フォロワーファンタジー ー小豆味ー   作:ニャル太郎

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月が堕ちる

衝突、次に衝撃。

 

瓦礫の山に頭から突っ込み、天を仰ぐ。

 

「…………つっよ」

 

(さっきから攻撃が届いてねえな)

 

(それどころか反撃ばっかですわ!)

 

〈 まあ攻撃を与えてもな 〉

 

身体を起こし、数メートル先のナンナを睨む。

 

先程の衝撃の影響で左肩は抉れている。鮮血が垂れ落ち、肉はおろか真っ白な骨を曝け出しているのにも関わらず痛みも焦りも感じさせない顔で佇んでいた。

 

「この程度か?」

 

呆れたように吐き捨てる。

 

抉れた部分を撫でるように触れると、傷は最初の状態に戻った。

 

「……さっきのマジの本気じゃなかったわけ?ボク結構煽り散らかしちゃったんだけど」

 

(それくらい今が本気(マジ)なんだろ、あっちもあっちで手の内曝け出してんだしよ)

 

(ですがあの再生能力が厄介ですわね、せっかくダメージを与えても一瞬で直されてしまいますわ)

 

〈 再生能力だけでもどうにかできればいいのだが 〉

 

「諦めが悪いな」

 

カツ、と音が響く。

 

目の前にナンナが現れる。時間を飛ばしてこちらに近づいてきたのだ。

 

息をさせる時間も、行動させる時間も、理解させる時間も与えさせるつもりはないと、即座に槍を振り下ろしてきた。

 

“この一手で変身は解ける。解けた瞬間にその首を切り落とす“

 

ナンナにはその未来が確定して(わかって)いた。異人の次の一手は来ることはない。

 

ないはず、はずだったのだ。

 

「!」

 

衝撃が響き渡り、そこには黒い転生者(ライダー)が立っていた。

 

〈 ラ イ フ ル 〉

 

時間移動(それ)、乱発しすぎなんだよなぁ」

 

振り下ろした槍を左手で受け止め、右手で持っているライウェーの銃口をナンナの腹部に突き刺す。

 

「お返し、だぁ!!!」

 

引き金を引く。

 

ドォォオオンッッッ!!!、と銃声と共にナンナの腹部に穴を開けた。当然その傷はすぐ再生され元に戻されるはず。

 

──なら、その再生時間の隙に次の攻撃が来たら?

 

銃口をナンナの顔に向け、引き金を引いた。

 

「ッッッ!!!!!」

 

引いたと同時に目の前が爆破。即座に黒い炎を纏い衝撃をできる限り抑える。

 

衝撃によって数メートル飛ばされたが、持ち前の根治で持ち堪えた。

 

静寂が周囲を包みナンナがいた場所には土埃が舞っており、その先の様子はわからない。当たったのか、それとも。

 

「小賢しい、人間の分際で」

 

冷たい一言が放たれる。今まではとは違い怒りのこもった声で。

 

軌道はずらされたか、だが今は外してもよかったのだ。

 

土埃が晴れその先から、傷が治っていない状態(・・・・・・・・・・)のナンナが現れた。

 

「ふーん、再生時間中に攻撃されたら流石に完治までは持ってけないわけね」

 

橙色のボトルをライウェーに装填、それに反応するかのように変形する。

 

〈 ハ ル バ ー ド 〉

 

「ちょいと選手交代、頼んだよ」

 

ゴッッッッ!!!!、と空気を切り裂くように突っ込んでいく。

 

動きは遅い、しかし次々と来る追撃を叩き斬り確実に距離を詰める。

 

ハルバードの真っ黒な刃がナンナを映す。

 

全神経を集中させ、その頸を斬り落とさんと振りかぶる。

 

「遅いな」

 

その隙をナンナは見逃さなかった。水蒸気を形成し、すぐさま爆破。

 

〈 ラ イ フ ル 〉

 

しなかった。もし起爆した瞬間、弾丸がナンナの頭を貫くことが見えていたからだ。

 

数秒前の時間に巻き戻し距離をあけ、自身を守るように岩石を形成し射出。

 

「──ンなもん無意味だバァカ!!!」

 

形成された岩石をものともせず引き金を引いた。

 

放たれた弾丸は全てを撃ち砕き、ナンナの胸部に命中。

 

轟音と衝撃、その後に残ったのは一瞬の静寂。

 

