フォロワーファンタジー ー小豆味ー   作:ニャル太郎

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肌寒くなってきた今日この頃。

その日も二人はオリュンポスの屋敷で休養中。

シノタロスは単独で狩りへ出向き、丁度戻ってきた。

部屋の扉を壊しそうな勢いで入り、大声で話し出す。

「お二人方!温泉!温泉に行きますわよ!」

「「…………え?」」

困惑する二人にもう一度、「温泉に!行きますわ!」と告げた。

「と、とりあえずおかえり、怪我ない?」

「ええ!途中大型蛇に食べられそうになりましたけど引っぱたいて追っ払いてやりましたわ!」

「相変わらずのパワー解決……」

「んで、なんで温泉に?そもそもこの街に温泉あるのか?」

「ないですわ!」

「ないんだ……ないの!?」

「ありません!ですがギルドの方々が言っていましたの!」

どうやらギルドへの報告中に酒飲みの男達から聞いたらしく、場所はここから南に進んだ山にあるそうだ。

「温泉に入ればきっと怪我も治りますわ!」

「確かにそれもいいけど、山道危なくないかなぁ」

「それにその地域、未確認モンスターがいるし腕のある冒険者じゃ行っちゃいけねえとか言ってなかったか?」

「……そう……ですわよね……」と肩を落とし俯く。

流石に現実的なことを言いすぎたか、と顔を見合わせる二人。

「早く元気になって欲しかったんですの……そうしたらまた三人で狩りにお出かけできますし……」と今にも泣きそうな声が部屋中に響く。

「よし行こう!!!怪我とか温泉入りゃ治るだろ!!!」

「行くぞオラ!!!この際悪化とか関係ねえ!!!」

シノタロスは周りに花が咲そうな勢いで元気を取り戻した。

「でしたらワタクシ準備してきますわ!」と嬉しそうに尻尾を振りながら一階に降りていった。

しばしの静寂ののち、やっちまったと二人は頭を抱えた。


サメ映画って未知だね

青空の下、手入れがされてない道を一台のバイクが走る。

 

「温泉っ♪温泉っ♪」

 

「にしても温泉かぁ〜、現代(あっち)は世間的にいけない雰囲気があるからなんだかんだで久しぶりな気がするなぁ」

 

「そうなのですか?」

 

「あぁ色々とな」

 

「なんだか大変でしたのね、でも今日はそんなこと忘れてパーっと息抜きしましょう!」

 

ハンドルを捻っていないのにも関わらずバイクの速度は上がり、山道を進んでいく。

 

「お、落ち着けシノタロス。あんまかっ飛ばすと事故るぞ」

 

「一応ボクら怪我人だしねぇ」

 

ケラケラと笑う怪我人一号とため息をつく怪我人二号。

 

「ご安心を!たとえワタクシから落っこちても根性でキャッチしますので!」

 

「安心、なのか?」

 

「少なくともボクは下手すりゃ即死ルートだからできるだけ安全運転で頼むよ〜」

 

「もちろんですとも!」と尻尾が嬉しそうに動く。

 

「まあ運転なら任せろ」

 

「おめえ無免許だろ」

 

「それお前もだからな?」

 

「へへっ、確かに」

 

いつもの会話が戻ってきた、それだけで安心する。

 

まだこの世界のこと、例の殺意の正体、神が存在する理由についてはわからないことだらけだけれど。

 

少しずつ解明していけばいいかと、思っていた矢先。

 

「ん?」

 

ふと後ろを見ると尖った岩があった。

 

正確には地面を削りながらこちらに迫ってきていた。

 

「ん???」

 

岩が動くなんてどこのファンタジーでもあるまいしと思ったが、ここはファンタジーな世界。

 

いや正確に考えてみれば岩が動くのもおかしな話ではあるが、モンスターなら納得がいく。

 

それにしたって、バイクを追走できる岩がいるのか。

 

「ニャル太郎、岩が追いかけてきてるって言ったらどうする?」

 

「は?岩が追いかけてくるわけねえだろ、大体岩のモンスターなら鈍足が基本だろ」

 

「だよねー、じゃあ見間違いかなぁ」

 

振り返ってみると、そこに追いかけているであろう岩はいなかった。

 

見間違いか、と胸をなでおろした瞬間。

 

岩が飛んだ。あたかもそれは、海にいるサメのように。

 

バイクに触れないギリギリのところで、地面に突っ込んだ。

 

「……ニャル太郎、サメって海にしかいないよね?」

 

