フォロワーファンタジー ー小豆味ー   作:ニャル太郎

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与太話とドーナツ

「財布、ヘアピン、スマホ、ハンカチ」

 

机に自身の持ち物を並べながら眺める。

 

現代であればさして問題はない物ばかり、だが。

 

「クソの役にも立てねえな、特にスマホは充電切れてるしよ」

 

「それ、エアさんに充電頼めばよかったなぁ」

 

この異世界では、なんの役にも立たないゴミに成り下がっていた。

 

どうしたものか、と腕を組みながら自分の持ち物を眺める東雲。

 

その横を、ニャル太郎が裁縫しながら呟く。

 

「他は?あとお前なんか眼鏡持ってなかったっけ」

 

「あぁ、あるよ」とポケットから眼鏡を取り出し、ニャル太郎に渡した。

 

「助かる、視界がぼやけてて気持ち悪ぃ」

 

「いいよ、伊達眼鏡だけど」

 

眼鏡が握り潰される音が鳴り響く。

 

「役に立てねえな!!!」

 

「やめろ!ブルーカットだぞ!」

 

「なおさら役に立たねえな!!!」と頭にきた勢いで枕の方へと投げ捨てる。

 

「投げるなー!」と眼鏡に駆け寄り「壊れてないな?よしよし」と眼鏡の無事を確認した。

 

「全く、どーせ薬飲んだら治るんでしょ?」

 

「通常の五倍飲まなきゃいけねえから生活費に支障が出るんだよバーカ!」

 

「そんときは稼げばいいのでプラマイゼロ」

 

「お前ほんと金銭の感覚狂ってんな、ちょっと怖えわ」

 

「?」

 

「無自覚がもっと怖えよ!ったくほら、これでいいだろ」

 

「おぉー!」

 

アールマティ戦後からずっとボロボロだったパーカー。

 

割と気になってたのでダメ元でニャル太郎に頼んだところ、快く引き受けてくれた。

 

いつもの黒いパーカーを受け取り、羽織る。

 

「穴なし、ほつれなし、汚れなし、完璧!ありがとうニャル太郎!」

 

「いいってことよ、裁縫道具持っててマジでよかった」

 

裁縫道具を片付けながら、コーヒーを嗜む。

 

「いやなんで初期持ち物が裁縫道具なんだよ、普通財布とかだろ」

 

「財布?あるぞ」

 

「……ひよこのがま口じゃねえか!しかもDSのカセットしか入ってねえ!」

 

「起きた時ポケットに入ってたわ、あとこれ」

 

「Switchのカセット入れかよ!せめて本体持ってこいや!」

 

「どうせ充電切れで使えねえと思うけど」

 

「確かに……」

 

肩を落とし、ベッドに寝っ転がる。

 

ようやく見慣れてきた天井を見つめ、溜息を漏らす。

 

「あーあ早く帰りてえなー」

 

「帰ったら何するんだ?」

 

「溜まったゲームの消化に書きたいSS小説、頭の中にあるの創作小説執筆、エトセトラ」

 

「確定申告」

 

「嫌なこと思い出させるなぁ!」

 

耳を塞ぎ、枕に顔を突っ込む。

 

三人が異世界(こっち)に来てからそろそろ二週間が経つ。

 

言語はおおよそわかってきたし、環境にも慣れてきた。

 

相変わらず傷は増える一方だけども戦闘能力も着々と上がり、雑魚相手なら生身で戦えるようにまで成長。

 

突然荒野に投げ出されても、なんとか生きていけるくらいまでにはサバイバル力をつけた。

 

……ところで成長スピード速くないですか?、と言うツッコミが入りそうなので補足しておこう。

 

書け、黒歴史(白歴史、理想を描け)』の精神分裂影響で現状脳が三つある状態、つまりめちゃくちゃ効率的に活動ができる。

 

その代わり消費が激しく、東雲(使用者)の身体にかなりの負荷がかかる。

 

内臓の一部が破損するレベルの負荷がかかってもおかしくはないのだが、当の本人はそこまで気にしていないので問題はない。

 

「はぁ……帰りたい……」と重たい体を起こす。

 

「気持ちは、わかるけど今は休もうぜ、休んどかねえと色々響くだろ?」

 

「そうだね、誰かさんの回復速度が遅いからね」

 

「そうだな、誰かさんのお好みの身体にされて回復速度が遅いからな」

 

