フォロワーファンタジー ー小豆味ー   作:ニャル太郎

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ファンタジーと仮面ライダーの両立は難しい

二度目ましての天井。

 

「……ええと、あの後何があってどうなった?」

 

大ツチノコを倒した後、ニャル太郎とシノタロスに助けられたとこまでは覚えている。

 

その後何があって今ここにいるのか理解が出来ない東雲。

 

「んー、とりあえずお腹空いたなぁ」

 

「元気そうですね」とタブレットをいじるAirealが答える。

 

「……」

 

「どうしました?」

 

「……すっごいナチュラルに返ってきて、一瞬どう反応しようか悩んじゃったじゃないですか」

 

「あれこれ自分怒られてる?」

 

「うん」

 

「えぇ……」

 

「いやそれより、体大丈夫なんです?めっちゃ苦しそうでしたけど」

 

「あぁはい、おかげさまで」

 

「ならよかった」

 

「いや自分の体を心配してくれ、貴方怪我悪化してるんですからね」

 

「え?フォギャッッッ!?」

 

電撃のような痛みが身体中を駆け巡り、痛みのあまりベッドに倒れ込む。

 

「わぁすごい……体内に針山ぶち込まれてる感じだぁ……」

 

「どういう感じなんだそれ……」

 

「もうね、とにかく痛い」

 

体を起こし窓を見る。

 

天気は晴れ、時間にして昼頃だろうか。

 

「あれ、二人は?」

 

狩り(お金稼ぎ)に行ってます」

 

「エアさんは?」

 

「見張っといてくれとニャル太郎さんから」

 

「余計なことを……」

 

「まあ、丸一日も寝てましたからね」

 

「またぁ!?あいたたた……」

 

「そりゃ二回連続での変身にその後の詠唱が響いたんでしょうね」

 

「……いい方法が見つからなかったし……」

 

「そこに関してはいいんですけど、もう少しお体を大事にしてみては?」

 

「壊れるの自分の体だしいいかなって」

 

「真顔で返してきやがったこの人」

 

「大丈夫大丈夫、欠損とかじゃなかったらまあ人間寝りゃあ治る」

 

はぁ、と溜息をつきタブレットに目を落とす。

 

「そういえば、いいデータは集まりましたか?」

 

「一応は、あぁそうだ」と東雲の方を向き、「自分この後クトゥルフの館に戻るんで、ここでお別れですね」

 

「……………………………………はい」

 

人生出会いもあれば別れもあるので、受け止めるしかない。でも悲しいもんは悲しい。

 

「そんな悲しい顔しないでください」

 

「ここでTLの良心と別れるのはいやだけど、エアさんにも事情があるんだろうって思うから」

 

「集めたデータをリチャードさんに渡すだけですけど」

 

「そうなん?じゃあボクらも一回戻ろうかな」

 

「やめとけ」

 

心底呆れた顔で、ニャル太郎は溜息をついた。

 

「あ、おはよう〜」

 

「おはようじゃねえわ、もう昼だぞ」

 

「じゃあこんちは」

 

「おう、いやそうじゃねえんだよ!」

 

「あらご機嫌よう、東雲さんにAirealさん!」とシノタロスひょっこりと顔を出した。

 

「どうもー」

 

「おっシノタロスー!元気してたー?」

 

「はい!おかげさまで!」

 

「お二人共おかえりなさい、どうでした?」

 

「ばっちり!本日も狩りまくりましたわ!」

 

「元気だね〜」

 

「東雲さんは早くお身体を治してくださいね?」

 

「ボクは元気だよ!このとぉァッッッ……」とベッドに倒れる。

 

「ダメですねこれ、あと二日は寝かせてください」

 

「わかった、悪いな面倒な役割押しつけて」

 

「いいんですよ、まあ抜け出してもエアロカレンが上空で見張っているので」

 

「監視体制が優れてて草……」

 

「こうでもしないと貴方抜け出すでしょ」

 

「流石に脱走はしないよ、ボクをなんだと思ってるんだ」

 

「キショイショタコン」「いつも締め切りの追われてる方」「コズミック害悪生命体とかの悪役ライダーに狂ってるフォロワー」

 

「そ、そうだけどね、そうだけどさ!」

 

何か言い返そうとしたが全て事実だったため言い返せなかった。

 

ここまで信用されていないのかと若干凹む東雲を横目に、Airealは口を開く。

 

「ともかく今は休むこと、いいですね?」

 

「……ちょっとぐらいだったら別に……」

 

「いいですね?」

 