「お前、さっきから何言ってんだ?」

 

「サメは淡水との相性が高いので琵琶湖に生息できる可能性があるそうですわ、それにサメの幼魚は意外と美味しいですの」

 

「初耳なんだが?」

 

「初めて知ったぁ」

 

「それでサメがどうかしましたの?ここは山の中で湖や川は存在しませんが?」

 

「いや、なんか衝撃的な事実でもろもろ忘れちゃった」

 

「疲れてるんじゃねえの?さっさと温泉見つけて切り上げるか」

 

「そうなのかなぁ、そうなんだろうなぁ」

 

そうであってほしい、と顔を上げた途端。

 

突然、内臓が浮く感覚がを三人を襲う。

 

下から何か押し上げられたかのように、バイクが飛び上がったのだ。

 

「うぎゃぁ!?」「な、んだ!?」

 

軽く七メートルは吹き飛び、そのまま地面に落下していく。

 

〈パックーン!ライダーフォーム!〉

 

「お二人ともー!!!」

 

着地地点にライダーフォームのシノタロスが駆けつける。

 

「とうわぁ!」

 

掛け声と共に地面を蹴り上げ、二人を受け止めた。

 

「ご無事ですか!?」

 

「無事だけど吐きそう」

 

「吐くなよ!?」

 

その瞬間、地面がひび割れ、そこから何かが飛び出てきた。

 

飛び出てきたその形は紛れもなくサメであった。

 

「サメだ!」「サメじゃねえか!」「サメですわ!」

 

しかし鱗の部分は岩を纏っていた。

 

「最近のサメすげえ!」

 

「メカニックじゃないファンタジーなサメですわ!」

 

「メカニックなサメってなんだよ、いやファンタジーなサメもおかしな表現だけど」

 

間髪入れずに地面から岩のサメが次々飛び出る。

 

「えいや!」

 

それをものともせずシノタロスは蹴り返す。そして蹴り飛ばされたサメは爆破した。

 

「チェーンソーで真っ二つにされるシーンは有名だけど、爆発するのは初めて見た」

 

「サメって爆発するんだな???」

 

「何言ってますの?サメは爆発物ですわ」

 

「??????????」

 

「ニャル太郎が宇宙猫みたいになってる」

 

「あらワタクシ変なこと言いましたかしら?」

 

言ってるけど突っ込むとめんどくさいことになりそうと考えた東雲は黙り、サメを見る。

 

数匹のサメが、三人を囲むようにジリジリと近づいてきた。

 

「これはボクらも戦った方がよさそうだね」

 

「何言ってますの?お二人は見学です、わッ!」

 

「ちょっ、エェー!?」

 

突然放り投げられた。軽く五メートルは飛んだ。

 

そのまま茂みに着地、軽症で済んだのが幸いか。

 

「って!」

 

まだ宇宙猫状態のニャル太郎を抱き止める。

 

「あっぶねえ、危うく地面とキスしちゃうとこだったね」

 

「さめ、しゅごい」

 

「いつまで脳破壊されてんだこいつ、おーい原稿書いたから目覚ませ」

 

「……ハッ!?」

 

「それで目覚ますのかい」

 

「……サメが原稿が食ってた」

 

「さぁてはこれ目覚めてねえな?」

 

そんな二人の会話を横目に、サメは目の前の獲物に食らつく。

 

「遅いですわ!」

 

拳を握り襲いかかってきたサメに一発。背後のサメにもう一発。

 

正面のサメを蹴り上げ、突進してきたサメを踏み、上空に舞う。

 

どこからともなくいつものハンマーを取り出し、飛んできたサメ達を全て叩き返す。

 

「全員フカヒレにしてあげますわッ!!!」

 

力強くハンマーを地面に叩き込んだ。

 

地面が衝撃で凹み、中からサメ達が潰れる音が響く。

 

汗を拭うような仕草をし、二人に向かって手を振りながら駆け寄る。

 

「お二人ともー!見てましたかー!」

 

「見てたよー、力isパワーだったねえ」

 

「オレ達も早く治して鍛えなきゃな」

 

拍手を送り、立ち上がる。

 

直後、地面から突然現れた壁にシノタロスが挟まれた。

 

考える隙も、避ける隙も、声を出す隙さえ与えない。

 

与えるのは、死を理解させる瞬間のみ。

 

それはいやな音を立てて、徐々に力を強めていった。

 

「シノタロスッッッ!!!!!」

 

それは壁ではなかった、口だった。

 