ニャル太郎は額に血管を浮き出しながらも、深呼吸で落ち着かせ本を読み始める。

 

ドタバタな温泉旅行から二日、ようやく身体も本調子に戻ってきた。

 

しかし神格との差は歴然。鍛えたところで所詮は人間止まりの自分達。

 

素手での戦いにも限度がある、が。

 

武器を調達しようにもクトゥルフの館の場所は不明。

 

それどころかラットさんお手製の地図は、アールマティ戦で使い物にならなくなりお手上げ状態。

 

「……そういえば」

 

異世界(こっち)のお札はボロボロだったなのに対して、元の世界(あっち)のお札は綺麗なままだったことに気づく。

 

対して変わりはないはずなのに、なぜ元の世界(あっち)のお札は無事だったのか。

 

「……もしかして『神圧』ってボク達が持ってきた物も当てはまるのか」

 

「ん?」

 

「いやアールマティが出てきた時、周りの木々が潰れたじゃん?」

 

「おう、それが?」

 

「なんだっけ、『神圧』か。それ多分、ボク達とその持ち物には影響しねえんじゃねえかな」

 

「……あ?」

 

「ボクの財布が無事だから、ボク達が最初から身につけていた持ち物は元の世界(あっち)の物判定なんだろうな」

 

「つまり、元の世界(あっち)で戦車を身につけたらこっちに持ってかられるってことか」

 

「そうだけどボクのフォロワーに軍人はいないからね」

 

「チッ、だめか。まあそもそもああいうのは戦車とか効かねえだろうなあ」

 

「だろうね〜」

 

『神圧』は異世界(こっち)の物体に対して圧力をかけているのだと予想するのが妥当だろう。

 

転生者とその持ち物は『神圧』のルール外、ということになる。

 

──いや、だとしたら、この“ドライバー”は?

 

元の世界(あっち)の科学技術はそこまで進んでないだろうし最初から身につけていなかった、なのに潰れていない(・・・・・・)

 

つまりこの“ドライバー“は元の世界、否、外の世界(・・・・)の物と考えるべきか。

 

(まて、外って、どの外だ?)

 

この世界とはまた別の外?いやそもそもどうしてリチャードは転生者(自分達)に“ドライバー”を渡した?

 

なぜそんなことをする必要があった(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

(異世界人(自分達)では戦えないからか?なんでわざわざ外の世界の人間(・・・・・・・)に?同じ人間(・・)に?)

 

疑問が次から次へと溢れ出し、ついに──。

 

「おあああああああああ……」

 

脳がオーバーヒートを起こし、そのまま倒れ込む。

 

「大丈夫か?頭ついてるか?」

 

「……ドーナツ」

 

「ん?」

 

「ドーナツが食いてえ……オールドファッションが食いてえ……あの見た目で三番目にカロリー高い……チョコついたやつでもいい……むしろそっちがいい……」

 

「オレはポンデの黒糖と砂糖が振りかけられてるやつが好きだけどな」

 

「わかる、美味しいよね」

 

「めっちゃ美味い、けどよやっぱり」

 

「「エンゼルクリームが一番好き」」

 

ガシィッッッ、と手を掴み合い、互いの顔を数十秒見つめた後。

 

「……こういうところやっぱりボクだよなニャル太郎」

 

「……そうだな」

 

手を離し、東雲はベッドに寝っ転がり、ニャル太郎は本を読み始める。

 

しばしの静寂ののち、口を開く。

 

「でも某コンビニ店の和風たらこパスタも美味しい」

 

「某コンビニ店のパスタサラダも美味い」

 

「わかる〜」と同時に腹の音が鳴った。

 

「……下行って飯作ろう」

 

「手伝うぞ」

 

時間もちょうど昼頃なので、シノタロスも呼んで昼飯にしようと一階に降りる二人。

 

「そういやシノタロスは何してるの?」

 

「掃除だったけな、動いてないと落ち着かねえんだってよ」

 

「働き者だねぇ〜、っと、シノタロス〜!」

 

「ひゃぁぁぁあああ!?」

 

エントラスホールまで降りると、掃除途中であろうシノタロスが悲鳴をあげる。

 

「ご、ごめん、驚かすつもりはなかったんだよ」

 

「だ、だだ、大丈夫ですわ!ちょっと驚いただけですので!」

 