「……はい……」

 

強烈な圧に押され思わずイエス(はい)と答えた。

 

「あいつが大人しくいうこと聞くなんて、これがTLの平和の象徴の力か……」

 

「今のうちに拝んどきましょう」

 

「じゃあボクも健康祈願に拝んどこ」

 

「自分一般人ですからね?あとサラッとニャル太郎さんも拝まないで」

 

「あっすまん、つい流れでやるべきかなと」

 

「やらんでいいのよ……」

 

溜息を吐きAirealはタブレットを見る。

 

「おっと、もうこんな時間か」

 

窓を開け、突然飛び出る。

 

「えぇええ?!」「きゃぁああ!?」

 

「おいここ二階だぞ!?それなりに高い、し」

 

外を見るとすでにエアロカレンに乗ってるAirealが手を振っていた。

 

「それでは皆さんお元気で」と言い残し空へ飛び去った。

 

「……なあTLの人って少し感覚がずれてる人が多いのか?」

 

「あれは多分普段できないことだからテンション上がってでちょっとやっちゃった感じだと思う、あの人転生して一年経つし」

 

「大先輩でしたの!?ワタクシ失礼な態度とってないですわよね……」

 

「大丈夫だよ、あの人が怒ったとこ見たことないし」

 

「よかったですわ……」

 

「でもああいう人ほど怒らせると怖いって聞くしなぁ」

 

「わかる、怒らせた瞬間全滅しそう」

 

突然、どこからともなく腹の音が部屋中に鳴り響く。

 

「……そういえばお腹すいた」

 

「はぁ、お前は相変わらずなんだな、なんか安心したわ」

 

「?、なんだよ急に」

 

「気にすんな、今飯作ってくるから待ってな」

 

「あ!ワタクシも手伝いますわ!」

 

「肉多めでおなしゃ〜す」

 

「はいはい」とニャル太郎は返事をし、シノタロスは手を振りながら部屋をあとにした。

 

二人を見送った後、ベッドに寝転ぶ。

 

同時に骨が軋み、内臓が痛みで叫ぶ。

 

怪我が悪化している証拠だった。

 

(さっさと身体治して、元に世界に帰る方法探さないとなぁ)

 

そのためには自分たちを呼んだ奴を探す必要がある、そいつから変える方法聞き出す。

 

まず見つかるのか?という疑問はひとまず置くとして、どう呼び出そうか。

 

(とりあえず喧嘩売ってたら来ねえかな)

 

などと野蛮な考えていると、一階から大きな音がした。

 

「何してんだあいつら」とベッドから起き上がり、「おーい大丈夫か」と下に向かおうとした時。

 

「お、大きな音出してすみませんですわ!」とシノタロスがひょっこりと顔を出してきた。

 

「……なんかすごい音したけど」

 

「すみません、ワタクシがつまづいてしまったのですわ」

 

「大丈夫?もしあれなら手伝──」

 

「だ、大丈夫ですわ!東雲さんは体を休めてくださいな!絶対にベッドから出てきてはいけませんわよ!?絶対ですわよ!」

 

「わかったわかった、大人しく寝てるから」

 

「絶対ですからね!いいですわね!」

 

それだけ言い残すと、シノタロスは一階に行った。

 

(コケた音ってレベルじゃないけど、突っ込まない方がいいよね多分)

 

とりあえずご飯ができるまでは寝ることにした東雲。

 

・ー・ー・

 

「ふぅ、なんとか誤魔化せましたわ」

 

花瓶を片付けているニャル太郎に話しかける。

 

ふらふらな足取りで台所に向かって結果、花瓶を割ってしまったのだ。

 

「悪いな……」

 

「何も隠さなくても、黙ってたら後々まずいのでは」

 

「あいつのに比べたら平気だぞ、それに今はあいつの回復が先だ」

 

「はぁ、東雲さんばっかに言ってますけど貴方も大概ですのよ?」

 

シノタロスの言った通り、ニャル太郎の身体は治ってはいなかった。

 

あの怪我はいまだに残っているし、身体が戦いについていけず何度も反撃を喰らったりしていた。

 

「全く、よりによってこの体質(・・・・)になるとか」

 

改めて自分の体を見て吐き捨てた。

 

正直、東雲(あいつ)の趣味の身体にされたのが運の尽きと言える。

 

「言わなくていいんですか?」

 

「言ったらめんどくさいことになるんだよ。でも安心しろ、もう無茶しねえから」

 

「……流石にモンスターさんの口に入って内部から突き破る方法はどうかと思いますの」

 

