその名を刻んだ、
超人や偉人……神に近い霊格の存在だ。よってそれを召喚し使役できるのは『世界』のみ
……だが聖杯の力の一端を使うことでそれを可能にしてしまう。そのことを踏まえて考え
れば、アレが一体どれだけ強大な宝具なのか分かるだろう。
近くは百年程度、遠くは神代の太古において名を馳せた英霊が召喚される。七人の英霊は
それぞれ七人の魔術師であるマスターに従い己がマスターを守護し、敵であるサーヴァン
ト及びマスターを駆逐する。あらゆる時代、あらゆる国の英雄を現代に蘇らせ、覇を競う
殺し合い。それが冬木で行われる聖杯戦争なんだ」
「無論のことながら、戦いは秘密裏に行うのが暗黙の掟だ。聖堂教会も魔術協会も神秘の
具現たる英霊同士の戦いを一般社会に露見させるほど愚かではない。それを徹底させる為
、我々聖堂教会から監督役が派遣されることになっている。聖杯戦争による災厄をできる
だけ最小限に抑え、その存在を隠蔽し、マスターたちに暗闘の原則を守らせる為に」
ここで綺礼の父親である言峰璃正が説明を付け足す形で会話に加わって来た。
璃正の言葉を聴き、綺礼は疑問の声を上げる。
「……それはつまり、我々聖堂教会が魔術師の闘争の審判を務めるということですか?」
「魔術師だからこそ、だよ」
綺礼の質問に時臣がワインを片手にそう返答した。
「魔術協会の人間になると派閥間の利害が絡んでしまう。だからこそ、聖堂教会という
外部の権威に頼る他なかったというわけなんだ」
「時臣君の言う通り。加えてその発端が聖杯の名を冠された宝具とあっては、我々聖堂
教会も黙ってはいられない。それが神の御子の血を受け止めた本物かもしれぬのだから」
本来、聖堂教会と魔術協会は犬猿の仲以上に悪いのだ。表側では互いに不可侵を決めては
いるものの、その裏側では神秘を巡り、熾烈な鮮血に塗れた闘争を繰り広げている。
そのことを踏まえて考えれば、『聖杯戦争の監督役を務めろ』という魔術協会による要請
を承諾することはなかっただろう。だがどうしても承諾しなければならない理由があり、
それの最大の要因こそ『聖杯』である。
聖杯はたった一人のどんな祈りをも叶える。
それはすなわち、『世界の内側を変革させる』ということに他ならない。もしそれが凶悪
とも、破滅とも言える、そんな負の祈りだったとしたら………未曾有の壊滅的災厄が降り
かかって来るのは目に見えている。
それを防ぐ、正確には『聖杯を手にするに相応しいかどうかを見定める為』に聖堂教会は
優秀な者を一人監督役として派遣するのだ。
そして、今回行われる第四次聖杯戦争では、かつて前回の聖杯戦争で監督役を務めた璃正
神父が再び監督役を務め、それと同時に璃正の息子でありマスターでもある綺礼と共に、
水面下で時臣を支持し残る五人のマスターを駆逐し殲滅する。
何故、聖堂教会が時臣という一人の魔術師に肩を持つのか……その最大の理由は、聖杯を
『望ましい者』に与える為だ。遠坂家はかつて祖国に信仰を弾圧されていた時代から聖堂
教会と同じ教義を貫いて来た歴史を持ち、時臣自身の人柄も十分に保障できる。
何より、時臣本人における『聖杯の使い道』が教会にとって好都合だったというところが
大きい。
『根源への到達』。
全ての魔術師の悲願にして最終目標とも言える、謂わば『世界からの逸脱』である。
内側にしか興味を持たない聖堂教会からしてみれば、時臣の目的は聖杯を『世界の外』へ
と持っていってくれるものなのだから、これほど喜ばしいことはない。
その為の『水面下における共闘』なのだ。
※
聖杯戦争の説明からこれから自分が成すべきことを全て聞き終えた後、綺礼は時臣の別荘
を離れ、一人街中を歩いていた。
まず彼に与えられた任は『遠坂時臣の弟子となり、魔術の素養を身につける』ことだった
。今後の聖杯戦争の為にもマスターとして戦いに参加できるだけの魔術師となっていなけ
ればならないからだ。
だがそんなことを公然と行えば、後の闘争において協力関係を疑われる危険性が出て来る
ものだが、そこは魔術師の盲点。魔術師の世界では利害のぶつかった師弟同士が血にまみ
れた殺し合いを演じることなど日常茶飯事だ。
よって他のマスターが二人の聖杯戦争においての関係を見たとしても疑うことなどせず、
『利害の衝突か何かで敵同士になったのだろう』としか思われない。
つまり、その点においては何も問題ない。
「……何故、聖杯は私など選んだのだ」