「驚くのはいいんだけどよ、その」

 

ニャル太郎が訝しげにシノタロスの背後を指さす。

 

昨日までなかったであろう壁に、ドアがあった。

 

真新しい木製の扉で、絶対に入ってはいけませんと言いたくなるような雰囲気を醸し出している。

 

「その扉、なん──」

 

「ななな、なんでもないですわ!決して掃除中に壁掛けランプを傾けて突然出てきた扉にびっくりしてついランプを壊したのを隠してるわけではないのですわ!」

 

「……壊しちゃったんだねぇ」

 

「うぅぅ〜〜〜ごめんなさいですわ」

 

「そういうのは早めに言ってくれ」

 

「以後気をつけますわ……」

 

「まあ壊したものは仕方ない、それはそれとして」

 

東雲が扉に近づく。

 

ドアノブに手をかける、鍵がかかっている様子はない。

 

少しだけ開け中を覗く。地下へと続く階段がうっすらと見えた。

 

「うひょー地下室だぞこれー!」

 

「ロマンの塊キターですわ!」

 

「マジか、ちょっとランタン取ってくる」

 

「地下室って言ったら禁書だらけの書庫!」

 

「武器庫ですわ!多種多様な武器!この時代だとやはりメイスですわ!」

 

両者の火花が散り始める。

 

「書庫!」「武器庫!」「書庫!」「武器庫!」「しょ──」

 

「っるせえ!近所迷惑だぞ!」

 

「そういうニャル太郎が一番やかましいぞ」「そういうニャル太郎さんが一番声が大きいですわ」

 

「飯抜くぞ」

 

「「誠に申し訳ございませんでした」」

 

頭を下げ、飯抜きだけは避けたい二人。

 

「はぁ、で?どうする?」

 

「もち!見に行くぞ!」

 

「わくわくですわ!」

 

「好奇心旺盛だな、先頭行くからしんがりはシノタロスよろしくな」

 

「お任せあれ!」

 

「ボク真ん中〜?なんか真ん中って死にやすいイメージがあるんだけど〜」

 

「不服か?」

 

「めっちゃ不服」

 

「そうか、よーし行くぞ」

 

ニャル太郎は扉を思いっきり開け、階段を降りていく。

 

「無視かよ、待ってー」

 

東雲も後をついていくように階段を降りる。

 

「では、ワタクシも……?」

 

何かの気配を感じ、振り返った。

 

誰もいないエントランスホール、自分達の他には誰もいないはず。

 

「あら?玄関口の扉が開いてますわ」

 

扉を開き、街を見渡す。

 

雲が流れ、風が流れ、人が流れている。

 

何一つとして変わらない景色が広がっていた。

 

「う〜ん、立て付けが悪いのかしら?あとで直しときましょうか」

 

扉を閉め、念のためと鍵も閉める。

 

「これでよし、お二人ともー!お待ちくださいましー!」

 

シノタロスは地下への階段を降りていく。

 

「……“はぁ”……」

 

外のオリュンポスの屋敷の玄関の近くで、その人物は安堵と落胆の溜息を漏らした。

 

・ー・ー・

 

「着いたな」

 

「結構長かったね、五分くらい?」

 

階段を降り切ると、今度は古びた木製の扉が待ち受けていた。

 

「鍵、はかかってねえな」

 

「ガバセキュリティだなここ」

 

「泥棒に入られたらどうするんでしょうか」

 

「叩き潰してサツに出せばいい話だろ」

 

「全人類がお前みたいな脳筋ダルマの思考回路じゃねえんだぞ」

 

「それはそうだな」と扉を開ける。

 

そこの広がる光景は、ほぼ空っぽの倉庫だった。

 

「えっ……禁書だらけの書庫……燃やしたかったのに……」

 

「メ、メイスのバーゲンセールぅ……」

 

何言ってんだこいつらと目線を送りながら、足を踏み入れる。

 

使えないガラクタや空っぽの樽などが放置されており、何年も使っていないのは明白だった。

 

「使えそうなものは、っと」

 

奥の方まで歩いてきて何かが見えてきた。近づいてみればそれは──。

 

「……アタッシュケース?」

 

このファンタジーの世界に似つかわしくない銀色に光るアタッシュケース、それもあの“ドライバー“を貰ったものと同じ物。

 

どうしてこんなものが、とケースを確認する。

 

