フォロワーファンタジー ー小豆味ー   作:ニャル太郎

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ファンタジー要素なくね?

青空を見ながら東雲の幻想屋は呟いた。

 

「飛ばす時は飛ばすって言ってくだせえ……」

 

「すみません……いつもこれくらいのスピードで飛んでるもので……」

 

「こんなスピードで飛んでたら内臓がえらいことになウエッ……」

 

「吐かないでくださいね!?」

 

「へへっ大丈夫……傷が痛むけど……」

 

「さては大丈夫じゃないな!?」

 

喉まで来ていた甘酸っぱい酸を飲み込み、上半身だけ起き上がる。

 

「あぁあそこです、東雲さんを見つけた場所」

 

「ほー……」

 

Airealが指差した場所、ではなくその先の光景が目に入った。

 

「エアさん、カレンちゃんにその先に進むように言ってもらってもいいですか?」

 

「え?」

 

「あれを辿れば、確実に二人がいる場所につきます」

 

おかしな潰れ方をした木々(・・・・・・・・・・・・)を指差す。

 

「気づかなかった……なんだあれ……」

 

「あの神の仕業ですよ、こんなに範囲大きいとは思わなかったけど」と吐き捨てる。

 

「多分距離的にもそんなに離れていないかと」

 

「わかるんです?」

 

「なんとなくだけど、二人の気配がする」とアホ毛が動く。

 

「センサーか何かなんですかそのアホ毛」

 

「え?トリガーですけど」

 

「いや知らんし、まあいいやエアロカレン、あの木を辿って」

 

〈了解〉

 

よいしょ、と再び寝っ転がる。

 

「頂上に変な山ができてるんで、そこに着いたら起こしてくだせえ」

 

「わかりました」

 

しばらく青空を眺めていたが、いつの間にか東雲の幻想屋は眠りに落ち夢を見た。

 

一説では夢は記憶の整理と定着の役割を担っていると言われている。

 

東雲の幻想屋はその(きおく)の一部を見た。

 

自分と誰かが話している様子で、自分が異議を唱えている様子だった。

 

目の前に綺麗な男性が立っており、しばらくその異議を聞いていた。

 

男性は何か呟き、アホ毛を指を刺した。

 

── もう私たちには時間はない。困ったらそれを引くんだよ、必ず君の助けになる。

 

その声は“あの時“の声によく似ていた。

 

“起きろ“と言ったあの声だ。

 

(この声、あの男、なんか知って──)

 

「東雲さん、着きましたよ」

 

手を伸ばした時にはもう起きていた。

 

「……どんぐらい寝てました?」

 

「十分ほどです、お昼寝にはちょうどよかったんじゃないでしょうか」

 

「……そうっすね」

 

「どうしました?」

 

「いや、なんか変な夢見てた気がして」

 

「変な夢?」

 

「まあ忘れちゃったから、大した夢じゃないっすね」

 

体を起こし目的地を見る。

 

「うっわぁ、あの山違和感ありすぎでしょ」

 

「あそこでアールマティと戦ってたんですか?」

 

頂上らしき場所に不自然に存在する異質な山が見えた。

 

身を乗り出し、目を凝らす。

 

木々が潰れた跡が当時の光景を蘇らせる。

 

あまりいい思い出はないのでさっさと忘れたいところ。

 

にしても二人の姿は見えない。遠すぎるのかはたまたもう二人はいないのか。

 

「近づいて確認したいなぁ、いけます?」

 

「安全に着地できる場所はなさそうですね、一度麓に降りて登りますか」

 

「え?飛び降りればいいんじゃないですか?」

 

「……なに言ってんの?」

 

「ほら特撮スキルで地味に体が丈夫になってたりするじゃないですか」

 

「これ特撮じゃないですよ?異世界転生しただけで体は多分変わってないと思いますからね?」

 

「でもやってみたいじゃないですか、高所からの飛び降り変身」

 

「自分はそこまで……」

 

「そうかぁ」

 

どうしたものか、と腕を組み考える。

 

「物は試しって言いますし、やってみましょう!」

 

「えぇ……」

 

困惑するAirealを無視し、エアロカレンに問いかける。

 

「カレンちゃん、あの山のてっぺんまでお願い!」

 

〈マスター 指示を〉

 

「……もうそれでお願い」と頭を抱えながら答えた。

 