いくつもの牙が生えた、大きな口。

 

岩で覆われながらも、エラの部分から呼吸をしている。

 

それは巨大なサメだ。

 

ぎょろりとした目は次の獲物へと視線を動かした。

 

「ニャル太郎!」

 

「わーってる!」

 

ドライバーを取り出し腰に装着する。

 

「変身!」「変身ッ!」

 

息もぴったり、久しぶりの同時変身。

 

二人が輝き出し、姿を変える。

 

「シノタロスを頼む!オレはあのデカブツをぶっ潰す!」

 

「おうよ!任せな!」

 

東雲が落ちたハンマーを拾いあげ、サメに向かって投げる。

 

その投擲を見切っていたかのようによけ、東雲に向かって突進。

 

「……にっひひ」

 

避けられることはわかっていた。だってわざとそうさせたのだから。

 

「サン、キュ!」

 

背後に回っていたニャル太郎がハンマーを受け取り、大きく振りかぶって叩きつけた。

 

その衝撃で一瞬怯み、口を開く。

 

「確保ー!てったーい!」

 

落ちてきたシノタロスを抱き抱え、木々の隙間を縫うように駆けた。

 

逃がさんとばかりに、サメも追いかけようとした。

 

「させっかよ」

 

いつの間にか正面に回っていたニャル太郎は右足をバネのように弾いた。

 

その一蹴りでサメを身体を一瞬浮かせる。

 

「オラ一発ッ!二発ッ!三発目ッ!四発目いくぞッ!」

 

サメの身体にハンマーの猛攻を叩きつけていく。

 

岩が崩れていき肉が見えてきたところに、「十発、目ッ!!!」と思いっきり叩き込み、サメをかっ飛ばす。

 

十メートルほど地面を転がりながら飛ばされたサメは地面に潜り、姿を隠した。

 

「よーし、そろそろ締めるか」

 

ハンマーを置き、ドライバーの砂時計を回す。

 

視界がノイズで埋め尽くされ、起こりうる全ての未来が映像のように流れる。

 

場所、攻撃方法、タイミング、勝敗、全てを見通した。

 

「これにすっか」

 

砂時計を止め、良さそうな未来を決める。

 

〈フィーチャーサァート、フィニッシュ!〉

 

機械音声とともにサメが地面から飛び出し、口を開け飲み込もうとしてきた。

 

地面が抉れる勢いで飛び上がると同時に、作り出した弱点に向かって左足を蹴り込む。

 

「じゃあな」

 

左足に全身の力を注ぎ、そのまま蹴り落とす。

 

落ちた衝撃でサメはさながら某特撮の如く、爆発。

 

「よっと、いっつつ……」

 

着地したものの完治していない身体にこの必殺技は負荷が大きすぎたようで、左足は焼けるように、目が失明しそうな勢いで痛む。

 

加減をミスった、と吐き捨てハンマーを拾う。

 

「万全な状態以外では、これ使うの、やめと……」

 

ついに身体が動かなくなった。うまくハンマーを杖代わりにして立っているがキツい。

 

今すぐにも二人のところに向かわないといけないのに、徐々に意識は闇へと引きずられる。

 

ふと、足音が聞こえてきた。

 

「大丈夫ですか?」

 

凛とした女性の声が聞こえたのを最後に、ニャル太郎は意識を手放す。

 

──一方二人は、開けた場所に避難していた。

 

「シノタロスー!シノタロスってばー!」

 

肩を叩きながら声をかける。

 

「……ん」

 

「おぉ、よかった」

 

まずは無事を確認。幸い噛まれただけで済んだ。

 

「ワタクシ……もしかしてやられちゃったのですか……?」

 

「そりゃあ朝から狩りしてたもんね、無理させてごめんよ」

 

ただでさえ自分達が自由に動けないのに、これ以上無理をさせるわけにはいかない。

 

「すみません……お二人には戦闘させないように行動してましたのに……」

 

「いいのいいの、運動にもなったし」

 

落ち込むシノタロスを励ますように頭を撫でた。

 

「でもまあ、投げる時は言って欲しかったかも」

 

「す、すみませんですの……」

 

「さぁてと、あとはッ!!!」

 

背後から迫っていた二体目のサメを両腕で受け止める。

 

「こいつ片付けないとね!」

 

サメを投げ飛ばし、右手を構えた。

 

レバーを倒し、右手を発射。ロケットのように飛んだ右手はサメに直撃し怯ませた。

 

「よーし、いくぜいくぜいくぜ!」

 

