フォロワーファンタジー ー小豆味ー   作:ニャル太郎

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第二条、お嬢様は儚く可憐で清楚であれ

昼食も終え、ギルドで雑にクエストを受注してきた一同。

 

「言っとくけど足引っ張んなよ」

 

「それはこっちのセリフだバーカ」

 

「お二人とも、仲良くしてくださいまし」

 

「そうだぞ、二人の主が喧嘩するとどちらにつけばいいかわからないからな」

 

「ボクの味方して」「オレの味方しろ」

 

「ごめん嘘」

 

「いやひよんなヘタレ」

 

「こんなかわいいショタの味方してもらうとか前世で徳積まないと無理だよ……前世のボクでそんなに徳積んでない……」

 

「知るかボケ、そんなんだからオレに勝てねえんだよ」

 

「はぁ?一回くらいは勝てたもん!一回くらいは……」

 

「そういうのは勝ってから言えマヌケ!」

 

「うるせえうるせえ怪力ゴリラ!こんな子に育てた覚えはありません!」

 

「育てられた覚えもねえよバーカ!」

 

ぐぬぬぬ、と睨み合い同じタイミングでそっぽを向く。

 

「ところでシノタロスくん、本日の狩りの対象は?」

 

「ええと確か……」と依頼書を開き、確認しようとした時。

 

「──────!!!」

 

狂気に満ちた咆哮が森中に響く。

 

ドシンッ、と地響きが鳴り、何かがこちらに近づいてくるのを肌で感じる。

 

顔をあげ、二人の様子を確認する。

 

図体がでかいおかげで地響きを起こした犯人の姿は見えないが、そこに何かいるのは匂いでわかった。

 

「二人とも危──」

 

その声は骨が折れる音によって遮られる。

 

()られたそのモンスターは軽く吹っ飛び、木に叩きつけられた。

 

当たった場所が悪かったのか、嫌な音を出してそのまま絶命。

 

「あららら……ご愁傷様ですわ……」と手を合わせ南無三。

 

「どうやらその対象が来たようだな」

 

「ボクの方が早かった!」

 

「いんや、オレの足が早く出た」

 

手を出した二人は相変わらず口喧嘩をしていた。

 

いがみ合いながらも息があったコンビネーションで目の前のモンスターを倒したのだ。

 

「つーか、話してる時に邪魔すんなよな」

 

「ほんとだよ、空気読めってんだよクソが」

 

「空気もクソもないと思いますわ」

 

「右に同じく、それにそうこう言っているうちに集まってきたぞ」

 

周りを見てみると、緑色の肌をした屈強な人型のモンスターに囲まれていた。

 

「いくつ?」

 

「五十体くらいか?」

 

「多いですわ!これ四人でどうにか、いえできますわね」

 

「確かラットさんと塩さんと一緒に半魚人百体位倒してたよ」

 

「今回は半分だし、問題ねえだろ」

 

「それにトウホウの性能確認には持っていこいの数だ」

 

突如として現れたモンスターに驚くこともなく、三人はドライバーを取り出す。

 

その後ろでストレッチをするライウェー。

 

「うし、じゃあ気合い入れていくか!」

 

ドライバーを装着し、起動させると騒がしいBGMが森を包む。

 

お決まりのポーズをし、息を合わせる。

 

「変身!」「変身ッ!」「変身っ、ですわ!」

 

黒、白、橙の光の塔が立ち三人のライダーが現れる。

 

「ふむ、掛け声も重要か」

 

ストレッチを終えたライウェーが呟く。

 

「変形」と指を鳴らす。

 

ふわり、と身体が浮き、みるみるうちにライウェーの姿は変わり黒い長方形へと変貌した。

 

当然、そのまま落下。

 

「ウワーッッッ!?親方!空から無機物が!」

 

キャッチしたのと同時に例の機械音声が響く。

 

〈 サ イ ス 〉

 

全長二メートルの黒い大鎌に変形。チャームポイントのオレンジ色のリボンも健在。

 

〈 では試運転の方よろしく頼むぞ 〉

 

「……改めて聞くとこの姿の君、星野さんみたいな声なんだね」

 

〈 少年時の声がお好みか? 〉

 

「いや気が散るからこっちで!二人とも!そっち方よろぴこ!」

 

大鎌を構え、モンスターの群れに突っ込む。

 

「んじゃ、こっちはこっちで」

 

「新入りさんに負けるわけにはいきませんもの!」

 

