フォロワーファンタジー ー小豆味ー   作:ニャル太郎

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静かな朝。

誰も彼の眠りを妨げるものはいない。

久々に、ゆっくりと、寝れ──。

「おはよう」

その言葉と共にベッドから真っ逆さまに東雲は落下した。

ベッドの横から頬杖をつきながらライウェーはその状況を眺める。

「おお、お、おは、おはようライウェーくん」

「そんな驚かなくても、ただ起こしに来ただけではないか」

「その姿で来られるとびっくりするんだい!ほら近い!ソーシャルソーシャル!」

手でバツを作りながら距離を開ける。

ライウェーとの共同生活をしてはや三日、未だに慣れないこの距離感に戸惑いながらも過ごしている。

「てか二人は?いつもならあのゴリラが起こしに来ると思うんだけど」

「それなら買い物に行ったぞ、いつの間にか食材が底をついたようでね」

「なんと、相変わらずシノタロスは食いしん坊なんだから」

実は割と食べているのは君なんだけどな、という顔を向けつつ口には出さないライウェー。

「さて、このまま寝てもいいんだけど、君に何されるかわからないかえら起きるね」

「早起きはいいことだぞ、それに」

直後、一階から扉が開く音がした。

「帰ってきたようだし」

「グッドタイミング〜、朝飯だ朝飯〜」

ウキウキな足取りで一階に降りていき帰ってきた二人を迎える、のはずだったが。

がらんとしたエントランスに少しだけ開いた扉が見えるだけで、二人はどこにもなかった。

「あれ?二人ともー?」

「音がしたから帰って来たと思ったが、気のせいだったか?」

「いや扉開いてるし、隠れてるのかな」

「そんな愉快なことしてくる性格ではないだろう」

「いやシノタロスならまだワンチャン」

「あぁ確かに、彼女ならあり得るか」

エントランスをぐるりと回りながら、一つの机に足を停める。

テーブルクロスが掛けられた机を見ながら、顎に手をつけた。

「して、このテーブルクロスはこんなにずれていたか?」

「ん?あれほんとだ」

よく見るとほんの少しだけずれていた。

言われなければ気づかないほどのずれだが、言われてみると急に気になる。

「どうする?捲るか?」

東雲はしばらく考えたのち、こくりと頷いた。

ライウェーは「ふむ」と呟き、なんの躊躇いもなくテーブルクロスを引いく。

「いや躊躇とかないんか?!」

そんなツッコミは届くことなく、隠れていたであろうその人物の姿を曝け出した。

「……!」

現れたのは十歳くらいの少女。

目が合うとしばらく固まったのち、ソファーの後ろへと隠れてしまった。

「あ、ごめん背デカくて!今屈むから大丈ウワァッッッ!!!」

突然目を抑え部屋の隅へと転がり、そのまま頭をぶつける。

少女はその光景に怯え、目から涙が溢れ出そうになっていた。

「ただいま戻りましたわ〜……」

「今日は卵が安か……」

そこへ、運悪く買い物に出ていた二人が戻ってきてしまった。

ニャル太郎は少女と目が合ったのち、さながら犯罪者でもみるような目で東雲へと目線を移す。

「危うく心臓が潰れるところだったぜ、あっおかえ──」

放たれた右拳はそのまま東雲の顔面に直撃、することはなく済んでのところで受け止めた。

ちょっとした壁ドン状態になりながらニャル太郎は口を開く。

「お前、ついにやったのか」

「やってねえわクソボケ!なんでこの流れになるんだおかしいだろ!」

「東雲さん、警察にはワタクシ達も同行しますので」

「シノタロスまで!?ボクそんなに誘拐しそうな雰囲気に見えるの!?」

「あぁ」「えぇ」

「即答かよ!つーかどっちかといえばこれニャル太郎の担当だろ!」

「責任転換とは、飛んだクソ野郎だな」

「いやマジで今回はなんも知らないんだって!」

弁明をしている後ろでライウェーは溜息を漏らし、胸のブローチをいじり出す。