しかし綺礼には自分が聖杯に選ばれるその所以が理解できなかった。何故なら、綺礼ほど
目指すべき道に向かうだけの情熱や欲望の無い人間はいないだろう……物心ついた時から
、彼は全てにおいて満たされなかった。故に彼は欲した。
この空虚な心を満たすだけの何かが……しかしそうやって探していく内に手に入ったのは
望みもしない栄光と名誉。積み上げては崩し、また積み上げては崩していく虚しい日々の
連続。故に彼はこう悟った。
『自分と言う、虚無な人間は神の愛をもってしても、その心を救うことなどできぬ』と。
そんな綺礼だからこそ、聖杯が自らを選ぶなど理に適っていないと心底思えるのだ。
だが……おそらく彼は知ることになるだろう。
今から3年後に始まる『第四次聖杯戦争』の中で。
※
ケイネス・エルメロイ・アーチボルトほど『天才』と『神童』、この二つの名声を受けた
魔術師はそういないだろう。そんな彼は少し鼻につく態度で相手と接するものの、性根に
関して言えば……ぶっちゃけ『ツンデレ』だった。
それが女心を掴むのか。はたまた別の要因かは定かはではないが……意外と女性に人気が
あったりするわけだ。
そんな彼が一人の少年を弟子として迎え入れたのは、つい最近のこと。
名を『ウェイバー・ベルベット』と言い、若輩の魔術師ではあるものの、その才能と技量
はケイネスと同等か……もしくはそれ以上と称されるほどのものだった。
「………ウェイバー、ウェイバー・ベルベット。一つ聞いておくがその態度は何かね?」
「何って、ケイネス先生の話を聞く為ですよ?」
魔術の総本山と呼ばれる『時計塔』。
その中にある一室でケイネスは豪華な感じを彷彿とさせる机に、対するウェイバーは客用
のソファーに座って足を組み、両腕をだらんとさせているので上記の言葉には、まったく
説得力が感じられない。
「ふん。まぁいい。いくら私が言ったところで貴様の頭では理解できんだろう」
と、言うような感じで我が弟子ながら既に悟っているのか。
ウェイバーの態度に対し、あくまで嫌味を言っただけで冷静さを保っていた。
ここでウェイバーの余計な言葉が無ければ。
「いえいえ、ちゃーんと理解してしますってケイネス先生。わざとしないだけですよ」
「……………………ええい黙れ! てゆーか貴様、今思ったけど私に対しての敬意がない
ってどういうことだ! 師とは弟子を支え、弟子は師を尊敬し目指すべき目標とするもの
の筈だぞ!? なのに……なのに……これは一体どういうことなんだ!!」
とうとう我慢の限界か。上司とも言える自分に対しそんな生意気な態度されたら、怒るの
も当然と言える。
しかしとうのウェイバーときたら……
「いやぁ、まぁ、何なんですかね。なんか……ぶっちゃけ敬うべきオーラってやつですか?
そういったものがまったくと言っていいほど感じられないんですよ。けど、そんなのでも、
僕の師匠には変わりないし一応は尊敬してますよ?」
「そんなこと言っている時点で尊敬など1mmさえないだろう!……はぁ~まったく……
それよりも私が君をここへ呼んだのは『例の件』をどうするかだ」
「『聖杯戦争』……ですか?」
ウェィバーはそう言って左手の甲にある赤い紋様をケイネスに見せる。
その様子にケイネスは鼻をフンと鳴らしながら答えた。
「いかにも。君だけでなく私までご覧の通り『令呪』を授かったわけだが、私としては
師弟同士で戦うより師弟同士協力して聖杯戦争を勝ち抜いた方がいいと思うのだが……
しかし、君があくまで師である私を越える為に私を敵とし「いいですよ」へ?」
「いや、だから協力。確か師匠は特に願いなんて無いんですよね? ようは『自分の今
までの経歴に最後の箔として『聖杯戦争に勝ち抜いた』っていう実績だけがほしいんだ
ったら、僕も個人的な理由だけで別段聖杯なんかに興味ないし」
「あ、いや……う、うむ。そうか。いやいや、貴様にしては実に良い選択だと思うぞ。
うん……本当に」
何処かぎこちないケイネスにウェイバーは怪訝な表情を浮かべるものの、まいっか。
と具合に流してしまった。ちなみに現在のケイネスの心境は……。
(ウ、ウェイバー・ベルベット! そこはこう……なんか良い感じに『お互い全力を尽くして
良き敵として戦いましょう!』的な風に言うのが一番じゃないのか?! いや、確かに協力
するってのも合理的に適った手段だよ? だけど貴様、今のはないだろう! せっかく……
……せっかくの『少年ジャンプ的な師弟の絆を感じさせる熱血バトル』がぁぁぁぁ!!)