黄色いコインをドライバーに入れ、シノタロスも変形する。

 

〈パックーン!メイスフォーム!〉

 

「射程範囲は短いですけど、中ボス相手なら強いですわ!」

 

「ちょこちょこメタいこと言うのなシノタロス」

 

「メタい?」

 

「いや無意識かよ!?」

 

二人の会話を遮るように、二メートル越えの緑のモンスターが棍棒を振り下ろす。

 

もちろん、ニャル太郎にはそんな未来はとっくのとうに予知()えていた。

 

振り下げられた棍棒をメイス(シノタロス)で防ぐ。

 

「この棍棒、作りが粗雑ですのね。これじゃあもったいないですわ」

 

「そうか、んじゃ壊れても仕方ねえよなァ!」

 

カンッッッ!、と棍棒を弾き脇腹に一蹴り入れる。

 

すぐさまメイス(シノタロス)を持ち替え、頭に一撃叩き込む。

 

距離を開け、あの一撃で落とせたか確認する。

 

──浅かった。モンスターはふらり、と体制を崩しただけで絶命までは持ち込めていない。

 

舌打ちをし、すぐさま構える。

 

先程よりも疾く、深く、地面を踏み込む。

 

到達した時間は一瞬。懐に潜り込むように身体を屈める。

 

踏み込んだ勢いはまだ生きている。その勢いをメイスの先端(一点)に集中し、腹に叩き込む。

 

ゴキャッッッ!、と鈍い音がモンスターの体内に響く。

 

これで落ちろ。と願うが、それは落ちない。

 

二、三歩後ろに下がっただけでまだ動いている。

 

──衝撃は大きかったはず、何が足りなかったか。

 

「──────!!!」

 

思考はモンスターの咆哮によってかき消された。

 

息を整える、焦ればこちらの足元がすくわれる。

 

──そうだ、余計な思考は捨てろ。

 

一歩、地面を砕くように蹴り上げる。

 

二歩、右足をバネのように縮ませ、飛ぶ。

 

モンスターの頭上まで飛び上がった、あとはその頭が地面にめり込むほど、力一杯振り下げるのみ。

 

「くたばれッッッ!!!」

 

バキィッッッ!!!、と地面が割れるのと同時に鮮血が飛び散る。

 

真っ白なライダーに、ちょっとしたアクセントが施された。

 

メイス(シノタロス)を持ち直し、残りのモンスターを目視する。

 

「……だりぃ」

 

これをあと二十四回繰り返さなければならないのかと思うと、気が遠くなりそうだ。

 

「ニャル太郎さん」

 

「ん?あぁ悪い、ちょっと強く握りすぎたか?」

 

「それもそうですけれど、お堅いですわ。リラックスリラックス」

 

「すまんな、万全での戦闘久しぶりだからよ、感覚戻したくてさ」

 

「そうでしたか、感覚は戻りましたか?」

 

「戻ったけど、このやり方じゃ日が暮れちまうな」

 

そう言いながらモンスターの群れへと歩み寄る。

 

「そういうことだからよ、ちょっとお前のやり方真似させてもらうぜ」

 

「もちろん!いっぱい真似てくださいな!」

 

「助か、るッッッ!」と地面を蹴り上げた。

 

同時にモンスターの群れが進軍する。数匹が二人に襲いかかってきたが、臆することもなく進み、飛び上がる。

 

「ちょいと我慢してくれよシノタロス!」

 

「合点承知の助ですわ!」

 

落下の勢いで地面を叩く。衝撃によって二人の周りに土の柱が形成された。

 

巻き込まれたモンスターは深手か絶命の二択。巻き込まれなかったモンスター達は一瞬の戸惑いを見せる。

 

「なに足止めてん、だッッッ!!!」

 

グッ、と柄を握りしめ振り回す。

 

振り回した勢いで土柱は砕け、砲弾のように飛び散る。

 

土が砕ける音、肉が潰れる音、短い悲鳴、様々な音が響くが、すぐに止んだ。

 

「っと、残りは四体か」

 

「目がぐるぐるですわ〜」

 

「あぁすまん!ちとやりすぎたな」

 

「平気ですわ〜」

 

「そうか、無理はすんなよ」

 

「それ貴方が言います?」

 

「はいはい、以後気をつけますよー」

 

そう言い返し、再び群れに突っ込んだ。

 

 

────その頃、二人は。

 

 

〈 さて、こちらはどう戦うか 〉

 

「そうだよねぇ、ボク大鎌で戦うの初めてなんだよね」

 