「あーあー、よし、“失礼、そんなに怖がらなくとも大丈夫だお嬢さん。彼は背は大きいが小心者でね“」

宥めるように少女に語りかける。

そのおかげなのか少し落ち着いたようで、少しだけ笑顔を見せた。

「はぁ、んで。このお嬢ちゃんは一体?」

誤解が解けたのかはたまた飽きたのか、ニャル太郎は拳をしまい少女の方に振り向く。

「さあな、そこの机の下に隠れていたのをトウホウらが見つけた」

「隠れていた、ねえ」と少女に近づき同じ目線になるようにしゃがむ。

相変わらずソファーの後ろに隠れたままでが、警戒心は和らいでる様子だ。

さてどうしたものか、と頭を掻く。

東雲も性犯罪者にはなりたくないようで話しかけられずにおり、シノタロスは見た目的な問題で話しかけられずにいた。

「“あ、あの”」

ようやく少女が口を開く。

一歩、前に踏み出し三人の方へと近づき、ゆっくりと顔を上げた。

「“おねがいが、あるの”」

弱々しくもはっきりとした言葉で、少女は告げる。



花は散る瞬間が美しいとはよく言ったものだ

時間にして十時。暖かな日差しが差し込む部屋で一向は少女と向かい合っていた。

 

「“では改めて、内容を聞こうではないか”」

 

一番歳が近い見た目のライウェーが話を進める。

 

まさかの翻訳機能も搭載とは、というツッコミはこの際ナシで。

 

「“お願いと言っていたが、それはどんな内容なのだ?”」

 

「“ええと、その”」

 

「“お茶です、熱いのでお気をつけて“」

 

「“あ、ありがとう、あちっ”」

 

「はわわ、お水お水」

 

舌を火傷しそうになる少女を見て慌てて水を出すシノタロス。

 

それを見て平和だなと思う東雲とめんどくさいことになりそうだと頭を抱えるニャル太郎。

 

「“それで、お願いってのはなんだ”」

 

「“あ、それはその、その“」

 

顔を俯き、ぎゅっと自身の手を握り再び顔を上げた。

 

「“お花畑を取り返してほしいの!”」

 

「“花畑?”」

 

「“いつも行っているお花畑にモンスターが現れちゃって……それも一週間前から……”」

 

「“なーるほどね、でもそれギルドに頼めばいいじゃないかな?ボクらみたいな変なのに頼むもの……”」

 

「“ううん、お兄さん達がいいの”」

 

「……“そいつはどうしてだい?”」

 

「“お兄さん達、強いってギルドでも噂になってたから。あのピンクのお姉さんもお兄さん達みたいに強いから依頼しようと思ったの、でも別のギルドに派遣されちゃったからもういなくて”」

 

「“それでボクらのところにねぇ”」

 

満更でもない顔をしながら少女の話を聞く。

 

「ピンクのお姉さんって苦瓜さんですわよね」

 

「多分そうだな、ギルドを通ったときに若くて強い奴の派遣したってのはそれか」

 

「“とりあえず、お花畑を取り戻せばいいんだね”」

 

「“……やってくれるの?”」

 

「“もちろん、頼まれたからにはやるつもりだよ”」

 

そうでしょ?、と三人に目配せをする。

 

「“当たり前だろ、こんなに丁寧に依頼してくれてんだ、断る理由がねえよ”」

 

「“そうですわ、それにお花畑を占拠するなんてとんでもない不届き物ですわ!”」

 

「“最終調整も終わっているからな、腕がなる”」

 

「“そういうことってわけよ、後は任せなお嬢さん“」

 

「“えへへ、ありがとう”」と朗らかな笑みを向ける。

 

「んじゃ、そうと決まればいくぞみんな!」

 

おー、と手をあげ目的地の花畑へと向かう。とした直後。

 

誰かの腹の音が鳴り響く。

 

「……」

 

「……“まずは朝ごはんを食べようか“」

 

・ー・ー・

 

食事を済まし街を出た一向は、森の中を進んでいく。

 

「“この先にお花畑があるの!はーやーく!”」

 