〈承知〉

 

ゴォォン、と音を響かせエアロカレンは進む。

 

山の近くに行き、もう一度目を凝らす。

 

やはり二人の姿は見えない。

 

「うーむ、しゃあねえ」

 

目的地より少し手前で、

 

「ここら辺なら、ッ!」

 

東雲の幻想屋は飛び降りた。

 

「ちょっと!?」

 

地面からは二十メートルほどの高さがあり、生身で地面と衝突すれば結果は一目瞭然。

 

しかしそれは、生身であればの話。

 

「飛び降りながらの変身って乙ですよねぇ〜!」

 

どこからともなくドライバーを取り出し、腰に装着する。

 

「変──」

 

ピシリ、と山が鳴る。

 

直後、異質の山が崩れ落ちた。

 

「ウソォォオオオオオ!?!??!」

 

声は崩れ落ちる土砂降りによってかき消された。

 

〈謎の地盤沈下により崩壊した模様〉

 

エアロカレンの分析によって何が起きたかようやく理解できた。

 

「東雲さんの気配は?」

 

〈不明 ですが多数の生命体の動きを検知〉

 

「穴の中には入れそう?」

 

〈穴の大きさからして当機体が中に入ることは困難と思われます〉

 

「そうか、ありがとうエアロカレン」と言い、「少し休んでて」と飛び出す。

 

〈承知〉

 

エアロカレンの頭上に魔法陣が現れ、その中に入っていた。

 

飛び降りながら懐からドライバーを取り出し腰に装着する。

 

ポケットからメモリを取り出し、先端のボタンを押す。

 

〈サンダー!〉

 

メモリをスロットに装填する。

 

「変身!」

 

掛け声と同時にスロットを開く。

 

その瞬間、赤黒い雷が彼の身体を走る。

 

それは徐々に赤いライダーとなり、胸に黒いラインが浮き出た。

 

風に煽られマフラーが緩れ、腰のホルダーに銃のようなものが備えられていた。

 

「よいしょッと!」

 

手から赤黒い雷を走らせ、土煙を払う。

 

視界が開け、目の前に大きな穴が現れた。

 

磁力で体を浮かしながら壁に足をつける。

 

かなり広い洞窟のようで、先が続いていた。

 

いくつもの洞窟の入り口が形成されており、僅かながら生き物の呼吸音が感じられた。

 

「東雲さーん!聞こえますかー!」

 

自分の声だけが響く。

 

最悪の場合、という言葉が頭に浮かんだ瞬間。

 

崩れ落ちた岩が突然、爆ぜた。

 

「ア゛ー!!!死ぬかと思ったわ!!!」

 

中から黒い甲冑に白マント、兜の部分が日輪と月と雲の立物が装飾されているライダーが出てきた。

 

「いやぁ変身間に合ってなかったら死んでたぜぇ」

 

「東雲さん!?大丈夫なんですか!?」

 

「全ッ然大丈夫じゃない!身体中クッソ痛い!」

 

「はぁ、全くなんで勝手に飛び出しちゃうんですか」

 

「好奇心に負けた、一度やってみたかった」

 

「嘘でしょ……」

 

「まあ、落ちた時にニャル太郎がレバー倒せって言ってくれたんで結果オーライ!」

 

「……見つかったんです?」

 

「あれ?そこにいなかった?さっき姿が見えたが気がするんだけど」

 

あたりを見渡すが、ニャル太郎の姿はどこにもなかった。

 

「あれ?おかしいなぁ」

 

「幻覚でも見てます?」

 

「失礼な!ボクが幻覚耐性EXなの知ってるでしょ!」

 

「なんですかそれ初めて聞きましたよ」

 

「エェー!?Twitterで散々言ってたでしょ!」

 

「あー言ってた気がする、一年も携帯触ってないと忘れるものですね」

 

「逆に一年もよく携帯ない状態で耐えてましたね、その精神力に賞賛を与えたくなる」

 

「はいはいありがとうございます」

 

ホッと胸を撫で下ろし、東雲の幻想屋に近づく。

 

「てかそれどうなってるんです?」

 

壁にAirealがくっつき、歩きながら降りてきた。

 

「自分の固有能力です、電気を操る能力ですね」

 

「どっかの都市の第三位みたいでいいなぁ」

 

「東雲さんは体の部位が外せるんでしたっけ?」

 