この男、重度の中二病患者にして末期だった。
ダメだ。この魔術師、早く何とかしないと……。
「あっ、そう言えばサーヴァント召喚には触媒の聖遺物が必要なんですよね?」
「ん? ま、まぁ、そうだな。しかしその点は案ずるな。既に手配はしてある。後は待つ
ばかりと言うわけだ」
少し上擦った感じで言うケイネスだが、いつものように鼻が付くような高飛車な雰囲気で
言ってのける辺り、ある意味(笑)天才の名は伊達ではないらしい。
※
さて。御三家の内アインツベルンと遠坂、そして外部の魔術師であるケイネスとウェィバー
の師弟コンビが聖杯戦争に向けての準備を着々と進める中、最後の御三家である『間桐』は
と言うと現当主である『間桐臓見』とその息子『間桐雁夜』は緊迫した空気を張り巡らしな
がら親子面を合わせて対峙していた。
「随分と図々しいのぅ、雁夜よ。我が間桐の家督を受け継ぐことなく逃げ去った負け犬が、
どういう意図で戻って来たのだ? よもやあれだけ魔術を嫌って来たお前が、今更にも聖杯
の奇跡に与りたいというわけではあるまいに」
「ああ、その通りだ。実は風の噂で『間桐が恥曝しな行為をしている』と聞いたもんでな。
そんなことまでして間桐の血筋に魔術師の因子を残したいってのかよ」
「ほう。それを詰るのか? そもそも間桐がここまで零落したのは貴様のせいなのだぞ
雁夜。御主が間桐の家督を引き継いでおれば、ここまで事態は切迫しなかったという…」
「茶番はやめろよ、吸血鬼。あんたが欲しいのは『聖杯戦争に勝つ為の駒』だろ?」
間桐雁夜。この男は自分の父親がどういうものかを知っていた。
数百年もの時を生き、その身は余すところ無く『蟲』で構成された正真正銘の化け物。
何故、間桐臓見が『遠坂桜』という魔術師の血を欲したのか。
一般的な魔術師の論理で考えるなら、魔術師という人種は基本的に血統を重んじる傾向
にあり、それはもう『妄信的』とさえ捉えてしまうほど。
この点を踏まえた上で考えるなら、間桐は代を追うごとに魔術回路が失っていっており
、薄まっていくその血が完全に消えることのないよう他家の魔術師を間桐として迎え入れ
ることで血の存続を図る。
十分に納得の行く理由だが、実際はまったく違う。
間桐臓見は、もはや自らが積み上げて来た魔術師の家柄自体に興味など微塵も無い。
あるのは只アインツベルンにさえ劣らぬ『聖杯への執着』であり、『どのようにして聖杯
を手に入れる為の駒を調達するか』、『駒をどのようにして使い勝機を得るか』などしか
考えていなかった。
そう。古き盟約を持ち出して、遠坂の家から桜を間桐の養子として迎え入れた間桐臓見の
本当の目的……それこそ『駒を量産する胎盤装置』の役目を桜に負わせる気なのだ。
そして臓見は見抜いていた。
雁夜がどういった思惑で、どういう考えがあって、忌み嫌っていた筈の間桐の家に戻って
来たのかを。
雁夜は『桜を救うつもり』だ。
どんなことをしてでも、その結果として自分がどうなろうとも、彼は自分が恋焦がれた
遠坂葵の娘である桜を救う為に戻って来た。
そんな決意を臓見は見透かし、雁夜が『自分が聖杯戦争に勝ち間桐に聖杯を持ち帰る』
と言うことを予測したが、結果はまったくもってその通りとなった。
そんな雁夜に対し、臓見は蟲倉へと彼を誘い、そこで夥しい数の蟲たちに犯されている
桜の無残な姿を見せた。
当然ながら雁夜の顔は絶望の一色に染まった。
しかし臓見は、その様子を見て嘲笑うだけ。