「“わーかってるから、引っ張らないでー”」

 

少女は東雲の手を引きながら、目的地の花畑に案内していた。

 

その光景を三人は眺めながら歩いている。

 

「なぜトウホウがあの行動をすると、彼は吐血して自殺行動に走るのだろうか」

 

「不思議ですわよね、ライウェーさんのこと嫌いではないんでしょうけど」

 

「まあそのうち慣れるべ、つーかなんで連れてきたんだあいつ」

 

「屋敷で待つように言ったのだがな、聞かなかったようだ」

 

「やれやれ、若くて結構」

 

木々の隙間から抜ける風が心地よく、しばらくは黙って歩いていたが。

 

その沈黙を破ったのは、突如鳴り響く大きな地響きだった。

 

「!」

 

東雲の見る先、十五メートルほど先に獅子のような顔に山羊のようなツノ、尻尾は蛇という化け物が現れた。

 

唸り声を上げ、少女に襲いかかる。

 

咄嗟に前に飛び出て庇い、東雲は深手を──。

 

「変身ッ!」

 

負わなかった。すでに変身を終えたニャル太郎が済んでのところで蹴り上げた。

 

「何死にかけてんだこのバカ!」

 

「ご、ごめん」

 

「ここはトウホウらに任せて、その先の花畑に向かえ」

 

「わかった、いくよシノタロス!」

 

「了解ですわ!」

 

少女を連れ東雲とシノタロスは駆けて行く。

 

もちろん、そんなことはさせないと化け物は再び襲いかかった。

 

「お前の相手はオレ、だァ!!!」

 

尻尾の部分を掴み地面に叩きつけた。跳ねた勢いで尻尾が手から抜け落ちる。

 

叩きつけられたにも関わらず、何もなかったかのように立ち上がった。

 

「ライウェー!」

 

「わかっているとも、そう急かすな」

 

変形、と呟き指を鳴らすとライウェーの姿が変わる。

 

黒い長方形になりニャル太郎が握るとライフルの姿へと変形した。

 

「一気に決めんぞ!」

 

〈 了解 〉

 

狙いを定め、すぐさま発砲。

 

ドォォオオンッッッ!!!と放たれた弾丸は化け物の頭上を──貫くことはなかった。

 

貫くはずだった頭は一瞬で消えた、かと思った瞬間。

 

「な、にッ!?」

 

その巨体に似合わない速度で近づき、ニャル太郎に噛み付いた。

 

そのまま噛み砕こうと力を徐々に強めていく、さらに逃がさんとばかりに尻尾で巻きつき身を封じる。

 

化け物は動かない獲物を見て、勝利を確信した。

 

「──イッテえな」

 

獲物は動く。馬鹿な、致命傷とも言える部位を噛みついているのに。

 

次の瞬間、封じたはずの右手を強引に抜いたと同時に何かが自身の胸部に当てられる。

 

「動くなよ、クソ猫山羊蛇が」

 

引き金を引きその命を穿つ。

 

爆音が森中に響き、血飛沫が舞った。

 

「あ゛ー、いってえマジ」

 

〈 残りの弾は四発だ、それとすぐさま合流することをお勧めする 〉

 

「お前、主人の心配はしないのな」

 

〈 何か問題でも? 〉

 

「いや、特に」

 

ライウェーを担ぎ、すぐさま駆け出す。

 

 

──一方、その頃。

 

 

「東雲さん!この先お花のいい香りがしますわ!」

 

「花畑か!もしかしたらさっきのがいるのかもしれない!」

 

整備されていない道を走りながら、森を抜けた。

 

その先に広がる光景は、まさしく花畑。

 

色とりどりの花が咲き、風に煽られ舞っていた。

 

「わお」

 

「綺麗ですわー!」

 

「“とっておきの花畑なんだ”」

 

「“そっか”」と少女を降ろしドライバーを取り出しながら「“ここにいてね“」と優しく頭を撫でる。

 

二、三歩進みシノタロスと肩を並べる。

 

「シノタロス」

 