「そうなんだけど、なんかできなくなっちゃった」

 

レバーを引くと、全身が黒い炎で包まれた。

 

「あっつ!?」

 

「あ、すみません」

 

再びレバーを引くと黒い炎は収まった。

 

「こんな感じで頭外せなくなっちゃったんですよね」

 

「熱くないんですか?」

 

「全然、それに燃えながらとか戦いづらいでしょ」

 

「まあそうですけど」と洞窟内に意識を向けた。

 

「どうしました?」

 

Airealが先の洞窟を見ながら、「来ますよ」と呟いた。

 

「ん?」

 

視線の先を観察すると、赤く光る瞳がこちらをジッと見ていた。

 

それも複数、おおよそ十五体ほど。

 

一匹、二匹、次々とその姿を現した。

 

五メートルほどの鼠が、赤い瞳を向けながらこちらににじり寄ってきた。

 

「うぉお!いつの間に?!」

 

「自分たちが話してる間に集まってきたようですね、ここ彼らのテリトリーのようですし」

 

「土足で入ったのが気に障っちゃったのか、悪いことしちゃったねぇ」

 

「そうですけど、彼らギルドから討伐依頼が出てるモンスターですね、最近被害が出てて困ってたそうですし」

 

「うし倒すか」

 

「切り替えが早いな」

 

「ボクこう見えて冷たい人間なんですよねぇ」と首を鳴らしながら呟く、「まあ人類が滅んだ方がいいと思うんですけどね」

 

「まってなんでその思考に陥る!?」

 

「いや結果論ですよ、人類滅んだらそういう依頼とか出なくなるでしょ?」

 

「まあ、はい」

 

「でもぶっちゃけ地球滅んだほうが早いんですけどね、生物の争いとか地球的に見たらクソどうでもいいし」

 

「え?今のうちに忠誠とか誓った方がいい?」

 

「大丈夫ですよ、流石にそんなことしませんから」

 

「ほんとにしません?」

 

「しませんよ、できるんだったらもうしてるし」

 

「嘘でしょ」

 

直後、大鼠の一匹がこちらに襲いかかってきた。

 

それをものともせず東雲の幻想屋はそいつを蹴り上げ、その命を断たせた。

 

「人が話してる時に邪魔すんなしばくぞ!」

 

「もうしばいてます!」

 

「あら、まあ正当防衛正当防衛」

 

大鼠達は、仲間が殺された怒り、テリトリーを荒らされた怒り、人間の身勝手さの怒りをあらわにし二人に襲いかかる。

 

「そっちのおなしゃっす!」

 

「了解!」

 

Airealは襲いかかってきた大鼠達をかわしながら、壁を駆け上がり地上に出る。

 

何匹かはその跡を追いかけ壁を走った。

 

「よし」

 

東雲の幻想屋は呼吸を整え、黒いボトルに手を伸ばす。

 

「再生せよ、ボクの最強武器(黒歴史)

 

金属音が響き渡り、黒いボトルは刃が黒色の刀へと変わっていた。

 

弾丸を込めるマガジンには何も入っていない。

 

腰に目をやると白と橙のボトルがホルダーに入っていた。

 

「てかニチアサで見たぞこの形の武器、確かァッ!」

 

背後にいたであろう大鼠の首部分に刀を斬りつける。

 

その頭が飛び、仲間の目の前に転がった。

 

「足音聞きやすくて助かる、左耳機能してないけど」

 

血を拭い、次の目的に胸を躍らす。

 

「さあて、次は誰かなぁ?」と敵の位置を確認する。

 

目の前にに四体、左右に一体ずつ、背後に、

 

「ッッッ……!」

 

ゴッッッッ、と頭を殴られた。

 

「……いったぁ」

 

スーツを着ていなかったら即死並のダメージなのがひしひしと伝わる。

 

普段は頭が取れるので殴られるのは久しぶりだった。

 

「いってぇ、誰だ殴ったやつぶっ殺すぞ」

 

殴ったであろう相手に目を向ける。

 

息を荒げ、驚いた様子でこちらを見ていた。

 

「はーん、お前か」

 

橙のボトルをセットし、居合の構えを取る。

 

〈装填:完了〉

 

機械音と同時に刀が仄かに金色に輝き出す。

 