「──流石に死んだでしょ」

 

ライウェーをしまい、土埃の先に足を運ぶ。

 

あの傷で動ける生き物なんていない、神であろうと流石にあの猛撃ならば────そう考えた瞬間。

 

「なんとも、度し難い」

 

声がした。有り得ない、と奥歯を砕いた。

 

腹部に治りきっていない傷、胸部にぽっかりと空いた穴。

 

それでもなお、立っているそれに、畏怖する。

 

「貴様は何か勘違いをしていたようだ、確かに再生中への攻撃は正しい判断だ、しかし」

 

肉も骨は元通りに、威厳はそのままに、『神圧』はより強く。

 

「その攻撃は見えていただから時間を飛ばした(・・・・・・・)。その未来を覆すために、貴様の、貴様らの勝利を確実に潰すために」

 

ザリ、と目の前に来る。何も変わっていない、神格が歩み始める。

 

「貴様らに残された道はただ一つ、敗北だ」

 

衝撃波が襲う。吹き飛ばされ地面に叩きつけられると同時に爆破。打ち上げられた勢いで頭上から無数の隕石が降り注ぎ砕けた瞬間大爆発。

 

街はたちまち形を変え、その一部を荒地と塗り替える。

 

「手札を全て見せたのも追い詰められたからではない、追い詰めたからだ。私と遭遇した時点で貴様らの敗北は決まっていた」

 

一歩、また一歩とこちらに近寄ってくる。その度に瓦礫の一部が『神圧』によって潰されていく。

 

「多少違っていても、結果が変わらなければ意味がない。いくつもの道を進もうが結局辿り着く道は一つなのだ」

 

ようやく立ち止まる。終焉の瞬間がすぐそこにいる。

 

「神が人間によって堕とされるなどあってはならない、あってはならなかったのだ」

 

風が吹く。終幕を告げるように、あるいは何かを運んでくるように。

 

「四つの異人によって地母神アールマティは堕とされた、他ならぬ貴様らと同じ者にだ」

 

そう呟き、槍を振り上げる。

 

“どう足掻こうが、それの勝利はない”

 

ナンナは確信した。確信してしまったのだ。

 

「──だから?」

 

振り下げられた槍をライウェーで受け止めた。もう限界であろうそのはずの肉体を動かし立ち上がる。

 

「未来が確定してんのはこの際どォーでもいい、大事なのは人間が神を堕としたって部分だよ」

 

顔をあげナンナを見上げた。仮面(マスク)で表情は見えないが笑って(・・・)いる。

 

「お前さ、今その話するべきじゃなかったぜ?だってよ、今さっき諦めてたのに変に火ィついちゃったんだもん」

 

カンッと弾き、振りかぶった。

 

距離を空け、ナンナはこちらの様子を伺う。

 

「あのアールマティが堕ちた、つまりお前もそうなる可能性が出てきたわけだよ」

 

追撃。攻撃の手を休めればこちらが押し切られる。

 

懐に入り再びライウェーを振るう。

 

「てめェは手札だけじゃなくて自分の負け筋をも曝け出したんだぜ?」

 

無論その攻撃は当たらない、だがその言葉はどうか?

 

確率は低い、だがゼロじゃない。それだけでもいい。たったそれだけでナンナの行動に僅かでもズレが起きれば、勝利が見える。

 

「だから、それがどうしたというのだ!」

 

ボウッッッッッ!!!!、と空気が破裂する音が響く。

 

吹き飛ばされながらも体制を立て直し着地。

 

「それに、一個思ったんだわ」

 

立ち上がり空を見上げる。

 

雲一つない青空に、太陽とその光で反射され映し出されている月。

 

「もしこの場から月を無くしたら、てめェの再生能力はどうなるんだろうって」

 

ナンナの表情が強張る。だがすぐ無表情に戻る。

 

「無くす?どうやってだ?」

 

「…………………」

 

しくった。反射で答えていることがバレる。

 

事実考えも何も浮かんでいない。ただ相手のペースを乱すことだけを考えていた。

 

あちらのペースに流されると間違いなく負ける、少しでも掻き乱せ。時間を稼げ。

 

思考を巡らす、考えろ。勝機を見つけろ。月を無くす方法を────。

 

(月……月神……太陽神……ん……?)