劣化が激しいのか最初の部分は削れて、辛うじて読めた部分には“RIDER SYSTEM”と書かれていた。

 

「ライダー……システム……?」

 

「不備でも見つかった?」

 

「は?なんて?」

 

「いやなんでも、んで何見つけたの?」

 

「これ、ライダーシステムって書かれてる」

 

「ほんとだー、えいっ」

 

「おい勝手に触んな!爆発でもしたら……」

 

〈スキャンを開始します お手元のドライバーを出してください〉

 

突然アタッシュケースから機械的な声が鳴り響く。

 

「うわ喋った……ってなんて?」

 

「お手元の“ドライバー“か、ほい」と“クラウドドライバー”をアタッシュケースに近づけた。

 

〈スキャン完了 “クラウドドライバー” 所持者 東雲の幻想屋〉

 

「ほれニャル太郎も」

 

「はぁ!?やだよ、んな得体の知らんもんに」

 

「ほっほーう?さーては怖いのかぁ?」

 

「あ゛ぁ゛!?やってやるよクソ野郎がッ!!!」

 

口車に乗せられニャル太郎は“カオスドライバー”を近づけた。

 

〈スキャン完了 “カオスドライバー” 所持者 ニャル太郎〉

 

「わ、ワタクシも!」

 

恐る恐るケースに“バケックスドライバー”を近づける。

 

〈スキャン完了 “バケックスドライバー” 所持者 シノタロス〉

 

カチッ、とアタッシュケースが開く。

 

ゆっくりと開き、中には黒い長方形の何かが入っていた。

 

「なにこれ」「なんだこれ」

 

「まあ!コンパクトな武器ですわね!」

 

「これ武器なの!?」「これ武器かよ!?」

 

「コンパクトな武器いいですわよね、ワタクシのは少々大きいのですが」

 

「あれこの前、ハンマーの小型版出てなかった?」

 

「これですの?」

 

どこからともなくシノタロスはいつものハンマーの小型版を取り出した。

 

「それそれ」

 

「かわいいでしょう?本気で殴ったら人の頭などトマトになりますわ」

 

「かわいいけどかわいくねえ性能だな」

 

「まあそれはそれとして、この長方形くんは一体?」と黒い長方形を持ち上げる。

 

〈 ハ ル バ ー ド 〉

 

重低音の機械音声が響くのと同時に、長方形が変形。

 

長方形の両端から棒が出現し、徐々にその姿を変えていった。

 

全長二メートル。槍の穂先に斧頭、その反対側に突起(ピック)が取り付けられている。

 

イカついデザインに色は黒と白を基調、突起(ピック)部分にオレンジ色のリボンが付いたなんとも可愛らしいハルバードだった。

 

「うおォォォおぉオオオオオ?!!?!??!」

 

「なにそれかっけえ!!!!!」

 

「ワタクシよりもスリム!!!ちょっと嫉妬しそうですわ!!!」

 

思わぬ武器の登場でテンションが上がる一同。

 

「やべーやべー!!!!これボク好みの武器じゃん!!!!刀と銃も好きだけどこういうのも好きー!!!!!!!!」

 

「ちょっと貸せ!!!オレも持ちたい!!!」

 

「わわわ、ワタクシのハンマーとメイスの出番がぁぁぁ……」

 

「てかこれ説明書は?」

 

「あっ!!!勝手に離すなばっっ」

 

離した勢いでそのまま倒れるニャル太郎と巻き添えを喰らうシノタロス。

 

〈 ラ イ フ ル 〉

 

倒れた影響なのか、再び聞こえる重低音の機械音声。

 

この時の東雲にはまだ聞こえていなかったようで、アタッシュケースの中を漁っていた。

 

「説明書説明書、あった、どれどれ……?」

 

“████████ ████████ RIDER WEAPON VAR3.0”

 

“基本操作は簡単!█RWV3を掴むだけ!それでチョーカッケェ武器に変形!”

 

“全部で三種類!状況に応じて形を変えよう!”