命の危機を感じ取ったのか、一目散に壁を駆け上り逃げ出した。

 

金烏の斬撃(ゴールドクロウ・スラッシング)

 

刀を抜きその斬撃を標的に放った。

 

斬撃は金色の鴉へと姿を変え、その首を斬り落とす。

 

そのまま体を捩らせ、もう一匹の方に向かって斬撃を放った。

 

再び金色の鴉に変形し、その首を斬り落とす。

 

「この技、もう少し練習すれば精度が上がりそうだな」

 

金色の鴉を手に乗せ頭を撫でる、鴉達は満足したのかそのまま解けるように消えた。

 

「さて、残り四体かぁ」と残りの大鼠達を見ながら呟く。

 

マガジンから橙のボトルを抜き、白いボトルを装填する。

 

「もうめんどくせえから一気に片付けるわ!」

 

残りの四体に向かって刀をライフルのように構える。

 

〈標準固定:完了〉

 

仲間の仇を取るためか、臆せずその息の根を止めようと襲いかかった。

 

その行動に、東雲の幻想屋は仮面(マスク)の下で薄く笑った。

 

「近いと当てやすいから助かるぅ」

 

〈発射〉

 

引き金を引いた。

 

玉兎の散弾銃(キングラビット・ショットガン)

 

直後、銃口から白く輝く兎が四体飛び出る。

 

跳ねるように壁を駆け巡り、大鼠の体に向かって突っ込みその巨体を貫いた。

 

あっけなくその命を散らし、大鼠は肉塊に成り下がった。

 

「いっちょあがりぃ!兎ちゃん達ありがとーう」

 

頭を撫でると嬉しそうにどこかに消え去った。

 

「……エアさん大丈夫かな」と穴を見上げる。

 

──時間は少し遡る。

 

「七匹か、ちょうど半分かな」

 

Airealを囲むように大鼠達が周りを囲む。

 

この近くは冒険者も近寄らない場所らしく、人の気配は感じ取れない。

 

「ここなら心置きなく撃てるね」

 

バチバチッ、と手から赤黒い電気を発生させる。

 

「大掃除といきましょうか」

 

地面を蹴り上げ、標的との距離を詰める。

 

心臓部分に狙いを定め、電撃を走らせた。

 

無論電流に耐えきれず心臓が止まり、絶命。

 

「確実だけど一匹ずつだと手間がかかるなぁ」

 

使用電力的にも燃費が悪く、これは得策ではないと判断。

 

ホルダーからマグナムトリガーのようなものを取り出し、構えた。

 

「こっちの方が範囲広くて使いやすいからね、最初からこっちにすればよかったかも」

 

過ぎたことは仕方ない、と切り替え狙いを定める。

 

先に動いたのは大鼠達。一斉に飛びかかってきた。

 

標準を合わせ引き金を引くと、いくつもの電撃が放たれ大鼠館に直撃する。

 

脳天にあたればほぼ即死。外れても痺れてしばらく動けなくなる。

 

「!、そっちは行っちゃダメですよ!」

 

危機を察して逃走を図ろうとした大鼠に向かって電撃を飛ばす。

 

無事脳天に当たりそのまま倒れた。

 

「残りは三体ですか」

 

一息つこうとした時、異変に気づく。

 

(いや一匹いない!?どこに──)

 

突然、地面から鋭い何かが飛び出た。

 

すんでのところでかわしたが、二発目までは予測ができなかった。

 

背後からトラックでもぶつかったような衝撃が体を走る。

 

「ゴッ、ガァァァ!?」

 

七メートルほど吹き飛ばされたが、磁力をうまく使い受け身を取った。

 

(痺れて動けなかったんじゃなくて、地面を掘っていたのを誤魔化していたのか)

 

大鼠達はジリジリとこちらとの距離を詰めていた。

 

ゆっくりと立ち上がり、四体の位置を確認する。

 

彼らはほぼ一列に並んでいた(・・・・・・・・)

 

「……さっきのお返ししないとですね」

 

メモリをドライバーから取り出し、マグナムトリガーのグリップ部分に装填して標準を合わせる。

 

〈サンダー!マキシマムドライブ!〉

 

「レールガンフルバースト!」

 

引き金を引く。

 

直後、赤黒い稲妻が一直線に走り四体の大鼠の身体を貫いた。

 

「お返しです、結構痛かったんですからね」

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