〈 好きに戦えばよい、トウホウはそれに従うのみ 〉

 

「左様ですか、ほんなら」

 

大鎌を構え、地面を蹴り上げた。

 

目標は目の前。焦らず、確実に狩る。

 

「──ッ!」

 

踏み込みは浅い、そのせいで勢いは失速した。ならば振るう力は緩めるな、と大鎌を振るう。

 

ギンッッッ!!!、と一つの頸を断つ。

 

〈 踏み込みが甘い、せっかくの勢いも全て無駄にしているな 〉

 

「辛口評価、身に染みます」

 

〈 一体に拘るな、できるだけ多くを斬れ 〉

 

「おっけー、頑張ってみる」

 

目の前で死の光景が見えても群れの進軍は止まらない、なんと勇敢なことか。

 

呼吸を整え、構え直し、地面を踏み込む。

 

歩幅は大きく、跳ねるように駆ける。

 

踏み込む勢いは殺さずに、一歩また一歩、確実に近づく。

 

「──ッ!!!」

 

大鎌を振るい、頸を落とす。

 

〈 止まるな、そのまま踏み込め 〉

 

言われた通り、地面がめり込むほど深く踏み込み、再び駆ける。

 

すぐさま二体目の目の前に着き、その頸を落とす。

 

〈 そのまま続けろ、勢いは落とすな 〉

 

また、踏み込む。

 

一歩(ひとつ)二歩(ふたつ)三歩(みっつ)

 

次々と戦場を駆けていく(頸を落としていく)

 

「きっ、つい!」

 

十七体目の頸を落としたところで、足を止める。

 

〈 見事、おかげでいい調整ができた 〉

 

「さいですか、んで残りが八体と」

 

〈 先程の攻撃なら問題ないだろう 〉

 

「……一個やりたいことあるんだけど」

 

〈 良いぞ、好きなように踊りたまえよ 〉

 

「あ、いいのね?じゃあッ!」と地面を蹴る。

 

大鎌を左手で持ち、残りのモンスターへと駆けていく。

 

歩幅は短く、徐々に加速しながらレバーを倒す。

 

プシュッ、と腰部分から煙が噴射。

 

「これ、ならッ!」

 

思いっきり大鎌を振る。勢いに乗せられ、上半身が回転(・・)する。

 

勢いは落ちることはなく回り続け、残りの八体の身体を斬り刻んだ。

 

「──止まらなーいッッッ!!!」

 

落ちることがないということは、つまり止まれないということ。

 

操縦も効かなくなってきた、まずい。と思った瞬間──死体に躓く。

 

「んぎゃー!!!」

 

上半身と下半身がお別れを告げ、そのままニャル太郎達のところまで転がった。

 

丁度最後のモンスターの頭をかち割った瞬間に目が合う。

 

「あっ、よっ!」

 

「よっ!じゃねえよ!びっくりしたわ!」

 

「心臓に悪いですわ!」

 

〈 流石に、これは想定外 〉

 

「えへへ、ごめんごめん」と頭を掻き、「で、ボクの下半身くん知らない?」

 

「知るかボケ!!!探してこい!!!」

 

「んな無茶な」

 

「ともかく、こちらは片付きましたわ」

 

〈 こちらもだ、調整ももう少しで終わる 〉

 

「そうか、そいつはぁ……」

 

よかったな、と喉まで出かかったのが引っ込んだ。

 

目線の先に何かが歩いてるのが見える。それと目が合う。

 

ドシンッッッ、と地響きを鳴らしながらこちらに近づいてくる。

 

それは、十メートルほどの巨人だった。

 

「なんだあれ!?」

 

「えっ……うおぉお!?なんかきたー!」

 

「はわわ!?もしかして先程の地響きはあの大型オーガさんでしたの!?」

 

「あ、今回の敵オーガだったんだ、通りで緑な訳だ」

 

「冷静になってる場合か!さっさと倒すぞ!」

 

「わかった!ところでボクの下半身くんは?」

 

「だァーもう!シノタロス!このバカ頼む!」

 

緑色のコインを入れ、ライダーフォームに変形させる。

 

「かしこまりですわ!どこですのー!東雲さんの下半身さーん!」と東雲を掲げ、走り出す。

 

「酔いそうだなこれ……あっニャル太郎!」

 

「あ?」

 

「ライウェーくんと交流深めとき、なっ!」

 

東雲の手からライウェーが投げられると、長方形の姿に変形しニャル太郎の手に渡った。

 