「わかっていますわ」

 

視線の先、二十メートル先に先程と同じ姿の化け物が鎮座していた。

 

こちらのことを確認すると、ゆっくりと立ち上がり咆哮をあげる。

 

それに反応するかのように、二人は変身した。

 

「変身!」「変身、ですわっ!」

 

シノタロスはメイスフォームへと変身し、東雲がそれを抱える。

 

「いくぜいくぜ!」

 

「ぶちかましてやりますわよー!」

 

花を踏まぬように、地面を蹴りあげ上空に飛ぶ。

 

化け物も同じく上空に跳び、鋭い爪を振り下ろしてきた。

 

カンッッッ!、とメイス(シノタロス)で弾き、今度はこちらが振り下ろす。

 

「──まっ」

 

振り下ろす力を弱めた。今振り下ろしたら花畑ごと抉ることになる。

 

それは避けたい、というその甘い考えが危機的状態を作り出すことになる。

 

化け物は尻尾で東雲を地面に叩き落とし、逃げられないようにその上に乗っかり頭に噛み付いた。

 

ギチギチィ、と嫌な音が響き渡りそして、ブチッッと頭と身体を喰いちぎる。

 

赤い血液が飛び散り、白い花にそれが垂れる。

 

東雲の首を捨て、こんなものより柔らかく美味であろう少女の方へと歩み寄ろうと一歩踏み出す。

 

その先に、少女はいない。それに先程までなかった白い霧が出てきてた。

 

この霧なら逃げられてしまうがまだ近くにいるはずだ、ともう一歩進む。

 

「──どこ行くつもりだよ」

 

背後からするはずもない声が響く。噛み殺したであろうそれの声が聞こえる。

 

振り向く。否、そんな隙はなかったのだ。

 

〈ディサセンブル!フィニーッシュ!パート2!〉

 

化け物の最後に聞いた声はファンシーな女性の声だった。

 

「オラァッッッッ!!!」

 

フルスイングで頭を吹き飛ばし、花畑の一部を赤色に染め上げる。

 

ぐちゃ、と倒れおちたの化け物の死体を東雲はしばらく見つめていた。

 

真っ白な霧がようやく晴れる。

 

「全く!土壇場でひよるのは貴方の悪い癖ですわ!」

 

「……ごめん」

 

「今度からは気をつけてくださいまし」

 

「……はい」

 

頭を付け直してから変身を解き少女の無事を確認する。

 

丁度ニャル太郎とライウェーが合流したようで、大事には至らなかったようだ。

 

ふぅ、と一息つき変身が解けたシノタロスに向かって話しかける。

 

「ごめんシノタロス、ありがとう」

 

「いいのですわ、お花畑を荒らしたくない気持ちはわかります。ですが時と場合によってはその心は捨てるべきですわ」

 

「難しいこと言うなぁ、まあ頑張ってみるよ」

 

頬を掻き、三人の元へと歩く。

 

「にしてもあの必殺技よく思いついたね」

 

「狐は化かすのが得意ですもの!幻術なんて屁の河童ですわ!効果時間は短いですが」

 

「充分充分、助かったよほんと」

 

うまくやりきれない自分に苛立ったものの、化け物は倒せたからいいかとすぐに気持ちを切り替えた。

 

「無事か?」

 

「無事だよ」「無事ですわ」

 

「そうか、ならよかった」

 

「一応軽く周りを見てきたが、おそらくあの二体だけだろう」

 

「そっか、ありがとうライウェーくん」

 

「例には及ばん」

 

少女の方を見ると、一生懸命花を見つめていた。

 

「“今のが例のモンスターでいいんだよね?”」

 

「“うん!”」

 

少女は返事はするものの、目線は花の方を見ていた。

 

一本一本、厳選しながら良さそうなのを選んでいる。

 

「“ここね、お姉ちゃんとよく来てたの、でもお姉ちゃんは神様のところに行っちゃったの”」

 

唐突に告げれらる悲しいお話に動揺を隠せず、思わず発狂しかける。

 