「それに関してはすまん、いい方法が思いつかなかったんだ」

 

わかってた返答が返ってきた。

 

見た目は全く違えど、やはり中身は同じ。

 

「今日のところはもう休んでくださいまし、ご飯ならワタクシが作りますから!」

 

「いや大丈夫だから、心配すんな」と台所に向かおうとした時、壁にぶつかった。

 

しばらく悩んだのち、ニャル太郎を持ち上げ二階に連れていく。

 

「やっぱりニャル太郎さんもしばらく休んだ方が良さそうですわね」

 

「シ、シノタロス!?ちょっと降ろしてくれねえか?!一人で歩けるから!」

 

「ベッドまで送りますので安心してくださいまし!それにご飯の腕なら自信がありますの!」

 

「はーなーしーをーきーけー!おーろーせー!」

 

抵抗するもののパワー型のシノタロスに勝てるはずもなく、そのままベッド送りにされた。

 

──しばらくして。

 

正座をしているニャル太郎と体育座りをしているシノタロスを前にして、深い溜息を吐く。

 

「まずは、二人ともおかえり」と笑顔で返す。

 

「……ただいま」「ただいまですの!」

 

ニャル太郎はそっぽを向き、シノタロスは笑顔で返した。

 

しばらく沈黙したあと、東雲が口を開く。

 

「あのね?」

 

真顔になり、ベッドの上で胡座をかきながら説教をし始める。

 

「確かにね?ボクも大概だけどさ、何もそこまで戦えって言ってるわけじゃないのよ。あとね?なんでも焼いたら食えるわけじゃないのよ、鱗は食べれないのよ」

 

「……はい」「……はいぃ」

 

戦闘のしすぎで怪我の悪化に気づかなかったニャル太郎、焼いたらなんでも食べれる理論のシノタロス。

 

これ以上説教をしようにも前者は自分にも当てはまるし、後者に関しては悪意は決してない。

 

どうしたものかと悩んだ末。

 

「……二人ともデコ出して」

 

二人は頭にはてなを浮かばせながら、言われた通りにおでこを出した。

 

「んがっ」「はわっ」

 

おでこに向かってデコピンをし、「はい説教終了」と呟く。

 

「二人とも反省したね?」

 

「しましたわ……」

 

「……反省は、した」

 

「よしよしなら──」

 

「腕」

 

「へっ?」

 

「腕出せ」

 

「えっ何、もぐの?」

 

「アホか、もぐわけねえだろ」

 

「あぁですよね、はい」

 

片腕を出すと、ニャル太郎は思いっきりしっぺをしてきた。

 

「イッッッタァ!?!?」

 

叩かれたところが赤く腫れるほど強烈な一撃を繰り出され思わず、ベッドに倒れる。

 

「よし、スッキリ」

 

「お前がスッキリするためにボクしっぺされたの!?」

 

「説教も込めたが?」と満足げな顔で話した。

 

「でしたらワタクシも!」と反対の腕を掴み、しっぺを放つ。

 

「まてまて!?どうしてそうなイッッッヅ!?」

 

ニャル太郎のしっぺとは違い、鈍器で軽く殴られたかのような痛みが走った。

 

「オァァア……」

 

「お説教おしまいですの!もう無理しちゃいけませんわ」

 

「はい……以後気をつけます……」とうずくまりながら答える。

 

「うし、緊急会議でもするか」

 

「この状況でよく言えるな……」

 

痛みに苦しむ東雲を無視してニャル太郎が続ける。

 

「言われた通りオレたち二人は、身体を休めること優先だな」

 

「賛成、今めっちゃ身体痛い、主に両腕」

 

「だ、大丈夫なんですの?」

 

「……それはボケかい?それとも天然かい?」

 

「?」

 

「シノタロスは純粋にお前の身体気にしてるんだぞ」

 

「お前はボケ(そっち)側まわるな」

 

よいせ、と身体を起こし頭を掻く。

 

「まあまずはアールちゃんとの戦闘を振り返ってみよ〜」

 

「振り返るっつっても、ほぼほぼ負けてたが?」

 

「いやぁまさかあんな強いとはね、びっくりだよ」

 

「はい!気になることがあります!」

 

「ほい、シノタロス」

 

「彼女が言っていた、『神圧』と『神隔』のことです」

 

そういえばそんなことを言っていた。

 

『神圧』はアールマティが現れた瞬間木や鳥、そこに存在していたものを何かの圧力で潰した。

 

しかしこれは自分達には効果がなく、そのことを理解(・・)していた。

 

『神隔』はまだ仮説ではあるが、バリア的なものだろう。

 

あの岩が当たることなく、いや正確には当たっていたが(・・・・・・・)直前に砕けた(・・・・・・)

 

“我が『神隔』では無意味に等しいのです“

 

この発言も今になってようやく理解できる。

 

あいつにボクらの攻撃は効かない、と。

 

「……いや?」

 

おかしい。

 

もしそれがそうなら、なんでわざわざこちらの攻撃を防ぐようにしていたんだ?