「イッテ!?バカ投げんな!落としたらどうすんだ!」

 

「あぁそうじゃん!ボクのバカぁ〜……」

 

後悔の声はそのままシノタロス号に揺られながら流れていった。

 

「はぁ、さてと」

 

長方形をいじると機械音声が響き、変形する。

 

〈 ラ イ フ ル 〉

 

その姿はWA2000(わーちゃん)に酷使したライフル。相変わらず橙色のリボンは健在であった。

 

「このフォルム、堪らねえ〜」

 

〈 堪能中に悪いが、最後の調整に入るぞ 〉

 

「へいへい、っと。んで?これ弾は?」

 

〈 それなら問題はない、すでに装填されている(・・・・・・・・・・) 〉

 

「……どういうことだ?」

 

〈 撃てばわかるぞ 〉

 

「そうかよ、じゃあ」

 

初めてライフルを握ったとは思えないほど慣れた手つきで構え、狙いを定める。

 

〈 風向きはやや右寄り、距離は三十メートル 〉

 

「当たれば問題ねえだろ」

 

〈 そうではあるが、まあいいか 〉

 

最終的に当たればどうとでもなる、と思いながらスコープを覗く。

 

スコープ越しに大型オーガと目が合う。こちらの行動に気づいたのか、木を引っこ抜きこちらに投擲を仕掛けてきた。

 

「……面白え」

 

動く的を渡してくれるなんて親切なヤツだな、と引き金を引く。

 

ドォォオオンッッッ!!!、と森中に発砲音が響き渡る。

 

放たれた弾丸は本木に直撃し、粉々に砕け散った。

 

「さっすがWA2000(わーちゃん)、の似たヤツだけど威力は最高だ」

 

〈 褒めてくれるのはありがたいが、本体がまだ生きているぞ 〉

 

「あぁそうだったそうだった、さっさとやるか」

 

大型オーガの方を向き、再び構える。

 

それに反応するかのように咆哮をあげ、こちらに走ってきた。

 

的が大きいことはいいことだ、と引き金に指を置く。

 

「すぅ……ッ!」

 

ほんの一瞬、息を止める。極限までブレを抑え確実に仕留める。

 

外せばあとが面倒だ、ここで必ず殺すと力を込め引き金を引いた。

 

ドォォオオンッッッ!!!、と二度目の発砲音が響く。

 

真っ直ぐ、赤黒い閃光が銃口から発射され、大型オーガの脳天に着弾。

 

避ける隙も、防ぐ隙も、死を理解させる時間も全て削るように頭を抉り生命を絶った。

 

「こんなもんか、にしてもいい火力だ」

 

〈 そうだろう?なんせ、君の血液を使用しているからな 〉

 

「……なんて?」

 

〈 君がトウホウに触れた瞬間、軽く血を回収させてもらった 〉

 

「あの時の痛みってお前か」

 

〈 丁度よかったからな、それと撃てる弾丸は全部で六発だ。忘れないでくれたまえよ 〉

 

「了解っと」

 

〈 あぁそれと、トウホウのことはそこらへんに置いてくれないか、最終調整にを済ましときたいのだ。なに、終わり次第勝手に人型に戻るから気にするな 〉

 

「便利な機能なことで」と木の根元にライウェーを置く。

 

「おー終わってたか」

 

森の方から変身と解いた東雲とシノタロスが歩いてきた。

 

「ん、おかえり。下半身見つかってよかったな」

 

「いやあ無くなった時は焦ったね」

 

「ほんとにびっくりしましたのよ!?あと数分遅れてたら変身解けていたんですから!」

 

「あっはは、以後気をつけます」

 

危うく年齢制限が上がるところだった、と頭を掻く。

 

なぜ東雲(こいつ)は自分の身体を大事にしないのか、と毎回突っ込んでいる気になっておりもう今回以降突っ込むのはやめるかと思いながら変身を解いた。

 

「ところでライウェーくんの性能はどうだった?」

 

「火力よし連射性能よしフォルムよしで文句ねえぞ」

 

「だろ………………誰よその子!?」

 

東雲が突然おかしなことを言い出す。

 

「誰って、わーちゃんじゃねえの?」

 

「違いますわ!後ろ!後ろの子!」

 

「後ろ?後ろってライ……」

 

「こいつはまた、愉快」

 

そこには八歳くらいの少年、ではなく十七歳くらいの少女(・・・・・・・・・)が立っていた。

 