その隙を逃さずに、地面を蹴り上げ一気に距離を詰める。

 

左の拳を握り、まずは軽く挨拶(左ストレート)

 

次に戻ってきた右手で握手(右ストレート)

 

最後にサメの頭を掴み、お辞儀(頭突き)

 

「いったぁ、流石に硬いね!」

 

頭を抑えながら蹴り飛ばし、一旦距離をあける。

 

「まだまだ!い──」

 

突然視界が揺れる。肺が痛む。

 

頭が痛む。身体中に激痛が走る。

 

(やっべ……こんな時に……)

 

元々完治していないのに無理をして戦ったのが原因だろうか。

 

「!」

 

突進してきたサメを間一髪でかわす。

 

「ぐっ」

 

かわしたはずなのに全身に激痛が走る。思わず膝をつくが、息を整える。

 

「クッソはええ……」

 

相手のスピードについていけない二人のスペックでは勝ち目がない。

 

「東雲さん!かっ飛ばしましょう!」

 

〈パックーン!メイスフォーム!〉

 

「……オッケーシノタロス!」

 

ならついていかなければいい、待てばいいのだ。

 

サメは再び突進を仕掛けてきた。

 

それを見て東雲はメイス(シノタロス)を構える。

 

速度はどんどん上がり、一瞬で二人の前に着き口を開けようとした。

 

「この瞬間を待っていたんだー!!!」

 

「ワタクシ達の必殺技!パートツーですわ!!!」

 

思いっきりメイス(シノタロス)を振りかぶり、カキーンッッッ!!!といい音を鳴らして高く打ち上げる。

 

直後。サメは例の日曜日の朝の番組の如く、爆破した。

 

「いえーい!ヴィクト……」

 

痛みに耐えきれずそのまま倒れ込む。

 

「はわわ!?東雲さん!?」

 

「あははぁ……無理しすぎちゃったぁ……」

 

背中が地面とくっついたかのように動けなくなる。

 

「寝てる場合じゃないんだけどな……よっ……あっだめだこりゃ……」

 

「少々お待ちを、よいしょ!」

 

〈パックーン!ライダーフォーム!〉

 

「今起こしますわ」

 

「ごめんね〜」

 

起こしてもらい、肩を借りながら立ち上がる。

 

「結局温泉見つかりませんでしたわ」

 

「まあまあ、そう落ち込まずにさ」

 

慰めるようにシノタロスの背中をさすり、歩き始めた。

 

「……ところでシノタロスちゃんや」

 

「なんでしょう?」

 

「今周りに数体ぐらいいるのは幻覚か何かかな?」

 

「幻覚ではないですわ、現実ですの」

 

「えっへへそっかぁ」

 

……………………………………………。

 

「あと何発打てる?」

 

「ワタクシが折れるまでなら」

 

「おーし、やるかぁ」

 

動かない身体を無理矢理動かし、そのまま倒れる。

 

「ごめん無理ー!!!」

 

「ですわよねー!!!」

 

東雲を抱き抱え、サメ達の猛攻を避けるシノタロス。

 

四方八方ロケットの如く突進してくるサメを避けるが、

 

「ごめんなさいワタクシも無理ですわー!!!」

 

ついにシノタロスも限界を迎える。

 

絶体絶命、もう死を覚悟するしかなくなった二人。

 

「ボクが死んだら昔書いてた二次創作は全部燃やしてくれ!」

 

「あの時ニャル太郎さんのデザートを食べたのはワタクシですとお伝えくださいまし!」

 

「えっあれシノタロスだったの?」

 

「そうですわ、鬼のように怒ってたニャル太郎さんが怖くて黙ってましたの」

 

「そういうのは本人伝えるべきだと思うんだけどー!!!」

 

数十体匹のサメが大きく口を開け獲物を捕食、その時。

 

「お待たせしました」

 

凛とした女性の声が聞こえた。

 

襲いかかってきたのサメ達を持っていた棍棒で叩き潰す。

 

「お怪我はありませんか?」

 

鈴のように綺麗な声とは裏腹に、そのライダーは緑色で所々ボツボツな鎧を身にまとっていた。

 

さながらゴーヤといったところだろうか。

 

「だ、大丈夫ですわ」

 

「え、どちら様で?」

 

「私は」

 

遮るように二匹のサメが襲いかかるが、それをものともせずに棍棒で殴り、その二匹が爆発する。

 

「アーマードライダー、ガウリュ。助太刀いたします!」

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