「臓見……約束は守ってもらう! 俺がこの家に聖杯を齎す! それまでは桜に手を出すな!」
「カカカッ! いいだろう、いいだろう! せいぜい無駄な悪足掻きでもすることだな」
雁夜は臓見と約定を交わした。
『自分が一年間蟲倉で修行し聖杯戦争で十分に戦えるほどの魔術師になる。そして1年後に
行われる聖杯戦争に参加し、間桐に聖杯を与える。故に桜には一切の手出しを禁じる』と。
但し、もしも聖杯を掴み損ねた場合は……『桜は蟲による調整を続けられ胎盤装置』となる。
それがおぞましい妖怪との約定。
こうして、間桐雁夜の地獄のような日々が幕を開けた。
※
いよいよ第四次聖杯戦争が始まる。
アインツベルンの礼拝堂では『魔術師殺し』こと衛宮切嗣が水銀で魔方陣を描き、その様子を
彼の愛妻『アイリスフィール・フォン・アインツベルン』は興味津々といった具合に見ていた
。
「英霊を召喚するのに、こんな単純な儀式で構わないのかしら?」
「実際のところ、英霊たるサーヴァントを召喚するのは聖杯の役目なんだよ。僕を含めた聖杯
戦争のマスターはあちら側の英霊をこちら側に繋ぎ止めるだけの魔力を供給するだけなんだ。
さて、準備完了だ」
切嗣は膝を突いていた足を立たせ、まっすぐ魔法陣の前へ立つと詠唱を開始した。
一方、日本の冬木では遠坂もアインツベルン同様に英霊召喚を行っていた。
薄暗い冬木教会の地下にて魔方陣の前へ立ち、切嗣同様に詠唱を口にする。
更に間桐邸では、蟲倉で雁夜が狂戦士を召喚する為に儀式を執り行うが、雁夜の姿はまるで
死人のそれと同様の物へと変化していた。
顔面の半分が麻痺し、片足は使い物にならなくなり、果てはその髪を精気のない白へ染めた
異様で哀れな姿。
詠唱を口にするだけで体内に宿った擬似魔術回路である刻印蟲が雁夜の血肉を喰らい、
魔力へと変換していくが、それは彼にとって恐るべき苦痛に他ならなかった。
だが、ここでやめるわけにはいかない。
地獄のような苦痛に耐えながら詠唱を続ける雁夜。そんな息子の姿を見て愉悦に浸りながら
卑しい笑みを浮かべる臓見。
それぞれの御三家マスターたちが詠唱を終えた瞬間、『彼等』は現れた。
「どもども~~ウッス、チッス! 君が私を呼んだマスターでO~K~かな?」
「「…………………………………………………………え?」」
「あ、あの、貴方が私を呼んでくれた……マスターですか?」
「………………………………………………何故こうなった」
「な、何なんだ! こいつは……この英霊は?!」
「………」
アインツベルン側が召喚したサーヴァントは、『規律の狂気』を内に秘めながら
も人を最後まで信じ続けた生と死を司る神。
遠坂側が召喚したのは、魔法少女たちの絶望を一心に受け止め、希望へと変えた
魔法少女の神。
そして間桐側が召喚したのは、『恐怖の狂気』をもってして世界を破滅へ導こう
とした鬼神。
これは、本来ならばありえない『神霊が召喚された第四次聖杯戦争』の物語である。
切嗣陣営が『死神様/セイバー』、
遠坂陣営が『アルティメットまどか/アーチャー』、
そして間桐陣営が『鬼神阿修羅/バーサーカー』。
と言った具合に配布しちゃったんですけど……これ、色々とヤバイ気がします(汗)
本当なら神霊なんて無理なんですけどねぇ~~(笑)
ちなみに他のクラスについては色々と候補があるんですけど、全然決まってません(涙)
なので『これを出して欲しい(神霊限定)』という意見があれば、どんどん挙げて貰える
と嬉しいです。
では、感想やアドバイスなどお待ちしてます!!