黒髪の長髪、癖っ毛でふんわりとした髪型。左髪を三つ編みに結んでおり、頭のてっぺんに大きいアホ毛。

 

黒色のジト目で瞳孔部分は星形。そしてチェーン付きの黒い丸眼鏡。

 

黒のリボンタイに橙色のブローチ。軍服風の白いジャケットと黒い清楚なフレアスカートを合わせたワンピース。

 

黒のガーターソックスに、ヒールのショートブーツ。

 

正統派お嬢様、と答えるには難しい少女が自身の体を弄りながら呟いていた。

 

「またまた興味深いことになったな」

 

ふにっ、とDカップほどの胸を持ち上げ興味深そうに見つめる。

 

「ニャル太郎」

 

「……なんだよ」

 

「誘拐は、ダメだぞ」

 

「ガチめのトーンで言うんじゃねえ!それにしてねえよバカ!」

 

「ニャル太郎さん、ワタクシ達も一緒に行きますから」

 

「シノタロスまで!?なんでだよ!こいつの時なんも言わなかったじゃん!」

 

「ほら、東雲さんは自首しそうですし」

 

「……そうだな畜生!」

 

弁解する気力も湧かないニャル太郎の横を少女が立つ。

 

「まあ落ち着きたまえ、よく見よ」

 

くるりと回り全体を見せる。

 

ふんわりといい香りがしそうな雰囲気で、嗅いだらおそらく事案である。

 

「な?わかるだろう?」

 

「いやわから……ん?」

 

ようやく東雲は異変に気づく。

 

先程から姿が見えないライウェー。突如現れた少女。目の前で忠誠を誓うように膝をつくニャル太郎。

 

「…………君ライウェーくんだったりする?」

 

「先ほどからそう言っているだろう」

 

「いえ普通わかりませんわ、それになぜお嬢様ですの?」

 

「そこの主じゃなければ」とニャル太郎を見る。

 

「……」

 

姿を変えさせたであろうニャル太郎(犯人)はただひたすらに忠誠を誓い、黙秘権を酷使していた。

 

「……さーてはお前、ふんわり系お嬢様っ子好きだな?」

 

「ぐふっ……」

 

図星のようだ。かくいう東雲がそうなのであるが、今はどちらかといえば少年の姿が好み。

 

「で、何した?」

 

「…………なんもしてない」

 

「声ちっさ、腹から声出せよ」

 

「……………………………」

 

「渡された時に血を回収して、そこから情報を見──」

 

「やめろー!!!さっき忠誠誓ったろ!!!」

 

「そうだったか?靴紐が解けているのかと思ったぞ」

 

「あぁあああ〜〜〜〜!!!!!殺せよも〜〜〜〜〜!!!!」

 

「ニャル太郎さんもそういうこと言うなさるのですね」

 

「まあ仮にもボクだし、そういうとこ引き継いだでしょ」

 

「ふざけんなバーカ!」

 

手で顔を覆い隠し、その場に縮こまる。

 

「何はともあれ、討伐完了してるしギルドに報告しよーぜ」

 

「そうですわね、ほらニャル太郎さん行きますわよ、って石のように動かないですわこの人」

 

「やれやれ、手間のかかる」とニャル太郎に近づき、手を握る。

 

「置いてけ畜生、時間が経ったらす──」

 

「何をおっしゃいますの?早く戻りましょう〜」

 

にぱぁ、と輝かしい太陽な笑顔を向ける。

 

「──────────」

 

数秒のフリーズの後、そのまま後ろに倒れた。

 

「こんなものでいいだろう」

 

「あのニャル太郎さんが白目を剥いて気絶、珍しい光景ですわ」

 

少年の姿であれされなくて本当によかった、と東雲は心の底から思った瞬間であった。

 

「じゃあ帰るか、帰るまでが狩りだぞ〜」

 

「はーい!」

 

ニャル太郎を担ぎ、帰路に着く三人。

 

山道を降りながらライウェーは考え事をしていた。

 

(にしても送り手が来なかったということは……何か面倒なことに巻き込まれていないといいのだが……)

 

「今回のいくらだろ、一週間分の食費はあるといいなぁ」

 

「大型一体と小型五十一体ですもの!問題ないですわ!」

 

「そうだよね〜!」

 

愉快な主の背中を見て、それは不要な心配だと気づく。

 

(本来の主達ではないが、これはこれで)

 

「愉快」

 

そう呟き、主達の背中を追いかけていった。

 

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