そこにニャル太郎の蹴りが入り、ことなきを得た。

 

「“今日お姉ちゃんの誕生日だったの、だから……”」

 

「“思い出の場所で、プレゼント送りたかっただけなんだな”」

 

「“うん!”」

 

無垢な少女の笑顔が、どこか切なくも思える。

 

「大人や……この子は将来いい子に育つよ……そしてさも当たり前のように脛を蹴るんじゃねえ……」

 

「そこに脛があるのが悪い」

 

「理不尽!」

 

そんな叫びも少女には関係ない。

 

両手にたくさんの花を抱え、頭を悩ます。

 

「“これとこれ、どっちがいいかな”」

 

「“どちらもいいとも思いますわ”」

 

「“どっちも持っていってもいいのかな“」

 

「“大丈夫ですわよ!お姉さまなら喜んでくれますわ”」

 

ほんわかな会話を邪魔しないようにライウェーは二人に話しかける。

 

「少女はシノタロスくんに任せて、トウホウは例のモンスターを処理してこようか」

 

「じゃあオレあっちのしてくるわ、お前は?」

 

「寝る」

 

「そうかよ、んじゃシノタロスちょっくら頼むぞ」

 

「わかりましたわ!」

 

ニャル太郎とライウェーは化け物の死体処理。

 

シノタロスは少女の護衛(お話相手)。東雲は昼寝。

 

各々の役割をこなし、花畑奪還計画は無事成功したのだった。

 




昼の十五時。ギルド前で報告が終わるのを待っていた。

「“〜♪”」

少女のご機嫌な鼻歌が風に乗る。

「……」

その横で浮かない顔を浮かべながら東雲は石畳の階段に腰をかけていた。

今日の戦闘は、あまりいい戦闘は言えない。

変身するのを忘れ生身で庇ったこと、死が押し寄せる戦闘での判断ミス。

ここのところそれが多い気がする。

おそらく、あの女神(アールマティ)との戦闘に負けたことがかなり心の奥底で響いているのが原因か、と自己分析をし出す。

そう自分で感じていた。二人はどんどん強くなるのに自分は相変わらずだから。

だから、焦っている。強くならねばと。

もう繰り返さない、繰り返してはいけない。そう──。

「“お兄さん?”」

「……ん!?えっ!?」

「“大丈夫?ずっと暗い顔してたから“」

「“あぁ、なんでもないよ”」

頭を撫でながらそう話す。

転生者(こちら)の話など異世界人(あちら)にとっては関係のないこと。あまり顔には出さないように今後気をつけるかと考える。

「おーし報告も終わったぞ、報酬もがっぽり」

「時間もいいですし、甘いものでも食べにいきましょう!」

「そうだな、糖分は疲れは身体によく効くからな」

「それもそうだね、よしいこっか」

立ち上がり階段を降りていく。

「“お嬢ちゃんはどうする?家まで送ろうか?”」

「“ううん、大丈夫”」

「“そっか、気をつけて帰るんだぞ〜”」と手を振る。

三人も手を振り少女を見送った。

少女は何度もお礼を言い街道を走る。

しばらく走ったのち、振り返って少女は東雲の元へと走り寄る。

「“?、どうしたの?”」

「“これ、あげる”」と一輪の花を差し出す。

「“……でもこれお姉さんへのプレゼントでしょ?”」

「“一本くらいならヘーキ!お兄さんにあげるよ”」

果たして自分がもらっていいのか、と考えてしまう。

「“依頼受けてくれたお礼!だけどお金の方がいい?”」

「“ううん、ありがとう”」と不器用ながら少女に笑みを向ける。

今この瞬間だけはそういうのは忘れとおこう、そう思うことにした。

「全く、満更でもねえ顔しやがって」

「こういうのも悪くないですわね〜」

「そうだな、さてここらでいいスイーツ屋は……」

そんなこんなで、今日も平和的な一日を過ごすため街道を進む。






──衝撃。一瞬。

何もかもが、全てが変わり果てた。

「ここにいたか、異人共」

故にそれは、降臨(・・)する。
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