 

「ねえねえ」

 

「はい」「ん?」

 

「もし絶対的なバリアを持ってる状態で戦うことになったら、二人はどう立ち回る?」

 

「そりゃあ距離詰めて確実に仕留めるだろ、その方が手っ取り早えし」

 

「ええ、逃げられたら元も子もないですわ」

 

「だよなぁ、そうなるよなぁ」

 

ますますあいつの立ち回りに疑問を抱く。

 

地面から柱を作り、隕石を降らし、大地を割り、山を作る力を持っている。

 

近距離で放たれたらひとたまりもない攻撃ばかり、それなのにあいつは距離を取っていた。

 

『神隔』を持っているのにだ。

 

「そういやよ、あいつを蹴り上げようとして避けられた時あったろ?」

 

「あったね、それが?」

 

「一瞬だけアールマティが焦ったように見えたんだ、ほんの一瞬だけど」

 

「嘘つけ」

 

「こんなところで嘘つかねえよバカ」と吐き捨て、「蹴り上げる瞬間、あいつの背中から焦りが見えたんだ」と続けた。

 

「余裕があるように見えましたけど」

 

「まあ近かったからな、意外と気配とかでわかるぜ」

 

「焦り……」

 

ふと、怒りに飲まれていた(暴走状態)のことを思い出す。

 

戦闘中の記憶は朧げだったが、一瞬だけ動揺した時が確かにあった。

 

そしてこちらを確実に潰すように立ち回っていた、まるで『神隔』が効かないのをわかっていたように。

 

「もしかして……?」

 

「ん?なんかわかったのか?」

 

「どうだろう、確証がないからなんともいえないけど、多分この二つは転生者(ボクら)には効かない、と思う」

 

「自信なさげだな」

 

「まだ仮説なの!確証が欲しいの!」

 

「まあそうだよなぁ」

 

「でもニャル太郎のおかげでいい感じに仮説が立てられた、ありがと」

 

「それならよかった」

 

「ええと、“『神圧』と『神隔』は転生者(ワタクシたち)には無効“っと」とシノタロスはメモを取る。

 

「仮説って書いといて」

 

「はい!“仮説“っと」

 

「ここら辺は要検証ってことで、次!ボクらを呼んだであろう人物予想〜」

 

「普通に考えれば、神じゃないのか?」

 

「やっぱそうだよねぇ、エアさんも言ってたんだ。神様から魔法もらいましたって」

 

「……初耳なんだが?」

 

「あれ言ってなかった?」

 

「初めて聞きましたわ!」

 

「あぁごめんごめん」

 

一部省略して説明すると、神から授かる魔法は一人一つでその人物に則った魔法が与えられるらしい。

 

「こんな感じ」

 

「急にファンタジーだな……」

 

「魔法……素敵ですわ……」

 

「ちなみに変身中に魔法を使うと大変なことになるからって言ってた」

 

「流石に両立は無理か」

 

「できたら最強ですもんね」

 

「ところでこの世界、魔力(MP)とかの概念ないのかな」

 

「どうだろうか、魔法的なものを見たのもエアさんが初めてなんだろ?」

 

「うん」

 

魔法についても調べるのもありか、と考えたところにシノタロスに声をかけられる。

 

「東雲さんも何か、神様から魔法をもらったりしてますの?」

 

「あぁそうじゃん、お前の魔法どんなのなんだ?」

 

「え?あぁ、なんていうか、うーん」

 

果たしてあれは魔法となのかと思っていた。

 

「もしかして、今使えないとかか?」

 

「多分そうじゃないけど、どうだろう」

 

「何事にも物は試しですわ!」とシノタロスと励ましてきた。

 

「わかった」と息を整え、左手でアホ毛を掴む。

 

同時にあの言葉が頭に流れる。

 

 

「──己の夢を追い、己の理想を書き、己の現を壊せ」

 

 

それを合図にアホ毛を引いた。

 

部屋中に光が溢れ、ようやく晴れるとそこには東雲の幻想屋がいた。

 