 

説明書というか、ただのメモ書き様にも思える。

 

「重要な部分読めないの何?ホラゲーかなんかか?」

 

メモをポケットにしまい、二人の方を向く。

 

「ニャル太郎さん!いつまでも持ってないでお渡しくださいまし!」

 

「やだー!!!」

 

「駄々をこねないでくださいまし!?貴女そういうキャラじゃないでしょう!?」

 

「やだー!!!」

 

「どうしたの……」と呆れ顔で二人に近づいた。

 

「聞いてくださいまし東雲さん!ニャル太郎さんが例のアレ、離さなくなってしまったのですわ」

 

「珍しいな、そんなに気に入ったの?」

 

「うん」

 

「すごい……初めてのおもちゃ買ってもらった子供みたいな顔してる……」

 

「お前この形見ても同じこと言えんのかよ!!!」

 

ニャル太郎がRWV3を二人に見せつけると先程のハルバードとは一転。

 

二脚が銃身の上のフレームに繋がって銃身をぶら下げている構造、ブルパップ方式を採用した銃器、いかにも独特のシルエットで、橙色の可愛いリボンが付いているおまけ付き。

 

「……そ、その()はッッッ!!!」

 

「WA2000だぞ!!!!これはどう見てもWA2000なんだよ!!!!」

 

WA2000、の偽物ではあるが本物そっくりな銃器に興奮しているニャル太郎。どうやら無機物フェチは継承済みのようだ。

 

「やべえこいつ幻覚見てる、(キモ)

 

「うるせえ!!!初めて見た時から恋に落ちてんだよバーカ!!!」

 

大事そうに WA2000(わーちゃん)を抱きしめ「ぜってぇに渡さねえからなちくしょうが!!!!」と威嚇しだす。

 

「おーコワコワ、シノタロスやっておしまいな」

 

「仕方ないですわ、失礼しますわよ」

 

シノタロスががっちりと掴み、東雲がWA2000(わーちゃん)を引き剥がした。

 

「やめろー!!!はなせー!!!わーちゃーん!!!」

 

「やかましか、んーと?これをこうすると?」

 

〈 ハ ル バ ー ド 〉

 

機械が変形する音が部屋中に響く。

 

「あぁあぁぁぁ……わーちゃん……」

 

「その鏡見てる様な気分になるからそれやめて」

 

「わーちゃん……えむにひゃくちゃん……よんじゅうよんちゃん……」

 

「推しの名前を呟くな!後で触らしてやるから」

 

「早く終わらせろよ」

 

「切り替えが早くてよろしい、んでここを弄ると?」

 

〈 サ イ ス 〉

 

例の機械音声が響く。

 

斧頭の部分から機械が回る音が聞こえ、刃の部分が開き、大鎌へと形を変えた。

 

「おー!いいね!首狩り放題じゃん!」

 

「一つで三つも使えるのか、いいねぇ」

 

「ワタクシだって!打撃武器二刀流とか!できますし!」

 

「大丈夫だよ、シノタロスにはシノタロスの良さがあるから」

 

「むぅう……」

 

「んで、これ名前は?」

 

「わからん、名前の部分読めなかった」とメモを渡す。

 

「ほぼ読めねえな」

 

「ライダーウェポンしかわかりませんわね」

 

「うーん、じゃあ」顎に手を当て、しばらく悩んだのち「ライダーウェポンのライウェーちゃんで!」

 

〈 承 認 〉

 

……いったい何を承認したんだ、とその場の全員が目を合わせる。

 

「な、何?」

 

「なんか、オレら変なの解放した?」

 

「はわわ封印されし武器でしたか?」

 

〈 黒 の 主 〉

 

「あっあっ、ボク?何すか」

 

〈 血 を よ こ せ 〉

 

「えっヤダ……」

 

〈 よ こ せ 〉

 

さっきよりも低い声で話しかけてきた。

 

「ヒィッッッハイッッッ」

 

あまりの怖さに右手をリスカし、ライウェを落とす。

 

「イッテええええ!?」

 

「なーにしてんだてめえ!!!止血!!!」

 

「包帯とってきますわー!!!!!!!!」と慌てて一階に上がっていった。

 

〈 ふ む ふ む な る ほ ど 〉

 

落ちた黒い長方形が変形する。

 

機械音などではなく、骨と肉が形成される音が部屋に響き渡る。

 

「……は?」「……なっ!?」

 

「ふむふむ、なるほど、こういうものか」

 

重低音の機械音声ではなく、やや高めの少年(・・)の声が部屋を埋める。

 

「ふふふ、妙なのと契約を結んでしまったようだ」

 

にこりと笑ったそれは、おおよそ八歳くらいの少年だった。

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