 

ふと思う、二人の能力がそれらに非常に似ていることに。同時に自分の能力が異質なことに、順当に行けば()ではないか、と。

 

ゆっくりと黒いボトルに手を伸ばす。ほか二つに比べて軽い(・・)のだ。

 

(……なんか入れる?何を……?)

 

否、答えはすぐに出た。簡単なことだった。

 

「こうやってだよ!」

 

黒色のボトルをライウェーに装填し変形。

 

〈 サ イ ス 〉

 

その刃を自分の頸に持っていき、斬り裂いた。

 

真っ黒な液体が噴き出す、海の如くそれは広がっていく。

 

斬ったはずの頸はくっついていた。ただ真っ黒な液体が頸から流れ出しながら、絶え間なく。

 

〈 補充完了、相変わらず君は自虐的だな 〉

 

言葉を返す余裕が、惜しい(ない)

 

ボトルに真っ黒な液体が入っていることを確認し、ドライバーに装填。

 

〈顕現発動 狂飆領域展開〉

 

不穏な言葉が流れ出し、真っ黒な液体が激しく波打つ。それと同時に雲が現れた。

 

「馬鹿な、いやそれは、有り得るのか」

 

月を無くす。そんなことは神であろうと不可能。では無くすのではなく隠すのであればどうだろうか。

 

動揺する対象を目視。すぐさま構え地面を蹴り上げる。砂鉄が落ちるよりも速く、次の一歩へと繋げる。

 

衝撃も、音も、何もかも置いていき一直線に向かってゆく。

 

握る柄から黒い雷が走り、刃に宿る。黒い海が再び激しく波打った。

 

嵐神の如く、場を荒らす。相手の勝機を潰すように。

 

到達までは予測で約三秒。直後にナンナの攻撃が繰り出されるはずだ、こちらに避ける気力はもうない。

 

だから、この一撃で全てを叩きつける。

 

「──来い、異人」

 

「──終わりだッッッ!!!」

 

喉を潰すほどの声を振り絞り、ナンナにぶつけた。

 

衝撃が走った、今までの戦いで最大の衝撃が街を襲う。肉塊も花も全て巻き込んで。

 

どちらも譲らない、譲ってはならない。

 

生か死、それだけだ。

 

「ウ、オオオオオァァアアアアア!!!!」

 

雷撃が全身を駆け巡る。全ては目の前の一神を殺す(・・)ために。

 

「    、!!!!!!」

 

ナンナが東雲の幻想屋の腹部に触れた。最後の水蒸気爆破を起爆準備(セット)

 

その隙を、そのチャンスを見逃すわけにはいかなかった。

 

「とどめ、だァア!!!!!!」

 

全身全霊、骨が砕けようとも肉が抉れようとも関係ない。ただ振り下ろす。

 

腕が悲鳴を上げる、脚の骨が潰れる音が響く、奥歯が砕けた感触がする。

 

それら全てが終わる前に、決着を────つける。

 

 

 

 

 

 

 

ギンッッッッッ、とナンナの頸を斬り落とす。

 

僅かに、僅かに東雲の幻想屋が振り下ろした大鎌が勝っただけのこと。

 

再生するはずの頸が戻ることはなかった。月を隠してしまえば再生能力は使えないと読んだのは正解だったようだ。

 

「ハ────ァア……」

 

変身を解く。

 

空っぽの肺に酸素を取り込む。一瞬のできことのはずなのにひどく長く感じる。

 

「これほどの、力とはな」

 

背筋が凍った。すぐさま声の方へと振り向く。

 

「まさか、私が、異人に堕、とされるとは」

 

そこには頸だけになっても口を動かしているナンナがいた。

 

しかし流石に頸を落とされたなのか攻撃をしてくる様子はない。

 

「呼ばれるは、ずの、なかった異人」

 

「……んだよ」

 

「────その旅に終わりのないことを、」

 

そこで、月神ナンナは事切れた。いや堕とした。

 

最後のは恨みか何かだろうと、立ち上がった瞬間。

 

「ッッッッッ!!!」

 

激痛、感じたこともない激痛が走った。立ち上がることさえ拒絶するような痛みが全身を襲う。

 

(やばいやばいやばいやばい!!!だめだ息できない痛い死ぬしぬシぬ!!!待ってこれほんとに────)

 

そこで、東雲の幻想屋の意識も切れた。

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