「……このように頭の中に詠唱台詞が流れて、って」

 

目の前にいた二人がいない。

 

部屋中を探しても、ベッドの下を見ても、箪笥の中を見てもどこにもいない。

 

「もう、見たいってそっちが言ったのに、勝手にどっかいかな──なんだこれ!?──なんですのこれ!?」

 

咄嗟に口を封じる。

 

一瞬、自分の声で別の人になった(・・・・・・・・・・・・)ような気がした。

 

「え?」これはボク(・・)で、「──どうなってんだ?」これはオレ(・・)、「──はわわ」これはワタシ(・・・)だ。

 

…………………………………。

 

「合体してるー!?」

 

書け、黒歴史(白歴史、理想を描け)』は、自身の精神(人格)を分裂させるまたは合体する魔法。

 

普段は東雲の幻想屋(本能)ニャル太郎(理性)シノタロス(善意)と三人に分裂させ、アホ毛(トリガー)を引くことによって本来の力を呼び起こす仕様となっている。

 

「通りであの時“オレ“とか言っちゃったんだボク──てか重てえなこの身体、太ったか?──憑依とは違ってなかなか面白い感じですわねこれ!」

 

三人が一つになっているため、口調がごちゃついている。ややこしい。

 

「ええと、とりあえず──うわなんだこの目の色、白と橙って──ワタシは可愛いから好きですわ!──ええいもう詠唱以下略して『──書け、黒歴史(白歴史、理想を描け)』!!!」

 

左手でアホ毛を引くと白と橙の光が東雲の身体から抜け、人の形を作り出した。

 

「グエェ……」

 

倒れ込む東雲の横で二人の声が聞こえる。

 

「おお、元に戻った、いやあれが本当の姿か」

 

「でしたらこちらが分裂した状態なのですね」

 

「二人とも……なんともないのね……」

 

「まあ、な」

 

「面白かったですわ!またやりたいですの!」

 

「意外ときついから……余裕ある時ね……?」

 

「そう、だな」

 

どことなく歯切れの悪いニャル太郎に、嫌な予感がした。

 

「お前今何考えてんだ、おいその左手をしまイダダダダダ!!!」

 

左手でアホ毛を掴む、が。

 

「?、なんも聞こえねえ」

 

「なら早く離せやい!」

 

「えー……」

 

「えーじゃない早く離せ!」

 

「お前にできてオレができないのなんか不服」

 

「うるせえ知るか!シノタロスもその左手しまいなさい!」

 

「し、しっぽの仇ですわ!」

 

「尻尾生きてるでイデデデデデ!!!」

 

シノタロスはアホ毛(トリガー)を引っこ抜けるぐらい強く引っ張るが、何も聞こえなかった。

 

「なんか聞こえたか?」

 

「いえ何も……」

 

「はぁなぁせぇ!」

 

「あぁごめんなさい!前々から引っ張ってみたかったんですの!」

 

「やめてボクのアイデンティティ奪わないで、抜けても生えるけど!」

 

「じゃあ問題ねえんじゃねえの?」

 

「あるわバカ!人の心持っていらっしゃいますか!?」

 

「誰の精神(人格)だと思ってんだ」

 

「その言い方だとボクに人の心ないみたいだろ、ちゃんとあるから!」

 

「ほんとですの〜?」

 

「ほんとだわ!」とベッドに飛び込み、「もう疲れた!今日は寝る!」とふて寝をしだした。

 

「……ごめんな」「……すみません」

 

「…………いいよ、でも今日は本当に疲れたから寝る」

 

「あぁ、昼飯は?」

 

「いい、夕食になったら呼んで」

 

東雲は毛布の中に潜り込み、会議はお開きとなった。

 

「ちょっとやりすぎたな」

 

「ご、ごめんなさいですの」

 

「今度からは気をつけるか、今まで忘れてたけどこいつ怪我人だし」

 

「貴方もですわよ」

 

「……はい、大人しく寝てます」と呟き、ベッドに座り「じゃあちょっと任せるぞ」

 

「お任せあれ!」

 

胸を張り、部屋を出る直後ニャル太郎が声をかけた。

 

「あぁそうだシノタロス」

 

「なんですの?」

 

「夕飯には、鱗は出さないでくれ」

 

「……わ、わかっていますとも!」

 

自身の胸をたたき、一階へと降りていった。

 

一息ついたニャル太郎はベッドに寝っ転がり、眠りについた。

 

その日の夕食にモンスターの皮が出ることはまだ二人は知らなかった。因みになかなか美味だったらしい。

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